ピコトーニングが短いパルスでメラニンだけを細かく砕き、肝斑とシミを同時に薄くする仕組みと回数
By Dr. Lee1 min read

皮膚科やエステサロンで、このところ最もよく耳にするレーザーの名前のひとつがピコトーニングです。肝斑やシミ、そばかすに悩んでいる人なら、一度は勧められたことがあるかもしれません。
ただ、なぜわざわざピコ秒(picosecond)という聞き慣れない単位が付くのか、そしてその短い光がどうやって色素だけを選んで消すのかは、よく分からないまま施術を受けている人が少なくありません。仕組みを知っておくと、この施術が顔のあちこちにあるさまざまな色素にも、敏感な肝斑にも比較的無理なく使える理由が見えてきます。
ピコ秒パルスはいったいどれくらい短いのか?
ピコ秒は1兆分の1秒です。ピンとこない単位ですが、光がそれだけ短い時間だけ点いて消えるということです。以前よく使われていたナノ秒(1兆分の1000秒)レーザーに比べても、パルス1つが数百倍は短くなります。
これほど極端に短く区切る理由は、光を当てる時間と、その熱が周囲に広がる時間との差にあります。熱が横に伝わるにはある程度の時間がかかります。その時間よりもずっと短く光を切って当てれば、エネルギーが横へ逃げる暇もなく、狙った1点だけに瞬間的に集中するわけです。水風船をゆっくり押すと水が横に広がりますが、パンと素早く叩くと当たった場所だけが正確に反応するのと似ています。
色素が細かく砕ける仕組みとは?
肌の中のメラニン色素は、黒や茶色を帯びた非常に小さな粒です。この粒には、特定の波長の光をとりわけよく吸収する性質があります。レーザーはこの性質を利用して、メラニンがよく吸収する波長を選んで照射します。
ここでパルスがピコ秒単位まで短くなると、色素の粒の中で起きる反応も変わってきます。瞬間的に非常に強いエネルギーが粒の中に閉じ込められると、じわじわ熱で焼けるのではなく、粒の表面で微細な衝撃波がはじけるように発生します。この衝撃が色素の粒をほこりのように細かく砕きます。もともとひとかたまりだった色素が、ずっと小さな破片に分かれるわけです。細かくなった破片は、体内の掃除役の細胞、つまりマクロファージが見つけて少しずつ取り込み、体外へつながるリンパの流れへと運び出します。このプロセスが繰り返されることで、色素が薄くなっていきます。
熱ではなく光音響による破壊が有利なのはなぜか?
レーザーが組織に働きかける方式は、大きく2つに分けられます。ひとつは熱で焼く方式、もうひとつは衝撃波で砕く方式です。専門用語では、この衝撃波方式を光音響(photoacoustic)効果と呼びます。光が音と同じように、瞬間的な圧力波を作り出すという意味です。
従来のナノ秒レーザーはパルスが比較的長いため、色素の粒が光を吸収する間に熱も一緒に発生する割合が大きくなります。熱は狙った色素だけでなく、すぐ隣の正常な皮膚細胞にもある程度広がってしまいます。一方ピコ秒レーザーは、パルスがとにかく短いので熱が広がる暇がなく、衝撃波中心で反応が終わります。そのため同じ色素を砕くにしても、周囲の組織が受ける熱ダメージは相対的に少ないとされています。熱ダメージが少ないぶん、施術後の赤みや腫れ、かさぶたといった回復過程も軽く済むケースが多いです。
トーニングモードはなぜ出力を落として何度も照射するのか?
ピコトーニングという名前には、トーニング(toning)という言葉が付いています。一度に強く照射するのではなく、出力を落とした光を1回のセッションの中で2回から4回重ねて当てる方式という意味です。
エネルギーを強くかければ色素の粒は一度に大きく砕けますが、そのぶん周囲の組織も刺激を受けやすくなります。逆にエネルギーを落とせば、粒は少しずつしか砕けない代わりに、刺激もそれだけ減ります。そこで低いエネルギーで2回から4回に分けて照射すると、毎回少しずつ砕けた色素が積み重なり、全体としては同じような効果を出しながらも刺激ははるかに少なく済みます。水を一度にドバっと注ぐと土が深くえぐれますが、同じ量を少しずつ何度かに分けて注ぐと土があまりえぐれないのと似た理屈です。
強く照射すると、施術直後に肌が白っぽく浮き上がるような反応が出ることもあります。この反応が強いほど回復期間も長くなり、刺激で色素がかえって濃くなるリバウンドも大きくなりかねません。一方トーニングモードは、目立った反応を出さずに2回から4回、じんわりと重ねるように照射するので、肝斑のような刺激に敏感な色素に特に向いている方式として使われます。
肝斑に対して刺激を抑えるのはなぜか?
肝斑は、ほかの色素性疾患に比べてとりわけ扱いが難しい色素です。紫外線だけでなく、熱や摩擦、炎症といった刺激によっても色素が再び濃くなる性質があるためです。肌の中でメラニンを作る細胞、つまりメラノサイトは、刺激を受けるとかえって色素をより多く作り出して反発する性質を持っています。
そのため、肝斑に熱刺激の大きい施術を強くかけると、一時的には薄くなっても、刺激が引き金となって色素がまた濃くなるリバウンドが起こりやすくなります。こうした背景から、ピコトーニングのように熱よりも衝撃波中心で作用する方式が、肝斑にとって比較的相性の良い選択肢と考えられています。ただし肝斑は原因そのものが完全になくなる病気ではないため、1回の施術できれいに消えると期待するよりも、5回から10回かけて少しずつ薄くなっていく流れで向き合うほうが現実的だと報告されています。
シミと肝斑で反応の速さが違うのはなぜか?
同じピコトーニングでも、シミ、つまり表皮の浅い層にある単純な色素斑は、反応が比較的早く出やすい傾向があります。色素が肌の浅い場所に集まっているため光が届きやすく、砕けた色素が体外へ排出される経路も短いためです。
一方肝斑は、色素が表皮だけでなくもっと深い真皮側まで広がっているケースが少なくありません。光が深い部分まで均一に届きにくいうえ、先ほど説明した刺激への反発性もあるため、反応が遅く個人差も大きくなります。そのため施術計画を立てる際も、シミは1回から3回で終わることを見込む一方、肝斑は最初から長期戦のつもりで臨むことが多いです。
施術がなぜ1回で終わらないのか?
色素の粒が細かく砕けたからといって、その場ですぐに消えるわけではありません。マクロファージが破片を取り込み、リンパの流れを通じて体外へ運び出すまでには時間がかかります。そのため1回の施術のあとも、目に見える変化が出るまでに2週間から4週間かかることが少なくありません。
また、色素が肌の中に均一な厚みで広がっているのではなく、層になって重なっていることが多いため、1回の刺激だけではすべての色素の粒が均等に砕けるわけではありません。その理由を以下にまとめました。
- 色素が深さごとに何層にも重なっているため、1回の施術では浅い層だけが先に反応し、深い層は次の回になってようやく刺激を受けるからです。
- 体が砕けた色素の破片を排出するのに2週間から4週間かかるため、その排出サイクルを待ってから次の刺激を与えるほうが効率が高いからです。
- 色素を作るメラノサイト自体は施術でなくなるわけではなく残っているため、新しく生まれる色素を抑えるには間隔を空けた継続ケアが必要だからです。
こうした理由から、通常2週間から4週間の間隔を空けて5回から10回繰り返す方式が一般的に勧められています。
肌のトーンによって出力を変える理由は?
メラニンは肝斑やシミといった色素病変の中だけにあるのではなく、肌の色そのものを決める表皮全体にも広く分布しています。肌の色が濃いほど、この背景メラニンの量も自然と多くなります。
レーザーの光は病変の中の色素だけを正確に選び出せるわけではなく、周囲の背景メラニンにもある程度反応します。そのため肌の色が濃い人に明るい肌と同じ出力をそのまま使うと、病変の周りの正常な皮膚まで刺激を受けてしまい、かえって色素がまだらに残ったり、再び濃くなったりする反応が出ることがあります。こうした理由から、施術前には肌の色や色素病変の深さ、過去に色素沈着ができやすかった経歴まで併せて確認し、出力を一人ひとり異なる設定にします。同じピコトーニングでも施術を受ける人ごとに設定値が少しずつ違うのは、まさにこのためです。
施術後のケアで特に気をつけたい点は?
ピコトーニングはほかのレーザーに比べて回復が軽めとはいえ、刺激がまったくないわけではありません。施術直後は肌のバリア機能が一時的に弱くなっているため、紫外線や摩擦にいつもより敏感に反応することがあります。
そのため施術後は日焼け止めをいつもよりこまめに塗り直し、熱いホットパックやサウナのように熱刺激の大きい活動は1週間ほど控えるほうが回復に役立つとされています。特に肝斑がある場合は、熱や刺激に反応して色素が再び濃くなることがあるため、ケアはより丁寧に行うのがよいでしょう。
References
Korean Dermatological Association, Ministry of Food and Drug Safety (MFDS), American Academy of Dermatology (AAD), and U.S. Food and Drug Administration (FDA).
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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