ニキビ跡の茶色い色素沈着が消えない理由と実際に効果のある対処法
By Dr. Lee1 min read

ニキビは治ったのに、茶色いシミがそのまま残っています。剥がれることもなく、ファンデーションでも隠しきれず、何ヶ月も肌に染みついているような感覚。これがPIH、炎症後色素沈着です。
ニキビ瘢痕とは違います。皮膚が凹んだり凸凹になったりしているわけではなく、色が変わっているだけです。触っても凹凸がなく、表面はなめらかなのに色だけが暗くなっています。
美白アンプルを2ヶ月使っても変化がないと諦めた方もいれば、高価なレーザーを受けてかえって色が濃くなってしまった方もいます。どちらも間違ったアプローチが原因です。PIHは仕組みを理解して正しい方法を使えば、確実に薄くなります。ただし、時間はかかります。その現実的な話です。

PIHはなぜできて、なぜ長く残るのか
皮膚が炎症を受けると、メラノサイト(melanocyte)が過剰反応します。周囲の細胞が炎症シグナル物質を放出し、メラノサイトはその刺激を受けて色素を過剰に作り出します。
関与する主な信号物質は、IL-1(インターロイキン-1)、endothelin-1(ET-1)、α-MSH(メラノサイト刺激ホルモン)、stem cell factor(SCF)、prostaglandinなどです。これらの物質がメラニン合成酵素であるtyrosinase(チロシナーゼ)を活性化します。SCFとET-1が一緒に作用すると、tyrosinase遺伝子の発現がそれぞれ単独の場合より大きく上昇することが、皮膚実験で確認されています。炎症が強いほど、色素がより濃く深く沈着します。
原因はニキビだけではありません。虫刺されの跡、小さな擦り傷、ワックスによる刺激、接触性皮膚炎でも、同じ経路でPIHが生じます。
問題は速度の非対称性です。メラニンが蓄積するのは数日のうちに起きますが、消えるのは皮膚細胞の入れ替えサイクルに沿ってゆっくり進みます。表皮の基底層から角質層まで細胞が移動するのに通常4〜6週かかります。色素が表皮にのみ留まっていれば、このサイクルが繰り返されることで数ヶ月かけて徐々に薄くなります。
しかし炎症が深かった部位では、メラニンが真皮層まで落ちていくことがあります。これを色素実禁(pigment incontinence)と呼びます。真皮に降りた色素は入れ替わりがはるかに遅く、1年以上残ることがあり、青みがかった灰色の色調を帯び、なかなか薄くなりません。
肌の色が暗いほど、PIHはより濃くより長く続きます。フィッツパトリック分類(Fitzpatrick scale)III型以上に該当するアジア系、ラテン系、中東系、アフリカ系の肌でとりわけ目立ちやすい理由がここにあります。基礎的なメラノサイト活性が高く、同程度の炎症でも色素反応がより強く起きます。
紫外線も状態を悪化させます。UV-BはtyrosinaseActivity(チロシナーゼ活性)を直接高め、UV-Aはすでに作られたメラニンを酸化させて色を濃くします。薄くなっていたシミが紫外線に一度さらされると、また濃くなることがあります。

PIHとPIE、同じシミではありません
まずシミの色を確認します。茶色ならPIH、赤色やピンクがかった色ならPIE(炎症後紅斑、post-inflammatory erythema)です。性質が違い、アプローチも異なります。
| 区分 | PIH(炎症後色素沈着) | PIE(炎症後紅斑) |
|---|---|---|
| 色 | 茶色、黄褐色、濃い茶色 | ピンク、赤色、紫がかった色 |
| 原因 | メラニン過剰生成 | 毛細血管損傷、血管残存 |
| 圧迫時 | 消えない | 白くなり一瞬消える |
| 効果があるもの | 美白成分、角質除去、穏やかなレーザー | 血管レーザー、retinoid、niacinamide |
| 自然消失期間 | 6ヶ月〜1年以上 | 3〜6ヶ月 |
PIEは損傷した毛細血管が収縮せず皮膚表面近くに残っているため赤く見えます。血管の問題であってメラニンの問題ではないため、美白成分を塗っても作用する経路そのものがありません。
家で区別する方法があります。シミの上に指かガラスを軽く押したとき、一瞬白くなってから手を離すと赤くなるならPIEです。圧力がかかると血流が押し出され、離すと戻ってきます。押しても色がそのままならPIH側です。
茶色のPIHでも、色素が表皮にあるか真皮にあるかで予後が異なります。真皮まで降りた色素は表面からの成分が届きにくく反応も遅いため、最初から期待する期間を長めに取り、保守的に対処する必要があります。
PIEには血管をターゲットにするPDL(パルス色素レーザー)やNd:YAG血管モードが効果的です。逆に、PIEにhydroquinoneを塗っても赤みは取れません。臨床では2つが混在していることもよくあります。混在している場合は複数の部位で圧迫テストを行い、どちらが主な問題かを把握してから順序を決めます。

時間と紫外線遮断が基本です
PIHで最も重要な2つは時間と紫外線遮断です。これが整っていなければ、どんな成分も十分な効果を発揮しにくくなります。
日焼け止めはSPF 30以上、できればSPF 50 PA+++ 以上を毎朝塗り、屋外活動時は2時間ごとに重ね塗りします。曇りの日もUV-AはほぼA雲を通過し、室内でも窓際に長く座っていれば遮断が必要です。SPFだけが高くてPA等級が低い製品はPIH管理には不十分です。
時間がかかるという事実は、最初から現実として受け入れる方が楽です。メラニン抑制剤が自然な消失速度を高めるものであり、数日で消し去るものではありません。臨床研究では、ほとんどの外用成分は12〜16週間使用後に有意な改善を報告しています。4週間使って諦めると、効果を確認することさえできずに終わります。
新しいニキビが続けて出ると、PIHも次々と新しくできます。既存のシミを消すことだけに集中していると、新しいシミがさらに増えてしまいます。活動性ニキビが多いなら、そちらを先に整理するのが順序です。皮膚科で処方されたニキビ治療薬とPIH成分を並行すれば、両方を同時に整理できます。
表皮PIHは3〜6ヶ月継続的に管理すると目に見えて薄くなるケースが多いです。真皮まで達した色素は1年以上かかることもあります。最初からこのタイムラインを知って始めれば、途中で諦めずに済みます。

塗る成分、何が効きますか
複数の成分があり、それぞれ作用方式が異なります。2〜3種類を組み合わせると、メラニン生成の異なるステップを同時にブロックするため、効果がより早くなります。
hydroquinoneは最も長く研究されてきたPIH第一選択成分です。tyrosinaseを直接抑制してメラニン合成を減らします。4%製品を1日2回12週間使用したとき、約40%の患者で色素がほぼ消えたという報告があります。4%までは最大6ヶ月程度比較的安全に使用できますが、刺激が生じたら休止します。
retinoidは皮膚細胞の入れ替え速度を高め、色素が蓄積した細胞をより早く表面へ押し上げます。tyrosinase遺伝子発現の抑制効果もあります。単独よりhydroquinoneと一緒に使うと効果が大きくなります。24週間にわたりhydroquinoneにretinoidを加えた組み合わせは、hydroquinone単独より色素の減少が有意に大きくなりました。初めは乾燥と角質が生じる可能性があるため、隔日少量から始めます。
azelaic acidは刺激が少なく、ニキビとPIHを同時に抑えられるため、活動性ニキビがある肌に適しています。20%クリームを1日2回24週間使用した研究では、患者の約73%が改善しました。同じ研究の2%hydroquinoneは約19%でした。敏感な肌にも比較的耐えやすいです。
niacinamideはメラニンが角質細胞へ転送される経路を抑制し、すでに作られた色素が広がるのを防ぎます。4%niacinamideと4%hydroquinoneを顔の左右に8週間比較した研究では、niacinamideが約40%の患者で効果を示し、表皮メラニンと炎症浸潤がともに減少しました。刺激がほとんどないため、他の成分と組み合わせやすいです。
tranexamic acidはもともと止血薬として使われていた成分ですが、肌に塗るとメラニン合成経路を抑制します。ニキビ由来PIHの患者に5%溶液を12週間使用した臨床試験では、20%azelaic acidと同程度の改善を示し、初期刺激はむしろ少なかったという報告があります。経口服用の形でも、シミ(肝斑)に対する効果が確認されています。
vitamin C(L-ascorbic acid)はすでに作られたメラニンを還元し、追加の酸化を防ぎます。不安定な成分で変色すると効果が大きく落ちるため、不透明容器に涼しい場所で保管することが必須です。

レーザーは慎重に使う必要があります
レーザーが早いように思えますが、PIHではとても慎重に使うべき分野です。出力が高い治療や熱ダメージが大きい施術は、かえってPIHをより悪化させることがあります。
低出力レーザートーニング、特にNd:YAG 1064nmを低fluence(エネルギー密度)で複数回行う方式が、アジア人のPIHに最もよく使われます。低い出力で色素だけを刺激し、熱による損傷を最小限に抑えるという原理です。1回で劇的な変化を期待するのは難しく、4〜8回繰り返すことで少しずつ薄くなります。
ただし注意点があります。出力を低くしていても、回復期間が不十分なまま頻繁に繰り返すと、色素が部分的に抜けてまだら状の色素脱失(mottled hypopigmentation)が生じることがあります。トーニング後に色素が再び上がるrebound現象も報告されており、フィッツパトリックIII〜IV型のアジア人で特に多く見られます。十分な間隔を空けて、施術前後の紫外線遮断を徹底することが必要です。
picosecond(ピコ秒)方式はパルスが短く熱ダメージが少ないという理論的な利点があり、徐々に使われるようになっていますが、PIHに関する大規模な長期データはまだ限られています。機器の名称よりも、出力と設定値が結果を左右します。
強い剥脱レーザー(CO2、Er:YAG高出力)や高fluenceの分画レーザーは、表皮に相当な炎症反応を引き起こします。この炎症がメラノサイトを再び刺激して施術後PIHを作ることがあります。肌の色が暗い方への攻撃的なレーザーは、治療を受けに行ってかえって濃いシミを作って帰るという逆説的な悪化につながることもあります。最初は保守的な設定で1回施術して反応を確認してからスケジュールを決めるのが安全です。
レーザーよりも攻撃性の低い選択肢として、ケミカルピーリング(chemical peel)があります。暗い肌色の方には、mandelic acid(マンデル酸)が分子が大きくゆっくり均一に浸透するため刺激が少なく、フィッツパトリックIV〜VI型で最も安全な第一選択として挙げられます。salicylic acid(サリチル酸)はニキビが残っている肌に適しており、glycolic acid(グリコール酸)は低濃度で使う必要があります。強い剥脱を1回行うよりも、低濃度を複数回に分けて行う方がPIH悪化のリスクが低くなります。

実際の管理方法
日焼け止めを毎日使います。これがなければどんな成分も半分の効果しかありません。SPF 50 PA+++ 以上を朝に塗り、屋外なら2時間ごとに重ね塗りします。こまめに重ね塗りする習慣が、一度に厚く塗るよりはるかに重要です。室内の窓際でも遮断が必要です。
活動性ニキビが残っているなら、ニキビから先に抑えます。新しいPIHが次々と生まれる状況で既存のものだけを消そうとするのは非効率です。皮膚科で処方されたニキビ治療薬を並行すれば、新しいシミの生成を防ぎながら同時に管理できます。
成分の選択は肌の状態に合わせます。敏感だったりニキビがまだ活動期にある状態なら、azelaic acidやniacinamideから始める方が刺激が少ないです。肌のバリアが安定していて色素が濃ければ、hydroquinoneから始めることができます。retinoidは単独よりも他の成分と一緒に使うと効果が出やすくなります。複数の成分を一度に始めると刺激がどこから来たかわかりにくくなるため、2週間ごとに1つずつ追加していく方式が良いです。
ルーティン例です。朝:優しい洗顔後にniacinamideセラム、SPF 50日焼け止め。夜:洗顔後にazelaic acidまたはhydroquinone、保湿剤。肌が慣れてきたら夜に隔日でretinoidを追加します。この構造を12週間以上維持しながら効果を評価します。
12週間経っても変化がなかったり刺激が続くなら、皮膚科で相談するタイミングです。処方濃度のhydroquinone、専門的なレーザー施術、複合処方トリプルクリーム(tretinoin、hydroquinone、ステロイドの組み合わせ)など、独りでは使いにくい選択肢がさらにあります。真皮まで色素が達している場合は独りで管理する限界があります。そのときは最初から皮膚科で始める方が時間の節約になります。
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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