マスクを長時間つけるほどあごや頬にニキビが増える、摩擦と湿度、毛穴づまりの関係とケア法
By Dr. Kim1 min read

マスクをつけ始めてから、あごや頬のあたりにニキビがぐっと増えたと感じる人は多いものです。いわゆるマスクニキビ、英語ではマスクネ(maskne)と呼ばれる現象です。鼻や額はいつも通りなのに、マスクが触れる部分だけにぽつぽつと吹き出物ができるケースがよく見られます。
この部位ごとの差が手がかりになります。顔全体の皮脂分泌が急に増えたわけではなく、マスクで覆われる部分だけ肌の環境が変わるからです。摩擦と湿度、そして毛穴づまりという3つの条件が重なることで、その部分だけニキビができやすい環境がつくられます。
この3つの条件は別々に働くのではなく、互いに絡み合っています。摩擦がバリア機能を揺さぶると、その隙間から水分がより入り込みやすくなり、水分がたまると毛穴が狭まって毛穴づまりへとつながります。つまりマスクニキビは、ひとつの原因の結果というより、3つの段階が連なって生まれる結果に近いのです。ひとつずつ原理を追っていくと、なぜそうなるのか理解しやすくなります。
マスクをつけるとなぜあごや頬にニキビが増えるのか?
マスクは顔に密着したまま、何時間も同じ部分を圧迫します。その間、肌表面とマスクの生地のあいだで摩擦がずっと続きます。この摩擦が肌のいちばん外側にある角質層を少しずつ刺激するのですが、角質層はもともと、外部からの刺激や水分の蒸発から肌を守る薄い防御膜のような役割を担っています。
この防御膜が繰り返し押されたりこすれたりすると、機能が弱くなっていきます。レンガの壁にたとえるなら、レンガとレンガのあいだのセメントが少しずつひび割れていくようなものです。セメントがしっかりしていてこそ壁が丈夫であるように、角質層の細胞のすきまを埋める脂質が保たれていてこそ、水分を守り細菌も防ぐことができます。ここに隙間ができると、細菌や刺激物質がより入り込みやすくなり、その結果として炎症性のニキビができやすくなるのです。
あごや頬は、マスクのひもが通ったり生地がいちばん強く押しつけられたりする部分なので、他の部位よりこの摩擦を多く受けます。一方で目元や額はマスクが直接こすれないため、比較的影響が少なくなります。同じ顔でも部位によってニキビの出方が違う理由は、ここにあります。
摩擦が肌のバリア機能を揺さぶる過程
摩擦そのものは目に見えないほどわずかですが、問題は繰り返しにあります。話したり呼吸したりするたびにマスクの内側が顔にこすれ、この動きは1日に何千回も繰り返されます。1回1回はごくわずかでも、積み重なると肌が持ちこたえる力が落ちていきます。
バリア機能が弱まると、肌は水分をより失いやすくなります。すると体はそれを補おうとして皮脂腺を刺激し、皮脂をより多く作り出す傾向があります。肌が乾燥するほどかえってテカりを感じるのは、これが理由です。増えた皮脂は毛穴の出口にたまりやすい材料となり、次の段階である毛穴づまりへとつながっていきます。
さらに摩擦は、肌表面の神経終末も刺激します。刺激が繰り返されると、その部分に弱い炎症のシグナルがつきっぱなしの状態で残り、この状態ではちょっとした刺激でも赤みや吹き出物が出やすくなるハードルが下がります。普段なら気にならない程度の刺激でも、マスクの下ではニキビにつながりやすいのはこのためです。
湿度と熱がつくる毛穴づまりの環境
マスクの内側は、密閉された小さな空間です。息を吐くたびに温かい水蒸気がその中に閉じ込められ、湿度と温度がいっしょに上がっていきます。いわば、サウナの中に顔だけを何時間も入れているのと似た条件がつくられるわけです。
湿度が高くなると角質細胞がふくらみ、毛穴の出口が狭くなります。狭くなった出口からは皮脂や古い角質がスムーズに排出されず、内側にたまっていきます。こうして毛穴がふさがる現象を毛穴づまりと呼びますが、づまった毛穴の中は酸素が少なく、湿っていて温かいため、ニキビの原因菌であるカティバクテリウム・アクネス(旧アクネ菌)が増えやすい条件になります。菌が増えると体の免疫反応がその部分に集中し、赤く盛り上がった炎症性のニキビとして現れます。
これは、浴室のタイルの目地にカビが生えやすいのと似た理屈です。湿っていて温かく、換気の悪い場所に微生物が集まるように、マスクの内側でふさがった毛穴も菌にとっては居心地のよい住みかになります。しかも、マスクを外してまたつけるたびに、生地に残っていた湿気や菌が再び肌に触れることになり、同じ条件が繰り返されやすくなります。
マスクの素材と装着時間の影響
すべてのマスクが同じように肌を刺激するわけではありません。合成繊維でできた生地は通気性が低く、湿気や熱をより長くため込む傾向があります。反対に、綿のように織り目の粗い天然素材は空気が通りやすく、湿度が比較的たまりにくくなります。
装着時間も重要な変数です。何時間つけ続けているかによって、摩擦と湿度にさらされる総量が変わってくるからです。装着時間が長くなるほど角質層への負担も増えるため、長時間の着用が必要な職業や状況でマスクニキビがより多く報告されるのも、同じ理由で説明できます。
マスクのサイズが顔に合っていないことも影響します。きつすぎると押しつける力が強くなって摩擦が大きくなり、逆にゆるすぎると頻繁にずれてこすれる回数が増えます。結局、顔にちょうど合うサイズを選んで密着や動きを減らすこと自体が、摩擦を減らす方法になります。
- 生地が肌に直接触れる面積: 面積が広いほど摩擦が加わる範囲も広がり、刺激が複数の場所に分散されるというより、特定の部位に繰り返し積み重なります。
- 生地の通気性: 通気性が低いと、吐く息の湿気が逃げずにそのまま毛穴のまわりにとどまります。
- 洗濯・交換のペース: マスクの表面に皮脂や角質、菌がたまったまま長く使うと、その部分をまた肌にこすりつけているのと同じになり、刺激が加わります。
- 化粧品との重なり: マスクの内側にファンデーションや日焼け止めが押しつけられていると、成分が毛穴の出口に一緒にたまり、毛穴づまりを助長することがあります。
マスクニキビケアで大切なことは何か?
ケアの方向性は、3つの原因をひとつずつ減らしていくことにあります。摩擦を減らし、湿度を下げ、毛穴がつまらないよう助けるという方法です。どれかひとつだけを解決すれば良くなるというより、3つを同時に意識したほうが変化を感じやすいといわれています。
その中でも洗顔は基本です。マスクを外したあと、やさしい洗顔料で皮脂と汗を洗い流せば、毛穴の出口にたまった汚れが減ります。ただし、あまり頻繁に、あまり強くこすって洗うと、かえって角質層を刺激してバリア機能を弱めてしまうことがあるため、1日2回ほどのやさしい洗顔がすすめられます。保湿剤でバリア機能を補うことも合わせて必要です。バリア機能が丈夫であってこそ、摩擦に揺らぎにくくなるからです。
成分を選ぶときは、刺激の少ないものを優先するのがよいでしょう。サリチル酸やベンゾイルパーオキサイドのようにニキビによく使われる成分も助けになりますが、摩擦ですでに弱っている肌にいきなり強く使うと刺激が重なってしまうことがあります。そのため、マスクを長時間つける時期は、まずやさしい処方から始め、肌の様子を見ながら少しずつ増やしていく方法が安全です。
肌への刺激を減らす生活習慣
小さな習慣の変化が、刺激を大きく減らしてくれます。マスクの装着時間を調整できる状況であれば、合間に少しだけ外して肌を換気させるのも役立ちます。閉じ込められていた湿気や熱が抜けることで、毛穴まわりの環境が一時的にでも整うからです。
厚いメイクは、マスクが密着する部分でより崩れたり押しつぶされたりしやすくなります。軽いテクスチャーを薄く塗るほうが、毛穴づまりを減らすうえで有利だといわれています。また、マスクを1日以上使い回す場合は、こまめに洗濯や交換をするのがよいでしょう。表面にたまった皮脂や菌を、再び顔にこすりつけないようにするためです。こうした習慣は地味に見えますが、摩擦・湿度・毛穴づまりという3つの軸を同時に少しずつ抑えてくれるという点で、続ける価値があります。
References
Korean Dermatological Association, American Academy of Dermatology (AAD), and Ministry of Food and Drug Safety (MFDS).
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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