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トラネキサム酸が肝斑を薄くする仕組みと内服・外用の実際の効果

By Dr. Lee1 min read

せっせと塗り続けても、肝斑がほとんど変わらないことがあります。そんなとき「飲む美白薬がある」と耳にするのが、トラネキサム酸です。本当に飲み薬で肝斑が薄くなるのか、安全なのか、誰でも飲んでいいのか。気になる方も多いでしょう。

まず結論からお伝えします。トラネキサム酸はもともと止血剤ですが、使っているうちに肌が明るくなることが発見され、色素治療に使われるようになりました。肝斑や色素沈着には研究データが積み重なっています。一方で、レーザー施術後に生じる色素沈着を予防する目的には根拠が乏しく、血栓リスクのある方は避ける必要があります。どこに効果があり、どこに限界があるのか、データをそのままお伝えします。

トラネキサム酸の製品

トラネキサム酸はもともと止血剤です

トラネキサム酸は、手術や過多月経による出血を抑える止血剤として長く使われてきた薬です。血液が固まり溶ける過程に関わるプラスミンという酵素の働きを阻害し、出血を減らします。美白とは縁遠そうなこの薬が色素治療に使われるようになったのは、肝斑の患者さんに処方したところ偶然に肌が明るくなることが発見されたことがきっかけです。その後、なぜそうなるのか研究が重ねられました。

プラスミンは色素とも関わっていました。プラスミンはメラニンを作る細胞であるメラノサイトを刺激するシグナルに介在します。トラネキサム酸がプラスミンを抑えると、メラノサイトを刺激するシグナルが減り、色素の産生が抑えられます。さらにトラネキサム酸は肌の炎症を鎮め、色素を育てる微細血管も抑制します。肝斑は単純な色素の問題ではなく、炎症や血管も絡んだ複合的な状態です。複数の経路を同時に抑えられるトラネキサム酸が肝斑に有効な理由がここにあります。塗り薬の美白成分が一つの経路しか作用しないのとは異なる点です。

参考までに、トラネキサム酸は数十年にわたって止血治療に使われてきた実績のある薬です。美白目的での使用も、まったく新しい試みというわけではありません。

トラネキサム酸がプラスミンを阻害し、メラノサイトへの刺激と炎症を抑える仕組み
トラネキサム酸がプラスミンを阻害し、メラノサイトへの刺激と炎症を抑える仕組み

内服薬は肝斑にどれほど効くか

内服のトラネキサム酸は、肝斑に対してもっとも根拠が厚い使い方です。通常は1日2回、250mgという低用量で服用します。止血目的に使う量よりはるかに少ない用量です。ある研究では3か月で肝斑の重症度スコア(mMASI)が約49%低下し、無治療群の18%を大きく上回りました。別の研究でも服用者の50%が明確に改善した一方、プラセボは5.9%にとどまりました。数字を見るだけでも差は明らかです。

効果が現れるスピードも比較的早めです。6か月間服用した研究では、多くの方が1〜2か月で改善を実感し始めています。ただし服用を止めると再発する方もいます。そのため服用終了後も塗り薬と日焼け止めでケアを続けることが大切です。

肝斑は一度で消せる状態ではなく、長く付き合う色素です。飲み薬はその改善を早める役割に近く、通常は3〜6か月を1クールとして、改善が見られたら用量や回数を減らしていきます。効果が出たからといって長期に飲み続けるより、クールを決めて使うのが一般的です。塗るだけでは物足りなかった肝斑に、プラスαとして試せる選択肢です。

内服トラネキサム酸の肝斑研究。3か月でmMASIスコアが約49%低下し、対照群の18%を上回った
内服トラネキサム酸の肝斑研究。3か月でmMASIスコアが約49%低下し、対照群の18%を上回った

外用剤はハイドロキノンと同等

内服が気になる方には、塗るタイプのトラネキサム酸もあります。効果は美白の基準薬とされるhydroquinoneに匹敵します。ある研究では外用トラネキサム酸5%とhydroquinone 2%を12週間比較したところ、肝斑が薄くなる程度に有意差は認められませんでした。効果はほぼ同等だったということです。

違いは別のところに出ました。トラネキサム酸のほうが刺激感や赤みが少なく、満足度も高い傾向がありました。hydroquinoneは効果が確実ですが、長期使用で刺激が出たり、まれに逆に色素が濃くなることがあります。肌が敏感な方や長く使いたい場合は、刺激が少なく継続しやすいトラネキサム酸の外用剤がよい選択肢になります。

通常は4〜8週で目に見える変化が現れ始め、内服と組み合わせると相乗効果が期待できます。朝晩薄く伸ばして日焼け止めと一緒に使うのが基本です。他の美白成分と重ねて使っても刺激が出にくいため、組み合わせやすい点も利点です。ただし塗り薬は内服より作用範囲が狭いため、広範囲に広がった肝斑よりも限られた部位のほうが向いています。

外用トラネキサム酸5%とhydroquinone 2%の比較。肝斑の改善効果は同等で、トラネキサム酸のほうが刺激が少ない
外用トラネキサム酸5%とhydroquinone 2%の比較。肝斑の改善効果は同等で、トラネキサム酸のほうが刺激が少ない

レーザー後の色素沈着予防にはまだ疑問符

ここで正直にお伝えしたいことがあります。トラネキサム酸が肝斑に効くからといって、レーザー施術後に生じる炎症後色素沈着(PIH)の予防にも効くわけではありません。むしろこの点については根拠が乏しいのが実情です。

肝斑とPIHはどちらもメラニンの問題ですが、生じる仕組みが異なるため、同じ薬が同様に効くとは限りません。レーザー施術を受ける方に事前にトラネキサム酸を内服させた研究では、色素沈着が減るどころか、内服したグループの色素消退率は15%と低く、プラセボ群の52.6%を大きく下回りました。他の研究でも施術後のPIHを予防する効果は確認できていません。

つまり、すでにできた肝斑や色素沈着を薄くする目的には使えますが、施術直後の予防薬として期待するのは難しい状況です。施術後のPIHはトラネキサム酸に頼るより、日焼け止めと十分なクーリングを優先するのが適切です。肝斑はホルモンと紫外線が長年積み重なって生じる慢性の色素で、PIHは急激な炎症で生じる急性の色素です。性質の異なる二つの色素に同じ薬が同様に効くと期待するのは難しいということです。

レーザー施術後の予防目的で内服したトラネキサム酸はプラセボより色素消退率が低かった。予防の根拠は乏しい
レーザー施術後の予防目的で内服したトラネキサム酸はプラセボより色素消退率が低かった。予防の根拠は乏しい

内服か外用か、どう選ぶか

トラネキサム酸は内服、外用、皮膚への微細注射という形で使用できます。それぞれ向いている状況が異なります。広範囲に広がった肝斑を内側からケアしたいなら内服が、刺激が心配な方や部分的に管理したいなら外用が向いています。微細注射は効果が早い半面、施術のたびに費用がかかり、中止後に再発しやすいという報告もあります。下の表に剤形ごとの違いをまとめました。

剤形向いているケース備考
内服広範囲の肝斑、内側からのケア根拠が厚い。血栓リスクのある方は禁忌
外用刺激が心配、部分的なケアhydroquinoneと同等の効果で刺激が少ない
微細注射早い効果を求める場合継続コストあり、中止後の再発報告あり

どの剤形でも日焼け止めと組み合わせることで効果が高まり、2〜3か月は継続することが必要です。一つだけで完結させるより、外用薬と日焼け止めを組み合わせるのが基本です。内服薬は自己判断せず、必ず医師の診察を受けてから始めてください。初めての方は外用や低用量の内服から様子を見ながら調整するケースが多いです。

トラネキサム酸を検討している方への肌悩み相談

注意が必要な方

最も大切なのは、内服のトラネキサム酸が止血剤であるという事実です。血液が溶けにくくなる薬のため、血栓ができやすい方には危険を伴う場合があります。過去に下肢静脈や肺に血栓があった方、心臓や脳血管の疾患がある方、経口避妊薬を服用中の方は特に注意が必要で、妊娠中はさらに慎重な判断が求められます。内服は必ず医師と相談してリスクを確認してから始めてください。効果が良いという口コミだけを見て自己判断で入手して飲むのは避けましょう。

幸い、肝斑治療に使う低用量では重大な副作用はまれです。軽度の胃の不快感や月経量の変化、頭痛などが報告されており、重篤な血栓事故は皮膚科で用いる用量ではほとんど報告されていません。外用剤はひりつきや軽い赤みの程度でより安全です。服用中に片方のふくらはぎだけが腫れて痛んだり、急に息苦しくなった場合は、まれですが血栓のサインの可能性があります。すぐに服用を止めて受診してください。

トラネキサム酸は肝斑と色素沈着に根拠が積み重なっている薬ですが、内服薬は血栓リスクを先に確認して、医師と一緒に始めるのが安全です。

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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。

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