口元の縦じわとバーコードじわはなぜできる?フィラー・ボトックス・レーザーで整える方法
By Dr. Kim1 min read

唇の上下に縦に刻まれる細かいしわを、バーコードじわと呼ぶことがあります。細かい縦線が商品ラベルのバーコードに似ていることからついた呼び名です。笑ったときに口元に細かく寄ることから、猫じわと呼ばれることもあります。普段はあまり気にならなくても、口紅がしわに沿ってにじみ始めると急に気になる、という方は少なくありません。
このしわは、実は一つの原因だけで生まれるものではありません。口をすぼめる筋肉が繰り返し折りたたまれること、加齢とともに肌の中のコラーゲンやボリュームが減っていくこと、そこに紫外線と喫煙が重なります。だからこそ、原因によってフィラーで埋めるのか、ボトックスで筋肉の力を抜くのか、ラディエスやレーザーで肌質そのものを底上げするのかが変わってきます。それぞれの方法がどんな仕組みで働き、どこまで効果が確認されているのか、そして口周りの血管や発音への配慮まで、実際の論文をもとに一つずつ整理していきます。

口元の縦じわはどうしてできるのか
口元の縦じわの一つ目の原因は筋肉です。唇を丸くすぼめる口輪筋(orbicularis oris)という筋肉があり、話す、ストローをくわえる、笑うといった動作のたびに休みなく収縮します。紙を同じ場所で何度も折ると折り目が残るように、筋肉が繰り返し折りたたまれる場所に、少しずつ縦線が刻まれていきます。そのため、よく笑ったり口をすぼめる表情をする人ほど、このしわが少し早く現れる傾向があります。
二つ目の原因は肌そのものの老化です。年齢を重ねると真皮のコラーゲンが減り、唇の上の皮膚が薄くなって、皮下脂肪や骨の支えも弱くなります。内側から押し上げていた力が抜けることで、細かいしわがより目立つようになるのです。加えて、唇の上の皮膚はもともと皮脂腺が少なく乾燥しやすいため、他の部位よりも小じわが早く現れやすい場所でもあります。くっきりしていた唇の輪郭もぼやけていき、縦線がより長く見えるようになります。
そこに紫外線と喫煙が拍車をかけます。紫外線は肌の中のコラーゲンを分解し、たばこの煙は唇を繰り返しすぼめさせるうえに血流まで下げてしまいます。つまり口元の縦じわは、筋肉が作るしわと肌の老化が同じ場所で重なった結果なのです。だからこそ、一つの施術だけで完全に消そうとするよりも、どの原因の比重が大きいかを見極めてアプローチを選ぶほうが自然な仕上がりになります。

HAフィラーは浅い層をどう満たすのか
へこんだ部分をすぐに埋めたいときに、もっともよく使われるのがHA(ヒアルロン酸)フィラーです。浅い真皮層に少量を注入して縦じわを直接埋めたり、ぼやけた唇の輪郭に沿ってラインを描き直したりします。すると、すぐにでも滑らかな変化が実感できます。必要に応じて下がり気味の口角を軽く支え、表情の印象を明るく整えることもあります。

このときに大切なのがフィラーの硬さです。唇の周りは話したり笑ったりするたびに常に動く部位のため、硬めのフィラーを入れると押されるような違和感が出たり、しこりとして触れやすくなったりします。そのため、やわらかいゼリーのように広がる製剤を浅く使うのが基本です。やわらかい製品の中でも、浅い層向けに作られたベロテロ ソフト(Belotero Soft)がおすすめです。粒子が細かくしなやかで、小じわのように繊細な部位にも薄く均一に広がり、表面が透けて見えたりしこりになったりしにくいのが特徴です。

効果はデータでも確認されています。口元の小じわを対象にしたランダム化比較試験(202人)では、フィラーを注入した側で8週目にしわが改善した人が80.7%だったのに対し、注入していない側はわずか7.8%にとどまりました。1年が経過した時点でも66%は改善が持続していました。上唇の小じわだけを見た別の研究でも成功率が80.2%対11.9%と大きく差がつき、効果はおよそ6か月まで続いたとされています。さらにHAフィラーは、思ったような仕上がりにならなかったり不具合が起きたりした場合でも、ヒアルロニダーゼという分解酵素で溶かして元に戻せるため、初めて試す方にとってもハードルが低いのが利点です。
ボトックスで口輪筋の力を抜くと何が変わるのか
これまで見てきたフィラーがへこんだ部分を埋めるアプローチだとすれば、ボトックスはしわを作る筋肉そのものに働きかけます。口輪筋が強くすぼまるほど縦じわは深く折りたたまれますが、この筋肉の力をほんの少しだけ抜いてあげると、折り目が浅くなります。あわせて唇の輪郭が少し外側にめくれ、ふっくらして見える効果も得られます。
ポイントは注入量です。口の周りは発音や表情を担う部位のため、少し量が多いだけでもすぐに変化が出てしまいます。実際、口輪筋の力が抜けすぎると「パ」や「バ」の発音が漏れやすくなり、ストローで吸ったり口笛を吹いたりするのも難しくなります。そのため、輪郭の上あたりに少量を左右対称に分けて注入するのが基本です。
効果と限界の両方を押さえておく必要があります。口元にボトックスを使った18人の研究では、しわがやわらかくなり唇がふっくらする変化が見られ、72%が施術を継続していました。それだけ満足度が低くなかったということです。ただし持続期間はおおむね3~4か月で、また注入が必要になりますし、すでに深く刻まれた静的なしわには筋肉を緩めるだけでは十分ではありません。そのため、ボトックスは単独よりもフィラーやラディエスと組み合わせて使われることが多いです。
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| 対象 | 口輪筋の過活動 |
| 用量 | 少量、左右対称 |
| 過剰時 | 発音、ストロー困難 |
| 持続 | 3~4か月 |

ラディエスは肌質とハリをどう底上げするのか
ラディエス(Radiesse)はCaHA(カルシウムヒドロキシアパタイト)フィラーです。私たちの骨や歯にも含まれるカルシウム成分の微細な粒子をジェルに混ぜた製品で、二つの働きを同時に行います。まずジェルがへこんだ部分をすぐに埋め、続いて粒子が肌の中の線維芽細胞を刺激してコラーゲンとエラスチンを新しく作らせます。種をまいておくと時間が経って芽が出てくるのに似ています。

口元の縦じわのように薄く繊細な部位には、ハイパーダイリュート法が使われます。ラディエスを生理食塩水で水のように薄く希釈し、深くしこりを作るのではなく、浅く伸ばすように広範囲に広げていく方法です。こうすることで、ボリュームを大きく増やすことなく肌質とハリを引き上げることができます。
根拠も積み上がってきています。ハイパーダイリュートしたラディエスを口元に2回注入した研究(12人)では、しわの等級が1段階以上改善した人が83%、施術した医療者側が改善を確認した割合は91%でした。首を対象に組織を調べた研究では、コラーゲンが4か月、弾性線維と新しい血管が4~7か月の間に明らかに増えていました。ただし一つだけ知っておきたい点があります。HAフィラーと違い、ラディエスはヒアルロニダーゼで溶かすことができないため、最初から少量を浅く、慎重に注入する必要があります。

レーザーとスキンブースターは肌のきめをどう整えるのか
フィラーが部分を埋め、ボトックスが筋肉を緩めるとすれば、レーザーとスキンブースターは肌の土台そのものに働きかけます。折りたたまれた跡が長く続き、肌のきめまで粗くなってしまった場合に相性がよいアプローチです。
フラクショナルレーザーは肌にごく細い熱の通り道を無数に作り、そこが治る過程でコラーゲンが新しく満ちてくるようにします。フラクショナルCO2レーザーで光老化した肌を調べた研究では、6か月後に小じわが平均52.5%、肌のきめが56%、全体の印象が61.5%改善していました。小じわが薄くなるだけでなく、毛穴や肌のトーンまで一緒に整うのがレーザーの強みです。ただし一度で全部が伸びるというより数週間かけて肌質を整えていくもので、施術後数日は赤みや皮むけが出る回復期間があります。
スキンブースターはより軽めのアプローチです。薄めたHAやPNのような成分を肌の浅い層に細かく分けて注入し、水分ときめを整えます。深いしわを伸ばす施術ではありませんが、表面をしっとりと滑らかに整えることで、フィラーやレーザーの結果をより自然に見せてくれます。そのため、この二つは単独よりも他の施術と組み合わせて仕上げの段階に添えられることが多いです。
原因ごとにどう組み合わせて向き合えばいいのか
答えは原因の中にあります。浅い小じわが目立つ場合はやわらかいHAフィラー、口をすぼめたときに深くなるしわにはボトックス、肌質やハリの低下にはラディエスやレーザー、スキンブースターが合います。深く固定されたしわは、埋めることと肌質改善を一緒に進めるのが自然です。
| 主な原因 | 合うアプローチ |
|---|---|
| 浅い小じわ | やわらかいHAフィラー |
| すぼめると深くなる | ボトックス少量 |
| きめ、ハリの低下 | ラディエス、レーザー |
| 深く固定されたしわ | フィラーとレーザーの併用 |
何から始めるか迷ったら、鏡の前で唇の力を抜いたまま縦線が見えるかどうかを確認してみるとヒントになります。すぼめたときだけ見えるなら筋肉の比重が大きく、力を抜いても線が残っているなら肌やボリュームの比重が大きい傾向です。一度に全部を解決しようとせず、比重の大きい原因から順に整えていくだけでも、自然な仕上がりに近づけます。
安全面にも目を配っておきましょう。口の周りには上唇へ向かう動脈が通っており、フィラーが誤って血管の中に入ってしまうと、まれではありますが問題につながることがあります。注入直後に痛みが特に強かったり、皮膚が白く変化したりした場合は、すぐに施術者に伝える必要があります。HAフィラーであればこうしたときにヒアルロニダーゼで溶かして元に戻せますが、ラディエスはこの酵素で溶けないため、少量ずつ浅く注入する慎重さがより重要になります。だからこそ、製品名と同じくらい、口周りの血管をよく理解している施術者を選ぶことが安全のかなめになります。 </content> </invoke>
この記事は参考になりましたか?
About this article
診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
Read next

ほうれい線は原因の見極めが先、フィラー・リフティング・コラーゲン注射の効果と持続期間
ほうれい線がたるみ、ボリューム不足、肌の老化のどれで生じたかによって、フィラーとリフティング、コラーゲン刺激剤のどれが合うのか、それぞれ効果がどれくらい続くのか、そして小鼻横の血管の安全性まで、実際の論文の数値でわかりやすく整理します。
By Dr. Lee

目の下のくぼみとクマ、フィラーで影を満たす効果と持続期間、チンダル現象を避ける方法まで
目の下が暗くくぼんで見える影は、色素よりも目の下のくぼみと陰影が原因であることが多いです。涙溝靭帯と眼窩下のくぼみで影ができる原理、やわらかいヒアルロン酸フィラーを浅く少量満たして影を消す方法を紹介します。薄い皮膚とチンダル現象、むくみが起きやすい理由、そして効果がどれくらい持続しどうケアすればよいかまで、実際の論文データをもとにわかりやすくまとめました。
By Dr. Kim

ビタミンCセラム、本当に効果があるの?抗酸化・美白の仕組みから正しい使い方と保管まで
ビタミンCセラムが肌にもたらす抗酸化・コラーゲン合成・美白の3つの働きと、どの種類を選べばいいか、濃度とpHの見方、日焼け止めと組み合わせると効果が上がる理由、そして正しく使う順番を、実際の論文データをもとにわかりやすくまとめました。
By Dr. Lee