予防ボトックスの効果、20代後半から打ってもいい?
By Dr. Kim1 min read

ボトックスというと、すでにできてしまったシワを伸ばす施術というイメージが強いと思います。ところが最近は、シワがはっきり出る前、20代後半や30代前半から先回りして打っておく人も増えています。こうしたアプローチを予防ボトックスと呼びます。
名前だけ聞くと、シワそのものを一切できなくしてくれるように思えます。ただ、正確には少し違います。予防ボトックスが実際に遅らせているのは何なのか、その仕組みと効果の根拠がどこまで確認されているのかを整理しました。
予防ボトックスはシワを防ぐ?それとも遅らせる?
シワには大きく2種類あります。笑ったりしかめたりしたときだけ現れる表情ジワと、表情を戻してもその場に残ってしまう固定ジワです。予防ボトックスが狙っているのは後者、つまり表情ジワが固定ジワへと変わっていく過程そのものです。
紙を一度折って開くと、うっすら折り目が残ります。ただ、同じ場所を何千回も繰り返し折ると、手を離しても折り目がそのまま残ってしまいます。肌も似たところがあります。顔の筋肉が同じ方向に繰り返し動くと、その上の皮膚も毎回同じ線に沿って折れ、この繰り返しが長く積み重なると、表情を戻しても線が残るようになります。予防ボトックスは、この繰り返し自体を減らして、跡が刻まれるスピードを遅らせる方法です。
表情がシワとして固まる過程
眉間にしわを寄せたり、目元を笑ってくしゃっとさせたりする動作は、1日に何百回も無意識のうちに起きています。この動きひとつひとつが、皮膚の中のコラーゲンとエラスチンの線維をほんの少しずつ曲げては戻す作業を繰り返させています。
若いうちはこの線維に弾力があるので、曲がってもすぐに元の形に戻ります。ですが年齢とともに線維そのものの弾力が落ち、紫外線や喫煙といった他の要因まで重なると、折れる部分の線維がだんだん元の形に戻る力を失っていきます。そのため、あるタイミングから表情を戻しても線が残り始めます。予防ボトックスは、線維がまだ弾力を失う前の段階で折れる回数自体を減らし、この過程を遅らせようという発想から出発しています。
ボトックスはどう筋肉を休ませる?
筋肉が動くには、神経が筋肉に信号を送る必要があります。神経と筋肉が出会う地点で、神経はアセチルコリン(acetylcholine、筋肉に収縮せよと伝える信号物質)という化学物質を放出し、筋肉はこれを受け取って初めて収縮します。
ボツリヌストキシンA型(botulinum toxin type A、ボトックスの主成分)は、この信号伝達の要となるタンパク質SNAP-25を切断することで働きます。神経がアセチルコリンの入った小さな袋を外に送り出すにはこのタンパク質が必要ですが、これが切断されるとアセチルコリンが出せなくなり、筋肉は動けという信号をそもそも受け取れません。電話線が切れて話の内容が相手に届かないのと似た状態です。その結果、その筋肉は一定期間力が抜けたままになり、表情を作っても皮膚が折れ込む幅が小さくなります。
早く始めると有利な理由
同じ仕組みで考えると、線維がまだ弾力を失っていない時期に折れる回数を減らしておくほうが、理論上は有利です。折れる刺激そのものが減れば、線維が傷んでは回復するというサイクルの総量も減るからです。
実際、固定ジワがすでにはっきり刻まれてから始めた場合よりも、線がまだ薄いうちから継続的にケアしてきた場合のほうが、同じ用量でもより滑らかな仕上がりになるという臨床観察が複数報告されています。さらに、長く継続して打ってきた人は筋肉自体が動きに頼らない方向へ適応していき、時間が経つほど必要な用量がむしろ減っていくケースもあるとされています。
予防効果の根拠はどこまで?
ただ、ここは正直に触れておきたい部分です。予防ボトックスが数十年後のシワの数や深さを実際に減らすことを長期間追跡した大規模研究は、まだ十分ではありません。今のところ出ている根拠は、大半が短期の観察と専門家の見解、そして神経と筋肉が動く仕組みについての理論的な説明に近いものです。
だからといって効果がまったくないわけではありません。表情ジワを目に見えて減らす効果自体は、すでに広く確認されている事実です。ただ、これが「数十年後のシワを根本から防ぐ」という確実な約束につながるかどうかは、もう少し見守る必要がある部分です。ですので予防ボトックスは、確定した結論というより、理屈のうえで合理的で、短期観察にも裏づけられている選択肢のひとつと理解するのが正確です。
そして人によって筋力や表情のクセ、皮膚の厚みが違うため、同じ年齢で始めても結果は同じにはなりません。表情を大きく作るクセがある人は他の人より折れ込む幅が大きく、早めのケアが必要になることもありますし、反対に表情が穏やかな人は急いで始めなくてもよい場合もあります。
始める年齢と部位別の基準
年齢の目安は絶対的なものではありません。表情のクセや皮膚の弾力、遺伝的な要因によって、同じ年齢でもシワが始まる時期は違ってくるからです。ただ、予防目的でよく挙げられる部位と時期は次の通りです。
- 額の横ジワ: 眉を上げる筋肉をよく使う人ほど額の線が早く現れやすく、薄い線が見え始める20代後半からケアを始めるケースがよくあります。筋肉の使用頻度が高いほど、折れる回数もそれだけ増えるためです。
- 眉間のシワ: しかめグセがあると他の部位より先に定着しやすく、そのクセに気づいた時点で検討する人が多いです。眉間の筋肉は力が強く、折れ込む角度が深くなるためです。
- 目元のシワ: 笑うときによく使う部位なので、よく笑う人ほど早く出やすい傾向があります。目元の皮膚は他の部位より薄く、刺激に敏感に反応するためです。
用量もすでにシワが深くなってからとは違うアプローチをとります。固定ジワを伸ばすための用量より低めに抑え、表情が自然に残るよう調整しながら、半年前後の間隔でケアする方法がよく用いられます。用量を上げすぎると自然な表情そのものが消えてしまい、予防という本来の目的から外れてしまうためです。

予防ボトックスの副作用は?
予防目的とはいえ、ボトックスは神経信号を止める施術なので、気をつけたい点があります。
- まぶたの下垂: 注入した薬剤が本来の目標筋を越えて、まぶたを持ち上げる筋肉にまで広がると起こることがあります。注入の位置と深さの正確さが重要な理由です。
- 不自然な表情: 用量が多すぎたり、周囲の筋肉まで影響を受けたりすると、意図しない部位の動きが減って表情が不自然になることがあります。顔の筋肉は互いにつながって連動して動くことが多いためです。
- 内出血と腫れ: 針が通る際に小さな血管に触れると起こることがあり、多くの場合1週間以内に自然に落ち着くとされています。
効果が持続する期間は、おおむね4か月から6か月とされています。時間が経つと、止まっていた神経の末端の脇から新しい枝が伸びて再び信号を伝え始め、筋肉が少しずつ動きを取り戻していき、それにつれて効果も自然に薄れていきます。ですので予防目的で取り組むなら、1回で終わらせるよりこの周期に合わせて継続的にケアするほうが理にかなっています。

References
Korean Dermatological Association, American Academy of Dermatology (AAD), and Ministry of Food and Drug Safety (MFDS).
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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