IPL1台でシミも赤みも毛穴の開きも同時にケアできる仕組みと、はっきりした限界
By Dr. Kim1 min read

鏡を見るたびに気になるところが一つや二つではないという方は少なくありません。ある日はシミが妙に濃く見え、ある日は頬の赤みが気になり、また別の日は毛穴の開きでメイクが崩れて見えます。そんなとき、皮膚科でIPL(アイピーエル)という一つの施術でこれらの悩みをまとめてケアできると聞いて、不思議に思ったことがあるのではないでしょうか。
一つの機器がどうして性質の違う悩みに同時に働きかけられるのか。その答えはIPLという名前そのものに隠れています。この記事では、IPLが肌の中で実際にどんな経路で作用するのか、そしてなぜ複数の悩みを同時にケアできると言われるのかを順を追って見ていきます。
IPLとは、そもそも何を照射する機器なのか?
IPLはIntense Pulsed Lightの略で、日本語にすると「強いパルス(短く区切って照射する)光」という意味になります。ここで大事なのは、レーザーと違って光の波長が一つに固定されていない点です。
レーザーは単色の懐中電灯だとイメージすると分かりやすいです。赤なら赤の光だけ、緑なら緑の光だけが出てきます。一方IPLは、複数の色が混ざった白色光の懐中電灯に近い存在です。実際には500ナノメートルから1200ナノメートルという幅広い帯域の光を一度に照射します。フィルターで特定の波長域だけを絞り込むこともありますが、基本的には複数の波長が混ざった状態で肌に届くという点が、レーザーとの最大の違いです。
なぜ複数の波長を一度に照射すると、複数の悩みに同時に働きかけられるのか?
光が肌の中の特定の成分に吸収されるためには、その成分が「好む」波長である必要があります。これを選択的光熱分解といいますが、言葉は難しくても仕組みはシンプルです。特定の色を好む物質にだけ光のエネルギーがすっと吸収され、その周囲の組織は比較的ダメージを受けにくいという意味です。
肌の中で光をよく吸収する代表的な成分は二つあります。一つはメラニンで、シミやくすみといった色素をつくる茶色い色素です。もう一つはヘモグロビンで、血管の中の赤い色素であり、赤みや毛細血管拡張の原因になります。
問題は、この二つが好む波長が異なる点です。メラニンは比較的短い波長側で、ヘモグロビンはもう少し幅広い範囲で光を吸収します。レーザーのように波長が一つしかなければ、どちらか一方しか狙えません。ですがIPLは幅広い帯域の光を一度に照射するため、その中にメラニンが好む波長とヘモグロビンが好む波長の両方が含まれています。一回の照射で二つのターゲットが同時に反応する理由は、ここにあります。
たとえるなら、複数の鍵を一まとめにして持ち歩くようなものです。ドアごとに合う鍵は違いますが、鍵束が一つあればどのドアの前でも合う鍵を探して使えます。IPLの幅広い光も同じで、メラニンというドアの前では短い波長が、ヘモグロビンというドアの前ではもう少し長い波長が、それぞれ勝手に反応してくれるというわけです。
シミはどんな経路で薄くなっていくのか?
メラニンに吸収された光エネルギーは熱に変わります。この熱が色素を抱えた微小な塊(メラノソーム)を瞬間的に加熱して砕くように働くと考えられています。砕かれた色素のかけらは、その後は肌表面のターンオーバーによって少しずつ押し上げられて剥がれ落ちるか、体内の掃除役の細胞によってゆっくり処理されていきます。
そのため、IPLを受けたあと5日から10日ほどはもともとのシミがむしろ濃く見えるケースがよくあります。これは色素が表面側に浮き上がってくる過程だからです。この時期を過ぎると、古い角質と一緒に剥がれ落ちながら自然に薄くなっていく流れをたどります。
赤みや毛細血管はなぜ一緒に薄くなるのか?
ヘモグロビンが吸収した光エネルギーも同じように熱に変わります。この熱が拡張した血管や異常に浮き出た毛細血管の壁に伝わることで、血管がゆっくり凝固し収縮する反応が起こると説明されています。時間が経つと、こうして反応した血管は体内で徐々に吸収されて消え、周りの正常な血管はそのまま残ります。
メラニンの反応と同じく、こちらも一度で完結するわけではありません。血管壁の厚みや位置によって熱の伝わり方が変わるため、3回から5回に分けて少しずつ薄くなっていくケースが多いと報告されています。
肌の色によって結果が変わるのはなぜか?
メラニンはシミだけにあるわけではありません。肌全体の色を決める表皮にも、メラニンは均一に広がっています。そのため、もともと肌の色が濃い方や最近日焼けをした状態だと、光がシミだけを狙って吸収されるのではなく、表皮全体にもかなり吸収されてしまいます。
背景の色が濃いと、ターゲットだけを的確に狙うのが難しくなるということです。そうなると二つの問題が起きます。一つは肝心のシミまで届くエネルギーが減ってしまうこと、もう一つは表皮全体が必要以上に熱を受けて、やけどやかえって色素が濃くなる副作用のリスクが高まることです。
だからこそ皮膚科では施術前に肌の色を確認し、最近日焼けや紫外線に当たっていないかを必ず確認します。もともと色白であったり最近の紫外線ダメージが少なかったりするほど、表皮メラニンという背景ノイズが少なく、本来のターゲットであるシミや血管にエネルギーがより正確に届きます。
フィルターを付け替えると結果が変わるのはなぜか?
IPLは500から1200ナノメートルの幅広い光を照射すると先ほど説明しました。このうち短い波長側は、表皮のメラニンに吸収される割合が特に高くなります。そのため実際の機器には、ある波長より短い光をカットするフィルターが付いています。短い波長を通さない門番だとイメージすると分かりやすいです。
フィルターの数値を低く設定すると、それより短い光だけがカットされて残りの幅広い帯域が生き残るため、メラニン側に近い反応が目立ちます。逆にフィルターの数値を高く設定すると、短い波長がより多くカットされる分、相対的にヘモグロビン側の反応が目立つようになります。
肌が薄い部位や敏感な部位、色素が特に濃い部位でフィルター値を調整して刺激の強さをコントロールするのも、この仕組みによるものです。結局、同じ機器でもどのフィルターを装着するかによって、シミ側に重点を置くのか赤み側に重点を置くのかが変わってくるということです。
レーザーと具体的に何が違うのか?
同じ光治療でも、IPLとレーザーは作動の仕組みにはっきりした違いがあります。
- 波長の幅が違います。レーザーは単一波長、IPLは幅広い帯域の波長を使います。そのためレーザーは一つのターゲットにより精密に集中でき、IPLは複数のターゲットを同時に幅広くカバーできます。
- 対応できる範囲が違います。レーザーは色素や血管など目的に合わせてそれぞれ別の機器を使うことが多いのに対し、IPLはフィルターの交換だけで一台の機器から複数の波長帯を調整でき、一回の施術セッションで複数の悩みを同時にケアする形で活用されます。
- 刺激の性質が違います。レーザーは波長が単一でエネルギーが一点に集中する傾向があり、部位によってはより強い刺激を与えられる一方、IPLはエネルギーが複数の波長に分散するため、比較的マイルドな刺激で複数回に分けて改善を促す方式に近くなります。
毛穴が引き締まって見えるのも同じ仕組みなのか?
毛穴が開いて見える理由の一つは、毛穴周辺の肌の弾力が落ち、真皮の中のコラーゲン(肌を支える柱のようなタンパク質の線維)による支持力が弱くなることです。IPLの熱刺激が真皮までじんわりと伝わると、線維芽細胞(コラーゲンをつくる細胞)が刺激を受けてコラーゲンの生成量を増やす反応を示すと考えられています。
コラーゲンが増えて肌の組織が少しずつ引き締まると、毛穴を取り囲む肌がピンと張り、毛穴が相対的に目立たなく見える効果につながることがあります。ただしこの反応はメラニンやヘモグロビンの反応のように即効性ではなく、コラーゲンが新しく合成されるまでに時間がかかるため、施術後4週間から12週間かけてゆっくり現れる変化として報告されています。
回数を分けて受ける必要があるのはなぜか?
一回の施術ですべての色素や血管が反応するわけではありません。理由は三つあります。
- 色素や血管ごとに深さや太さが異なるためです。表面に近いものから先に反応し、より深いものや太いものは3回から5回の熱刺激が積み重なってはじめて反応が出てきます。
- 安全なエネルギー範囲内で施術を行うためです。一度にあまり強いエネルギーを照射すると、やけどや色素沈着といった副作用のリスクが高まるため、安全な強さに分けて繰り返す方法が一般的に推奨されています。
- コラーゲンの再生のように時間が必要な反応があるためです。毛穴や肌のキメの改善は即効性の反応ではなく、蓄積した刺激に応じてゆっくり現れる変化であるため、3週間から4週間の間隔を空けて3回から5回施術を進める流れが自然です。
施術後は紫外線対策が特に重要だと強調されています。施術直後の肌はメラニン生成に関わる反応が敏感になっている状態のため、このタイミングで紫外線に多くさらされると、かえって色素沈着が再び濃くなる恐れがあると指摘されています。
References
Korean Dermatological Association, Ministry of Food and Drug Safety (MFDS), American Academy of Dermatology (AAD), and U.S. Food and Drug Administration (FDA).
この記事は参考になりましたか?
About this article
診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
Read next

エクセルVレーザーが赤い毛細血管と茶色いシミを1台で消す仕組みと回数、ケアのコツ
エクセルVレーザーは異なる2つの波長の光を使い、血管と色素をそれぞれ狙って吸収させる機器です。赤みとシミがなぜ1台の機械でまとめて扱えるのか、その仕組みと実際の当て方をわかりやすく解説します。
By Dr. Kim

顔がすぐ赤くなる酒さと赤み、血管が敏感になる根本原因とレーザー治療の仕組み
特に理由もないのに顔が赤くなり、ほてりが繰り返されるなら、血管が敏感になった酒さ(ロザケア)かもしれません。なぜ血管が敏感になるのか、赤みがなぜ長引くのか、血管レーザーがどんな仕組みで改善するのかをやさしく解説します。
By Dr. Lee

妊娠線ができる理由、赤い線が白い線に変わる仕組みと治療を始めるべきタイミング
妊娠線は、皮膚が短期間に急激に伸びることで真皮内のコラーゲンの柱が断裂してできる痕跡です。赤い線が白い線へと変化していく過程と、時期によって治療の反応がなぜ違うのかを、仕組みを中心にわかりやすく解説します。
By Dr. Kim