唇フィラーの持続期間と副作用、施術後のケアまで
By Dr. Kim1 min read

唇のボリュームフィラーは、よく「注入すればすぐぷっくりする施術」として知られています。間違いではありませんが、半分だけ正しい説明です。単にジェルを注入するだけなら、施術直後よりも数日経ってからのほうが、唇がより自然に見える理由が説明できません。
実際には、フィラーに含まれるヒアルロン酸が周囲の水分を引き寄せながら、徐々に定着していくプロセスが同時に起こっています。そして唇は1日に何千回も動く部位のため、他の顔のパーツよりフィラーが抜けていくスピードも違います。なぜそうなるのか、その仕組みをひとつずつひも解いていきます。
唇はなぜフィラーが目立ちやすい?
唇は顔の中でも脂肪層がもっとも薄い部位のひとつです。頬やおでこと違い、唇の下にはたっぷりと脂肪が蓄えられているわけではないため、年齢を重ねて少しボリュームが減っただけでも変化が目立ちやすくなります。薄い布一枚で覆われたクッションのように、内側のボリュームが少し落ちるだけで見た目が大きく変わる構造なのです。
そのため唇は時間の経過とともに自然とボリュームが減り、リップライン(唇の上側の縁にあるふっくらした線)もぼやけやすくなります。フィラーは、この不足したボリュームを直接補う形で働きます。脂肪やコラーゲンが新しく作られるのを待つのではなく、ジェル状の素材をその場に注入することで、即座にボリュームを作り出すのです。
ヒアルロン酸フィラーはどうボリュームを作る?
唇のフィラーにもっともよく使われる素材はヒアルロン酸(hyaluronic acid)です。ヒアルロン酸はもともと私たちの体内、特に皮膚や関節にも存在する成分のため、体が異物として強く拒絶することはあまりありません。
ヒアルロン酸の分子は、水分を引き寄せる力が非常に強いという特徴があります。スポンジが水を吸い込むように、ヒアルロン酸1分子は自分の重さの数百倍もの水分を抱え込むことができます。そのため唇にフィラーを注入すると、施術直後はやや詰まって見えても、数日かけて周囲の水分を引き寄せながら、より滑らかで自然なボリュームへと落ち着いていきます。
また、フィラーによってヒアルロン酸分子同士を絡めて結びつける度合い(架橋)が異なります。結びつきが密なほどジェルが硬くなり、リップラインのようなくっきりしたラインを作りやすく、逆にゆるく結びつけたものほど柔らかく、唇の内側のようなふっくらとした質感を出しやすくなります。
唇フィラーはなぜ早く減る?
唇は話す、食べる、笑うといった動作の中で、1日に何千回も動く部位です。この動き自体が血流とリンパの流れを活発にし、それが結果的にヒアルロン酸が分解されるスピードも早めます。体内の酵素がヒアルロン酸を少しずつ分解していきますが、その部位の血流が活発なほど分解酵素がより頻繁に行き来するためです。
そのため、同じヒアルロン酸フィラーでも、鼻や頬のように比較的動きの少ない部位より、唇のほうが早く吸収される傾向があります。実際、唇のフィラーの持続期間は平均して6か月から12か月程度と報告されており、これは他の部位に比べて短めです。ただしフィラーの架橋の度合いや注入量、個人の代謝スピードによって、この期間には個人差があります。
やわらかいジェルと硬いジェルは何が違う?
唇のフィラーも製品によってテクスチャーや硬さが異なります。ある製品は水のように柔らかく唇の内側のボリュームを自然に満たすのに向いていて、ある製品はやや硬めでリップラインや輪郭をくっきりさせるのに向いています。この違いは、先ほど説明した架橋の度合い、つまりヒアルロン酸分子をどれだけ密に結びつけているかによって生まれます。
医師は、唇のどの部位を整えるかによって製品を使い分けます。唇の内側のように押しても変化がわかりにくい部位は柔らかい製品で満たし、リップラインのようにラインがそのまま見える部位は硬めの製品で整える、といった具合です。そして唇は顔の中でも触感に敏感な部位のため、硬めの製品を入れすぎるとかえって塊のような違和感が出ることがあり、適度なバランスが大切だとされています。
また、もともとの唇の厚みや形によっても適した製品は変わります。もともと唇が薄めであっさりした印象なら柔らかい製品で全体のボリュームをたっぷり満たすほうが自然に仕上がり、リップラインははっきりしているもののボリュームだけが物足りない場合は、少量の硬めの製品でラインを整えるだけでも印象が変わります。そのためカウンセリングでは、唇の現在の状態と希望する仕上がりをしっかり伝えることで、それに合った製品と注入量を選ぶことができます。

持続期間を左右する要因
唇のフィラーの持続期間は、ひとつの要因だけで決まるわけではありません。代表的なものとして、次のような要因が組み合わさって影響すると言われています。
- フィラーの架橋の度合いと種類: 密に結びつけられたフィラーほど分解に時間がかかり、持続期間も長くなる傾向があります。分解酵素がジェルを断ち切るのにより時間がかかるためです。
- 注入した量: 条件が同じなら、量が多いほどすべて吸収されるまでの時間も長くなります。吸収は外側から徐々に進むため、ボリュームが大きいほど残る量も長く保たれます。
- 唇の使い方の癖: よく話す、喫煙、ストローの使用など唇の筋肉を頻繁に強く動かす習慣は血流をより刺激し、分解のスピードを早めることがあります。
- 個人の代謝スピード: 年齢や体質によってヒアルロン酸を分解する酵素の働き方が異なるため、同じフィラーを入れても人によって持続期間に差が出ます。
一般的に平均の持続期間は6か月から12か月とされていますが、上記のような理由から個人差はかなり大きいといえます。

施術後のむくみと注意点
施術直後は、腫れや軽いあざがよく見られます。腫れは通常24時間から48時間ほどで目立って落ち着き、残った腫れも1週間から2週間かけて徐々に引いていくことが多いです。この時期は唇がややでこぼこしていたり左右差を感じたりすることがありますが、これは腫れが均等ではなく引いていく過程で、多くの場合時間とともに自然に整います。最終的な形はおおよそ4週間前後で落ち着くとされています。
まれではありますが、フィラーが血管内に誤って入ってしまうと、その部位への血流が滞る血管合併症が起こることがあります。このリスクを下げるため、医師は針を進める前に血管の位置を確認し、少量ずつゆっくりと注入する方法を取ります。そしてヒアルロン酸フィラーには特有の利点があり、万一問題が起きた場合はヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)という酵素の注射でフィラーを溶かして元に戻すことができます。これは他の素材のフィラーにはない、ヒアルロン酸ならではの安全装置といえます。
施術後は数日間、唇への強い圧迫や熱い温湿布を避けることが勧められます。組織が落ち着く前に圧力がかかると、フィラーがずれたり形が崩れたりすることがあるためです。また施術部位を清潔に保ちながら紫外線対策をすることも回復の助けになるとされています。
無理に唇を押したり触ったりして形を確認するのも控えたほうがよいでしょう。まだ定着していないジェルを何度も触ると、左右のバランスがかえって崩れることがあるためです。腫れが引いていく数日間は結果を急がず、体が自然に整っていく時間を待つことが、自然な仕上がりにつながるとされています。
References
Korean Dermatological Association, American Academy of Dermatology (AAD), and Ministry of Food and Drug Safety (MFDS).
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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