フィラーを溶かす注射 hyaluronidase、いつ使うのか、どれくらい必要なのか
By Dr. Lee1 min read

フィラーを受けた後、何かおかしいと感じる場合があります。片側だけが盛り上がっていたり、目の下が青みがかって透けて見えたり、まれに皮膚が白くなって痛みが出たりすることもあります。こういったときに使うのが hyaluronidase、すなわちヒアルロニダーゼです。HAフィラーを分解する酵素です。
フィラーを一度入れたら永久に残ると思っている方が多いですが、ヒアルロン酸(HA)系フィラーは条件が整えば元に戻すことができます。その鍵となるのがこの酵素です。副作用の修正はもちろん、血管閉塞のように即座な対応が必要な緊急時にも使われます。施術前にこの酵素がどう作用するかを知っておくと、万が一のとき医師と迅速に判断するうえで実際に役立ちます。

ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)とは何ですか?
ヒアルロニダーゼはヒアルロン酸(HA)の分子鎖を切断する酵素です。HAを構成する糖鎖間の結合を加水分解して長い高分子を短い断片に分解し、分解された断片はリンパ系を通じて吸収されます。数百万ダルトンものHAの塊が数日のうちに体が処理できるサイズまで分解されます。
重要な点があります。この酵素は注入されたフィラーだけを選んで分解するわけではありません。注射した部位周辺の自然なHAも一緒に分解します。そのため修正後にその部位が元の状態よりもへこんで見えることがあります。ほとんどの場合、数週間以内に体内のHAが補われて回復しますが、あらかじめ知っておくことで慌てずに済みます。
ヒアルロニダーゼはHAの構造にのみ作用します。スカルプトラ(PLLA)、ラジエッセ(CaHA)、アルテコール(PMMA)はHAではないため、この酵素では一切溶けません。非HAフィラーの部位に使っても修正効果はなく、周辺の自然HAが分解されるだけという逆効果になります。自分が入れたフィラーの種類を把握しておくことが大切な理由がここにあります。施術時に製品名をカルテに残してもらうよう依頼しておくと、後の修正に実際に役立ちます。
この物質はもともと局所麻酔薬を組織内に素早く広げる補助剤として数十年前から使われていた薬剤です。HAフィラーが美容施術に広く普及するにつれ、副作用の修正と緊急処置の目的でクリニックの必須備蓄薬としての地位を確立しました。今日ではHAフィラーを扱う医師ならば必ず手元に置いておかなければならないというのが臨床の基準です。

どのような状況で使いますか?
大きく4つの状況に分けられます。
しこりと左右差。 フィラー後に特定の部位が盛り上がったり硬く触れたりする場合です。リップラインや鼻唇溝でよく起き、時間が経っても自然に広がらなければ少量を正確に投与して修正します。マッサージで試みることもありますが、数週間経過しても変わらないしこりは酵素注射のほうがはるかに確実です。
チンダル現象(Tyndall effect)。 目の下のように皮膚が薄い部位にフィラーが浅く入り過ぎると、光が散乱して青みがかって透けて見えます。メイクでも隠れにくく、照明によってはより目立ちます。レーザーである程度改善できますが、最も確実な解決策はヒアルロニダーゼで溶かすことです。再施術の際はより深い層に、より少量でアプローチする必要があります。
ボリュームの過剰修正。 希望より多く入ってしまった場合や、古いフィラーが不自然に残っている場合です。新しくデザインし直すために既存のフィラーをまず全部溶かすことを目的として使うこともあります。広い範囲に十分な量が必要で、2週間隔で分けて行う場合もあります。
血管閉塞の緊急事態。 最も深刻な状況です。フィラーが血管内に入ったり外から血管を圧迫したりすることで血流が遮断されます。典型的なサインは施術中または直後の皮膚の蒼白化、網状青斑(網目状の斑紋)、持続する痛みです。時間が経つと該当部位の皮膚が壊死することがあり、眼動脈の関連血管が閉塞するとまれに視覚障害に至ることもあります。数十分が結果を左右するため、ただちに十分な量を使わなければなりません。ためらって時間を失うことが最も悪い選択です。

用量はどれくらい使いますか?
よくフィラーと1:1で溶かすなどと簡単に説明されることがありますが、実際の基準はそれほど単純ではありません。臨床で使う単位は容量ではなく酵素の分解活性を表す単位(unit)です。数字だけではピンとこないので、バイアルで換算してみましょう。よく使われる製品(リポラーゼなど)の1バイアルは通常1500単位です。つまり1本が1500単位と考えてください。
この1バイアルを基準にすると感覚がつかみやすくなります。ACE Groupの基準では、20mg/mL濃度のHAフィラー0.1mLを溶かすのに約5単位が必要です。1バイアル(1500単位)あれば、そのような小さなしこりを数十個処理できるということです。一方、血管閉塞の緊急事態では1か所にほぼ1バイアルをまるごと使うこともあります。同じ薬でも状況によって数百倍もの差が生じます。
| 状況 | おおよその用量 | 1バイアル(1500単位)換算 |
|---|---|---|
| 小さなしこり、部分修正 | フィラー0.1mLあたり約5〜10単位 | 約1/150バイアル、ほとんど使わない |
| HAフィラー1mLをまるごと溶かす | 約600〜750単位 | 約半バイアル |
| 血管閉塞の緊急事態 | 一度に450〜1500単位、繰り返し | 一度に約0.3〜1バイアル、1時間ごと |
用量がここまで違う理由があります。小さなしこりひとつを修正する目的と、血管が閉塞して組織壊死が進行中の緊急事態とでは、目的も速度もまったく異なります。しこりの修正は少量からゆっくり慎重に始めて反応を確認するのが安全です。一方、血管閉塞の緊急時は最初から十分な量を使います。閉塞部位全体に一度に数百単位、よく450〜1500単位、つまりほぼ1バイアルをまるごと浸潤させ、皮膚の色が戻るかどうかを見ながら反応が不十分であれば1時間ごとに同量を繰り返す高用量パルス方式が標準となっています。こうして繰り返すうちに緊急1件でバイアル数本が使われることもあります。一度使って待つ方式ではなく、効果を確認しながら繰り返すことが核心です。
フィラー自体の特性も用量に影響します。架橋が密であるほど分解により多くの酵素が必要です。架橋が弱い水分補給フィラー類は比較的少量でも反応します。注入してから時間が経ったフィラーは自然分解が既にある程度進んでいる場合もありますが、線維化が進んで硬くカプセル化した場合はむしろより多くの量が必要になることがあります。同じ部位でも患者ごとに残っているフィラーの量や組織反応が異なるため、最初は保守的に始めて結果を確認し追加するかどうかを判断する方式が安全です。
一度に多く使うより分けて少しずつ調整するアプローチが過修正のリスクを減らします。ただし血管閉塞のように時間が命の状況では、保守的なアプローチにこだわることがかえって危険です。修正と緊急事態は同じ薬を使いますが、戦略はまったく異なります。医師がその場で状況を判断して用量と投与方法を決定することが重要な理由がここにあります。

効果はどれくらい速く、どれくらい完全ですか?
反応は比較的早いほうです。小さなしこりを少量で修正する場合、注射後数時間以内に部位が柔らかくなっていくのが感じられ、24〜48時間の間にかなりの部分が分解されます。血管閉塞の緊急時では、10〜15分以内に皮膚の色が戻り始めるかどうかを見ることが最初の基準です。この時間内に反応がないか不十分であれば追加投与を検討します。
効果がどれくらい完全かはさまざまな変数に左右されます。少量で局所のしこりを修正する場合は大抵きれいに解決します。広い範囲のフィラーを一度に溶かすときは、最初は希望以上にへこんでしまったように見えることがあります。これは周辺の自然HAも一緒に分解されるためです。驚いてしまう結果のように感じるかもしれませんが、ほとんどの場合、数週間以内に体内のHAが回復して自然に補われます。あえてこの効果を利用して既存のボリュームをいったん空にしてからデザインし直すこともあります。
古いフィラー、特に架橋密度が高い製品は1回の投与で完全に溶けないことがあります。この場合は1〜2週間隔で分けて進めながら分解の程度を確認し、追加するかどうかを決めます。フィラー周辺に線維化が進んでカプセルのように覆われると、酵素がフィラーに到達しにくくなります。こういった場合は超音波で位置を先に確認してから正確な深さに投与することが結果に差をもたらします。
ヒアルロニダーゼの効果が残っている間は新しく入れるHAフィラーも分解される可能性があります。一般的には2〜4週間間隔を空けてから再施術することが推奨されており、溶かした量と範囲によってはさらに長く見ることもあります。

他のフィラーにも使えますか?
ヒアルロニダーゼはHA、すなわちヒアルロン酸の化学構造にのみ作用します。現在美容施術で使われているフィラー成分にはHA以外にもさまざまな種類があります。スカルプトラとして知られるPLLA(ポリL乳酸)はコラーゲン生成を誘導する方式でボリュームを作る製品です。HA構造がないためヒアルロニダーゼでは溶けません。ラジエッセの主成分であるCaHA(ハイドロキシアパタイト)も同様です。PMMA系(アルテコールなど)は生分解されない素材で、この酵素はもちろんどの方法でも溶かすことが困難です。
この違いが実際の臨床で重要な理由があります。他のクリニックで過去に入れたフィラーの種類を患者本人が知らないことは少なくありません。こうした状況でヒアルロニダーゼをむやみに使うと、非HAフィラーはそのまま残って周辺の自然HAだけが分解されるという逆効果になりかねません。そのため種類が確認できないときは超音波などの画像ツールで物質の性状と位置を先に確認するか、少量をテスト投与して反応を見る方式が必要です。
同じHAフィラーの系統でも、メーカーによって架橋方法と濃度が異なります。架橋密度が高い製品ほど分解により多くの酵素が必要で、反応速度も遅くなります。架橋が弱いスキンブースターのような製品は比較的少量でも素早く反応します。どの製品をどれくらい入れたかを記録しておく習慣が、後で修正が必要な状況で医師の判断を実際に助けます。

アレルギーと注意事項
ヒアルロニダーゼはタンパク質成分であるため、まれにアレルギー反応が起こります。ハチ毒や一部の生物学的物質と構造的な類似性があるため、特にハチに重度のアレルギー反応を経験した方は施術前に必ず医師に伝えてください。反応の程度は局所の蕁麻疹や痒みから、まれにアナフィラキシーまで幅があります。アレルギーリスクを確認するために施術前に皮膚反応テストを行う医師もいます。少量を皮膚に先に注射して15〜20分反応を見る方法です。
ただし、血管閉塞のような即座な処置が必要な緊急事態では皮膚テストを待つ時間はありません。この場合は抗ヒスタミン薬とエピネフリンを準備した状態でただちに投与することが優先です。アレルギー反応のリスクよりも血管閉塞による組織損傷のリスクのほうがはるかに大きいからです。
施術後に一時的に注射部位が腫れたり赤くなったりすることがあります。ほとんどの場合、数日以内におさまり深刻な状態に移行することはまれです。酵素が作用している間は自然HAも一部分解されるため、一時的に皮膚の弾力が落ちたり乾燥感を感じたりすることもあります。これも時間とともに回復します。
修正後に新しくHAフィラーを入れようとする場合、タイミングが重要です。ヒアルロニダーゼが体内に残っている間に新しいフィラーを注入すると、一部がすぐに分解されることがあります。一般的には2〜4週間を空けてから再施術することが推奨されます。広い範囲を多くの量で溶かした場合は4週間以上余裕を持つことが安全です。酵素が十分に消失したか確認が難しい場合は、小さなテスト量を先に入れて反応を見る方法を用いることもあります。急がないことが再施術の結果を守るために重要です。
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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