太田母斑はなぜ化粧で隠せず、レーザーを6回から10回に分けて受ける必要があるのか
By Dr. Lee1 min read

目元や頬に青みがかった、あるいは灰青色のあざがあり、コンシーラーとファンデーションを重ねて塗ってもうっすら透けてしまう。そんな経験があるなら、太田母斑の可能性があります。しみやくすみのように表面にある色素とは違い、どれだけ厚く化粧を重ねても隠しきれません。
太田母斑は、色素をつくる細胞がもともと皮膚の深いところに居着いてしまうことで生じる病変です。だからこそ化粧でも隠れず、治療も深部まで届く特殊なレーザーを使い、6週間から8週間おきに6回から10回に分けて受ける必要があります。なぜそのような仕組みになっているのか、順番に見ていきます。
太田母斑はなぜできるのか?
色素をつくる細胞であるメラノサイトは、胎児の時期に神経堤という組織から生まれ、皮膚表面の表皮まで移動します。移動を終えると表皮のいちばん下の層に落ち着き、肌の色や紫外線からの防御を担うようになります。
問題は、この移動の過程が必ずしも完璧ではないという点です。太田母斑がある場合、移動の途中で一部のメラノサイトが表皮までたどり着けず、中間地点である真皮、つまり表皮の下を支える厚い層で止まってしまいます。表皮が表面を覆う薄い膜だとすれば、真皮はその下を支える厚い壁のようなものです。
こうして真皮にとどまったメラノサイトは、その場所で色素をつくり続けます。しみやそばかすのように表皮にある色素と、そもそも存在する位置が根本的に違うのはこのためです。目の周りや頬、額に多く現れるのも、この部位の神経分布と関係があると考えられています。
太田母斑はなぜ化粧でも隠れないのか?
コンシーラーやファンデーションは、皮膚表面に不透明な色を重ねることで、その下にある色を覆い隠す仕組みで働きます。表皮にあるしみやくすみは、この方法である程度カバーできます。表面と色素の距離が近いためです。
ところが太田母斑の色素は真皮、つまり表皮よりもずっと下にあります。化粧品の層は厚さが1ミリにも満たず、数ミリ下から透けて見える色まで完全に覆うことはできません。しかも太田母斑は真皮の深いところで光が散乱することで独特の青みがかった、あるいは灰青色を帯びており、この色は茶色系が中心の一般的なコンシーラーの色と合わせにくいという事情もあります。
結局、どれだけ厚く塗っても深い場所の色は完全には隠しきれず、見る角度や照明によって透けて見えてしまいます。化粧は表面の悩みに対する対処法であって、真皮の深くに居座る色素そのものへの根本的な解決策にはならないのです。
なぜ表面にしか作用しない施術では足りないのか?
一般的なレーザートーニングやIPL(幅広い波長の光を当てる光治療)といった施術は、エネルギーが表皮側に集中しやすいため、表皮のしみや色素病変には効果的です。しかし太田母斑の色素はそれよりもはるかに深い真皮にあり、こうした浅い施術ではエネルギーが色素細胞まで十分に届きません。
光は波長が長いほど皮膚の奥まで深く入り込む性質があります。波長の短い光は表皮付近でほとんど吸収・散乱されて消えてしまい、波長の長い光だけが真皮の深部まで届きます。そのため太田母斑のように深く根を張った色素を扱うには、はじめから波長の長いレーザーを選ぶ必要があるのです。
こうした理由から、太田母斑の治療にはQスイッチNd:YAG(Q-switched Nd:YAG)レーザーという機器が標準として使われています。波長は1064ナノメートルで、数あるレーザーの中でも特に深部まで届くよう設計された波長です。
Qスイッチレーザーはどんな原理で色素を壊すのか?
Qスイッチレーザーの核心は、光をごく短い時間、ナノ秒単位で照射する点にあります。ナノ秒は10億分の1秒の単位で、瞬間的に非常に強いエネルギーを一点に集中させて照射する方式だとイメージすると分かりやすいです。
こうして短く強く照射された光は、色素の粒に当たった瞬間に急激な膨張を起こし、粒を粉々に砕きます。ハンマーで小石を叩いて細かく砕くのと似た原理です。熱が周囲の組織に広がる間もなく一瞬で終わるため、色素だけが選択的に破壊され、周囲の皮膚へのダメージは比較的少なく済みます。
細かく砕かれた色素の破片は、その場に残り続けるわけではありません。体内の掃除役であるマクロファージがこの破片を見つけて取り込み、リンパの流れを通じてゆっくりと体外へ排出していきます。この掃除の過程に時間がかかるため、施術直後にすぐ色が消えるのではなく、4週間から6週間かけて少しずつ薄くなっていきます。
なぜ一度で終わらせず6回から10回に分けて受けるのか?
一度に強いエネルギーを集中させれば、より早く色素を消せるのではと考えがちです。しかし実際にはそうしません。真皮に居着いたメラノサイトは量が多く、位置も深いため、一回の施術で中の色素をすべて砕くには非常に高いエネルギーが必要になります。
エネルギーを過度に上げると、色素だけでなく周囲の正常な皮膚組織まで傷んでしまいます。その結果、やけどや瘢痕、あるいは色素がかえって濃くなる炎症後色素沈着につながる危険が高まります。マクロファージが砕かれた色素を処理する速度にも限界があり、一度に大量の色素の破片をつくり出すと、掃除が終わる前に次の刺激が重なり、肌への負担が積み重なってしまいます。
そのため、安全な範囲のエネルギーに分けて、毎回少しずつ色素を砕き、体がその破片を掃除する時間を与えてから次の施術に進む方式が取られます。6回から10回に分けて徐々に薄くなっていくのが、この治療のもともとの進め方であって、例外的な状況ではありません。
治療の回数と間隔は何で決まるのか?
太田母斑の治療回数は人によって異なり、次のような要因が合わさって影響します。
- 色素が存在する深さと濃さ 色素が深く濃いほど、一回の施術で砕ける量には限りがあり、目標とする薄さに達するまでに10回以上の施術が必要になります。
- 病変が広がっている範囲 範囲が広いほど、一回で扱える面積とエネルギーには制限があり、全体を均一に治療しようとすると回数が増えます。
- 肌の色と年齢 肌の色が濃いほど、また年齢が高いほど、強いエネルギーで色素沈着などの副作用が起きやすく、出力を抑えて代わりに回数を増やす、安全性を重視したアプローチが取られることが多くなります。
施術の間隔も6週間から8週間の単位で空けることが多く、これは先ほど説明したマクロファージの掃除にかかる時間と、皮膚が回復する時間を考慮したものです。間隔を詰めすぎると、掃除が終わる前に刺激が重なり、かえって回復が遅れることがあります。
治療中と治療後は何に気をつければよいのか?
施術を受けた部位は一時的に敏感な状態になっており、紫外線にさらされると色素が再び刺激され、かえって濃くなることがあると考えられています。そのため治療期間中と回復期間は、紫外線対策を特に意識することが助けになります。
また、施術直後に一時的に色素が目立って見えたり、赤みを帯びて腫れたりする反応が出ることがありますが、これは色素が砕かれ掃除される過程でよく見られる反応として知られています。この時期に無理をして次の施術を前倒しするより、決められた間隔を守り、肌が回復する時間を与えるほうが、安全な経過につながります。
太田母斑は色素が存在する位置そのものが、表皮にある他の色素性疾患とは根本的に異なります。だからこそ化粧で隠す方法も、浅い施術も、根本的な解決策にはなりにくいのです。真皮の深部まで届く波長のレーザーを選び、体が受け止められる範囲で少しずつ分けて受けることが、現時点でもっとも現実的なアプローチとされています。
References
Korean Dermatological Association, Ministry of Food and Drug Safety (MFDS), American Academy of Dermatology (AAD), and U.S. Food and Drug Administration (FDA). </content> </invoke>
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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