ボトックスの効果の持続期間と個人差、用量と抗体まで
By Dr. Kim1 min read

ボトックスの効果は一般に半年ほど続くと言われています。ところが実際には、3ヶ月ほどで効果が薄れてくる方もいれば、5ヶ月を過ぎてもしわがなかなか戻らない方もいます。同じ製剤を同じ部位に受けても、なぜこれほど差が出るのでしょうか。
その答えは、ボトックスが筋肉に働きかける仕組みと、その働きが解けていく過程そのものが、人によって進み方が違うためです。使用量、筋肉の大きさと力、神経が再び回復する速さ、さらには体の免疫反応まで、複数の要因が重なり合って持続期間を決めています。
ボトックスはどうやって筋肉を止める?
筋肉が動くには、神経が筋肉に信号を送る必要があります。この信号は神経の末端からアセチルコリン(acetylcholine、神経と筋肉の間で信号を伝える物質)が放出されることで伝わります。ボトックスの主成分であるボツリヌストキシンは、このアセチルコリンが出る通り道をふさぎます。
具体的には、神経の末端でアセチルコリンの入った小さな袋を細胞膜まで運ぶ役割を持つSNAP-25(神経伝達物質の放出に必要なタンパク質)というタンパク質を切断します。ドアを開けるための取っ手をそっくり取り外してしまうようなものです。取っ手がなければドアの中にあるアセチルコリンは外に出られず、筋肉は信号を受け取れないまま動けなくなります。
つまりボトックスは筋肉そのものをなくしたり傷つけたりするのではなく、神経が筋肉に話しかける通路を一時的にふさいでいるだけなのです。通路が再び開けば、筋肉は元どおりに動くようになります。
ボトックスの効果は通常何か月続く?
臨床で報告されているボトックスの効果持続期間は、おおむね3ヶ月から4ヶ月程度で、短い場合は2ヶ月、使用量の多い部位では5ヶ月から6ヶ月近くに及ぶケースまで幅広く報告されています。これほど幅が出るのは、先ほど説明した通路が再び開く速さが人によって異なるためです。
同じ量を受けても、筋肉をよく使う人ほど通路が早く開き直す傾向があると言われています。表情を大きく動かしたり筋肉を繰り返し強く使ったりすると、それだけ神経が再び信号を送ろうとする試みも増えるためです。
年齢や肌の状態もある程度関係していると言われていますが、この部分は筋肉そのものの特性ほどはっきりしておらず、個人差が大きいため数字で言い切ることは難しいとされています。そのため、同じクリニック、同じ施術者に受けても毎回数日のずれが出るのは自然なことです。
用量と筋肉の大きさによる持続期間
同じ部位でも、使用量が多いほど効果が長く続く傾向が報告されています。ある研究では、低用量よりも高用量を受けたときのほうが、効果が消えるまでにかかる期間が数週間長かったと報告されました。トキシンの分子が多いほど、それだけ多くの通路をふさいでいることになるため、神経がその通路をすべて再び開け直すのに時間がかかるというわけです。
筋肉そのものの大きさと力も重要です。噛む筋肉である咬筋やふくらはぎの筋肉のように大きく力の強い筋肉は、額や目もとの小さな筋肉に比べて、同じ量を受けても効果が早く解ける傾向があると言われています。力の強い筋肉ほど、神経が通路を再び開こうとする力もより強く働くと考えるとわかりやすいでしょう。
そのため、部位ごとに適切な使用量が異なって設定されています。小さな筋肉に大きな筋肉と同じ量を入れると周囲に広がる危険が高まるだけですし、大きな筋肉に小さな筋肉と同じ量しか入れなければすぐに力が戻ってしまいます。筋肉の体積と力を見極めて量を合わせる過程そのものが、持続期間を左右しているのです。

効果がゆっくり切れていく過程
通路がふさがれた神経の末端は、じっとしているわけではありません。ふさがれた部分のすぐ横から新しい枝を伸ばし、筋肉に再び信号を伝えようとします。通行止めになった道路のすぐ横に、仮の迂回路をつくるのに似た状況です。
この枝のおかげで、施術後しばらく経つと筋肉は少しずつ再び動き始めます。そして元々ふさがれていた通路がすっかり回復すると、仮につくられていた枝は整理されて消えていきます。迂回路が不要になれば片づけられるのと同じ理屈です。この一連の過程こそが、ボトックスの効果が突然ではなく、じわじわと解けていくように感じられる理由です。
そのため、効果が消える時点を1日単位で正確に区切るのは難しいとされています。ある日突然しわが戻ってくるのではなく、数週間かけて枝が伸びては再び整理される過程が重なり合いながら、少しずつ表情が戻っていきます。施術直後はまったく動かなかった筋肉が、中盤には少しだけ動くようになり、後半になるにつれ本来の力を取り戻していく流れは、こうした仕組みによるものです。
くり返し施術すると持続期間は長くなる?
ボトックスを長期間にわたって定期的に受けている方の間では、時間が経つにつれて再施術の間隔を延ばしても効果が同じように保たれる傾向が報告されています。これは、筋肉を長く使わずにいると自然と体積が細くなる廃用性萎縮(使わないことで筋肉が細くなる現象)によって説明されています。
筋肉が細くなると、そもそも神経が伝えるべき力自体が小さくなります。そのため通路が再び開いても以前ほど強く動けず、結果として目に見える効果がより長く続いているように見えるのです。ただしこの程度は部位や個人差が大きく、誰にでも同じように現れるわけではありません。
ボトックス抗体ができると効果はなくなる?
ごくまれに、繰り返し施術を受けているうちに、体がボツリヌストキシンのタンパク質を異物と認識して中和抗体をつくることがあります。この抗体ができると、次回以降の施術ではトキシンが神経の末端に届く前に抗体につかまってしまい、効果が弱まったり、まったく現れなくなったりすることがあります。
抗体は、短い間隔で頻繁に、しかも多い量を繰り返し受けるほどできやすいと言われています。そのため効果を長く保ちたいのであれば、逆説的ですが必要な分だけを、十分な間隔を空けて受けることが勧められます。
幸い、抗体ができて効果がまったく現れなくなるケースは多くないと報告されています。近年発売されている製剤は以前に比べて不要なタンパク質成分を減らして作られる傾向にあり、体が異物として認識する余地自体が過去より小さくなっていると言われています。それでも、短い間隔で頻繁に受ける習慣は避けたほうがよいでしょう。

持続期間を延ばす施術後のケア
持続期間に影響する要因の中には、施術後のケアである程度調整できる部分もあります。
- 施術直後は部位をこすったり強く押したりしない: まだ定着していないトキシンが周囲の筋肉に広がると、狙った部位の効果が想定より浅くなることがあるためです。
- 効果が完全に切れてから再施術を受ける: 効果が残っている状態で頻繁に追加すると、蓄積される量が増えて抗体ができるリスクが高まると言われています。
- 表情のクセを見直す: 眉間にしわを寄せたり目を強くすぼめたりするクセが強いと、それだけ筋肉を頻繁かつ強く使うことになり、効果が比較的早く解けやすくなります。
- 適切な量と部位で施術を受ける: 筋肉の大きさと力に合わせて量を決めることが、持続期間を予測しやすい範囲に保つ助けになると案内されています。
こうしたケアは持続期間を劇的に延ばす特別な方法というより、これまで説明してきたさまざまな仕組みが想定どおりに進むよう後押しする役割に近いものです。
References
Korean Dermatological Association, American Academy of Dermatology (AAD), and Ministry of Food and Drug Safety (MFDS).
この記事は参考になりましたか?
About this article
診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
Read next

小鼻ボトックスの効果はいつ現れ、どのくらい持つ?
鼻翼ボトックスは、笑ったり大きく息を吸ったりするときに鼻の横が広がる原因となる小さな筋肉の働きを弱める施術です。鼻を削ったり高くしたりするのではなく、筋肉の動きだけを調整する点で他の鼻の施術とは仕組みが異なります。どの筋肉が関係していて、ボトックスがその筋肉にどう作用するのかをまとめました。
By Dr. Lee

首の縦バンドのボトックスの効果と持続期間、注意点まで
首の縦じわの中でもくっきり浮き出るバンドは、広頸筋という薄い筋肉の収縮が原因です。ボトックスはこの筋肉の力を弱め、バンドが目立つ度合いを和らげます。なぜこの筋肉が縦じわを作るのか、ボトックスが筋肉にどう作用するのか、その仕組みをまとめました。
By Dr. Kim

妊娠線の治療、赤いうちに始めると反応はよい?
妊娠線は、皮膚が短期間に急に伸びることで真皮内のコラーゲン線維が断裂してできる跡です。赤い線が白い線へと変化していく過程と、時期によって治療への反応が変わる理由を仕組みから解説します。
By Dr. Kim