頬の青みがかった左右対称の色素はABNOM、クリームが届かない理由とレーザー治療の実際
By Dr. Lee1 min read

両頬や頬骨のあたりに、暗くて青みがかった色が左右対称に浮かんできたことはないでしょうか。肝斑だと思って美白クリームをずっと使い続けても、まったく変わらなかったという方もいるかもしれません。見た目は似ていても、色素が存在する深さがまったく異なるため、治療法も大きく変わります。
ABNOMは正式には後天性両側性太田母斑様色素斑(ホリ母斑)とも呼ばれ、アジア人女性に多く見られます。20代以降に両頬や頬骨、額、鼻背に左右対称で現れるのが特徴です。核心は、色素が表皮ではなく真皮の深いところにある点です。そのため塗り薬では届かず、1064nm の Q スイッチ Nd:YAG レーザーを複数回に分けて行うことが標準的な治療となっています。肝斑との違いから、レーザーの回数、副作用、肝斑が混在するときの対処まで、ひとつずつ整理しました。

ABNOMと肝斑、何が違うのか
最も大きな違いは色素の深さです。ABNOMの色素細胞は真皮の深い層に存在しており、表皮と真皮上層に色素がある肝斑とは異なります。そのため同じ茶系の色に見えても、ABNOMは青みがかった灰色や青褐色に見えることが多く、これは深い層の色素が光の屈折によって青みを帯びて見えるためです。
形や分布も異なります。肝斑は境界がぼんやりした広い面で広がりますが、ABNOMは小さな丸い点が両頬や頬骨、額、鼻背に左右対称に集まって現れるケースが多いです。20代以降に発症することが多く、アジア人女性に特に多く見られます。紫外線やホルモンの影響で濃くなることもあるため、肝斑と見分けがつきにくい場合もあります。
この2つは非常に似て見えるため、ABNOMを肝斑と思い込んで的外れな治療を続けてしまうことも少なくありません。実際には同じ顔に両方が混在することも珍しくないです。治療を始める前に、色素がどの深さにあるかをきちんと見極めることが何より重要です。皮膚科では色素の深さ・色調・分布パターンを確認し、必要に応じて診察所見から真皮色素の有無を判断して治療方針を決めます。

なぜ塗り薬や内服薬では効かないのか
美白クリームは表皮の色素に作用します。hydroquinone などの成分がメラニン生成を抑制し、表皮の肝斑を薄くするしくみです。ところがABNOMの色素は真皮の深い層にあるため、塗布した薬剤はその深さまで届きません。どれだけ丁寧にクリームを使い続けても、ABNOMはほとんど変化しないのはそのためです。
内服薬も同様です。肝斑に有効とされる内服の tranexamic acid は、色素を刺激するシグナルを抑える補助的な役割であり、すでに真皮深部に居座った色素の塊を取り除くことはできません。つまり肝斑を対象にした治療法は、ABNOMには効果が弱いのです。美白クリームで効果が感じられなかった方の中に、実は肝斑ではなくABNOMだったというケースが少なくなく、診断が変われば治療法も変わります。
真皮の色素を除去するには、その深さまで届いて色素を直接破壊する手段が必要です。それを担うのがレーザーです。ABNOMの治療は塗る・飲むではなく、深い色素を細かく砕いて身体が排出するのを促すレーザー治療が中心となります。肝斑と治療法が分かれるのはまさにここです。

レーザーはどう効くのか、何回受ければいいのか
ABNOMの標準治療は、1064nm Q スイッチ Nd:YAG レーザーです。この波長は真皮の深いところまで到達し、強い衝撃波で色素の塊を細かく砕きます。砕かれた色素は時間をかけて免疫細胞が処理し、複数回にわたって少しずつ薄くなっていきます。
重要なのは、1回では終わらないという点です。真皮の色素は深くて固く、ある研究では治療回数の中央値が11回で、おおむね10〜15回が必要とされていました。ただし、回数を重ねた場合の結果は良好です。同じ研究で最終治療の2か月後を確認すると、患者の46.7%が76〜100%の改善を、33.3%が51〜75%の改善を示していました。別の研究でも、治療回数が多いほど効果が高く、治療開始年齢が若いほど結果が良好でした。
そのためABNOMの治療には忍耐が必要です。数週間おきに何度も受ける必要があり、色が薄くなるのも段階的にゆっくりと現れます。1〜2回で効果がないからと諦めるのではなく、最初から複数回かかるプロセスと理解して臨むのがよいでしょう。

炎症後色素沈着のリスクはどれくらいあるか
真皮の深い色素をレーザーで砕く過程では、一時的に色素が増える副作用、すなわち炎症後色素沈着(PIH)が生じることがあります。レーザー刺激に皮膚が反応して一時的にメラニンを多く産生する現象で、多くは時間とともに薄れますが、適切なケアが必要です。
このリスクは誰でも同じ程度に生じるわけではありません。年齢が高いほど、色素病変の色が濃いほど、そして元の肌色が濃いほどリスクが上がります。こうした場合は出力を抑えめに設定し、施術間隔を十分に空けることが安全です。一度に強く取ろうとして色素が増えてしまうと、回復にかえって時間がかかります。
副作用を抑えるには術後ケアも大切です。施術後は紫外線をしっかり遮断し、刺激を避けながら、必要に応じて鎮静と美白ケアを組み合わせます。ABNOMのレーザーは強さを競うものではなく、色素が増えないよう慎重に回数を分けて進める、バランスの治療です。そのバランスを取れる経験豊かな施術者を選ぶことが、結果を大きく左右します。一時的に色素が増えても多くの場合は数か月かけて薄れていくので、そのタイミングで無理に出力を上げるよりも、回復を待ちながら間隔を置く方が安全です。

肝斑が混在しているときはどう対処するか
ABNOMと肝斑が同じ顔に混在することは珍しくありません。これが最も扱いにくいケースです。ABNOMには真皮の色素を砕くためにレーザーが必要ですが、肝斑はレーザー刺激に敏感で、かえって濃くなる可能性があります。一方を治療しようとして、もう一方を悪化させてしまうリスクがあるということです。
そのため両方が混在している場合は、より慎重にアプローチします。肝斑が刺激されないようレーザーの出力を下げて使い、まず塗り薬・内服薬・紫外線対策で肝斑を落ち着かせてからABNOMのレーザーを進めることもあります。順序と強度を調整しながら、2つの色素を同時に管理する戦略が必要です。
この調整は、色素を見分けて扱い慣れた経験があってこそできます。ABNOMと肝斑が混在している場合は、2つの色素を合わせて診断し、段階的に計画を立てることが何より重要です。自己判断で強いレーザーを集中的に受けると肝斑が一緒に悪化してより複雑になる可能性があるため、必ず診察を通じて順序を決めることをお勧めします。色素が混在している場合は一度で終わらせようとするより、肝斑を安定させながらABNOMをゆっくり改善していく、長いスパンの計画が合っています。

結局、どう向き合えばいいのか
ABNOMは肝斑に似た見た目ながら、色素が真皮の深いところにある異なる色素疾患です。そのため塗る・飲む治療には限界があり、1064nmレーザーを複数回に分けて受けることが中心的な治療になります。何より大切なのは、始める前に肝斑なのかABNOMなのか、あるいは両方が混在しているかを正確に見極めることです。
期待値は現実的に設定することが大切です。真皮の色素は深くて固く、1回で消えることはなく、おおむね10回前後の治療を積み重ねてはじめてはっきりした変化が現れます。その過程で色素が一時的に増えることもあるため、強さよりも安全な間隔と出力で継続することが、結果として近道になります。治療開始年齢が若いほど良好な結果が得られたという研究もありますので、長く放置するより早めに正確な診断を受ける方が有利です。治療中も治療後も、紫外線対策と刺激の軽減を続けることで、色素が再び悪化するのを防げます。ABNOMは正確な診断、粘り強い複数回の治療、丁寧なアフターケアの3つがそろったとき、最も満足のいく結果につながります。
この記事は参考になりましたか?
About this article
診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
Read next

トーニングで消えなかった黒子・老人性色素斑、リーポット532nmと超冷却が1〜2回で取れる理由
リーポットが532nmの色素レーザーとして黒子・老人性色素斑に強い理由、VSLS超冷却が炎症後色素沈着を抑える仕組み、韓国人20名の臨床データ、施術後のかさぶた管理と副作用を誇張なしに解説します。
By Dr. Lee

レーザージェネシスとは何か, 赤みと毛穴・小じわに本当に効くのか何回受けるべきか
レーザージェネシスがどんな施術なのか、1064nmの非剥脱レーザーが穏やかな熱で赤みと毛穴、小じわをどう整えるのかを分かりやすくまとめます。何に効いて何に弱いのか、他のレーザーと何が違うのか、何回受けるべきかと副作用を誇張せずに伝えます。
By Dr. Kim

レスティレーンフィラーの種類と効果まとめ, Lyft・Defyne・Refyne・Kysseは何が違ってどれを選べばいいのか
レスティレーンがどんなヒアルロン酸フィラーなのか、硬さのあるNASHAと柔らかいOBT2つの技術がどう違うのか、LyftとDefyne、Refyne、Kysseが部位ごとに何を使うのかを表で整理します。効果と持続期間、副作用と元に戻す方法まで、誇張せずにお伝えします。
By Dr. Lee