リジュランの効果と副作用|サーモンDNA由来のPDRN注射が肌細胞を目覚めさせる仕組みとエビデンス
By Dr. Kim1 min read

サーモン由来のDNAを顔に注射すると聞いて、驚く方は少なくないと思います。ところが「リジュラン(Rejuran)」という名前でよく知られるこの施術は、韓国をはじめアジア全域の美容医療で急速に注目を集め、日本でも「サーモン注射」「PDRN注射」として検索されることが増えました。患者さんから最もよく聞かれるのも、ほぼ同じ質問です。本当に効果があるのか、ヒアルロン酸やボトックスとどう違うのか、サーモンのDNAが肌でいったい何をしているのか、そして自分に合う施術なのか——という疑問です。
この注射の核心成分はPDRN(Polydeoxyribonucleotide、ポリデオキシリボヌクレオチド)と呼ばれる物質です。根拠のない美容ブームで広まったのではなく、作用機序と臨床エビデンスがしっかり積み上がっている成分でもあります。そのエビデンスがどこから来ていて、どこまで信頼できるのかを整理したうえで、どのような方に向いているのか、効果はいつ・どのように現れるのかを、医療者の視点からひも解いていきます。

リジュランとはどんな注射なのか
写真の製品はすべて同じシリーズです。リジュランは韓国のファーマリサーチ(Pharma Research)が開発したPDRN系注射剤のブランド名で、有効成分のPDRNはサーモンやマスの精子細胞から抽出したDNA断片です。よく混同されるPN(ポリヌクレオティド)も同じサーモンDNA由来ですが、PDRNはそれよりも鎖が短い断片と理解してください。短い断片は細胞表面の受容体を刺激する薬理作用に、長い鎖は真皮で水分を保持する構造的役割に、それぞれより深く関わっています。
ヒアルロン酸フィラーとの違いはここに集約されます。フィラーは凹んだ部分を物理的に埋めてボリュームをつくる施術です。PDRN注射はボリュームを補充するのではなく、皮膚自身がコラーゲンを産生し、毛細血管を新たに形成できるよう細胞を刺激する施術です。外から補填するのではなく、肌の内側にある再生スイッチを入れるイメージに近く、だからこそ結果は施術直後ではなく、数週間かけて徐々に現れます。
日本でも美容クリニックで「PDRN注射」「サーモン注射」として提供されており、同じPDRNを医薬品として創傷治療に用いる製剤も存在します。同じ成分が用途によって異なる文脈で使われている形です。PDRNは時間とともに核酸単位まで自然分解・吸収されますが、原料がサーモンである以上、アレルギーリスクがゼロというわけではなく、この点は後述します。同じサーモンDNA系でも分子サイズや適応部位によってHealerシリーズ、HB、アイ(Eye)、Sなどラインナップが分かれています。

皮膚の細胞では何が起きているのか
上のグラフは、ヒト真皮線維芽細胞を培養してPDRNを直接添加し、48時間後に細胞がどれだけ増えたかを調べた試験管内実験の結果です。横軸の100%が何も処理しない対照群の基準値で、PDRN濃度を12.5から200へ段階的に上げていくにつれて棒グラフが伸び、最高濃度では約130%まで増殖が高まりました。濃度が上がるほど細胞が活発に分裂したことを示しています。
PDRNがこの働きをする経路がアデノシンA2A受容体です。細胞表面にある一種のシグナルスイッチで、PDRNがここを刺激すると線維芽細胞が活性化してコラーゲンを産生し、VEGFなどの成長因子が分泌されて毛細血管が新生されます。皮膚に栄養と酸素を届けるルートが増えるということです。
興味深いのは材料の由来です。分解されたDNA断片がそのまま消えるのではなく、身体が新たな核酸を合成する際の材料として再利用される経路も働きます。空の容器を満たすだけでなく、素材まで供給する仕組みです。さらにPDRNには慢性的な皮膚炎症を抑える作用もあるため、紫外線やニキビの炎症で敏感になった肌では再生と鎮静が同時に起きやすく、患者さんが「肌が生き返った感じ」と表現される変化の背景にはこのプロセスがあります。

本当にコラーゲンが増えるのか
細胞が活性化することはわかりました。では実際にコラーゲンが増えるのか、という疑問が次に来ます。上のグラフは、PDRNを投与した創傷とそうでない創傷で新生コラーゲン量を比較した動物実験の結果です。無処置を1.0倍として、7日目にはI型コラーゲンが1.36倍、皮膚再生の初期に重要なIII型コラーゲンは3.07倍まで増加しました。棒グラフが基準線を大きく超えていることが一目でわかります。
III型コラーゲンが顕著に増えた点には意味があります。III型は再生初期に先行して形成される未熟なコラーゲンで、時間をかけてより強固なI型へと成熟していきます。初期のIII型が約3倍に増えたということは、皮膚再生の最初のステップが活発に動き出したサインと読み取れます。
作用の方向も一方通行ではありません。ある細胞実験では、PDRNが線維芽細胞のERKシグナルを活性化してI型・III型コラーゲンの産生を増やす一方で、コラーゲンを分解する酵素であるMMPは減少させることが確認されました(Shin et al., 2023)。つくる側を高め、壊す側を抑えるということです。皮膚のコラーゲンは常に産生と分解のバランスで成り立っていますが、加齢とともに分解側に傾いていくこの天秤を、PDRNが産生側へ戻してくれます。
ただし、ここまでは細胞と動物段階のエビデンスであることを明確にしておきます。実際のヒトの顔でコラーゲンがどれだけ増加したかを組織で直接確認した大規模研究は、まだそれほど多くありません。作用機序と動物データは方向性を示していますが、それがヒトの皮膚でどの程度の大きさで現れるかは、次の段落でご紹介する臨床エビデンスで確認していきます。

効果はどこまで科学的に証明されているのか
PDRNの最も強固な臨床エビデンスは、意外にも美容ではなく創傷治療の領域にあります。上のグラフは、なかなか治らない糖尿病性足部潰瘍の患者を対象にした二重盲検試験の結果です。8週時点で創傷が完全に治癒した割合は、PDRN注射群で37.3%、プラセボ群で18.9%と、ほぼ2倍の差が出ました(Squadrito et al., 2014)。同じ試験では創傷表面が新生皮膚で覆われる割合もPDRN群82%に対してプラセボ群49%と明らかに高く、完全治癒までの平均日数もPDRN群30日、プラセボ群49日と短縮されました。
この研究が重みを持つ理由は規模とデザインにあります。参加者は216名で、患者も医療者もどちらが本物の薬かわからない状態で実施されました。期待や偶然では説明しにくい結果です。変形性膝関節症患者を対象とした複数の研究をまとめたメタアナリシスでも、PDRN注射の疼痛軽減効果が確認されています。
重要なのは作用機序が共通しているという点です。創傷を治癒させ炎症を鎮めていたA2A受容体経路が、加齢で再生力が落ちた皮膚に応用されたのがリジュラン系注射です。ただし一点、正直にお伝えしなければなりません。創傷や関節で積み上がったこの強固なエビデンスと比べると、美容目的の注射に関する大規模比較試験はまだ十分ではありません。原理は明確で小規模研究の方向性も一致していますが、数百人規模の美容臨床試験はようやく出始めた段階です。

実際に肌や瘢痕に効果はあるのか
皮膚領域の実際のデータも確認しておきましょう。上のグラフは、ニキビ瘢痕に16週間注射した後、瘢痕スコアがどれだけ改善したかを示した結果です。PDRN単独で6.1点、ボツリヌス毒素(ボトックス)単独で9点、両者を組み合わせた場合に12点と改善幅が最大になりました(Park et al., 2025)。PDRN単独の改善幅が最も小さい点がむしろ目を引きます。PDRNは単独で全てを解決するというより、他の施術と組み合わせたときに相乗効果を発揮しやすい性質を持つことを示す結果です。
ただし被験者が17名という小規模なオープン試験ですので、この数字だけで結論を断定するのは時期尚早です。肌の弾力やキメ、毛穴を評価した他の小規模研究も総じて改善方向を示していますが、測定方法や規模がまちまちで一口にまとめるのは難しい状況です。目尻の小じわを追跡したある研究では、8〜10週で最もしわの深さが減少した後、18週時点で一部が戻る傾向も観察されており、効果が一度で固定されるものではなく、定期的な施術を続けることで維持できるものであることを示唆しています。
期待値は現実的に設定されることをお勧めします。PDRN注射は一度で劇的な変化をもたらす施術ではなく、肌のベースコンディションをじっくり底上げしていく施術に近いものです。深く凹んだ瘢痕や輪郭のたるみを一気に補正したいなら別の施術の方が向いています。肌のトーン、小じわ、瘢痕の質感を全体的に整えたいという場面で強みが際立ちます。何をしてくれる施術なのかを正確に理解してから始めると満足度が高く、漠然と大きな変化を期待して始めると物足りなさを感じやすいでしょう。

どのような方に向いているのか
実際の診療で、この施術が特に合うと感じる方がいます。まずニキビが落ち着いた後に残る浅い瘢痕や、開いた毛穴、ざらついた肌のキメが悩みの方です。PDRNが真皮の再生を促す性質から、表面を削る施術とは異なるアプローチで肌の底質を引き上げる点で強みがあります。細かい小じわや、ハリがなくくすんだ肌も良い適応です。
目元も施術を希望される方が多い部位です。目の下の皮膚は顔の中で最も薄く扱いが難しいのですが、特に血流のよどみで青みがかって見えるタイプの血管性クマには、PDRNが毛細血管を新生する作用が合う場合があります。ただし色素が原因の茶色いクマとは性質が異なりますので、自分のクマのタイプを見極めることが先決です。紫外線に長くさらされてきた肌、施術を繰り返して敏感に傾いた肌、コラーゲンと弾力が同時に落ち始める30代後半から50代の肌とも相性が良いです。
一方で、この施術だけでは難しいケースも率直にお伝えしています。頬のボリュームが失われた部分を補いたい場合はジュビダーム(Juvederm)やレスタイレン(Restylane)といったヒアルロン酸フィラーが適しており、深いしわやたるみが主な悩みであればレーザーやリフティング系の施術を組み合わせる方が結果に結びつきます。PDRN注射はそれらの施術と競合するというより、肌のベースを整えることで他の施術の効果も底上げするサポート役に近いと理解していただくといいでしょう。

効果はいつから、どのくらい続くのか
最もよく聞かれるのが「いつ効果が出るのか」という質問です。PDRN注射は施術直後に変化が現れるものではありません。細胞が目覚めてコラーゲンを産生し、毛細血管が定着するまでに時間がかかるため、多くの場合4〜6週間ほどで変化を実感し始めます。その後2〜3か月で効果がピークに達し、半年程度かけて緩やかに落ち着いていく経過をたどります。
実感の順番も知っておくと参考になります。まず肌のキメが整い、内側からうるおいとツヤが増したように感じる変化が先に来て、瘢痕や弾力など構造的な変化はそれより後からゆっくりついてくることが多いです。鏡の前ですぐに変わることを期待するより、1〜2か月かけてコンディションが上がってくるイメージで受けていただく方が正確です。反応の速さと幅には個人差も大きく、同じ回数を受けても変化をはっきり感じる方もいれば、じわじわと変わっていく方もいます。1〜2回で評価を決めるより、設定された回数のシリーズを完了してから判断されることをお勧めします。
そのため1回で終わりにするより、通常は4週間隔で3〜4回を連続して受けます。シリーズで受けることでコラーゲンと毛細血管が一層一層積み重なり、効果が鮮明になって持続も長くなります。効果を長く保ちたいなら、施術と同じくらい日常のケアも大切です。コラーゲンを損なう最大の要因が紫外線ですので、日頃の日焼け止めの徹底と禁煙・節煙を続けるだけで、施術の効果がより長く維持されます。定期的に続けていくメンテナンス型の施術と捉えていただくのが適切です。

施術はどのように受け、何に注意すべきか
施術の方法は、顔全体に非常に細い針で数十から数百か所の点状注射を繰り返す手法です。麻酔クリームをしっかり塗布してから行うため痛みは許容範囲内で、時間も30〜40分ほどで終わります。施術直後は点状の小さな内出血や膨らみが見られることがありますが、多くは3〜4日で落ち着きます。人前に出る予定がある方は、その点を考慮して日程を組まれるとよいでしょう。
注意事項もしっかり把握しておいてください。最初に確認すべきは、原料がサーモンであることです。魚介類アレルギーがある方は蕁麻疹などの過敏反応リスクがあるため、施術前に必ず医療者に申告してください。抗凝固薬を服用中の方、内出血が出やすい方、ケロイド体質の方も事前にお伝えいただく方が安全です。妊娠中、または施術部位に炎症・感染がある場合は施術を避ける必要があります。よくある副作用は腫れと内出血で、まれに注入部位に小さな結節が触れることがあります。
施術当日は濃いメイク、サウナ、激しい運動、飲酒を控える方が回復に良いです。最後に一点だけお伝えします。PDRN注射は作用機序とエビデンスに裏打ちされた施術ですが、誰にでも同様に効くわけではありません。ご自身の肌の状態、アレルギーや既往歴、そして期待する変化がこの施術と合っているかを一緒に検討したうえで、効果と限界の両方をご理解いただいてから、医療機関での診察を経て始めることをお勧めします。
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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