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レディエッセの効果と副作用——CaHAスキンブースターが首・デコルテのコラーゲンを増やすしくみ

By Dr. Lee1 min read

首や手の甲のように皮膚が薄い部位は、加齢の影響が最初に現れます。顔のケアを続けていても、首に横ジワが刻まれたり手の甲の腱が浮き出てきたりすると、実際の年齢より老けた印象になりがちです。そういった部位への使用が年々増えているのがレディエッセ(Radiesse®)という注射剤です。主成分はCaHA——カルシウムハイドロキシアパタイト(炭酸アパタイト)と呼ばれる物質で、もともと私たちの骨や歯を構成しているカルシウム系の素材と同じ仲間なので、体にとって決して異物ではありません。レディエッセは注射直後に即時ボリュームをもたらしながら、同時に皮膚が自らコラーゲンを新しく産生するよう促す、二つの働きを持っています。とくに希釈して使うと、ボリューム補填よりも皮膚全体のキメやハリを引き上げるスキンブースターとして機能します。何をしてくれる注射なのか、どれほどのエビデンスが積み上がっているのか、ほかのコラーゲン増生剤とは何が違うのかを、医療者の立場から順にみていきます。

レディエッセ製品ボックスとシリンジ

レディエッセとはどんな注射なのか

レディエッセは、ごく小さなカルシウムの微小球がゲル状のキャリアに混在している注射剤です。注射するとゲルが即座にボリュームをつくって凹んだ部位を埋め、時間が経ってゲルが吸収された後は微小球が真皮に留まって線維芽細胞を刺激します。この刺激によって皮膚がコラーゲンをつくり始め、微小球も1年程度かけてカルシウムとリン酸塩に分解されて自然に消えていきます。即時の充填と段階的なコラーゲン産生——この二つが同時に起きる点が核心です。

ここで希釈すると、製剤の性格が変わります。生理食塩水や麻酔薬で数倍に薄めたレディエッセはボリュームをつくる力が下がる一方、広い面積に均一に広がってコラーゲン刺激と皮膚弾力の改善に集中するようになります。このように希釈して使う方法をハイパーダイリュート(Hyperdilute)と呼び、首やデコルテ、手の甲のような薄くて広い部位のスキンブースターとして主に用いられます。

同じコラーゲン刺激系の製剤でも、それぞれ位置づけが少し異なります。スカルプトラ(Sculptra®)は即時ボリュームがほぼなく、ゆっくりとコラーゲンだけを刺激することに特化しており、持続期間が長いのが強みです。ジュベルック(Juvelook)は即時ボリュームとコラーゲン刺激の両方を狙う中間的な性格です。リジュラン(Rejuran®)はボリュームよりも皮膚再生と保湿に近く、キメやトーンの改善に向いています。レディエッセはこの中で、即時ボリュームとコラーゲン刺激を両立しながら、とくに首・デコルテ・手の甲といった部位で最も多くの臨床エビデンスを積み上げてきた注射と理解しておくとよいでしょう。

安全性の面でも、発売から長い歴史を持つためデータが厚く積み重なっています。微小球がカルシウムとリン酸塩——もともと体内にある成分——に分解されて吸収されるため、異物が永続的に残ることがありません。ただし、一度注射するとヒアルロン酸フィラーのように溶解剤で即座に元に戻すことが難しい点は、あらかじめ理解しておく必要があります。そのため、どこにどれだけ、どの濃度で注入するかを最初に正確に設計することが何より重要です。

この働き方を医学では「バイオスティミュレーター(生体刺激剤)」——すなわち体が自らコラーゲン組織をつくるよう促す物質——と呼びます。微小球が真皮に定着すると、体はそれを処理・包み込む対象として捉え、周囲に線維芽細胞を集めます。外からコラーゲンを注入するのではなく、体がコラーゲンをつくる理由を与えるわけです。同じバイオスティミュレーター系のスカルプトラがコラーゲン刺激に特化しているのに対し、レディエッセはそこに即時ボリュームを加えた形といえます。

希釈の割合も目的によって変わります。コラーゲン刺激とキメの改善が主目的の首・デコルテには2〜3倍以上に薄めて使い、ある程度のボリューム感まで求める場合は希釈を少なくします。同じ製剤でも希釈の程度によって、ボリュームを補うフィラーとしても、皮膚を整えるスキンブースターとしても使えるのがレディエッセの特徴です。

レディエッセ注射後2か月で測定した新生コラーゲンの比率。施術した皮膚では新しく生成されたⅢ型コラーゲンが34.4%に対し、未施術の皮膚は1.8%にとどまりました。5名の組織生検によって直接確認した結果です。(Zerbinati ら、Clin Cosmet Investig Dermatol 2018)
レディエッセ注射後2か月で測定した新生コラーゲンの比率。施術した皮膚では新しく生成されたⅢ型コラーゲンが34.4%に対し、未施術の皮膚は1.8%にとどまりました。5名の組織生検によって直接確認した結果です。(Zerbinati ら、Clin Cosmet Investig Dermatol 2018)

コラーゲンは本当に新しく作られるのか

上のグラフは、レディエッセを注射した皮膚とそうでない皮膚を2か月後に組織生検で比較した研究です。棒グラフをみると、施術した皮膚では新しく生成されたⅢ型コラーゲンの比率が34.4%まで上昇しているのに対し、未施術の皮膚は1.8%にとどまっています。Ⅲ型コラーゲンは皮膚が再生を始める際に最初に敷かれる新しい線維なので、この比率が高いことはコラーゲンが活発に新生されているサインです。ただし参加者が5名という小規模の組織研究のため、数値そのものよりも方向性を示すエビデンスとして捉えるのが正確です。

こうして作られたコラーゲンは時間とともに成熟します。別の組織研究では、施術後4か月ごろに柔らかいⅢ型コラーゲンが最も多くなり、7か月になるとより硬いⅠ型コラーゲンへと置き換わり、同時期に弾力を担うエラスチンや皮膚に栄養を届ける微小血管も増加しています。単純に凹みを埋めるフィラーとは異なり、レディエッセが皮膚の構造そのものを再構築するよう働くことを示している点です。

実際の数値でもこの流れが確認されています。別の組織研究では、Ⅲ型コラーゲンスコアが施術前の2.38から4か月後には5.26へと2倍以上に上昇し、より硬いⅠ型コラーゲンは7か月後に最大値に達しました。同時期にエラスチンと微小血管の指標も揃って増加しています。コラーゲンだけを増やすのではなく、皮膚の弾力線維と栄養環境まで合わせて回復させる点が、単純な充填材とレディエッセを分ける特徴です。

Ⅲ型とⅠ型コラーゲンの関係は建設工事に例えると分かりやすいでしょう。Ⅲ型は工事初期に素早く組まれる仮設の骨組みのようなもので、量は多いものの柔らかいのが特徴です。時間が経つにつれてこの骨組みが、より硬い鉄筋——Ⅰ型コラーゲン——に置き換えられ、構造が強固になっていきます。レディエッセ施術後、数か月をかけて変化がはっきりしてくるのは、この仮設骨組みが強固な構造へと入れ替わる時間が必要なためです。

この2段階の成熟がなぜ重要かというと、効果が長続きする理由がここにあるからです。最初に敷かれた柔らかいコラーゲンが硬いコラーゲンへと変わって定着すれば、微小球がすべて分解された後もそのコラーゲンが残って効果を支えます。そのためレディエッセの効果は施術直後のボリュームではなく、数か月かけて増え、固まっていく自分自身のコラーゲンから生まれると理解するのが正確です。

高希釈レディエッセで首を施術後4か月時点での改善患者割合。総合評価で90.9%、横ジワで86.4%、首のたるみで81.8%が1段階以上改善しました。22名を対象とした研究です。(Trindade de Almeida ら、2023)
高希釈レディエッセで首を施術後4か月時点での改善患者割合。総合評価で90.9%、横ジワで86.4%、首のたるみで81.8%が1段階以上改善しました。22名を対象とした研究です。(Trindade de Almeida ら、2023)

首・デコルテへの効果はどれほどか

レディエッセが最も力を発揮する部位が首です。上のグラフは、高希釈レディエッセで首を施術した後4か月時点での改善患者の割合をみた研究です。総合的な改善評価で90.9%、横方向に刻まれる首の横ジワで86.4%、たるんだ首の弛みで81.8%の患者が1段階以上改善しました。同じ研究で施術を受けた方の82%が結果に「非常に満足している」と回答しています。大多数の患者が明確な変化を実感したと読んでいただいて差し支えありません。

首が良い適応部位である理由があります。首は皮膚が薄く常に動く部位なので顔より早く下垂してシワが刻まれますが、ボリュームを補うフィラーを使うと不自然になりやすいのです。一方、高希釈のレディエッセはボリュームよりもコラーゲン刺激とキメ改善を主体に働くため、首のように自然さが大切な部位にフィットします。デコルテや手の甲も同じ原理で用いられます。

少し補足すると、首は老化に対して特に脆弱な構造を持っています。顔より皮膚が薄く真皮のコラーゲン量が少ない上に、皮脂腺が少なく乾燥しやすく、話したり頭を動かしたりするたびに絶えず折り曲げられています。ここに紫外線が加わると、横ジワとたるみが急速に刻まれます。つまり首は薄く、乾燥しやすく、常に動く部位なので、ボリュームで埋めるよりも皮膚の土台自体を厚くしっかりさせるアプローチのほうが合っています。

ほかの部位のエビデンスも積み上がっています。複数の臨床をまとめた分析では顔の総合改善率が90%前後と報告され、フェイスラインでは施術数か月後にほぼすべての患者が1段階以上改善しました。手の甲を施術した研究では、皮膚グレードが施術前の3点台から約1点分明確に改善しました。手の甲は腱や血管が目立って年齢が現れやすい部位ですが、皮膚自体が厚くなることでその凹凸が滑らかになります。首や手の甲のような薄くてよく動く部位で一貫した効果が認められている点が、レディエッセのスキンブースターとしてのエビデンスを確かなものにしています。

デコルテ——つまり胸の上部——もよく施術される部位です。横向き寝の習慣や紫外線によって縦ジワが入りやすく、皮膚が薄いためアプローチが難しい箇所です。高希釈レディエッセはこの部位にもコラーゲンを補い、小ジワとキメを整えます。ただし部位ごとに皮膚の厚みや動きが異なるため、同じ製剤でも部位に合わせて希釈度と注入深度を調整することが自然な結果につながります。

レディエッセ施術4か月後に超音波で測定した首の真皮厚増加。部位によって9.6%から23%厚くなり、平均14.9%増加しました。22名を超音波で計測した結果です。(Trindade de Almeida ら、2023)
レディエッセ施術4か月後に超音波で測定した首の真皮厚増加。部位によって9.6%から23%厚くなり、平均14.9%増加しました。22名を超音波で計測した結果です。(Trindade de Almeida ら、2023)

皮膚の内側は本当に厚くなるのか

見た目の変化の下で皮膚が実際に厚くなるかどうかも確認されています。上のグラフは同じ首の研究で超音波を用いて真皮厚を測定した結果で、部位によって9.6%から最大23%厚くなり、平均14.9%の増加でした。目視による主観的評価ではなく超音波で測った客観的な数値なので、皮膚自体が充実してくることを明確に示しています。薄くなった首の皮膚が再び厚くなれば、小ジワが刻まれにくくなり弾力が戻ってきます。

興味深いのは部位によって変化の幅が異なった点です。首の上部でもっとも大きく厚くなりましたが、同量を注射しても元の皮膚の状態やたるみの程度によって反応が違うことを意味します。そのため、どの部位にどれだけ注入するかを一人ひとりに合わせて設計することが結果を左右します。真皮厚が増加したという客観的エビデンスと先の患者満足度が同じ方向を示している点で、首のスキンブースターとしてのレディエッセの効果は比較的しっかりと裏づけられています。

真皮が厚くなることがなぜ重要かも触れておきましょう。真皮は皮膚の弾力と厚みを支える層ですが、加齢とともにこの層が薄くなると皮膚が紙のようになり、小ジワが入りやすく光をきれいに反射しなくなります。この層が再び厚くなれば、同じシワでも浅く見え、皮膚が光をはらんだように滑らかな印象になります。超音波で計測した14.9%という数字が、鏡の前で皮膚がふっくらしてきたように感じられる理由がここにあります。

真皮が厚くなるプロセスは、先に見たコラーゲンの変化と一つの流れでつながっています。微小球が線維芽細胞を目覚めさせ、その細胞がコラーゲンとエラスチンを新しく産生することで真皮が満たされていくのです。そのため変化が施術直後ではなく2〜3か月かけて徐々に現れ、それだけ結果も自然に感じられます。ただしこの研究も22名規模のため、数値そのものよりも客観的計測と患者評価が同じ方向を向いている点に意義を置くのが正確です。

レディエッセ製品ボックス

効果の持続期間とほかのブースターとの違い

持続期間はレディエッセの強みの一つです。初期のボリューム効果は1年程度で、その間に産生されたコラーゲンが残って効果を支えるため、通常12〜18か月ほど維持されます。長期追跡研究では施術から30か月後も40%が改善を維持し、3年間の追跡で結節や肉芽腫のような重大な問題は一件も認められませんでした。コラーゲンを新生する施術のため効果が比較的長続きする点が強みです。

ほかのコラーゲン増生剤との違いを整理すると次のようになります。スカルプトラは即時ボリュームがほぼない代わりに2年以上続く長い持続が強みで、ジュベルックは即時ボリュームとコラーゲン刺激を合わせ持つ中間的な性格です。リジュランはボリュームよりも皮膚再生と保湿に特化していて、キメとトーンの改善に近い働きをします。一般的なヒアルロン酸フィラー(ジュビダーム®やレスチレン®など)はコラーゲン刺激なしに即時ボリュームのみを補い、比較的早く分解されます。

一つの概念を明確にしておくと、フィラーとコラーゲン増生剤は目的の異なる施術です。フィラーは今この瞬間に凹んだ場所を埋める施術であり、レディエッセのようなバイオスティミュレーターは時間をかけて皮膚自身が満たされるようにする施術です。そのため即時変化の大きさだけで比べればフィラーが上ですが、皮膚そのものの質を変えるという点ではバイオスティミュレーターは別の価値があります。どちらが正しいというより、求めるものが即時のボリュームなのか、時間をかけて改善される皮膚の土台なのかによって選択が変わります。

レディエッセの立ち位置は明確です。即時ボリュームとコラーゲン刺激を同時に持ちながら、とくに首・デコルテ・手の甲のような薄くて広い部位で最もエビデンスが充実している注射です。そのため「どこを、どのように引き上げたいか」によって選択が分かれます。顔の深いボリューム回復が目的なら別の選択がよい場合もあり、首や手の甲の全体的なハリとキメの改善ならレディエッセが強みを発揮します。

効果がゆっくり積み上がり長続きする分、施術計画も長期的に考えるほうが合理的です。通常は1回注射した後、コラーゲンが充実してくる数か月を見守り、部位と目標に応じて1〜2回追加することもあります。やみくもに頻繁に受けるのではなく、変化が定着する時間を与えてから次の施術を決めるのが合理的です。効果を長く維持するためには施術と同じくらい日頃のUVケアが重要で、紫外線は新しく作られたコラーゲンも速やかに破壊するためです。

費用と回数も事前に知っておくといいでしょう。部位や希釈方法、使用量によって費用は変わり、効果がゆっくり現れる施術なので1〜2週間で判断するよりも2〜3か月の変化を見て評価するほうが合理的です。施術後の写真を残しておくと、じわじわと進む変化を客観的に比較する際に役立ちます。

レディエッセのシリンジを使った施術の様子

向いている人・注意すべきこと

レディエッセが合う場合は、首やデコルテ、手の甲の皮膚が薄くなり小ジワとたるみが気になり始めた方です。メスを使わずにその部位の皮膚自体を厚くしっかりと蘇らせたい場合、そして施術直後からある程度の変化も求めている場合に強みがはっきりしています。フェイスラインや頬のようなコラーゲン刺激で輪郭を引き締めたい部位にも用いられます。

逆に合わない場合もはっきりしています。唇のように動きが多く粘膜に近い部位は結節のリスクが高いため、レディエッセはお勧めしません。実際に結節は主に唇で報告されており、首・デコルテ・手の甲のようなスキンブースター部位での発生率はずっと低くなっています。また顔の深く大きなボリュームをはっきり補うことが目的であればヒアルロン酸フィラーのほうが適しています。

副作用を整理すると、重篤な有害事象は1%未満と非常にまれで、最も注意すべきは結節です。十分に希釈して均一に広げて注入することで結節のリスクは大きく下がります。そのほか一時的な腫れやあざ、痛みが数日間出ることがあり、通常は自然に落ち着きます。まれではありますが、薬剤が誤って血管内に入ると皮膚壊死や視力低下のような重篤な合併症が生じる可能性があるため、顔の血管解剖を熟知した医療者のもとで受けることが何より大切です。一度注射するとヒアルロン酸フィラーより溶解して元に戻すことが難しい点も知っておいてください。そのため希釈濃度・注入深度・部位の選択が結果と安全性を大きく左右する施術であり、効果と限界を両方理解した上で、経験豊富な医療機関できちんとカウンセリングを受けてから始めることをお勧めします。

施術自体は、高希釈した薬剤を細い針または先端が丸いカニューレで真皮層に均一に広げて注入する方法で行います。一か所に集中させず広く分散して入れ、施術後に軽くマッサージして均一に広げることが結節を減らす鍵です。妊娠中の方、施術部位に炎症・感染がある方、ケロイド体質の方、血液をさらさらにする薬を服用中の方は、施術前に必ず医療者に申告してください。何が期待でき、何は難しいかを十分に相談してから始めれば、結果への満足度がぐっと高まります。

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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。

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