ニキビ跡が茶色く残る炎症後色素沈着の原因と、少しずつ薄くなっていく回復の仕組み
By Dr. Kim1 min read

ニキビ自体はすっかり治っているのに、その場所にだけ茶色い跡が長く残ってしまう。そんな経験をしている方は少なくありません。鏡を見るたびに気になり、メイクで隠してもなかなか消えず、もどかしいという声もよく聞きます。
この茶色い跡の正式な名前は炎症後色素沈着です。炎症が過ぎ去った場所に色素、つまりメラニンが過剰にたまることで生まれる痕跡です。なぜよりによって茶色になるのか、なぜ短くて6週間、長ければ14か月もかかってようやく薄くなるのか、その仕組みを一つずつ見ていきましょう。
炎症が治まっても、なぜ茶色い跡が残るのでしょうか
肌の中にはメラニンを作る細胞があります。これをメラノサイトと呼びます。普段は紫外線を浴びたときだけ少しずつメラニンを作る、いわば静かな細胞です。
ところがニキビのような炎症が起きると話は変わってきます。炎症が起きた場所からは、さまざまな信号物質が放出されます。この信号物質が近くのメラノサイトを何度も刺激し続けるのです。まるで隣でずっとノックをされ続けているようなものだと考えるとイメージしやすいでしょう。
刺激を受けたメラノサイトは、普段よりもずっと多くのメラニンを作り出します。こうして増えたメラニンが肌の浅い層と深い層に散らばって蓄積し、茶色い跡として目に見えるようになるのです。つまり炎症そのものではなく、炎症が去ったあとに残された過剰なメラニンこそが、この跡の正体というわけです。
赤い跡と茶色い跡は何が違うのでしょうか
ニキビが治った直後は、跡が赤く見えることが多いものです。この赤みは色素ではなく、炎症によって拡張した毛細血管が透けて見えているだけです。指で押したときに一瞬色が薄くなり、離すとまた赤くなるようなら、この毛細血管による跡である可能性が高いといえます。
時間が経つとこの赤みが茶色に変わったり、最初から茶色として現れたりすることもあります。このときが、先ほど説明したメラニン色素が蓄積していく段階です。押しても色が変わらず、茶色や濃い茶色に見えるのが特徴です。
この二つの跡は原因が異なるため、消えるスピードもケアの方法も違ってきます。毛細血管による赤みは比較的早く薄くなる一方で、メラニンがたまった茶色い跡はずっと時間がかかります。
跡が浅いときと深いときで色が違って見えるのはなぜでしょうか
メラニンがたまる深さによっても、跡の色合いは変わってきます。浅い層、つまり肌表面に近い表皮にだけメラニンがたまると、茶色が比較的くっきりと透けて見えます。白い紙の上に茶色の絵の具を薄く乗せたような状態に近いイメージです。
ところがメラニンがさらに深い層、真皮にまで入り込むと話は変わります。真皮に居座ったメラニンは、その上を覆う何層もの肌の層を通り抜けてようやく目に見える色になります。光が何層もの組織を通過して散乱するせいで、茶色というよりは灰褐色や、時には青みがかった色に見えるのです。浅い水は透き通って見えるのに、深い水は青く見えるのと似た原理だと考えるとわかりやすいでしょう。
そのため、色がやけに濃かったり、青みがかって見えたりする跡は、メラニンがすでに真皮まで入り込んでいるサインである可能性があります。こうした跡は、表皮だけにとどまった浅い茶色の跡に比べて、薄くなるまでの時間がより長くかかることが多いのです。
色素沈着はなぜゆっくりとしか薄くならないのでしょうか
肌は一定の周期で新しい細胞が作られ、古い細胞は角質となってはがれ落ちていきます。この過程を肌のターンオーバーと呼びます。茶色い跡の中のメラニンも、結局はこのターンオーバーに沿って少しずつ表面に押し上げられ、はがれ落ちることで初めて薄くなっていきます。
問題は、このターンオーバーが一晩で終わるものではないという点です。浅い層にあるメラニンは比較的早く排出されますが、肌の深い層まで入り込んだメラニンは、はるかに長い時間をかけてようやく少しずつ排出されていきます。そのため浅い跡は短くて6週間から3か月ほどで薄くなりますが、深い跡は長ければ6か月から14か月ほど残ることもあります。
もう一つの理由は、刺激が続くとメラノサイトが再び反応し、色素をさらに作り出してしまう点です。跡がすっかり薄くなる前に手で触ったり紫外線にさらされたりすると、同じ場所で色素の生産が再び始まってしまうことがあります。だからこそ、薄くなるスピードは人によって、状況によって大きく変わってくるのです。
紫外線対策が大切な理由
紫外線はそもそもメラノサイトを刺激する信号です。肌が日焼けして黒くなる原理と同じです。ところが、すでに炎症を経験して敏感になっている跡の部分は、同じ量の紫外線に対してもより過敏に反応してしまいます。
つまり色素沈着が残っている場所に紫外線が加わると、メラノサイトが二重に刺激を受けることになります。色が薄くなるどころか、むしろさらに濃くなったり、薄くなるまでの時間が大幅に長引いたりすることもあります。
だからこそ、跡が残っている間は曇りの日でも日焼け止めを欠かさず、日差しの強い時間帯には帽子や日傘で防ぐ習慣が必要です。これは単なる推奨事項ではなく、メラノサイトへの刺激を減らして回復を助けるという、実質的な理由のある習慣なのです。
肌の色が濃い人ほど跡が残りやすいのはなぜでしょうか
同じようにニキビができても、色素沈着が残る程度は人によって異なります。そしてこの違いは、もともとの肌の色が濃い人ほど目立つ傾向があります。
理由はメラノサイトの反応性に関係しています。肌の色が濃い人は、メラノサイトがもともとメラニンをより積極的に作り出す傾向にあります。小さな火種にもすぐ燃え移る乾いた薪のように、同じ強さの炎症刺激に対しても、より多く、より早く色素を作り出してしまうというわけです。
そのため肌の色が濃めの方は、ニキビができた時点から炎症を大きくしないケアがいっそう重要になります。そして跡がすでに濃く残ってしまった場合は、薄くなるまでにもそれだけ時間が必要になり得ることを念頭に置き、焦らずに向き合うことが助けになります。
跡を長引かせてしまう習慣とは
- ニキビを手で潰したりつぶしたりする習慣: 炎症をより深く広範囲に広げてしまい、メラノサイトをより広い範囲で刺激してしまうためです。
- 紫外線対策をせずに屋外で過ごす習慣: 先ほど説明したとおり、メラノサイトを二重に刺激して色素の生産を後押ししてしまうためです。
- 跡の部分をこすったり、過度に角質を除去したりする習慣: 物理的な刺激も炎症のシグナルとして受け取られ、メラノサイトが再び反応してしまうことがあるためです。
- ニキビの炎症を放置して長引かせる習慣: 炎症が長く続くほど、メラノサイトが刺激を受け続ける時間も長くなってしまうためです。
跡を薄くしていく過程を助けるケアとは
- 日焼け止めを毎日欠かさないこと: メラノサイトへの余計な刺激を減らせるためです。
- ニキビの炎症そのものを早い段階で落ち着かせること: 炎症が短く済むほど、色素がたまる時間も短くなるためです。
- 肌のバリア機能を刺激しない優しいケアを続けること: バリアが弱くなると、小さな刺激でも炎症反応が起きやすくなるためです。
- 十分な時間をかけて見守ること: ターンオーバーの周期はもともと決まっているため、無理に早めようとするより、地道なケアを続けるほうが安定するためです。
クリニックでは、色素沈着の深さや範囲に応じて、外用薬や施術的なアプローチをあわせて検討することもあります。ただし、どの方法をとるにしても、紫外線対策と炎症のケアという基本原則の上で進めることが大切だとされています。
いつ頃、皮膚科を受診すべきでしょうか
ほとんどの炎症後色素沈着は、時間の経過とともに自然に薄くなっていくと報告されています。ただ、6か月以上経ってもほとんど色が変わらなかったり、跡の範囲がだんだん広がっているように感じたりする場合は、皮膚科を受診してみることが助けになるかもしれません。
特に色がやけに濃かったり、肌の深い層まで及んでいる疑いがあったりする場合は、セルフケアだけでは限界があることもあります。先ほど触れたとおり、真皮まで入り込んだメラニンは、ターンオーバーだけで排出されるのにはるかに長い時間がかかるためです。
そのような場合は、専門医と相談しながら肌の状態に合ったケアの方向性を見極めるのがおすすめです。色素の深さと範囲を実際に確認したうえで、それに合った方法を選べば、ただ待つよりも効率的に跡をケアしていくことができます。
References
Korean Dermatological Association, Ministry of Food and Drug Safety (MFDS), American Academy of Dermatology (AAD), and U.S. Food and Drug Administration (FDA).
この記事は参考になりましたか?
About this article
診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
Read next

エクセルVレーザーが赤い毛細血管と茶色いシミを1台で消す仕組みと回数、ケアのコツ
エクセルVレーザーは異なる2つの波長の光を使い、血管と色素をそれぞれ狙って吸収させる機器です。赤みとシミがなぜ1台の機械でまとめて扱えるのか、その仕組みと実際の当て方をわかりやすく解説します。
By Dr. Kim

顔がすぐ赤くなる酒さと赤み、血管が敏感になる根本原因とレーザー治療の仕組み
特に理由もないのに顔が赤くなり、ほてりが繰り返されるなら、血管が敏感になった酒さ(ロザケア)かもしれません。なぜ血管が敏感になるのか、赤みがなぜ長引くのか、血管レーザーがどんな仕組みで改善するのかをやさしく解説します。
By Dr. Lee

ヴォルニューマーの高周波が一度で強い熱を入れてハリを引き上げる仕組みと回数、持続期間
ヴォルニューマーがなぜ強い高周波エネルギーを一度に入れる方式を選んだのか、その熱が真皮のコラーゲンをどんな経路で刺激するのか、そして効果はいつから現れてどれくらい続くのかを、わかりやすいたとえで解説します。施術回数が少なく設計されている理由と、検討する際の注意点もあわせてまとめました。
By Dr. Lee