フィラーが人より早く消えてしまう人に共通する代謝と生活習慣の特徴
By Dr. Kim1 min read

フィラーを注入した後、よく気になることがあります。同じ部位に似たような量を入れたのに、なぜある人は半年もしないうちに萎んでしまい、ある人は一年経っても形をキープしているのでしょうか。
この差は偶然ではありません。フィラーが体内で消えていくスピードは、フィラー自体の性質だけでなく、その人の代謝速度、施術部位がどれだけ動くか、どのくらいの深さにどれだけの量が入ったか、体がフィラーをどれくらい異物として認識するかによって決まります。フィラーが早く消える人は、こうした要因がいくつも重なっているケースが多いのです。
フィラーはなぜ体内で自然に消えていくのか
現在広く使われているフィラーのほとんどは、ヒアルロン酸(HA、皮膚にもともと存在し水分を抱え込む働きを持つ成分)を主原料にしています。ヒアルロン酸の分子同士を化学的に結び付けてジェル状にしたものがフィラーです。
問題は、体内にヒアルロン酸を分解する酵素がもとから存在している点です。ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)というこの酵素は、本来は体内で古くなったヒアルロン酸を片付ける掃除係のような役割を担っています。フィラーとして入ったヒアルロン酸も、この酵素に見つかれば少しずつ切り刻まれて消えていきます。
さらに、白血球の一種であるマクロファージ(macrophage、体内の異物を食べて処理する免疫細胞)もフィラーのジェルを異物と認識し、じわじわと取り込んで分解します。酵素がハサミで切る役目だとすれば、マクロファージはその断片を拾い集めて処理する清掃車のような存在です。この二つが同時に働くことで、フィラーは時間とともに体外へ排出されていきます。
フィラーの種類によって持続期間が異なる理由
同じヒアルロン酸フィラーでも、製品によって持続期間は違います。ここで鍵になるのが架橋度、つまりヒアルロン酸の分子同士がどれだけ密に、そして強固に結び付いているかです。
分子の結び付きが緩ければ、酵素がその隙間に入り込んで切りやすくなります。逆に分子を密に網目状に固く結び付けておけば、酵素が近づきにくくなり、分解のスピードも遅くなります。目の粗い網と目の細かい網、どちらの結び目がほどきにくいかを想像すると分かりやすいでしょう。
一般的に、ボリュームを大きく出すために使うフィラーは組織が固く密なので長持ちしやすく、唇のように柔らかく自然な質感を出したいフィラーは相対的に緩めに作られているため早めに消えていく傾向があると言われています。柔らかさと持続力は、ある程度トレードオフの関係にあるわけです。
代謝が速い人ほど早く吸収される理由
同じフィラー、同じ部位でも、人によって吸収のスピードは異なります。最も大きな理由の一つが、個人の代謝速度です。
血行が活発で細胞のターンオーバー(古い細胞が死んで新しい細胞に入れ替わる過程)が速い人は、その分組織内で酵素や免疫細胞も活発に動き回っています。フィラーがその活動範囲に置かれていれば、それだけさらされる頻度が高くなり、さらされる回数が多いほど分解も進みやすくなります。
若く新陳代謝が活発な人ほど、この傾向が顕著だと報告されることが多くあります。皮肉なことに、体が健康で回復力が高いほど、フィラーもこまめに片付けられてしまうというわけです。逆に代謝がゆっくりな人は、フィラーが相対的に長く形を保つ傾向にあります。
普段からよく運動をして全身の血行が活発な人も、同じ理由で吸収が早めになりやすい傾向があります。運動をすると心拍数が上がり血管が拡張して、顔を含む全身の血流量が一時的に増えます。血流が増えるということは、それだけヒアルロニダーゼやマクロファージがフィラーの周りをより頻繁に通り過ぎるということでもあり、運動の習慣が多いほどフィラーもさらされやすくなるのです。
よく動く部位ほど早く消える理由
唇や法令線のように表情を作るたびに大きく動く部位は、フィラーが特に早く消えやすいことで知られています。理由は物理的な刺激と関係しています。
話す、笑う、食べるといった動作のたびに、口周りの筋肉は一日に何千回と収縮と弛緩を繰り返します。そのたびに、その下にあるフィラーのジェルも押されたり伸ばされたりする刺激を受けます。輪ゴムをじっと置いておくときより、繰り返し引っ張って離すときのほうが早く伸びてしまうのと似た仕組みです。
また、動きの多い部位は血流量も相対的に豊富なことが多くあります。血流が多いということは、それだけ分解酵素や免疫細胞がその場所を頻繁に通過するということでもあります。物理的な刺激と血流へのさらされ方が重なることで、額や頬骨のように比較的動きの少ない部位よりもずっと早く吸収されるケースが多いのです。
施術の深さと注入量が持続期間を左右する理由
同じ製品でも、どこにどれだけ入れたかによって持続期間は変わります。いくつかの要因が同時に働いています。
- 注入の深さ: 皮膚の浅い層に入れるほど血流や酵素にさらされる頻度が高く、早く吸収されます。逆に骨に近い深い層は相対的に血流が少なく刺激も少ないため、長く維持されやすい傾向があります。
- 注入量: 少量を入れれば、分解酵素がその量を片付けるのにかかる時間も短くなります。分解のスピード自体が同じでも、もともとの量が少なければ全て消えるまでの時間は短くなるわけです。
- 分散の仕方: 一箇所に固めて注入するより、複数の層や複数のポイントに分けて入れると、組織と接する表面積が広がり、かえって酵素にさらされる面が増えることがあります。施術者が注入パターンをどう設計するかも、持続期間に影響すると言われています。
こうした理由から、施術者ごと、部位ごとに推奨される深さと量は異なります。たくさん入れれば長持ちするというものでもなく、深く入れさえすれば自然になるというものでもないため、バランスを取る過程が必要になります。
アフターケアの習慣はフィラーの持続にどれくらい影響するか
施術後の生活習慣も、フィラーがどれくらい長く維持されるかに影響すると言われています。
- サウナや岩盤浴のように高温にたびたびさらされると、その部位の血流が増えてフィラーが普段より早く分解されることがあります。熱は血管を拡張させ、酵素や免疫細胞がより頻繁に行き来する状態を作るためです。
- 強めのマッサージや圧迫を繰り返すと、フィラーのジェルが物理的に押されたり散らされたりする刺激を継続的に受けます。定着する前に揺さぶられると、位置がずれたり分散のスピードが速まったりすることがあります。
- 喫煙は血流や微小循環を悪化させる習慣として知られており、組織全体の回復力や代謝バランスに影響を与える可能性があります。
- 紫外線への露出が多いと、フィラーを取り囲む皮膚や組織自体の支持力が弱くなることがあり、フィラーが定着している環境そのものが変化する可能性があります。
結局のところ、フィラーがどれくらい長持ちするかは製品ひとつだけで決まるものではありません。個人の代謝、施術部位、施術の方法、そして施術後の生活習慣が積み重なって生まれる結果に近いと言えます。ですから、同じクリニックで同じ製品を使って施術を受けても、持続期間が人によって数ヶ月単位で変わってくるのは決して不思議なことではありません。
もし自分は人より早く消えてしまうタイプだと感じるなら、製品のせいにする前に、自分の生活習慣や施術部位の特性を一緒に見直してみるのも一つの方法です。代謝速度や部位の動きのように変えにくい要因もありますが、施術後のケアのように自分で調整できる部分も確かにあるからです。
References
Korean Dermatological Association, American Academy of Dermatology (AAD), and Ministry of Food and Drug Safety (MFDS).
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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