エラボトックスの効果が出る時期と持続期間、噛む力の変化まで
By Dr. Lee1 min read

咬筋ボトックスは「ボトックスでエラを削る」と紹介されることが多いのですが、実際に骨を削る施術ではありません。骨はそのままに、その上を覆っている筋肉のボリュームだけを減らす施術です。
エラが張って見える原因の多くは、骨の形ではなく噛むときに使う筋肉の厚みにあります。ですので、この筋肉の働きを抑えると筋肉そのものが小さくなり、自然とフェイスラインがすっきりしていきます。ただ力を抜いただけなのになぜサイズまで小さくなるのか、その仕組みを順番に見ていきましょう。
エラの輪郭をつくる咬筋
下顎の両端に手を当てて奥歯をぐっと噛みしめると、硬く盛り上がってくる部分があります。これが咬筋(こうきん、食べ物を噛むときに下顎を引き上げる筋肉)です。咬筋ボトックスはまさにこの筋肉を狙って注入します。
咬筋は1日に何千回も動く筋肉です。食事のたびに、歯を食いしばるたびに、寝ている間の歯ぎしりでも、常に刺激を受けています。腕の筋肉を毎日鍛えると太くなるのと同じ原理で、咬筋も強く使われるほど少しずつ厚みを増していきます。特に夜間の歯ぎしりの癖があると、眠っている間もこの筋肉を運動させ続けているようなものなので、より厚くなりやすい傾向があります。
つまりエラ張りに見える顔立ちの一部は、骨の形の問題ではなく、この筋肉が厚くなった結果ということになります。骨に触れなくてもフェイスラインをシャープにできる理由はここにあります。
ボトックスはどう筋肉の信号を止める?
筋肉はひとりでに動くわけではありません。脳から神経を通って届いた信号があって、はじめて筋肉が動きます。この信号がやり取りされる場所を神経筋接合部(神経と筋肉が接して情報をやり取りする部位)と呼びます。
この接合部ではアセチルコリン(神経が筋肉に「動け」と伝える化学的な信号物質)という物質が分泌されて、筋肉に収縮の指令が伝わります。ボトックスの主成分であるボツリヌストキシンは、このアセチルコリンが分泌される過程に関わるタンパク質(SNAP-25)を切断し、信号そのものが送り出せないようにブロックします。
郵便局員がストライキをして手紙が配達されない状況を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。手紙を書く人(神経)も、受け取る人(筋肉)もそこにいるのに、間を取り持つ配達だけが止まってしまえば、やり取りそのものが成立しません。咬筋にこの方法でボトックスを注入すると、噛めという信号が届かなくなり、筋肉は以前ほど強く動けなくなります。
使わない筋肉はなぜ小さくなる?
信号が遮断されたからといって、筋肉がすぐに消えるわけではありません。ですが時間が経つにつれて、筋肉そのものの体積が減っていきます。この現象を廃用性萎縮(使われないことで筋肉が縮んでいく現象)と呼びます。
腕を骨折して数週間ギプスをつけたあと、その腕が反対側より細くなっていたという経験をしたことがある方もいるでしょう。筋肉は使い続けることでサイズを維持している組織なので、動きが減ると体はその筋肉に送る資源を減らし、筋線維自体も細くなっていきます。咬筋も同じです。ボトックスによって収縮する力が弱まると、以前ほどの運動量が必要なくなり、それに伴って筋肉のボリュームも徐々に減っていきます。
実際に超音波やMRI(磁気共鳴画像)で測定した研究では、ボトックス注入後に咬筋の厚みが減少したことが報告されています。施術前後で筋肉の断面積が20%から30%ほど減少したという報告もあります。筋肉が小さくなる程度は、もともとの筋肉の厚み、注入量、歯ぎしりの癖が続いているかどうかによって、人それぞれ差が出ることがあります。

フェイスラインはいつから細くなる?
咬筋ボトックスの効果は、2つの段階に分かれて現れます。施術後1週間から2週間の間は、まず噛む力が弱まったと感じられるようになります。歯ぎしりや食いしばりの癖があった方であれば、顎のだるさが軽くなる時期でもあります。
一方でフェイスラインが目に見えてシャープになる時期は、もう少しあとになります。だいたい4週間から6週間ほど経つと変化が見え始め、筋肉が十分に萎縮して最もすっきりした状態になるのは、3か月から4か月後あたりと報告されています。信号を遮断すること自体はすぐに起こりますが、筋肉のボリュームが減っていくのは、体が時間をかけてゆっくり調整していく過程だからです。
ですので施術直後に鏡を見て変化がないと感じても、落ち込むのはまだ早いです。神経信号が遮断されることと筋肉が萎縮していくことは、それぞれ違うスピードで進む別々のプロセスなので、最終的な結果を見るには数か月の時間が必要になります。
噛む力が弱まっても食事に問題はない?
咬筋の力が弱まると、噛む力そのものも一時的に落ちます。実際に臨床研究でも、最大咬合力が低下したあと、時間をかけて徐々に回復していく様子が確認されています。ただし日常の食事や会話に支障が出るほどではないと報告されています。
その理由は、噛むための筋肉が咬筋ひとつだけではないからです。こめかみ部分の側頭筋や、顎の内側にある内側翼突筋といった筋肉が、咀嚼という動作を一緒に分担しています。咬筋ひとつの力が落ちても、残りの筋肉がその分をある程度カバーしてくれるので、硬いものを噛むときに少し物足りなさを感じることはあっても、食事そのものができなくなることはありません。
つまり咬筋が弱まる分だけフェイスラインはシャープになりますが、噛む機能全体が崩れないのは、他の筋肉が力を分け合ってバランスを取ってくれているからです。

効果の持続期間を分ける要因
咬筋ボトックスの効果は、通常6か月から12か月ほど持続すると報告されています。ただしこの期間は、次のような要因によって人によって変わってきます。
- 注入量:量が多いほど筋肉の活動を長く抑え、萎縮した状態が長続きする傾向があります。神経信号を遮断する効果自体が長く続くためです。
- 歯ぎしりや食いしばりの癖が残っているかどうか:施術後もこうした癖が続いていると、筋肉が再び刺激を受けて回復するスピードが早まることがあります。筋肉は使えばまた大きくなる組織だからです。
- もともとの筋肉の厚みと個人の代謝の速さ:もともと咬筋が厚くしっかりしていた方ほど、完全に萎縮するまでに時間がかかりますし、神経が再生していくスピードも人によって異なるため、回復する時期にも差が出ます。
- 施術の間隔と繰り返し回数:一定の間隔で繰り返し注入すると、筋肉が再び厚くなる隙が減り、シャープな状態がより長く保たれると言われています。
時間が経って神経信号が正常に伝わるようになると、筋肉も少しずつ運動量を取り戻し、また厚くなっていくことがあります。ですので効果を維持し続けるには、一定の期間ごとに再施術が必要になります。
施術直後の数日間の注意点
咬筋の萎縮が定着していく過程を邪魔しないことが、ケアの基本になります。
- 施術直後の数日間は、硬いものや弾力のあるものを強く噛むのは避けるのがおすすめです。筋肉を強く使うと、萎縮の進みが遅くなることがあるためです。
- 施術部位を強くマッサージしたり圧迫したりするのも、初期のうちは避けたほうがよいでしょう。注入した薬剤が周囲に広がって、他の筋肉に影響を及ぼす可能性があるためです。
- 歯ぎしりの癖がある方は、就寝時のマウスピース着用など、癖そのものを見直すことも合わせて検討すると効果的だと案内されています。筋肉が萎縮した状態で癖まで減らせれば、再び厚くなるスピードを遅らせられるためです。
- 施術後しばらくは噛む力が弱まったように感じることがありますが、時間が経つにつれて日常生活にはほとんど支障がなくなると報告されています。
References
Korean Dermatological Association, American Academy of Dermatology (AAD), and Ministry of Food and Drug Safety (MFDS).
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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