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脇のにおいの原因と制汗剤、ボトックス施術まで

By Dr. Kim1 min read

汗そのものにはもともと臭いはありません。ところが、脇の下や脚の付け根など、なぜか臭いが気になる部位があります。その理由を知るには、汗が出ることと臭いが出ることを分けて考える必要があります。実はこの二つは、まったく別の話だからです。体には汗腺が二種類あり、臭いは汗そのものではなく、その上で繁殖する細菌が作り出す結果にすぎません。ここでは、この二つの流れを一つずつ整理しながら、なぜ特定の部位だけ臭いが気になるのか、そして汗や臭いを抑える方法がそれぞれどんな仕組みで働くのかをまとめました。

脇のにおいはなぜとくに強い?

体全体に汗腺が広がっていますが、脇の下や脚の付け根には、アポクリン腺(apocrine gland、臭いに関わる汗腺)が特に多く集まっています。この汗腺は思春期の頃、ホルモンの影響を受けて働き始めます。そのため、子どもの頃はなかった臭いが、思春期以降に急に気になり始めるケースが少なくありません。

アポクリン腺が作る汗は、水分よりも脂質やタンパク質の成分がずっと多いのが特徴です。透明な水というより、油とタンパク質が混ざったとろみのある液体に近いとイメージするとわかりやすいです。この成分自体にはもともとほとんど臭いがありませんが、皮膚の上にいる細菌にとっては、とても良いエサになります。そのため、アポクリン腺が集まっている部位ほど細菌が活発に増え、それだけ臭いも強くなるのです。

汗腺は何種類ある?

汗腺は大きく二つに分けられます。一つは体温を調節するエクリン腺(eccrine gland)、もう一つは先ほど紹介したアポクリン腺です。エクリン腺は手のひらや足の裏を含め、体全体に広く分布していて、水分と塩分中心のさらさらした汗を出します。暑いときや運動したときに出る汗は、ほとんどがこの汗腺から出るものです。

エクリン腺から出る汗は、それ自体はほとんど臭いがありません。体温を下げることが目的なので、成分もシンプルに作られているというわけです。一方でアポクリン腺は、脇の下や脚の付け根、耳の周りなど決まった部位にしかなく、緊張したり感情が揺れ動いたりするときに特に多く分泌されます。試験や発表の前に脇の下だけ汗をかきやすいのも、このためです。

汗がにおいに変わる過程

アポクリン腺から出た汗そのものには臭いがないと、先ほど説明しました。ところが、この汗が皮膚の表面に触れると、そこに住んでいる細菌、特にコリネバクテリウム(Corynebacterium)やブドウ球菌(Staphylococcus)の仲間が、その成分を分解し始めます。

この過程は、食べ物が傷んでいく過程とよく似ています。牛乳を常温で長く置くと、細菌が乳糖やタンパク質を分解して酸っぱい臭いが出てくるのと同じように、皮膚の上の細菌も汗の中の脂肪酸やタンパク質を細かく分解しながら、独特の臭い物質を作り出します。このとき代表的に作られるのが、短鎖脂肪酸や硫黄を含む化合物で、これらの物質こそが体臭として感じられる臭いの正体です。

そのため、汗の量そのものよりも、細菌がどれだけ活発に増えるかのほうが臭いの強さを大きく左右します。同じ量の汗をかいても、人によって臭いの度合いが違うのもこのためです。

制汗剤と消臭剤は何が違う?

汗や臭いを抑える製品は、大きく二つの系統に分かれます。一つは汗そのものを減らす制汗剤(antiperspirant)、もう一つは臭いだけを抑えたり細菌を抑えたりするデオドラント(deodorant)です。この二つは働き方がまったく違います。

制汗剤の主な成分は、塩化アルミニウム(aluminum chloride)やクロルヒドロキシアルミニウム(aluminum chlorohydrate)といったアルミニウム塩です。この成分が肌に触れると、汗腺の出口にジェル状の栓を作り、汗が外に出る通り道を一時的に狭くします。ホースの先を軽くつまんで水の勢いを弱めるのと似た仕組みです。

一方でデオドラントは、汗の量はそのままにして、香料で臭いをカバーしたり、銀成分やトリクロサン(triclosan)といった抗菌成分で細菌の増殖だけを抑えたりします。そのため、汗の量自体が多い人には制汗剤が、汗よりも臭いのほうが気になる人にはデオドラントのほうが合っている場合があります。

ボトックスで汗が減る仕組みと持続期間

汗を減らす方法の一つとして、ボツリヌストキシン(botulinum toxin)、いわゆるボトックスの注射が使われることもあります。仕組みは顔のしわに使うときと同じです。神経の末端から汗腺を刺激する神経伝達物質、アセチルコリン(acetylcholine)が出るのをブロックするというものです。

汗腺は神経からの信号を受け取って初めて汗を作ります。ボトックスがこの信号伝達を遮断すると、汗腺は神経からの指示を受け取れない状態になり、働きを止めます。スイッチと電球の関係で考えるとわかりやすいです。電球自体は壊れていなくても、スイッチにつながる配線を切ってしまえば、明かりはつきません。

この効果は脇の下の多汗症(過剰な発汗)治療として広く使われていて、通常は施術後4か月から6か月ほど効果が続き、人によっては12か月近く持続することも報告されています。神経の末端は時間が経つと再び伸びて新しいつながりを作るため、効果が永久に続くわけではありません。

腋窩多汗症の患者320人を対象とした二重盲検試験では、ボツリヌストキシンを打った側の94%が4週間後に汗が半分以下に減りました。プラセボ群は36%にとどまり、神経信号を遮断する仕組みが数字でも大きな差を生んだわけです。
腋窩多汗症の患者320人を対象とした二重盲検試験では、ボツリヌストキシンを打った側の94%が4週間後に汗が半分以下に減りました。プラセボ群は36%にとどまり、神経信号を遮断する仕組みが数字でも大きな差を生んだわけです。

汗腺そのものをなくす施術もある?

制汗剤やボトックスは、汗腺の働きを一時的に抑える方法です。一方で、汗腺そのものの数を減らそうとする施術もあります。代表的なのが、マイクロ波(microwave)エネルギーを皮膚の深い層に届ける方法です。

汗腺は皮膚と脂肪層が接する境目あたりに位置しています。この部位に正確に熱エネルギーを届けると、汗腺の組織がダメージを受けて機能を失います。ハチを一匹ずつ追い払うのではなく、巣そのものをなくしてしまうようなアプローチに近いといえます。

こうしてダメージを受けた汗腺は再び生えてこないとされていて、1、2回の施術だけでも効果が長く続くケースが多いと報告されています。ただし熱が伝わる範囲が広いため、施術後は数日間、腫れや張った感じが出ることがあり、回復期間には余裕を持たせることが勧められます。

汗腺自体に熱を加えるマイクロ波施術についても、偽の施術と比較した研究があります。施術から1か月後、実際に治療を受けたグループでは89%で発汗症状スコアが改善し、偽の施術を受けたグループでは54%にとどまりました。損傷した汗腺は再生しないため、6か月後も両グループの差はそのまま保たれていました。
汗腺自体に熱を加えるマイクロ波施術についても、偽の施術と比較した研究があります。施術から1か月後、実際に治療を受けたグループでは89%で発汗症状スコアが改善し、偽の施術を受けたグループでは54%にとどまりました。損傷した汗腺は再生しないため、6か月後も両グループの差はそのまま保たれていました。

施術なしでにおいを減らす生活習慣

施術や製品に頼らなくても、日常生活の中でできるケアがあります。仕組みがわかると、こうした習慣がなぜ役立つのかも自然と理解できます。

  • 脇毛を短く整える: 毛があると表面積が広くなり、細菌が住み着く場所が増えます。毛を短く整えると、細菌が増殖するスペースそのものが減ります。
  • 通気性の良い天然素材の服を着る: 化学繊維は湿気をこもらせやすい一方、綿やリネンなどの天然素材は汗を早く乾かします。湿気が長く残るほど、細菌が繁殖しやすい環境になるためです。
  • 汗をかいたらできるだけ早く洗い流す: 細菌が汗の成分を分解するには時間がかかります。汗が肌の上に長くとどまるほど分解が進み、それだけ臭い物質もたまっていきます。
  • 刺激の強い食べ物やお酒を控える: 辛くて脂っこい食べ物やアルコールは、汗の成分そのものを少し濃くする傾向があるといわれています。汗の中の成分が濃くなると、細菌が分解する材料もそれだけ増えるというわけです。

こうした習慣はすぐに効果が出るわけではありませんが、臭いが作られる過程を途中で一つずつ断ち切る方法なので、続けることで役立ちます。

References

Korean Dermatological Association, American Academy of Dermatology (AAD), and Ministry of Food and Drug Safety (MFDS).

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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。

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