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バクチオールの効果とレチノールの違い、刺激と使い方まで

By Dr. Kim1 min read

バクチオールはここ数年、化粧品の成分表示にめっきり登場するようになった名前です。よく「天然のレチノール」として紹介されますが、実はバクチオールとレチノールは化学構造がまったく異なる物質です。それなのに肌の上ではレチノールと似た方向の変化を起こします。この点がバクチオールを興味深い成分にしています。

構造が違うのに効果は似ているというのは、一見すると矛盾のように聞こえます。ですが皮膚細胞の立場から見れば、それほど不思議なことではありません。鍵の形が違っても、結局は同じ錠前を別のやり方で開けられるのと似たようなものです。バクチオールがどんな経路でレチノールに似た結果を出すのか、そしてなぜ刺激が少ないと言われているのか、順番に見ていきます。

バクチオールはどんな成分?

バクチオール(bakuchiol)は、オランダビユというマメ科植物の種子や葉から抽出される成分です。この植物はインドや中国などで古くから生薬として使われてきたため、バクチオールも元々は伝統医学で扱われていた物質でした。

化粧品成分として注目されるようになったのは比較的最近のことです。研究者たちがさまざまな植物抽出物の皮膚遺伝子反応を大規模に比較していたところ、バクチオールを塗った皮膚細胞の反応パターンが、レチノールを塗った細胞と驚くほど重なることが分かりました。つまり、偶然見つかった代替成分に近い存在です。

レチノールと構造が違っても効果は似ている?

レチノールはビタミンA系の物質です。化学的にはレチノイドというグループに属しますが、バクチオールはこのグループと構造上まったく関連のないメロテルペン系の物質です。簡単に言えば、根っこから違う家系の成分ということになります。

それなのに、両方の成分を塗った皮膚細胞を調べてみると、オンとオフが切り替わる遺伝子のリストがかなりの部分で重なります。特に、肌を下支えするコラーゲン1型と4型を作る遺伝子が、どちらの成分でも同じように増えることが確認されています。まるで違う道を歩いたのに、同じ目的地にたどり着いたような格好です。

受容体を介さない作用経路

レチノール自体は受容体に直接くっつくわけではありません。皮膚細胞の中でまずレチナールに変わり、さらにレチノイン酸に変換されてから、レチノイン酸受容体(RAR)というたんぱく質に結合して遺伝子発現を調節します。受容体を錠前、レチノールが変身したレチノイン酸をその錠前に合う鍵だとイメージすると分かりやすいです。

バクチオールはこの変換過程を経ず、この受容体に直接結合することもないと考えられています。それにもかかわらず、細胞内で最終的に起こること、つまりコラーゲンを作れという信号や古い組織を片付けろという信号は、レチノールを使った時とよく似た形で現れます。錠前を開ける方式ではなく、別の経路を回って同じ部屋にたどり着くような構造だと言えます。だからこそバクチオールは「レチノール様物質」と呼ばれているのです。

レチノールより本当に刺激が少ない?

レチノールが肌に刺激を与える理由は、おおむねこの受容体との結合の仕方に関係しています。レチノールから変換されたレチノイン酸が受容体に強くくっつくと、皮膚のターンオーバー、つまり古い角質細胞が剥がれ落ちて新しい細胞が上がってくる速度が速まります。この速度が急に上がると、皮膚バリアが対応しきれず、赤みや皮むけが起こりやすくなります。

バクチオールはこの受容体結合の経路を通らないため、ターンオーバーが急激に速まる程度がレチノールより弱めです。そのため、赤みや皮むけ、ピリピリ感といった反応が比較的少ないと報告されています。2019年に発表されたある無作為化比較臨床試験では、バクチオールを1日2回、レチノールを1日1回、それぞれ12週間塗布して比較しましたが、しわや色素沈着の改善度合いは両成分でそれほど差がなかった一方、皮むけやピリピリ感はレチノール群でより多く報告されました。

ただし、刺激がまったくないという意味ではありません。どんな成分でも、新しく肌に取り入れ始めた最初のうちは、人によって軽いトラブルが出ることがあるため、使い始めは少量から様子を見るのが無難です。そして刺激が少ないからといって効果まで弱いわけではありません。むしろ刺激が少ない分、長く続けやすい人が多くなり、その継続そのものが結果につながるケースが多く見られます。

12週間の直接比較試験では、色素沈着が改善した人の割合はバクチオール側で59%、レチノール側で44%でした。統計的に有意な差ではないものの、マイルドとされるバクチオールが美白効果でレチノールに引けを取らなかった点は注目に値します。
12週間の直接比較試験では、色素沈着が改善した人の割合はバクチオール側で59%、レチノール側で44%でした。統計的に有意な差ではないものの、マイルドとされるバクチオールが美白効果でレチノールに引けを取らなかった点は注目に値します。

コラーゲンとしわが変わる時期

コラーゲンは肌を下から支える柱のようなたんぱく質です。年齢を重ねるとこの柱が少しずつ減っていき、肌が薄くなってしわが増えていきます。バクチオールは線維芽細胞、つまりコラーゲンを作る皮膚内の細胞を刺激して、新しいコラーゲンを再び編ませるように働きかけます。

同時に、古くなったり紫外線で傷んだコラーゲンを分解する酵素の働きも一緒に調節されると考えられています。古い柱を片付けるスピードと新しい柱を立てるスピードが同時に動いてこそ、結果的に肌のきめが整っていきます。古い壁紙を剥がしながら同時に新しい壁紙を貼っていく工事に似た過程だと考えると分かりやすいです。

色素沈着の改善も似たような流れで説明されます。ターンオーバーが適度に速まると、表皮に溜まっていたメラニン色素も一緒に排出され、シミやくすみが薄くなる方向に変化が現れると報告されています。ただしこの効果が出るまでには時間が必要です。おおむね8週間から12週間は続けて使ってようやく目に見える変化が期待できると言われています。

バクチオールを1日2回塗り続けたところ、シワの深さは8週目で9%、12週目には20%まで減りました。後半になるほど変化が大きくなるので、数日で判断せず2〜3か月は様子を見たい理由がここにあります。
バクチオールを1日2回塗り続けたところ、シワの深さは8週目で9%、12週目には20%まで減りました。後半になるほど変化が大きくなるので、数日で判断せず2〜3か月は様子を見たい理由がここにあります。

バクチオールの使い方と注意点

バクチオールは比較的刺激が少ないため、朝晩1日2回使う製品も珍しくありません。一方でレチノールは刺激の関係で、基本的には夜だけ、しかも低濃度から少しずつ増やしていくよう案内されます。この違い自体が、両成分の刺激の強さの差を物語っています。

使う際に参考にしたいポイントをまとめると、次のようになります。

  • 日中も日焼け止めは必須です。 ターンオーバーを促す成分は、新しく上がってきた肌が紫外線に敏感になりやすいため、朝は必ず日焼け止めを一緒に塗ってください。
  • 他の角質ケア成分と重ならないよう調整します。 AHAやBHAのような角質を整える成分と一緒に使うと刺激が加わりやすいため、最初は1日おきから始めるのが無難です。
  • ナイアシンアミドとは併用しても問題ありません。 ナイアシンアミド(niacinamide)は皮膚バリアを補強する成分なので、バクチオール使用中に起こりうる軽い刺激を和らげるのに役立つとされています。
  • 効果を判断するなら最低8週間は様子を見ます。 コラーゲンが新しく作られるには時間がかかるため、数日使って効果がないと判断するより、2〜3か月は続けて見守るほうが正確です。

レチノールを完全に代替できる?

バクチオールはレチノールと似た方向の効果を出しますが、あらゆる面でまったく同じ成分というわけではありません。レチノールは長年にわたる研究と使用経験が積み重なった成分であるのに対し、バクチオールは相対的に研究の歴史が浅いのが実情です。そのため、非常に深いしわや重度の光老化のように強い効果が必要な場面では、依然としてレチノールのほうが広く使われています。

ただし、肌が敏感でレチノールを使うたびに赤みや皮むけが出ていた人にとっては、バクチオールが理にかなった選択肢になり得ます。刺激を抑えながらもコラーゲンを増やす方向の変化はしっかり得られるからです。結局どちらを選ぶにしても大事なことは一つです。日焼け止めとセットで続けて塗ることが、両成分いずれにおいても結果を左右する最も重要な条件になります。

References

Korean Dermatological Association, American Academy of Dermatology (AAD), and Ministry of Food and Drug Safety (MFDS).

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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。

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