エランセフィラーとHAフィラー、持続期間と効果の比較
By Dr. Lee1 min read

頬が少しこけてきたり、ほうれい線が目立ち始めると、その部分を長く満たしてくれる施術を探すようになります。エランセはこうした悩みでよく名前が挙がるフィラーです。注入直後はジェル成分がすぐにボリュームを満たし、時間が経つにつれて肌の中でコラーゲンが新しく作られ、効果が続いていく仕組みです。ほかのコラーゲン刺激系の施術と違い、施術当日から変化を感じられる一方、1年以上長持ちする持続力も特徴です。ただしヒアルロニダーゼで溶かせない点は、施術前に必ず知っておく必要があります。エランセがどんな原理で働き、効果と持続期間はどこまで根拠で確認されているのか、そしてほかのフィラーとは何が違うのか、検証されたデータをもとにまとめました。

エランセはどんな成分でできたフィラー?
エランセはPCL(ポリカプロラクトン)という成分の微小球体と、CMCジェルを混ぜて作られたフィラーです。全成分のうち微小球体が約30%、残り約70%はCMCジェルが占めています。微小球体1つの大きさは25–50µmとごく小さいものです。
この製品は英国のシンクレア(Sinclair)社が製造しています。ヒアルロン酸(HA)フィラーのようにその場をただ満たす方式ではなく、肌自身がコラーゲンを新しく作るよう刺激するバイオスティミュレーター(コラーゲン刺激系フィラー)に分類されます。ただし永久に残る成分ではなく、時間が経つと体内で徐々に分解されていきます。
ここでひとつ必ず知っておきたい点があります。ヒアルロニダーゼはHAフィラーを溶かす酵素ですが、PCL成分には効果がありません。つまりエランセは注入後に気が変わっても、すぐに元に戻す方法がないということです。韓国国内では食品医薬品安全処の許可を得て使用されていますが、米国FDAの承認はまだ受けていません。
主に頬、こめかみ、ほうれい線、フェイスラインなど、ボリュームが必要な部位に使用します。ジェル状のため注射器で真皮深層や皮下脂肪層に注入し、部位によって針またはカニューレを使い分けます。HAフィラーとは成分が異なりますが、施術自体はクリニックでカウンセリング後にすぐ受けられる点は共通しています。

ジェルが抜けてコラーゲンが満たされる順番
エランセの効果は2段階に分かれます。まず注入直後はCMCジェルがその場をすぐに満たし、即座にボリューム感を与えます。施術当日から変化を感じられるのはこのためです。
その後、数週間から3か月かけてCMCジェルは徐々に吸収されて消えていきます。この時期に微小球体として残っていたPCLが足場の役割を果たし、肌の中の線維芽細胞を刺激します。その結果、1型コラーゲンが新しく作られ始めます。
コラーゲン生成は時間が経つほど徐々に増え、およそ12週(3か月)前後で最も活発になることが確認されています。ある研究では施術6か月後に組織を採取して調べたところ、1型コラーゲンが実際に増えていることが確認されました。ジェルが抜けた部分を新しく生まれたコラーゲンが引き継ぐため、初期のボリュームが減っていく時期でも効果が急に落ちることはありません。
こうした順序のため、エランセは施術当日の印象と数か月後の印象が少し異なります。最初はジェルが作ったボリュームのため、ややふっくらとした印象になることがあり、ジェルが抜けてコラーゲンが定着していく数か月の間に、顔が自然に整っていく印象へと変わっていきます。即座に仕上がる結果よりも、時間をかけて自然に変わっていく過程を望む方に向いている方式です。


エランセは何年まで持つ?
エランセはS、M、L、Eの4タイプに分かれ、微小球体を作る鎖の長さによって持続期間が変わります。メーカーが公表している仕様では、Sタイプ約1年、Mタイプ約2年、Lタイプ約3年、Eタイプ約4年まで持続すると表記されています。
ただしこの1–4年という数値は、あくまでメーカーが示した仕様である点に注意が必要です。実際の臨床で確認されている根拠は、これより観察期間が短く設定された研究から出たものです。40人を対象にした24か月の無作為比較研究では、施術12か月時点でそれぞれ90%、91.4%の割合で効果が維持されていました。
同じ研究で24か月時点の満足度はそれぞれ72.4%、81.7%となっています。メーカー仕様の1–4年はタイプ別の理論上の最大値と理解し、実際に根拠が積み重なっている期間はおよそ2年程度までと考えるとよいでしょう。それでもほかのフィラーと比べると、持続力が長めのタイプです。
タイプの選択は、施術部位と希望する持続期間を踏まえて決めます。頬のように動きが大きく自然さが重要な部位は比較的短いタイプを、フェイスラインや鼻のわきのように長く維持したい部位は長めのタイプを選ぶといった具合です。どのタイプでも一度に全体の効果が現れるのではなく、数か月かけて徐々に定着していく点は共通しています。

ほうれい線の比較研究の結果
エランセの効果を確認した研究の中には、ほうれい線を対象にしたものがあります。80人ずつ2つのグループに分け、一方にはエランセを、もう一方にはHAフィラーを注入したうえで12か月間観察した研究です。
12か月時点でのしわ改善率は、エランセグループが88.8%、HAグループが23.8%となりました。統計的にもはっきりとした差でした。HAグループは施術3か月ごろから効果が徐々に薄れていったのに対し、エランセグループはコラーゲンが作られ続けることで改善効果が長く維持されたと解釈されています。
ほかの研究では、エランセのMタイプが比較対象より効果が劣らないという結果も出ています。9人を対象にした小規模な症例研究では、2年後にボリュームが50–150%まで増えたという報告もありますが、少人数の症例をまとめたものであるため、平均値として一般化するのは難しい面があります。コラーゲン刺激という原理が実際の改善につながるという根拠は、こうしてひとつずつ積み重なっています。
ほうれい線の研究で用いられたWSRSは、しわの深さを等級で評価し施術前後を比較する評価方法です。両グループとも施術前のしわの程度が近い状態から出発しているため、12か月後に現れた差は製品自体の持続力の違いと解釈できます。HAは初期に素早くボリュームを満たしますが時間とともに徐々に吸収され、エランセはコラーゲンが新しく作られ続けることで、改善効果がより長く続いたと考えられます。

元に戻せないフィラーの副作用は?
HAフィラーは気に入らなかったり問題が起きたりした場合、ヒアルロニダーゼの注射で当日中に元に戻すことができます。エランセはこの方法が通用しません。一度注入すると、体が自然に分解するまでそのまま残ります。
そのため位置が少しずれたり、しこりや血管関連のトラブルが起きたりした場合、修正がはるかに難しくなります。だからこそ、解剖学に詳しく経験豊富な施術者から受けること、そして施術部位と量を慎重に決めることが特に重要です。
熟練した医療スタッフ1人が1111件を施術したデータを見ると、2週間を超えてむくみが残ったケースが4.5%、あざができたケースが2.7%でした。頬部の腫れは0.72%、一時的なしこりは0.45%で見られ、血管トラブルや肉芽腫、感染はありませんでした。ただしこの数値は経験豊富な施術者1人の結果であるため、しこりの発生率が常にこれほど低いと断定するのは難しい面があります。まれに施術9か月後、3年後といったかなり時間が経ってからしこりや異物反応が現れた例も報告されており、施術後も定期的に確認を受けるとよいでしょう。
カウンセリングの段階で顔の血管構造を十分に把握し、無理に多い量を一度に入れないことも、安全な結果を作るうえで重要です。元に戻せないフィラーであることを踏まえると、施術部位と量は急いで決めず、カウンセリングで十分に説明を聞いてから判断するほうが安心です。
他のフィラーと比べると何が違う?
コラーゲンを刺激するフィラーの中でも、エランセ、スカルプトラ、ラディエスは少しずつ性質が異なります。以下の表にまとめました。
| 項目 | エランセ (PCL) | スカルプトラ (PLLA) | ラディエス (CaHA) | HAフィラー |
|---|---|---|---|---|
| 即時ボリューム | あり | なし | あり | あり |
| 作用の仕組み | PCL微小球体がコラーゲン新生を刺激 | PLLAがコラーゲン新生のみ刺激 | 即時ボリューム + コラーゲン刺激 | ボリュームを満たす、刺激なし |
| 持続期間 | 1–4年 | 約24か月 | 12–18か月 | 6–18か月 |
| 元に戻す | 不可 | 不可 | 不可 | 可能 |
ラディエスはCaHA成分で、エランセと同じように注入直後に即時ボリュームを与えながらコラーゲン生成も刺激しますが、持続期間は12–18か月とエランセより短めです。スカルプトラはPLLA成分で即時ボリューム効果がなく、注入直後には目立った変化がないまま、数週間かけてコラーゲンが徐々に満たされていく方式です。当日の変化よりも、長期的な結果を待つ施術に近いといえます。

HAフィラーはコラーゲンを刺激せず、その場を満たすことに集中しているため持続期間は通常6–18か月ですが、ヒアルロニダーゼでいつでも元に戻せるという安全装置があります。当日から変化を感じつつ長く維持したいならエランセやラディエスが、自然に徐々に満たされていくのを望むならスカルプトラが、気が変わる可能性を残しておきたいなら元に戻せるHAフィラーが向いています。エランセは即時ボリュームと長い持続力、タイプ別の調整が魅力ですが、元に戻せない点が最もはっきりした特徴であるため、この部分を十分理解したうえで選ぶとよいでしょう。
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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