妊娠線の治療、赤いうちに始めると反応はよい?
By Dr. Kim1 min read

お腹や太もも、二の腕に筋状に走る線を見ると、いつできたものなのか分からなくなることがあります。最初は赤みや紫がかった色をしていた線が、時間が経つといつの間にか白くて目立たない線に変わっているからです。この色の変化が単に薄くなっていくだけではなく、肌の内部で実際に組織の状態が変わっているサインだということは、意外と知られていません。
妊娠線は、肌が短期間にあまりにも急に、あまりにも大きく伸びることでできる跡です。成長期の急な身長の伸びや妊娠、急激な体重の変化、筋肉量が短期間で増える時期にできやすいのもこのためです。なぜあのような線の形で残るのか、色がなぜ変わるのか、治療はいつ始めると反応が良いのか、仕組みを中心に見ていきます。
妊娠線はどうできる?
肌は大きく表皮と真皮の2層に分かれますが、妊娠線ができるのは真皮です。真皮の中には、コラーゲンとエラスチンというタンパク質の線維が網の目のように絡み合っています。コラーゲンは肌を支える柱、エラスチンはその柱をつなぐゴムひもだとイメージすると分かりやすいです。
肌がゆっくり伸びるときは、この柱とゴムひもが余裕を持って配置し直されながら持ちこたえます。問題は伸びる速度があまりにも速いときです。妊娠後期にあたる28週から40週の間にお腹が目立って大きくなったり、短期間に体重や筋肉量が急に増えたりすると、コラーゲンの柱が配置し直される時間を確保できないまま張り詰め、やがて切れてしまいます。
柱が切れた部分は、正常な組織でなめらかに埋まるわけではありません。その代わり、隙間を急いで埋めるための薄くて弱い組織で満たされます。この部分が周りの肌より薄く、きめも違ったまま残るため、私たちが目にする筋状の跡、つまり妊娠線になるのです。
お腹と太ももに特にできやすい理由
妊娠線が体全体に均等にできるのではなく、お腹や太もも、お尻、胸に集中してできるのには、2つの理由があります。
1つ目は単純な物理的な理由です。これらの部位は実際に最も速く、最も大きく伸びる場所だからです。お腹は妊娠後期にあたる28週から40週の間に周囲が大きく伸び、太ももやお尻は成長期や体重の変化期に脂肪や筋肉が先につきやすい場所です。
2つ目はホルモンです。妊娠中や成長期にはコルチゾールというホルモンの分泌が増えますが、このホルモンにはコラーゲンを作る細胞である線維芽細胞の働きを抑える性質があります。人がストレスを受けると体がこわばるように、コラーゲンの産生もコルチゾールの前では一時的に鈍くなるわけです。よりによって肌が最も速く伸びなければならない時期にコラーゲンの補強がかえって遅れるため、これらの部位は他の場所より切れやすくなるのです。
赤かった妊娠線はなぜ白く変わる?
できたばかりの妊娠線が赤みや紫がかった色をしている理由は単純です。真皮内のコラーゲンが切れた部分で炎症反応が起こり、その部位に血管が拡張して血流が集まるためです。薄くなった肌を通して血管が透けて見えている状態で、この時期の赤い妊娠線はストリエ・ルブラ(striae rubra)と呼ばれます。ルブラはラテン語で赤いという意味です。
時間が経つにつれて、この部位は少しずつ白い線へと変わっていきます。初期の炎症反応が落ち着いて血管が減るのと同時に、損傷部分を埋めていた組織がコラーゲン密度の低い、色素も薄い線維質として安定するためです。この時期はストリエ・アルバ(striae alba)、白色妊娠線と呼ばれます。アルバはラテン語で白いという意味です。
つまり、赤い線から白い線への変化は色が薄くなったように見える錯覚ではなく、炎症が治まり組織が線維化して硬くなっていく実際の変化なのです。この変化は通常6ヶ月から12ヶ月、長ければ2年ほどかけてゆっくりと進みます。
妊娠線の部分がくぼんで感じる理由
妊娠線の部分を指先でなぞると、周りの肌よりわずかにへこんでいるように感じることがあります。これも偶然ではなく、真皮の構造が変化した結果です。
正常な肌では、真皮内のコラーゲンの柱が密に絡み合い、表皮を下からしっかり支えています。ところが妊娠線ができた部分は、この柱が切れた後に目の粗い線維質で急いで埋められているため、支える力が弱く表皮がわずかに沈み込みます。厚み自体も正常な肌より薄いため、指先で触るときめが違い、少し押されたような質感に感じられるのです。
こうした理由から、妊娠線治療では色を薄くすることと同じくらい、厚みを補うことも重要視されています。色が薄くなっても押されたような質感がそのまま残っていると、満足度が下がってしまうからです。
赤いうちに治療すると反応はよい?
妊娠線の治療は赤い時期のほうが有利だとされる理由は、この時期の組織の状態と関係しています。赤い妊娠線はまだ炎症が続いていて血管も活発に働いているため、新しいコラーゲンを作り出す細胞である線維芽細胞も比較的活動性が高い状態にあります。
この時期に肌へ刺激を与える治療を行うと、すでに活性化している線維芽細胞がコラーゲンをより積極的に作り出す方向へ反応しやすくなります。一方、白い線として完全に硬くなった後は血管が減り組織も線維化しているため、同じ刺激を与えても細胞の反応が比較的緩やかになる傾向が報告されています。
もちろん、白い妊娠線だからといって治療にまったく反応しないわけではありません。ただ、これまでの臨床経験の中では、赤い時期に治療を始めたケースのほうが、白い線に完全に変わった後に始めたケースより改善幅が大きく出ることが多いという点から、できるだけ早い時期に相談を受けることが勧められています。
妊娠線レーザーは何を改善する?
妊娠線に使われるレーザーは大きく2種類に分かれます。1つは血管に反応する血管レーザー、もう1つは肌組織そのものを刺激するフラクショナルレーザーです。
血管レーザーは赤い妊娠線によく使われますが、仕組みはシンプルです。レーザー光が血管内のヘモグロビンに選択的に吸収され、その熱で拡張した血管を収縮させる方式です。血流が集まって赤く見えていた部位の血管が落ち着くことで、赤みが薄くなる効果が得られます。
フラクショナルレーザーは、色よりもきめや厚みを改善するほうに重点が置かれています。肌にごく小さな微細な損傷を規則的に作ると、その部分を修復しようとして肌が新しいコラーゲンとエラスチンを作り出す回復反応が起こります。フラクショナルという言葉自体、肌全体ではなく部分的な、区切られた領域にだけ微細な刺激を与えるという意味です。この回復過程を経て、薄くなっていた妊娠線部分の組織が少しずつ厚みを取り戻し、きめが整っていく方向へ反応するケースが報告されています。
赤い妊娠線には血管レーザーとフラクショナルレーザーを併用するケースが多く、白い妊娠線では組織の厚みときめの改善に重点を置いてフラクショナルレーザーを中心に活用する傾向があります。
治療時期を決めるときに確認すること
妊娠線治療を検討するときは、色だけでなくいくつかの条件を一緒に確認しておくと役立ちます。
- 妊娠線ができてからどのくらい経っているかを確認する必要があります。赤い時期ほど治療への反応が良いと報告されているため、発生した時期を把握することが治療計画を立てる最初の基準になります。
- 妊娠線ができた部位の肌の厚みも確認しておく必要があります。お腹や太ももなど厚みのある部位と、わきの下や胸など薄い部位では組織の反応速度が異なるため、同じ治療でも結果が出るタイミングが変わることがあります。
- 妊娠中や授乳中の場合は治療の時期を調整する必要があります。レーザー治療そのものが胎児や乳幼児に直接的な危険を及ぼすという根拠よりも、この時期は肌が変化し続けているため治療効果を正しく評価しにくいという点のほうが大きな理由として挙げられます。
- 普段から肌がケロイド状の傷跡になりやすい体質かどうかも、事前に確認しておく必要があります。こうした体質ではレーザー刺激がかえって別の傷跡反応を引き起こす可能性があるため、治療前のカウンセリングで必ず確認すべき項目です。
妊娠線は予防できる?
妊娠線は遺伝的な要因、つまりコラーゲンがどれだけ弾力を保ちながら伸びる体質かが大きく影響するため、完全に防ぐのは難しいとされています。ただし、肌が伸びる速度を抑える方向のケアは役立つという報告があります。
妊娠中に体重が急激に増えないようペースを調整したり、筋肉量を増やすときも短期間に無理して増やすのではなく段階的に増やしたりする方法が代表的です。肌が伸びる速度が緩やかであるほどコラーゲンの柱が配置し直される時間を確保できるため、急激な変化よりも徐々に変化するほうが妊娠線の発生リスクを減らすのに有利だと報告されています。
保湿剤や妊娠線クリームが予防に役立つのかも気になるところです。クリーム自体がコラーゲンの柱をより丈夫にしてくれるわけではありません。ただ、肌が乾燥すると弾力が落ち、同じ力が加わってもより微細に裂けやすくなる傾向があるため、十分な保湿で肌表面をしなやかに保つことは役立つとされています。つまりクリームは妊娠線を防ぐ盾というより、肌が裂けやすい条件を少し減らす補助的な役割に近いと理解しておくとよいでしょう。
References
Korean Dermatological Association, Ministry of Food and Drug Safety (MFDS), American Academy of Dermatology (AAD), and U.S. Food and Drug Administration (FDA).
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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