Vビームが赤みや毛細血管だけを選んで消す仕組みと施術回数、ダウンタイム
By Dr. Lee1 min read

鏡を見るたびに、頬や鼻の横に赤い毛細血管が浮いて見える。メイクで隠しても翌日にはまた透けて、寒い日やお酒を一杯飲んだだけで顔全体がカッと火照ってしまう。こうした悩みを抱えて皮膚科を訪れた人が最もよく耳にする名前がVビーム(Vbeam)です。
Vビームは色素レーザーの一種でありながら、色素そのものより血管を狙って作られた機器です。皮膚の中にある無数の組織の中から、なぜ拡張した血管だけをピンポイントで見つけ出せるのか、その原理を順番に見ていきます。
Vビームレーザーの正体と誕生の背景
Vビームは、PDL(パルス色素レーザー、pulsed dye laser)という系統の機器です。レーザー光を作り出す媒質に色素溶液を使うことから、この名前が付けられました。
この機器が登場する前は、血管の病変を治療するレーザーが周囲の正常な組織まで一緒に焼いてしまうことが少なくありませんでした。Vビームは585ナノメートルから595ナノメートルの間にある特定の黄色い波長を照射するよう設計されていて、血管の中の色素にだけ反応し、周囲の皮膚には比較的ダメージを与えにくい仕組みになっています。
ヘモグロビンはなぜこの波長の光だけを吸収するのでしょうか?
私たちの血液が赤く見えるのは、赤血球の中にあるヘモグロビンというタンパク質色素のためです。ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶ役割を担っていますが、同時に特定の色の光を選んで吸収する性質も持っています。
赤い服に緑の絵の具を落とすと目立つように、物質にはそれぞれ特に吸収しやすい光の色があります。ヘモグロビンは黄色の波長帯を特によく吸収し、Vビームが照射する585から595ナノメートルはまさにこの範囲に近い波長です。
一方、皮膚の他の成分であるメラニン(肌色を作る色素)や水分は、この波長を比較的吸収しにくい性質があります。そのため同じ光を当てても血管中のヘモグロビンが周囲の組織よりはるかに多くのエネルギーを受け取ることになり、この差こそが血管だけを選んで消す鍵になります。皮膚科ではこの原理を選択的光熱分解と呼びます。特定の色をターゲットにして、その部分にだけ熱ダメージを集中させるという意味です。
吸収された光が熱に変わり、血管を塞ぐまでの流れ
光エネルギーを吸収したヘモグロビンは、瞬間的に高い熱に変わります。この熱はヘモグロビンが存在する血管壁にそのまま伝わります。
拡張していた毛細血管は壁が薄くもろい状態です。ここに熱が加わると血管の内壁を構成する細胞がダメージを受け、血管が縮こまるように凝固します。凝固というのは、卵の白身が熱で白く固まる過程に似ていると考えるとイメージしやすいです。液体のように流れていた血液と血管組織が、熱を受けて形を失って固まってしまうのです。
Vビームはこの熱をごく短い瞬間、ミリ秒単位でしか照射しないよう設定されています。熱が血管の外に広がる前にレーザーを止めるため、ダメージが標的となった血管の中だけにとどまり、周囲の正常な皮膚にはあまり熱が伝わらずに済みます。
消えた血管を体はどう片づけるのでしょうか
レーザーで凝固した血管は、その瞬間に消えてなくなるわけではありません。ダメージを受けた血管組織を体が少しずつ片づけていく過程を経ます。
凝固した血管壁は時間の経過とともに、マクロファージという掃除役の免疫細胞によって分解され、吸収されていきます。工事が終わった現場から残った資材をトラックが運び出していく様子に似た過程です。この吸収には施術後1週間から4週間かかるとされていて、施術当日よりも時間が経つにつれて赤みが徐々に薄くなっていくのを実感します。
施術直後にできる紫斑とは何でしょうか?
Vビームの施術を受けたあと、施術部位が打撲のように紫色や紫紺色に変わることがよくあります。これを紫斑反応と呼びます。
紫斑は、レーザーの熱で血管壁がダメージを受け、血管の中の血液成分が周囲の組織にわずかに漏れ出すことで生じます。むしろこの紫斑が出るということは、レーザーのエネルギーが標的の血管までしっかり届いて反応が起きたサインとも受け止められています。ただし紫斑が必ず出るわけではなく、機器の設定によっては紫斑を出さずに施術する方法も併用されています。
ダウンタイムの間、皮膚の中で何が起きているのでしょうか
紫斑が出た場合、ダウンタイムはおおむね1週間から10日程度とされています。この期間、皮膚の中では次のような変化が順番に起こります。
- 施術直後は紫色の斑点とともに、軽いむくみを伴います。ダメージを受けた血管の周囲で一時的に炎症反応が起きるためです。
- 施術後3日から5日ほど経つと、色が紫色から茶色、黄色っぽい色へと少しずつ薄くなっていきます。これは漏れ出た血液成分がマクロファージによって分解される過程が進んでいることを意味します。
- 7日から10日前後で紫斑はほとんど消え、元の肌色に戻ります。ダメージを受けた血管組織の吸収が仕上げの段階に入ったサインです。
この期間は施術部位をこすったり、熱いタオルなどで温めたりしないことが望ましいとされています。ダメージを受けた血管壁が回復している最中で、刺激に敏感になっているためです。
なぜ1回では終わらないのでしょうか?
顔に広がる毛細血管や赤みは、太さや深さがそれぞれ異なります。1回の施術ではレーザーのエネルギーが届く血管と届きにくい血管が混在していることが多いです。
そのため、通常は4週間から6週間の間隔をあけて、3回から5回に分けて受ける方法が勧められます。1回の施術を終えるごとに反応の大きかった血管から先に整理され、次の回で残った血管を改めて標的にする形で進んでいきます。回数を重ねるほど、全体的な赤みが積み重なるように薄くなっていくという報告があります。
どのタイプの赤みに効果的なのでしょうか?
Vビームが反応する相手は結局ヘモグロビンを含む血管なので、血管が原因の赤みほど反応がよいとされています。
- 頬や鼻の横に糸のように細く透けて見える毛細血管拡張症は、血管そのものが標的になるため反応がはっきり出やすい傾向があります。血管が皮膚表面の近くに薄く広がっているため、レーザー光が届きやすいからです。
- お酒や気温の変化で顔全体が赤くなるほてり、特に酒さ(ロザセア)による慢性的な赤みも代表的な適応です。顔全体に広がった微細な血管が原因のため、広い範囲を繰り返し照射する形でアプローチします。
- ニキビが治ったあとに残る赤みも、血管が拡張した状態なので一緒に改善されることが多いです。ただし茶色い色素沈着の原因は血管ではなくメラニンなので、この場合は別の波長のレーザーの方が適しています。
反対に、色ではなく凹んだ瘢痕や毛穴のように組織の構造そのものが変化した問題は、Vビームだけでは解決できません。標的が血管ではないためです。
施術前後のケアのポイント
Vビームは比較的回復が早い施術として知られていますが、次のような点を意識すると、より滑らかに回復が進みます。
- 施術の前後は日焼け止めをしっかり塗る必要があります。レーザーで刺激を受けた皮膚は色素沈着が起きやすい状態のため、紫外線にさらされるとその部分が茶色く残りやすくなるからです。
- 紫斑が残っている間は角質ケアや強いマッサージを避けます。回復中の血管組織に物理的な刺激が加わると、炎症が再び大きくなる可能性があるためです。
- 熱いサウナや激しい運動は3日から5日ほど控えるのが望ましいです。体温と血流が急に上がると、固まったばかりの血管の周りに再び熱が集まりやすくなるからです。
こうしたケアを一緒に行うと、紫斑が引くスピードと赤みの改善度合いの両方によい影響があるとされています。
References
Korean Dermatological Association, Ministry of Food and Drug Safety (MFDS), American Academy of Dermatology (AAD), and U.S. Food and Drug Administration (FDA).
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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