口角下がりをボトックスで上げる仕組みと効果の持続期間、副作用や注意点まで根拠つきで解説
By Dr. Kim1 min read

鏡を見ていて口角が下がっていることに気づき、表情が不機嫌そうに見えたり怒っているように見えたりすると感じる方は少なくありません。特に気分が悪いわけでもないのに、印象がこわばって見えると気になってしまうものです。そんなときに比較的手軽にアプローチできる方法が口角ボトックスです。口角を下に引っ張る筋肉の力を少し弱めてあげると、反対に口角を持ち上げる筋肉が優位になり、口角が相対的に上がる仕組みです。ただし口角の下がりといっても原因はみな同じではなく、筋肉が問題の場合はよく合いますが、ボリュームが減っていたり皮膚がたるんでいたりする場合には限界があります。口角がなぜ下がって見えるのか、ボトックスがどんな仕組みで上げるのか、どこにどれくらい注射して効果はどれくらい続くのか、副作用や注意点まで実際の論文をもとにまとめました。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 仕組み | DAOを抑えて挙上筋が優位に |
| 用量 | 片側2~5U、多くは4U |
| 効果が出る時期 | 3~7日で開始、1~2週でピーク |
| 持続 | 3~4か月 |
| 注意点 | 左右差、下唇の発音、施術者選び |

口角はなぜ下がって見えるのでしょうか?
口角の周りには、口角を上に引き上げる筋肉と下に引っ張る筋肉が共存しています。このうち口角を下に引き下げる代表的な筋肉が口角下制筋です。英語ではDAOと呼ばれ、下顎骨の縁から口角に向かって扇状に伸びています。この筋肉が収縮すると口角が下に引っ張られ、笑っていないときの口元が下がって見えます。
本来は挙上筋と下制筋がバランスを取りながら口元の形を保っています。ただ口角下制筋を習慣的によく使っていたり、生まれつき力が強かったりすると、じっとしているときでも口角が下に引っ張られがちになります。すると特に悲しいわけでもないのに、不機嫌そうな印象や怒っているような印象を与えてしまいます。
そこに年齢が加わると、下がりがより目立ってきます。年を重ねるにつれて頬や口元の脂肪とコラーゲンが減り、皮膚が下方向へ落ちてくると、口角を支える力が弱くなります。そのため若いころは気にならなかった口元が徐々に下向きになり、口角の横に縦じわができることもあります。さらに口角がわずかに下がるだけでも、顔全体の印象はかなり変わって見えます。人は相手の口元を見て気分を読み取るため、実際の感情とは関係なく、下がった口角がそっけない印象や疲れた印象を与えてしまうのです。このように原因が筋肉の引っ張りなのか、ボリュームや皮膚のたるみなのかによって合う方法が変わってくるため、施術前に原因を見極めることが先決です。

ボトックスはどうやって口角を上げるのでしょうか?
口角ボトックスは口角を無理に引き上げる施術ではありません。下に引っ張る口角下制筋の力を弱める方法です。ボツリヌストキシンが神経末端での伝達物質の放出を抑えると、その筋肉の収縮が弱まります。すると上に引き上げる筋肉が相対的に優位になり、口角が自然に上がります。下に引っ張っていた紐を少し緩めるのに似た仕組みです。
効果は表情によって出方が変わります。超音波で計測した41人の研究では、力を抜いて自然にしている表情で1か月後に88.3%が口角の下がりがはっきり改善しました。一方、大きく笑った表情では32.3%と改善幅が小さくなりました。大きく笑うときは挙上筋がすでに強く引っ張っているため、下制筋を抑えても変化を感じにくいからです。
そのためこの施術は、普段の無表情のときに下がって見える口元を自然に整えたい人に向いています。目標はこわばった印象を柔らかく変えることなので、笑ったときに劇的に変わることを期待するよりも、じっとしているときの口元がひとまわり自然になると考えるとよいでしょう。実際に写真で比較してみても大きな変化ではなく、ほのかな違いであることが多く、その控えめさのおかげでやりすぎ感なく印象だけが柔らかくなります。ただしたるみが強い場合やボリューム不足が重なっている場合はボトックスだけでは不十分なこともあり、他の方法をあわせて検討することもあります。
どこにどれくらい注射するのでしょうか?
口角ボトックスは、下顎骨の縁付近、口角から下へ続く口角下制筋を狙います。用量は製剤や筋力によって変わりますが、ボトックスやゼオミンを基準に片側2から5ユニットがよく使われます。超音波を使った研究では片側4ユニット、つまり2か所に2ユニットずつ分けて注射する方法が提案されています。ディスポートは単位の体系が異なるため、片側6から15ユニットを使います。
| 項目 | 方法 |
|---|---|
| 狙う筋肉 | 口角下制筋(DAO) |
| 注射部位 | 口角のやや下外側、片側2か所 |
| 深さ | 約4~5mm |
| 注意点 | 下唇下制筋への拡散を避ける |
注射する位置も重要です。口角下制筋は口角から下へ向かうほど幅が広がるため、口角よりやや下の外側寄りの位置を狙い、皮膚から約4から5ミリの深さで注射します。このとき内側に寄りすぎると、下唇を下げる下唇下制筋にまで薬剤が広がることがあります。そうなると下唇が片側に歪んだり、下の歯を出しにくくなったりすることがあるため、内側の境界を越えないことが安全です。量が多すぎたり左右がずれたりすると表情が不自然になるので、少量から始めて左右のバランスを合わせるのがよいでしょう。

効果はいつ現れて、どれくらい持続するのでしょうか?
口角ボトックスは打ってすぐに変化する施術ではありません。トキシンが神経信号を遮断し、筋力が抜けるまでに数日かかるためです。通常は施術後3日から7日の間に口角が少しずつ上がり始め、1週から2週ごろに効果が最もはっきりします。そのため結果は2週間ほど経ってから判断するのが正確です。
持続期間は通常、1回あたり3か月から4か月程度です。人によっては6か月近く持つこともありますが、口の周りは話したり食べたりで常に動く部位のため、額や眉間よりもやや効果が早く抜ける傾向があります。また筋肉をよく使う人ほど回復がやや早い傾向があります。時間が経って神経末端が再び信号を送り始めると筋力が戻り、口角も徐々に元の位置に下がっていきます。
そのため効果を続けるには繰り返し施術を受ける必要があります。最初は3か月から4か月間隔で受け、筋肉を強く引っ張る癖が少し和らいでくると間隔が延びることもあります。一つうれしいのは、満足度が時間とともに上がっていく傾向があることです。先ほどの超音波を使った研究でも、非常に満足したと答えた割合が1週後の73.2%から3か月後には97.5%まで上がりました。これは違和感が落ち着き、口元が自然に定着していくためです。
フィラーやリフティングとはいつ併用すべきでしょうか?
先ほど触れたとおり、口角の下がりといっても原因はみな同じではありません。原因が何かによって、ボトックスがよく合う場合もあれば、他の方法を組み合わせたほうがよい場合もあります。大きく3つに分けて考えると方向性が見えてきます。
| 原因 | 合う方法 |
|---|---|
| 筋肉の引っ張り | 口角ボトックス |
| ボリューム不足 | フィラー併用 |
| 皮膚のたるみ | リフティング検討 |
筋肉が強く引っ張って口角が下がっている場合は、ボトックスが最も合います。一方、口元や頬のボリュームが減り、口角の横の縦じわが深くなっている場合は、ボトックスだけでは不十分です。こうしたときは口角の横やほうれい線の下にヒアルロン酸フィラーを補って凹んだ部分を支えると、口角も一緒に上がってきます。実際にフィラーとボトックスを併用して下がった口元を整えた研究もあります。二つの方法は狙う対象が異なり、筋肉はボトックスが、失われたボリュームはフィラーが担当するかたちで互いを補い合います。
皮膚そのものが下に垂れて緩んでいる場合は、話が少し変わってきます。こうした構造的なたるみはボトックスやフィラーだけでは対応しにくいため、糸リフティングや高周波、超音波などのリフティング施術をあわせて検討するほうがよいでしょう。そのため口角の下がりが気になるなら、原因が筋肉なのか、ボリュームなのか、皮膚のたるみなのかをまず見極めてから方法を選ぶことが結果を左右します。

副作用と注意点は何でしょうか?
口角ボトックスでまず知っておきたいのは、左右の非対称と表情の不自然さです。口周りの筋肉は互いに密接に絡み合っており、位置には個人差もあるため、左右の用量や深さがずれると、笑ったときに片方の口角だけ上がったり口元が歪んで見えたりすることがあります。そのため左右を対称に合わせ、少量から始めて反応を見ながら調整することが重要です。
次に注意したいのは、薬剤が下唇のほうへ広がってしまう場合です。口角下制筋の内側には、下唇を下げる下唇下制筋が隣接しています。内側に寄りすぎたり深く注射しすぎたりしてこの筋肉にまで薬剤が広がると、下唇が片側に歪んだり、発音がぎこちなくなったり、下の歯を出しにくくなったりすることがあります。多くは薬効が抜けるとともに回復しますが、数週間から数か月不便を感じることもあるため、注射位置を正確に定めることが鍵になります。
このほか、針を刺した部位のあざや痛みはよくあることで、すぐに治まります。先ほどの研究では3か月間、目立った副作用の報告はありませんでしたが、人数が41人と少ないため、数字として断定するよりも傾向として見るのがよいでしょう。結局この施術は何ユニットをどこに注射するかで結果が大きく分かれるため、口周りの筋肉の解剖に詳しく経験豊富なクリニックで受けるのが安全です。原因をしっかり見極めて筋肉が問題となっているケースに合わせて取り組めば、口角ボトックスは短時間の施術でこわばった印象をぐっと和らげてくれる方法になります。
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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