スレッドリフト PDO・PLLA・PCL の種類と持続期間、副作用まで数字で確認
By Dr. Lee1 min read

スレッドリフトは、メスを使わずに溶ける糸を皮膚の下に通して、たるんだ組織を引き上げる施術です。全身麻酔は不要で、ダウンタイムも短い。非手術系リフティングの中でとくに選ばれやすい理由のひとつです。お昼休みに受けて、午後には職場へ戻れる方も少なくありません。
「1年以上持続する」「コラーゲンが継続的に生成される」といった宣伝コピーは、実際の研究データより先回りしているケースがほとんどです。PDO・PLLA・PCL それぞれの体内吸収期間と効果の持続性の違い、コグ糸とスムース糸それぞれの役割、論文に記載された満足度データと副作用発生率を、数字そのままで確認します。施術を検討している方の、現実的な期待値づくりに役立ててください。

スレッドリフトはどうやって引き上げるのか?
スレッドリフトの仕組みは大きく二つあります。一つ目は、糸の表面についたコグ(barb、小さなかぎ爪)が皮下の脂肪層や筋膜に引っかかり、たるんだ組織を物理的に持ち上げる力。二つ目は、糸が体内でゆっくりと分解されながら周囲組織に微細な刺激を与え、コラーゲン合成を促す反応です。
コグ付きの糸が入ると、針のトラック沿いにかぎ爪が組織を固定します。糸を引っ張ると、たるんだ部位が引き上がります。施術直後に表情が少し不自然に引っ張られて見えるのも、このためです。1〜2週間ほどで組織が落ち着き、自然な印象に戻ります。
どのくらい引き上がるかは、診察室でよく聞かれる質問です。Ali が 2018 年に発表した研究では、客観的に計測した軟部組織の移動距離は 3mm から 10mm でした。外科的フェイスリフトのようにフェイスラインを大幅に再設計するレベルではなく、軽度から中等度のたるみを自然に整える程度。この範囲に期待値を合わせておくと、結果に対して現実的な目線が持てます。
コラーゲン刺激の効果は、糸が吸収されてからもしばらく続きます。糸が分解される際の炎症反応が新しいコラーゲンの生成を促し、肌のハリを高める仕組みです。ただしこの効果は、リフトアップよりも肌質や弾力の改善に近いものです。

PDO・PLLA・PCL の糸は何が違うのか?
三種類の素材の核心的な差は、体内吸収期間にあります。PDO(Polydioxanone)は約 6〜8 か月で分解されます。外科の縫合糸として長年使われてきた素材で、安全性データが三種類の中でもっとも豊富です。吸収期間が短い分、副作用が起きても比較的早く落ち着く可能性があります。
PLLA(Poly-L-Lactic Acid)は 12〜18 か月で吸収されます。スカルプトラなどの皮膚充填剤にも使われる成分で、分解過程でコラーゲン生成を強く促すとされています。ただし、糸の形で顔に挿入した場合の長期効果を追跡したヒト臨床研究はまだ多くありません。効果を断定するにはデータが不十分な状況です。
PCL(Polycaprolactone)は三種類の中でもっとも分解が遅く、一般的に 12〜24 か月と紹介されます。ただしこの数字は、実際の顔で確認された値というよりも実験室レベルに近いものです。生きた顔に挿入して 24 か月後まで効果が残るかを追跡した資料はまだありません。「もっとも長持ちする」という広告コピーは、その点を念頭に置いて聞くのがいいでしょう。
三種類とも最終的には水と二酸化炭素に分解されます。どの素材を選ぶかは、希望する効果の持続期間、肌の状態、施術者の経験を総合して決めます。

コグ糸とスムース糸は何が違うのか?
コグ糸(barbed thread)は糸の表面に小さなかぎ爪がついています。このかぎ爪が皮下組織を捕まえて引き上げるため、たるんだ部位を物理的に持ち上げることが主な目的です。頬のたるみ、ほうれい線の緩和、フェイスラインの修正に多く使われます。
スムース糸(smooth thread)はかぎ爪のない滑らかな糸です。直接引き上げる力はなく、リフトアップ効果はほぼありません。その代わり、挿入時の微細な刺激がコラーゲンとエラスチンの生成を促します。肌密度の改善、小ジワの緩和、全体的なハリの補強を目的とするときに使います。たるみが主な悩みなら、スムース糸だけでは物足りないでしょう。
スクリュー糸(screw thread)はねじれた構造が挿入部位に少しボリュームを加え、軽いリフトアップ効果も同時に出します。目の下のくぼみや頬のボリューム不足の補正に補助的に使われます。
実際の施術では、三種類を組み合わせるケースが多いです。たるみが主な悩みなら、コグ糸をメインにしてスムース糸を補助で加えるのが一般的な構成です。どちらに比重を置くかは、顔の状態、希望する結果、施術当日の肌の弾力を見ながら決めます。

本当に 1 年以上持つのか?
複数の研究をまとめたデータを見ると、施術直後の満足度は約 98% と非常に高い数字でした。それが 6 か月後には約 88% まで下がります。ここで注目すべき点があります。ほとんどの研究が 6〜12 か月の観察期間しか設けていない、ということです。「1年以上持つ」という言葉は、まだデータで確認できている範囲を超えています。
1年を超えて 18 か月、24 か月まで効果が続くかどうかは、ヒトでの確認データが不十分です。PCL の 24 か月も、PLLA の長期効果も、実際の顔で長期追跡した資料は薄いのが現状です。大きな研究が一様に 6 か月を主要エンドポイントとしていることは、それ以降についてはまだよくわかっていないことを示しています。
現実的には、効果は 6〜12 か月の間にピークを迎え、その後は徐々に薄れていくケースが多いです。1〜2 年の間に再施術を受ける方が多い理由もそこにあります。外科的フェイスリフトの持続期間が 7〜10 年であることと比べると、差は明らかです。非手術の選択肢として十分意味のある施術ですが、手術と同等の持続効果を期待して始めると失望する可能性があります。
再施術の周期とコストを最初から想定しておくと、結果への納得感が変わります。

副作用とダウンタイムはどうなのか?
複数の研究を合わせた数字を見ると、腫れは約 35%、内出血は約 26% で発生しました。どちらも針の挿入に伴う反応で、多くは数日から 2 週間以内に落ち着きます。大切な予定の前には、施術のタイミングを余裕を持って設定するのが安全です。
ディンプリング(皮膚の凹み)は全体平均で約 10% に報告されました。年齢によって差があり、50 歳未満では約 5.6%、50 歳以上では約 16% でした。肌の弾力が低いと、糸が引く力に皮膚表面がついていけず、凹む現象が起きやすくなります。多くは一時的ですが、数週間から数か月かかることもあります。
感覚異常は約 6%、感染は約 2%、糸が皮膚表面に出てくる突出は約 2% で報告されました。突出が起きた場合は除去処置が必要です。
日常生活への復帰は通常、施術当日か翌日から可能です。施術後 2 週間ほどは、激しい表情の変化、強くこするマッサージ、飲酒は避けたほうが無難です。糸が定着する前に強い外力がかかると、位置がずれることがあります。うつ伏せ寝も、最初の数週間は控えるのが安全です。

どんな方に向いているのか?
よくある誤解に、たるみがあれば誰でも効果が出る、というものがあります。実際にもっとも適しているのは、軽度から中等度のたるみがあり、手術は希望しない方です。40 代前半から中頃、頬が少し下がり始めたり、フェイスラインがやや不明瞭になってきた時期が、施術のタイミングとして現実的です。
たるみが強い場合や余剰皮膚が多い場合は、スレッドリフトだけで希望の結果を得るのは難しいです。余分な皮膚を物理的に切除しなければならない状態なら、手術のほうがはるかに現実的な選択です。この点はカウンセリングで事前に確認しておくことが重要です。
期待値も最初から合わせておく必要があります。施術直後は引っ張られる感覚がはっきりとありますが、糸が安定してコラーゲン刺激が蓄積されるまでには 3〜6 か月かかります。劇的な変化というよりは自然に少し引き上がった印象、「最近肌がきれいに見える」と言われるくらいが現実的な目標です。
効果が 1〜2 年で薄れるケースが多く、繰り返しの施術が必要になります。手術と非手術の違いを明確に理解した上で始めると、結果への満足度が高まり、不要な失望も防げます。
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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