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顎先フィラーでEラインを整える, 後退した顎になぜ硬いフィラーを使うのか, 効果はどれくらい持続するのか

By Dr. Kim1 min read

横顔を撮ったときに顎が後ろに引っ込んでいると、口元が出て見えて優柔不断な印象になりがちです。鼻や唇に手を加えなくても、顎先を少し前に出すだけで横のラインが整うケースは多くあります。このときに最もよく使われる方法が顎先フィラーです。

ただし顎先フィラーはどんなフィラーでもいいわけではありません。頬や唇に使うやわらかいフィラーを顎先に入れると、すぐに広がって下垂してしまい、望む形になりません。顎先は骨の代わりに支えて形作る場所なので、硬いフィラーを使う必要があります。なぜ硬いフィラーでなければならないのか、どんな製品を使うのか、効果はどれくらい持続し安全性はどうなのか、そしてフィラーで対応できる小顎と手術が必要な小顎はどう違うのかを、実際の論文をもとにひとつずつ整理しました。

Eラインは鼻先と顎先を結ぶ線で, 唇の位置から横顔のバランスを判断する
Eラインは鼻先と顎先を結ぶ線で, 唇の位置から横顔のバランスを判断する

Eラインとは正確には何なのか

Eラインとは、横顔を見たときに鼻先と顎先を結ぶ仮想の直線のことです。1968年に歯科矯正医のリケッツが提唱した基準線で、この線を基準に唇がどの位置にあるかを見ます。一般的に上唇はこの線から約4mm、下唇は約2mm後ろにあるとき、調和のとれた横顔とされます。

顎先が後ろに引っ込んでいる、つまり小顎の場合は、唇が相対的にこの線より前に突き出て見えます。実際には口元が出ているわけではないのに、横顔では口が出ている印象になってしまうのです。そのため顎先を前に出してあげると、鼻と口、顎のバランスが整い、横のラインがすっきりします。

ただし小顎といっても原因はさまざまです。軟部組織が不足している場合、顎の骨の先端がわずかに小さい場合、顎の骨自体が小さいか後退している場合はそれぞれ異なります。フィラーはこのうち、軟部組織が不足しているか骨の先端がわずかに足りない軽度なケースに向いています。顎の骨自体が大きく後退している場合はフィラーより骨切りなど外科的な領域になるため、自分の顎がどのタイプかを先に見極めることが大切です。見た目は似ていても原因が違えば必要な施術も変わります。そのため何も考えずにフィラーから始めるのではなく、横顔の写真を撮って顎先と唇、鼻の位置を一緒に確認することが先決です。

G-primeが高いほどフィラーは硬く, 押されても形を保ち上に支える力が強い
G-primeが高いほどフィラーは硬く, 押されても形を保ち上に支える力が強い

なぜ硬いフィラーを使う必要があるのか

フィラーは製品ごとに硬さが異なります。この硬さを表す値がG-primeです。ジェルを押してから離したときに、元の形に戻ろうとする力と考えるとわかりやすいでしょう。G-primeが高いとジェルは硬く、押されても形を保ち、上に押し上げる力が強くなります。逆に低いとやわらかく、組織になじみやすく自然に仕上がりますが、構造を支える力は弱くなります。

顎先は骨の代わりに横顔を支えなければならない場所です。ここにやわらかいフィラーを入れるとどうなるでしょうか。噛んだり話したり表情を作ったりするたびに組織に押されて横に広がり、下に垂れてしまいます。望んでいたシャープで輪郭のはっきりした顎先ではなく、ぼんやりと丸みを帯びたり、ボリュームが散ってしまったりするのです。

そのため顎先のように骨の代わりに支える必要がある部位には、G-primeが高い硬めのフィラーが標準とされています。実際にフィラーの物性を扱った論文でも、高いG-primeのフィラーは深い層や骨の上に入れてボリュームと支持力を作り、低いG-primeのフィラーは浅い皮膚に入れて小じわを整えるとまとめられています。わかりやすく言えば、頬や唇はやわらかく満たすほうが自然で、顎先は硬く支えたほうが形が生きるということです。同じ成分のフィラーでも、どこに使うかによって向き不向きが分かれます。部位に合った硬さを選ぶことが重要です。

顎先には硬めのHAフィラーやCaHAを使い, HAは元に戻せてCaHAはコラーゲンを刺激する

どんなフィラーを使うのか

顎先に使う硬めのフィラーは大きく2つに分かれます。1つはG-primeが高いHAフィラーです。Volux、Voluma、Restylane Liftといった製品がこれにあたります。特にVoluxはアメリカFDAが顎のラインの改善用として最初に承認したHAフィラーで、顎先にも使われます。HAフィラーの大きな利点は、気に入らなかったり問題が起きたりした場合に、ヒアルロニダーゼという薬剤で溶かして元に戻せることです。

もう1つはCaHAフィラー、つまりRadiesseです。注入するフィラーの中でもG-primeが最も高い部類に入るため、シャープな顎のラインを作るのに強みがあり、時間の経過とともにコラーゲンの生成を促す効果もあります。ただし現在ある薬剤では溶かすことができず、一度入れると元に戻すのが難しくなります。そのぶん施術者の熟練度がより重要になります。

元に戻せる余地を残したいなら硬めのHA、強めの輪郭とコラーゲン刺激を望むならCaHAが向いています。どちらを選ぶにしても、やわらかいフィラーではなく硬めの製品を使うという原則は同じです。自分の顎の状態と希望する程度、元に戻せるかどうかを一緒に見て選ぶとよいでしょう。価格や流行よりも、自分の組織に合った硬さと可逆性を基準にするほうが安全です。初めてなら、問題が起きても溶かせるHAのほうが安心できます。

顎先によく使われるフィラーを一覧で比較すると次のとおりです。

製品種類硬さ可逆性持続期間向いているケース
VoluxHA非常に硬い可能約24か月顎のラインと顎先の輪郭
VolumaHA硬い可能12〜18か月深部のボリュームと顎先
Restylane LiftHAやや硬い可能約12か月中間の深さの支持
RadiesseCaHA最も硬い困難12〜18か月シャープな輪郭とコラーゲン刺激

顎先フィラーは骨の上の深い層に入れるため, 動きの多い部位より長く持続し, 長ければ24か月残る
顎先フィラーは骨の上の深い層に入れるため, 動きの多い部位より長く持続し, 長ければ24か月残る

効果はどれくらい持続するのか

顎先フィラーは深い場所、正確には骨を覆う骨膜のすぐ上にまとめて入れます。浅く入れると広がりやすく、血管を傷つけるリスクも高まるためです。深く硬くとどまるぶん、顔の薄い部位よりも長く持続する傾向があります。

数値で見ると、Voluxを顎先に使った研究では、改善効果が長ければ24か月まで臨床的に維持されました。1年が経過した時点でもかなりの部分が残っていました。Radiesseで顎のラインを整えた場合も、長く維持されつつ安全だったという報告があります。もちろんこれは平均的な傾向で、実際の持続期間は製品や注入量、人それぞれの代謝の速さによって変わります。

顎は唇のように顔の中でよく動く部位より、フィラーが持ちやすい傾向にあります。それでも時間が経てば少しずつ吸収されるため、形が薄れ始めたタイミングで補うように管理します。一度に多く入れて長く持たせようとするより、適正な量を入れて必要なときに整えるほうが自然で安全です。もう1つ覚えておきたいのは、フィラーが完全になくなる前に補充すると、より少ない量で形を維持できるという点です。すっかりなくなってからまたゼロから始めるより、残っているうちに少しずつ足すほうが経済的で仕上がりも自然です。

Voluxの顎先第3相試験では, 24週時点の施術者評価による改善率が92.6パーセントで対照群を大きく上回った
Voluxの顎先第3相試験では, 24週時点の施術者評価による改善率が92.6パーセントで対照群を大きく上回った

実際に効果はあるのか

根拠となる臨床試験があります。Voluxで後退した顎先を整える第3相ランダム化試験では、148人を施術群と対照群に分けて24週まで観察しました。横顔で額と鼻の下、顎先を結ぶ角度が施術群で明確に改善した一方、対照群ではほとんど変化がありませんでした。

満足度の指標もはっきりしていました。24週時点で施術者が評価した改善率は施術群92.6%で、対照群の4.2%と大きな差がありました。患者自身が評価した改善率も95.7%でした。顎先の後退の程度を評価する指標でも、施術群の78.7%で改善が見られました。顔の満足度スコアも施術群が70.4点で、対照群の34.9点を上回りました。

この効果は52週、つまり1年が経過した時点でもかなりの部分が維持されていました。施術中の痛みは10点満点中2.6点程度と軽く、注入部位の反応もほとんどが2週間以内に落ち着き、重大な副作用や途中脱落もありませんでした。数字だけを見ても、小顎の改善でフィラーが広く使われている理由がよくわかります。ただしこの数値は、よく設計された試験の中で熟練した施術によって得られた結果だという点は踏まえておく必要があります。同じ製品でも施術者や注入量、個人の状態によって結果は変わり得ます。

顎の周りは血管が多いため深く, ゆっくり入れる必要があり, エラボトックスと組み合わせるとラインが整う

安全性はどうか, どう組み合わせるのか

顎と下顎の周りは血管が密に走っている場所です。フィラーが誤って血管に入ってしまうと、閉塞や組織損傷につながる可能性があるため、必ず注意が必要な部位です。そのため骨の上の深い層に、一度に少しずつゆっくり入れることが原則です。前述のとおりHAフィラーであれば、問題が起きてもヒアルロニダーゼで溶かして元に戻せますが、この処置はできるだけ早く行うほど回復が良好です。

そのほか感染や時間が経ってから生じるしこり、腫れといった反応も起こり得ますが、多くは軽度です。消毒と正規品の確認、熟練した施術者という基本が守られれば、リスクは大きく減らせます。

顎先フィラーは単独でも使いますが、組み合わせると横顔と正面の印象がともに整います。小顎には顎先フィラーで前後の長さを作り、エラが張っている場合は咬筋ボトックスで左右の幅を減らすと、顔の下半分がすっきりと立体的に整います。さらに口角が下がっている場合は、ボトックスを加えてラインを整えることもあります。自分の顔のどこを整えればEラインが生きるのかを一緒に見てもらうとよいでしょう。結局のところ顎先フィラーは、硬めの製品を正確な深さに適量入れ、必要に応じてボトックスと組み合わせることがポイントです。横顔1枚が印象を変えるだけに、焦らず計画を立てて臨むほうが良い結果につながります。

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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。

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