おでこのボトックスで眉尻だけ吊り上がるスポックブロウ, なぜ起こりどうすれば直るのか
By Dr. Lee1 min read

おでこにボトックスを打って鏡を見たら、眉の内側はそのままなのに外側の端だけツンと吊り上がり、怒っているような表情になってしまうことがあります。この現象はサムライ眉と呼ばれることもあります。スタートレックのキャラクター、スポックの眉に似ていることから、英語ではスポックブロウとも呼ばれます。
戸惑ってしまいますが、多くの場合は施術が失敗したというより、効果が現れる過程で起こるよくある形の変化です。仕組みを知れば、なぜ外側だけ上がるのか、どう少量で調整するのか、どう防ぐのかが整理できます。放っておいても薬の効果が抜けて自然に戻ることもあります。おでこボトックス後に眉の形が不自然になる理由と対処法を、実際の論文をもとにまとめました。

スポックブロウとは何なのか
スポックブロウとは、おでこにボトックスを打った後、眉尻が内側よりも高く吊り上がってしまう形のことを指します。眉がフックのように折れ曲がって上がり、怒っているように見えたり、疑っているような表情、時には意地悪そうな印象を与えたりします。おでこボトックス後によく見られる代表的な形の変化です。
英語圏ではいくつもの呼び方があります。スタートレックのスポックに似ていることからスポックブロウ、オペラ『ファウスト』の悪魔になぞらえてメフィストサインとも呼ばれます。すべて同じ現象を指す言葉です。ほかにも訝しげな眉、驚いた眉と呼ばれることもあります。これほど呼び名が多いということは、それだけよく見られる形だということでもあります。
重要なのは、これは病気ではなく筋肉の力のバランスが一時的にずれた状態だということです。ほとんどの場合、少量の追加注入ですぐに整い、そのままにしておいてもボトックスの効果が抜けるにつれて元に戻ります。ですから鏡を見て驚くよりも、なぜこの形になるのかを知っておけば対処が楽になります。特におでこボトックスが初めての場合は、効果が完全に落ち着くまでの2週間の間に一時的にこの形がよぎることがあるので、前もって知っておくと戸惑いが少なくなります。次にその仕組みを見ていきます。

なぜ外側だけ上がるのか
眉を上に引き上げる筋肉は、おでこ全体を覆う前頭筋ただ1つです。逆に眉を下に引き下げる筋肉は、眉間や目の周りに複数存在します。眉の位置は、この引き上げる力と引き下げる力のバランスによって決まります。
おでこボトックスは前頭筋を緩めておでこの横じわを伸ばす施術です。ところが、おでこの内側中央には十分な量が入って筋肉がしっかり緩む一方、おでこの外側の筋肉には相対的に少なめにしか入らないことがあります。そうなると内側の眉は力が抜けて下がるのに、外側の前頭筋だけは依然として力を発揮し、外側の眉だけを引き上げてしまいます。これがスポックブロウの正体です。
内側が緩みすぎて外側の緩みが足りないという不均衡が原因というわけです。注入ポイントがおでこの外側まで十分に広がっていなかったり、外側への注入が抜け落ちていたりすると起こりやすくなります。人によって前頭筋の形に違いがあるため、起こりやすい人もいます。前頭筋が中央で左右に分かれた形をしている人は、眉が下がりやすかったり形が崩れやすかったりするため、こうした違いまで見て注入位置を決めることが望ましいでしょう。原因がバランスの問題だとわかれば、解決策もバランスを整える方向になるのが自然に理解できます。

どうやって直すのか
解決策は思ったより簡単です。吊り上がった外側の眉の上、つまりまだ力を発揮している外側の前頭筋にボトックスを少量追加すればよいのです。実際の症例では、おでこの最も外側のポイントに左右それぞれ2から4ユニットほどの少量を追加したところ、眉の形が2週間から3週間で正常に戻りました。内側はすでにしっかり緩んでいるので、外側だけを軽く補正するイメージです。
タイミングが重要です。ボトックスは打ってから効果が完全に現れるまで時間がかかります。そのため施術直後の形だけを見て急いで修正するのではなく、約2週間後に最終的な形が落ち着いてから必要な分だけ少量追加するのが標準です。焦って多く入れると、今度は逆に眉が下がってしまうことがあります。
もしすでに下がってしまっている場合、元に戻す薬はありません。ただしボトックスは時間が経てば効果が抜けるため、たいてい数週間のうちに自然に回復します。ですからスポックブロウはほとんどの場合少量の追加注入で整い、最悪のケースでも時間が解決してくれる問題だと考えて大丈夫です。1つ付け加えると、追加の施術も最初に受けたクリニックで続けて診てもらうのがよいでしょう。どこにどれくらい入れたかを把握したうえで調整したほうが、過不足なくバランスを整えられるからです。

どう予防するのか
予防のポイントは、最初からおでこの外側の筋肉まで均等に、適正な量で注入することです。注入ポイントをおでこの外側の端まで十分に広げ、内側と外側の筋肉を一緒に緩めてあげれば、外側の眉だけが代償するように上がってしまうのを防げます。
ここにはバランスがあります。外側を緩めなさすぎるとスポックブロウが生じ、逆に外側にボトックスを入れすぎたり、注入位置が低すぎたりすると、今度は外側の眉が下がってしまいます。そのためとにかく多く入れるのではなく、必要な分だけを均等に入れる感覚が重要です。このバランスの取り方に施術者の熟練度が表れます。
もう1つ実用的なコツは、おでこだけを単独で治療せず、眉間も一緒に治療することです。眉間の引き下げる筋肉とおでこの引き上げる筋肉のバランスが取れると、眉が下がるリスクが減ります。実際おでこボトックスは、眉間も一緒に治療することを前提に承認された施術です。特に年齢が上がってくるとこのバランスがより重要になります。前頭筋に頼ってまぶたを持ち上げていた人は、おでこだけを強く緩めると目が重たく感じやすくなるため、用量を控えめにして眉間も一緒に診てもらうアプローチのほうが安全です。

眉の下垂とまぶたの下垂は違うのか
ボトックス後の下垂には2種類あり、区別が必要です。1つは眉の下垂です。眉自体が元の位置より下がってしまうもので、眉を引き上げる前頭筋が弱くなることで起こります。もう1つはまぶたの下垂です。上まぶたが下がって目が小さく見えるもので、ボトックスがまぶたを持ち上げる筋肉まで広がってしまったときに起こります。主に眉間への注射が内側すぎたり深すぎたりしたときに現れます。
この2つを見分ける簡単な方法があります。手で眉を軽く上に持ち上げてみて、下がっていたまぶたが改善すれば眉の下垂、それでもまぶたが依然として下がっていれば本当のまぶたの下垂です。
どちらの場合も解毒剤のようなものはありませんが、ボトックスの効果が抜けるにつれて時間とともに回復します。まぶたの下垂はたいてい数週間、眉の下垂はもう少し時間がかかる傾向があります。まぶたの下垂がひどくて気になる場合は、まぶたの筋肉を一時的にサポートする点眼薬を使うこともありますが、多くは時間が経てば自然に良くなります。ここまで見てきたスポックブロウは、この2つと違って下垂ではなく外側が上がりすぎているケースなので、少量の追加ボトックスでバランスを整えればよいのです。
3つを一覧で区別すると次のとおりです。
| 区分 | どんな形 | 原因 | 対処 | 回復期間 |
|---|---|---|---|---|
| スポックブロウ | 眉尻だけが上がる | 外側の前頭筋の緩みが不足 | 外側に2〜4ユニット追加 | 追加注入後2〜3週間 |
| 眉の下垂 | 眉全体が下がる | 前頭筋が緩みすぎる | 時間の経過を待つ | 約6週間 |
| まぶたの下垂 | 上まぶたが下がる | ボトックスがまぶたの筋肉まで広がる | 時間の経過, 必要に応じて点眼薬 | 3〜4週間 |

時間が経てば元に戻るのか
多くの場合、時間が経てば自然に元へ戻ります。ボトックスは打ってから3日から5日で効果が現れ始め、約2週間でピークに達し、3か月から4か月かけて徐々に効果が抜けていきます。スポックブロウが起きても、そのままにしておけば効果が抜けるにつれて筋肉の力のバランスが元どおりになります。
そのため対処法は2つに分かれます。早く整えたいなら、2週間ほど経って形が落ち着いたときに外側へ少量を追加してバランスを取ればよく、急がないなら数か月待って自然に回復させてもかまいません。どちらにしても永久に残る問題ではありません。次に同じ部位を治療するときに外側まで均等に注入すれば、同じことが繰り返される可能性も減らせます。
スポックブロウが心配なら、最初の施術でおでこの外側まで均等に注入して眉間も一緒に治療すること、そして2週間後にもう一度状態を見て、必要なら少量補正することを覚えておけば大丈夫です。よくあることですが、たいていは軽く整えられる形の変化なので、怖がるよりも仕組みを理解して臨むほうが安心です。最初の施術のときに希望する眉の雰囲気をあらかじめ伝えておけば、それに合わせて注入位置を決めてもらえます。眉の形に違和感があるなら、施術を受けたクリニックに相談してもう一度診てもらうのが最も確実です。
この記事は参考になりましたか?
About this article
診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
Read next

おでこと眉間のボトックス、どの筋肉に何ユニット入れるか、効果の持続期間と副作用まで
おでこと眉間のボトックスがそれぞれどの筋肉を対象にするか、なぜおでこだけ打つと眉毛が下がるのか、部位ごとの標準ユニット数、効果が現れる時期と持続期間、眉毛下垂といった副作用まで、実際の論文データをもとに説明します。
By Dr. Lee

エラ・僧帽筋・ふくらはぎのボトックス、部位別の効果・用量・持続期間を整理
エラ張り・僧帽筋・ふくらはぎへのボトックスが筋肉をどう減らすのか。部位ごとの減少率や用量の違い、持続期間、そして大きな筋肉ならではの副作用と注意点を実際の論文データで分かりやすく整理します。
By Dr. Kim

横に走る首のしわのフィラー, なぜBelotero Softのようなやわらかいフィラーを浅く使い, 何回かに分けて打つのか
首を横切る横じわをフィラーで満たすとき, 顎や頬に使う硬めのフィラーではなくBelotero Softのようなやわらかいフィラーを浅く少量使うべき理由, 持続期間や施術回数, チンダル現象と安全性はどうなのかを実際の論文をもとに分かりやすくまとめます。
By Dr. Kim