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ジュベルック(PDLLA)の効果と副作用|スカルプトラとの違いと持続期間をクリニック目線で解説

By Dr. Kim1 min read

コラーゲン産生を促す注射には、効果が現れるまでに時間がかかるという弱点があります。施術後、変化を実感できるまで数週間待つ必要があるため、受ける側にとっては焦りを感じることも少なくありません。ジュベルック(Juvelook)は、そのギャップを埋めるために設計された注射です。コラーゲン産生を刺激するPDLLAにヒアルロン酸を組み合わせることで、施術直後の即時的なうるおい感と、数週間かけて積み重なるコラーゲンの底上げを一製剤に凝縮しています。主成分のPDLLA(ポリ-D,L-乳酸)は、スカルプトラのPLLA(ポリ-L-乳酸)と同じ乳酸系生体吸収性ポリマーの一種です。比較的新しい成分ながら美容皮膚科・美容外科クリニックへの導入が広がりつつあり、それに伴い誇張された情報も散見されます。ジュベルックが皮膚の中で実際に何をするのか、スカルプトラとの違いは何か、そしてどこまでエビデンスが蓄積されているのかを、クリニックの視点から整理します。

白い背景に置かれたジュベルックのバイアル製品

ジュベルックとは、どのような注射なのか

ジュベルックは2種類の成分を組み合わせたハイブリッド注射です。一つはヒアルロン酸で、水分を引き寄せることで施術直後から肌にうるおい感とふっくらした質感をもたらします。もう一つが核心成分のPDLLAで、生体吸収性のマイクロ粒子が真皮内でコラーゲン産生を段階的に刺激します。施術初期はヒアルロン酸による即時的な変化が感じられ、時間が経つにつれてPDLLAが誘導した自分自身のコラーゲンがその役割を引き継ぐ仕組みです。ヒアルロン酸は数カ月かけて吸収されてなくなりますが、そのあいだにコラーゲンが徐々に補完していくイメージです。

大きな分類で見ると、ジュベルックはスカルプトラ(スカルプトラ®)と同じコラーゲン産生刺激注射のカテゴリーに属します。ヒアルロン酸フィラー(ジュビダーム®やレスチレン®など)のように外側から物理的に容積を補う製剤や、PN注射のレジュラン(Rejuran)のように細胞再生や保湿に特化した製剤とは、作用機序が異なります。ジュベルックの立ち位置は、コラーゲンを新たに産生させて土台を整えつつ、ヒアルロン酸の働きで施術初期の変化もある程度実感できる中間的な選択肢と言えます。

ただし一点、押さえておくべきことがあります。ジュベルックは比較的新しい製品であり、同じカテゴリーのスカルプトラほど長期間にわたる大規模な臨床データは現時点ではまだ多くありません。後述しますが、現在のエビデンスの中心はPDLLAという成分自体の研究と小規模試験であり、ジュベルック単独を長期的に追跡した大規模研究は進行中の段階です。期待を持ちつつも、エビデンスの重みを理解した上で始めることをお勧めします。

加齢した皮膚にPDLLAを注入し8週後に計測した変化。無処置を1.0倍として、新生コラーゲンは4倍、コラーゲン密度は2.62倍、皮膚弾力は1.73倍に増加。動物モデルでの結果。(Oh et al., Antioxidants 2023)
加齢した皮膚にPDLLAを注入し8週後に計測した変化。無処置を1.0倍として、新生コラーゲンは4倍、コラーゲン密度は2.62倍、皮膚弾力は1.73倍に増加。動物モデルでの結果。(Oh et al., Antioxidants 2023)

コラーゲンはどのように産生されるのか

PDLLAがコラーゲン産生を促すプロセスを、動物実験で詳しく調べた研究があります。上のグラフは加齢した皮膚にPDLLAを注入し、8週後の変化を計測したものです。無処置の皮膚を1.0倍とした場合、新生コラーゲンは4倍、コラーゲン密度は2.62倍、皮膚弾力は1.73倍まで増加していました。いずれの指標もベースラインを大幅に上回っており、PDLLAのコラーゲン産生促進効果を具体的な数値で示しています。

作用の流れも注目に値します。PDLLA粒子が注入されると、まずマクロファージが反応し、続いて皮膚内の幹細胞が活性化されて成長因子を放出します。このとき分泌されるTGF-βやFGF2といったシグナルが線維芽細胞に対してコラーゲン合成を指示する役割を担います。このシグナルを受けた線維芽細胞がコラーゲンや弾性線維を産生し、真皮が内側から再構築されていきます。外側からコラーゲンを補充するのではなく、コラーゲンを産生する仕組み自体を再稼働させるアプローチです。その間、一緒に注入されたヒアルロン酸が水分を保持し、コラーゲンが充実してくるまでの初期数週間のギャップを埋めます。

もちろんこれらの数値は動物実験の結果であり、人の顔に同じ倍率がそのまま当てはまるわけではありません。それでも、PDLLAがコラーゲン産生を力強く刺激するという方向性は、この結果から明確に読み取れます。ヒトを対象としたエビデンスについては、次のセクションで詳しく見ていきます。

コラーゲン産生刺激注射の平均粒子サイズ比較。ジュベルックのPDLLAは約30µm、スカルプトラのPLLAは約50µm。粒子が小さく球状なほど、局所的な凝集が起きにくい傾向がある。(Su et al., Polymers 2025)
コラーゲン産生刺激注射の平均粒子サイズ比較。ジュベルックのPDLLAは約30µm、スカルプトラのPLLAは約50µm。粒子が小さく球状なほど、局所的な凝集が起きにくい傾向がある。(Su et al., Polymers 2025)

スカルプトラとの違いは何か

同じコラーゲン産生刺激注射でありながら、ジュベルックとスカルプトラは何が違うのか、クリニックでもよく受ける質問です。上のグラフは両製品の粒子サイズを比較したもので、ジュベルックのPDLLA粒子は約30µmと、スカルプトラのPLLA約50µmより小さくなっています。形状にも違いがあり、ジュベルックの粒子は球形に近いのに対し、スカルプトラの粒子はより不規則なプレート状です。粒子が小さく球状なほど、一箇所に凝集してしこり(結節)が生じにくいとされています。

粒子の性質も異なります。ジュベルックのPDLLAは非結晶性(アモルファス)構造のため比較的均一に分解されるのに対し、スカルプトラのPLLAは一部が結晶構造を持つためより緩やかに分解されます。成分構成も異なります。ジュベルックはヒアルロン酸を含有しているため施術直後からうるおい感の変化を実感できますが、スカルプトラはコラーゲン産生刺激のみに特化しているため初期の変化はほとんど感じられません。一方でスカルプトラは、より長期間にわたって蓄積された大規模な臨床エビデンスを有している点が強みです。

整理すると、この二つは競合関係というより、それぞれに異なる特性を持つ選択肢です。広い範囲のボリューム回復を長期的に目指すならスカルプトラが、肌のキメやハリを全体的に底上げしながら初期の変化もある程度感じたいならジュベルックのほうが合っていることが多いです。どちらを選ぶかは、気になる部位や求める変化のスピード、そしてどのくらいの期間維持したいかによって変わります。

ほうれい線への施術後12週時点での主観的な改善スコア。PDLLA系は1.43点、PLLAは1.33点の改善で、両製品はほぼ同等の結果。33名を左右の顔で比較したスプリットフェイス試験。(Park et al., Skin Res Technol 2026)
ほうれい線への施術後12週時点での主観的な改善スコア。PDLLA系は1.43点、PLLAは1.33点の改善で、両製品はほぼ同等の結果。33名を左右の顔で比較したスプリットフェイス試験。(Park et al., Skin Res Technol 2026)

ヒトへの効果はどれくらいあるのか

ヒトを対象とした研究も確認しておきましょう。上のグラフは、顔の左右一方にPDLLA、もう一方にスカルプトラのPLLAを注射し、ほうれい線の改善を比較したスプリットフェイス試験です。12週後の主観的な改善スコアはPDLLA系が1.43点、PLLAが1.33点とほぼ同等でした。長年の実績を持つPLLAと比べて、新成分PDLLAが遜色ない結果を示したといえます。同研究では24週後まで改善が維持され、参加者の80%が「満足以上」と回答し、結節の発生は一件もありませんでした。ただし、2回目の注射後に一時的な腫れと圧痛が報告されており、副作用がまったくないというわけではありません。それでも、小さな粒子が凝集せずに均一に分散したことによる恩恵は明らかです。

ただし、この研究は33名を対象とした規模であり、ジュベルックという製品そのものを長期追跡した大規模研究はまだ発表されていません。現在、より大きな規模の研究が進行中の段階です。同様の組成を検討した他の小規模研究でも、施術後に真皮のコラーゲンと弾性線維の増加が組織学的に確認されましたが、被験者数が少なく断定するには時期尚早です。

そのため、現時点でのエビデンスを正直にまとめると次のようになります。PDLLAという成分がコラーゲン産生を促すという基礎的なエビデンスと、ヒトで既存製品と同等の成果を示した初期の臨床データは揃っています。しかし、ジュベルック単独の長期的な効果と安全性に関する大規模データは今後さらに蓄積が必要な段階です。この点を十分に理解した上で検討されることをお勧めします。

ジュベルック施術前のカウンセリングを受ける患者と医療スタッフ

どのような方に向いていて、何に注意すべきか

ジュベルックが適しているのは、顔全体のハリの低下・肌のキメの粗さ・浅い小じわが気になり始めた方です。特定の部位を大きく膨らませるより肌の土台全体を底上げしたい場合、そしてコラーゲン産生刺激注射特有の「待つ期間」に不安を感じるためある程度の即時効果も望んでいる場合に向いています。自然なふっくら感を好む方や、1回の施術で劇的な変化を求めるのではなく、数カ月をかけて肌のコンディションをじっくり整えていくアプローチを受け入れられる方に適しています。

逆に向いていないケースもあります。こけた頬やフェイスラインをすぐに明確に補いたい場合はヒアルロン酸フィラー(ジュビダーム®やレスチレン®など)のほうが適しており、たるみが強い場合はスレッドリフトやHIFU(高密度焦点式超音波)などのリフティング系施術を併用することでより満足度の高い結果が期待できます。ジュベルックはあくまで土台を整える注射であり、即時的に輪郭を形成するものではありません。

施術は細い針または先端が丸いカニューレを用いて真皮に分割注入し、通常4週間間隔で2〜3回行います。数日間の腫れや内出血が現れることがあり、まれに粒子が凝集して小さなしこり(結節)が生じることがあります。特に粒子サイズが大きい製剤を使用した場合や、浅い層に注入された場合にリスクが高まります。妊娠中の方や施術部位に炎症がある場合は禁忌です。何より、長期データが十分に蓄積されていない比較的新しい施術である点をしっかり理解した上で、経験豊富な医師のいるクリニックでカウンセリングを受けてから始めることを強くお勧めします。

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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。

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