エランセPCLフィラーがボリュームとコラーゲン刺激を同時に叶える仕組みと持続期間
By Dr. Kim1 min read

フィラーといえば、まずヒアルロン酸(HA)フィラーを思い浮かべる方が多いはずです。注入した瞬間にボリュームが出て、時間が経つと体にゆっくり吸収されていくタイプです。ところがエランセは少し違う仕組みで働きます。注入直後にボリュームを満たす点は同じですが、その中に含まれるごく小さな粒が、施術後12週間かけて自分のコラーゲンを新しく呼び集めるという、もう一つの過程が別に用意されています。
そのためエランセは「即効性と長期効果を同時に出す」とよく言われます。これが本当に可能な理由と、時間が経つにつれて内部で何が起きているのかを知れば、なぜ他のフィラーと持続期間が違うのかも自然に理解できます。
エランセは他のフィラーと何が違うのか?
エランセは単一成分のフィラーではありません。大きく分けて2つの材料が組み合わさっています。ひとつは体に無害で、時間とともに水のようにゆっくり分解されていくゲル、もうひとつはそのゲルの中に均一に分散している、ごく小さな粒であるPCL(ポリカプロラクトン、polycaprolactone)微粒子です。
たとえるなら、ゲルは粒を運ぶ水のような媒体で、PCL微粒子はその水の中に浮かぶごく小さな種のようなものです。注射器で注入する瞬間はゲルと種が一緒に入ってボリュームをつくり、時間が経つとゲルは徐々に抜けて種だけが残り、そこで新しい組織を育てていきます。この2つの材料がそれぞれ違うタイミングで違う役割を果たすという点が、エランセを理解するうえでの核心です。
花壇にじょうろで水と種を一緒にまくところを想像するとわかりやすいでしょう。水は数日後には土の中に染み込んで消えてしまいますが、種は土の中に残ってゆっくり根を張っていきます。エランセも同じで、ゲルが先に体に吸収されてスペースを空け、PCLの粒はそこに長く残って新しい組織をつくり続けます。
ゲルが瞬時にボリュームをつくる仕組みは?
エランセのゲル成分はカルボキシメチルセルロース(CMC)という物質です。名前は聞き慣れませんが、働き自体はシンプルです。水分を含んで膨らむ性質があり、注射器で押し出した瞬間にその場所の体積を満たすクッションのような役割を果たします。乾いたスポンジを水に浸すと一気に膨らむ様子を思い浮かべると理解しやすいでしょう。この水を含む性質のおかげで、特別な化学反応を起こさなくても、その場ですぐに体積をつくり出せるのです。
このゲルのおかげで、施術直後から目に見えるボリューム効果が現れます。HAフィラーが注入直後になめらかに満たされるのと似た原理です。ただしエランセのゲルは、時間が経つと体の中で水のように徐々に吸収されて抜けていきます。通常は6週間から8週間かけて、このゲル成分が自然に減っていくとされています。ゲルだけであれば時間が経つほどボリュームが減り続けるはずですが、実際にはそのようにしぼんでいかず、長く維持されるケースが多く見られます。その理由が、次に説明するPCL微粒子にあります。
PCL微粒子がコラーゲンを呼び込む理由は?
PCLは手術用の糸や医療用材料にもよく使われる、体の中でとてもゆっくり安全に分解される合成高分子です。エランセの中では、肉眼ではほとんど見えないほど小さな丸い粒の形で、ゲルの中に均一に広がっています。
この粒が皮膚の中に定着すると、体はそれを元からあった自分の組織ではなく、新しく入ってきた異物として認識します。体は異物が入ってくると、その周りを包んで新しい組織で覆おうとする反応を自然に起こしますが、この過程でコラーゲンをつくる細胞である線維芽細胞が粒の周りに集まってきます。コラーゲンは肌を支える柱のようなタンパク質だと考えるとイメージしやすいでしょう。線維芽細胞がその柱を新しく編み上げ始めることで、粒の一つひとつを包む薄いコラーゲンの膜ができていきます。
つまりPCLの粒は、それ自体が体積を満たすのではなく、自分の体に自らコラーゲンをつくらせる刺激剤としての役割を果たしています。種をまくとそこに根が育っていくのと似た仕組みです。
体に小さなとげが刺さったとき、その周りに新しい肉が盛り上がってとげを包み込む反応にも似ています。手術後に縫った糸がゆっくり溶けながら、その周りに丈夫な組織が定着していく過程とも近い理屈で、だからこそPCLの粒は体の中で安全に使えるのです。
この反応が特別なのは、ひとつの粒の周りだけで終わるのではなく、粒が広がっている範囲全体で均一に起こるという点です。一か所に固まるのではなくゲルの中に均等に混ざっているため、コラーゲンもそれだけ均一に広がり、自然なボリュームにつながると説明されています。
コラーゲンが定着するまでどんな過程を経るのか?
この反応は一夜にして終わるものではありません。ひとつの粒をコラーゲンで包み込むのに4週間から6週間かかり、施術部位全体にコラーゲンが十分に定着するまでには、通常12週間前後かかると報告されています。
体が新しくコラーゲンを編む速さは決まっていて、急いでも早まるわけではありません。傷ができたとき新しい肉が一日で盛り上がるのではなく、1週間から2週間かけて徐々に治っていくのと同じ理屈です。
時間が経つ間、体の中では2つのことが同時に起きています。最初に入れたゲルは徐々に吸収されて抜けていき、その場所を新しくつくられたコラーゲンが埋めていきます。まるでバトンを受け渡すような流れです。初期はゲルがボリュームを担当し、時間が経つにつれて自分自身がつくったコラーゲンがその役割を引き継いでいきます。そのため施術直後のボリュームと12週間後のボリュームは、そもそも仕組みが違います。片方は入れたゲルであり、もう片方は自分の体が新しくつくった本物の組織です。
種類によって持続期間が違う理由は?
エランセは単一製品ではなく、S、M、L、Eといったいくつかの種類に分かれており、種類ごとに持続する期間が異なるとされています。同じ仕組みを使っているのに、なぜ期間に差が出るのでしょうか。答えはPCL粒の大きさとゲルの粘度にあります。
- 粒の大きさが大きいほど、体が分解するのに時間がかかります。砂糖を大きな塊で入れると長く残り、細かい粉で入れるとすぐに溶けるのと似た理屈で、粒ひとつの体積に対して体が触れられる表面積が相対的に狭くなるためです。分解がゆっくり進む分、コラーゲンを刺激する期間も長くなるため、粒が大きい種類ほど全体の持続期間も長くなる傾向があります。
- ゲルの粘度が高いほど、注入した部位に長くとどまります。粘度が高い種類は施術直後のしっかりしたボリューム感が長く続くとされており、鼻やあごのように輪郭をはっきり出したい部位に主に使われます。
- 目元のように皮膚が薄く敏感な部位に使う種類は、粘度を下げて粒もより細かくつくられています。薄い皮膚の下でかたまりや突っ張り感が出ないよう、自然に広がるようにするためです。
こうした違いがあるため、施術を受ける部位や希望する持続期間によって、どの種類を使うかが変わってきます。ボリュームを長く保ちたい部位なのか、薄く自然な仕上がりが求められる部位なのかによって、医師が種類を使い分ける理由はここにあります。
施術後の維持と管理はどうすればいいのか?
コラーゲンが定着していく過程は、施術一回で終わる即座の反応ではなく、12週間かけてゆっくり進む生物学的なプロセスです。そのため、施術直後の2日から5日の間に見えるむくみやボリュームの変化だけで、最終的な結果を判断するのは早すぎます。
施術部位を強く圧迫したりマッサージしたりする行為は、ゲルと粒を望まない方向に広げてしまう可能性があるため避けたほうがよいと案内されています。ゲルがまだ固まっていない状態で何度も押すと、粒が本来の位置からずれて片側に寄り、でこぼこと固まってしまうことがあるからです。そのため施術直後の1週間から2週間は触らずそっとしておくほうが、きれいに定着するのに役立ちます。またコラーゲンが定着していく過程は個人の回復力や生活習慣にも影響を受けることがあるため、十分な時間をかけて経過を見守り、必要であれば医師に相談し直すという流れが自然です。
施術直後の2日から5日の間は、注射部位に多少のむくみやあざが出ることがありますが、これはゲルと粒を注入する過程で見られる一般的な反応として知られており、時間が経てばほとんど落ち着きます。持続期間が終わったあとは、再び施術を受けて同じ過程を繰り返すことで効果をつなげていくケースが多く見られます。
References
Korean Dermatological Association, Ministry of Food and Drug Safety (MFDS), American Academy of Dermatology (AAD), and U.S. Food and Drug Administration (FDA).
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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