日焼け止めのノンケミカルとケミカル、紫外線を防ぐ仕組みの違いと正しい使い方
By Dr. Kim1 min read

夏でなくても日焼け止めは毎日塗るべきだということは、誰でも知っています。ただ、実際に成分表を見てみると、紫外線散乱剤や紫外線吸収剤という聞き慣れない言葉が並んでいて、両者の違いをきちんと説明できる人は意外に少ないものです。
実はこの二つ、紫外線を防ぐ方式そのものがまったく違います。一方は肌の上で光をはね返し、もう一方は光を吸収してそのまま消してしまいます。この仕組みを知っておくと、なぜある製品は白く浮き、別の製品は刺激が出やすいのかも自然と理解できるようになります。
UVAとUVB、肌への影響はどう違うのでしょうか?
太陽光に含まれる紫外線は、波長の長さによって種類が分かれます。UVA(紫外線A波)は波長が長く(320-400nm)、肌の奥深く、真皮層まで届きます。真皮はコラーゲン(肌のハリを支える柱のようなタンパク質)が集まっている層で、UVAはこの柱にまで到達し、じわじわとダメージを与えていきます。
そのためUVAは日焼けのようにすぐには表れませんが、数十年かけてシワやたるみを作る主犯として知られています。しかもガラス窓さえ通り抜けるほど力が強いため、室内にいても影響を受けます。例えば窓際の席に長く座っていると、日焼けはしなくても肌がだんだんくすんでくるように感じることがありますが、これはUVAが少しずつ蓄積した結果だと考えられます。
一方、UVB(紫外線B波)は波長が短く(290-320nm)、真皮までは届かず、肌表面の表皮でほとんどが吸収されます。その代わりエネルギーが強く、短時間でも日焼けを起こします。夏の海辺で1〜2時間もいると肌が赤くなるのは、まさにこのUVBのせいです。
表皮には神経と血管が密集しているため、UVBが細胞を刺激すると体はすぐに赤みやヒリつきという反応を示します。逆に真皮は神経の反応が鈍いため、UVAがじわじわとダメージを蓄積させても、その場では痛みも赤みも出ず、静かにやり過ごしてしまうのです。
紫外線散乱剤が紫外線をはね返す仕組み
紫外線散乱剤には、酸化亜鉛(zinc oxide)や二酸化チタン(titanium dioxide)といった微細な金属粒子が原料として使われます。これらの粒子は肌表面に薄い膜のように広がります。
紫外線が肌に向かって飛んでくると、この金属粒子が小さな鏡のように光をはね返したり、四方に散らしたりします。光が肌の中に入る前に、表面で進路を変えてしまうわけです。冬山登山で使う保温用のアルミシートを思い浮かべると分かりやすいでしょう。アルミシートが体から逃げようとする熱をはね返すように、紫外線散乱剤の中の金属粒子も、紫外線が肌に触れる前に先回りしてはね返しているのです。
つまり紫外線散乱剤は、紫外線が肌の細胞に触れること自体を防ぐ方式なので、化学反応を起こさなくても防御効果を発揮します。刺激が少なく、敏感肌や赤ちゃんの肌にも比較的安心して使えるとされています。化学反応が起きるには成分が肌と結合する過程を経る必要がありますが、紫外線散乱剤にはその過程自体がないため、刺激やアレルギーが起きる確率も自然と低くなるのです。
もう一つ重要な特徴があります。反射は物理的な作用なので、塗った瞬間から効果が現れます。成分が肌の中に浸透して反応する時間を別途必要としないからです。急いで外出しなければならないときでも、あまり気にせずに済むのはこのためです。
紫外線吸収剤はどうやって紫外線を吸収して消すのでしょうか?
紫外線吸収剤には、アボベンゾン(avobenzone)やオクチノキサート(octinoxate)といった炭素をベースにした化合物が使われます。これらの成分は光をはね返す代わりに、紫外線のエネルギーを自分自身で直接吸い込みます。
紫外線を吸収した分子は、一瞬だけ興奮状態、つまりエネルギーが高まって不安定な状態になります。押し縮められたバネが跳ね返るように、この分子はすぐに元の形に戻ろうとし、そのとき吸収したエネルギーを熱に変えて外に逃がします。熱い鍋に一瞬だけ手が触れて、すぐに引っ込める状況に似ています。瞬間的に熱を受け取りはしますが、その状態を長く抱え込まず、すぐに熱を放出して元の状態に戻るのです。
つまり紫外線という危険な光エネルギーが肌に害を及ぼす前に、ごくわずかな熱に変換されて消えてしまうというわけです。ただ、この過程が繰り返されるうちに成分自体が少しずつ分解されていくため、紫外線吸収剤は時間が経つにつれて防御力が徐々に落ちていくとされています。バネも押されて伸びることを何度も繰り返すと弾力が鈍くなるように、吸収剤の分子も紫外線を吸収して熱として放出する反応を1日に何百回と繰り返すうちに、構造が少しずつ崩れていくのです。
また、紫外線吸収剤は散乱剤と違い、塗ってすぐに効果が出るわけではありません。成分が肌表面に薄い膜として安定して定着してはじめて吸収反応がきちんと始まるため、外出する20-30分前には塗っておくのがよいとされています。この時間を省いてすぐに日差しの下に出てしまうと、成分がまだ準備できていない状態で紫外線を浴びることになります。
白浮きはなぜ紫外線散乱剤で特に目立つのでしょうか?
白浮きとは、日焼け止めを塗ったときに肌が白っぽく浮いて見える現象のことです。この現象は主に紫外線散乱剤で起こります。
理由は粒子の大きさにあります。酸化亜鉛や二酸化チタンの粒子は、目に見える可視光線の一部まで一緒にはね返してしまう性質があるため、肌に薄く塗っても白い膜のように浮いて見えます。白いペンキを壁に薄く一度塗っただけでも、下地の色が透けずに白く覆われて見えるのと同じ理屈です。粒子が光をはね返してしまうと、その下にある本来の肌の色がそのまま出てこられず、代わりに白い膜がかぶさったように見えるのです。
最近は粒子をごく細かく砕いてナノサイズにした製品が増え、白浮きはかなり軽減されていますが、完全になくすのは難しいとされています。一方、紫外線吸収剤は光をはね返さず吸収するだけなので、肌に塗ったときはおおむね透明になじみます。
SPFとPA、それぞれ何を防いでいるのでしょうか?
日焼け止めのパッケージを見ると、SPFとPAという二つの指数が並んで表記されています。この二つは、それぞれ異なる種類の紫外線を基準に算出されています。
SPF(Sun Protection Factor)は、UVBをどれだけ防いでくれるかを示す指数です。数字が大きいほど、肌が赤くなるまでの時間をより長く遅らせてくれるという意味になります。例えば、何も塗らない肌が10分で赤くなる人なら、SPF15は理論上その時間を15倍の150分まで延ばしてくれる計算です。ただし実際には汗や摩擦で理論値より早く落ちてしまうことも多いため、数字だけを信じて塗り直しを省略してはいけません。PA(Protection Grade of UVA)はUVAをどれだけ防ぐかを示すもので、PA+++のように+の数が多いほど防御効果が高いとされています。
どちらか一方だけ数値が高ければ十分というわけではありません。真皮までダメージを与えるUVAと、日焼けを引き起こすUVBを同時に防ぐためには、SPFとPAの両方をチェックしておくのがよいとされています。
日焼け止めはどのくらいの量を、どのくらいの頻度で塗れば効果が出るのでしょうか?
日焼け止めは、塗る量と塗り直しのタイミングを守ってはじめて、表示通りの防御力が実際に発揮されます。次の点を確認してみてください。
- 顔全体に500円玉大以上を塗ること: 製品テストで測定されたSPFとPAの数値は、これくらいの厚さで塗った場合を基準にしているため、少なく塗ると実際の防御力は表示値より大きく下がってしまいます。
- 外出後は2時間おきに塗り直すこと: 紫外線吸収剤は紫外線を吸収するにつれて成分が徐々に分解され、紫外線散乱剤も汗や皮脂で流れ落ちるため、時間が経つほど膜が薄くなります。
- 曇りの日も塗ること: 雲は目に見える光は遮っても紫外線はかなりの部分をそのまま通してしまうため、日差しが弱く感じられても肌は紫外線にさらされ続けています。
つまり日焼け止めは、どれだけ厚く、どれだけ頻繁に塗るかによって実際の効果が大きく変わってきます。メイクの上から手で塗り直すのが面倒なら、UVカット機能付きのクッションファンデやスプレータイプを重ねるのも現実的な方法です。
自分の肌に合う日焼け止めはどう選べばよいのでしょうか?
紫外線散乱剤と吸収剤のどちらが絶対に優れているとは言い切れません。肌の状態によって合う方が変わってくるからです。
肌が敏感だったり、刺激で赤くなりやすかったりする人は、紫外線散乱剤の方がおおむね使い心地がよいとされています。化学的に反応せず、物理的に防ぐ方式なのでトラブルが起きにくい傾向があります。
反対に皮脂が多く、白浮きが気になる肌なら、軽く透明になじむ紫外線吸収剤の方が好まれることが多いです。ただし吸収剤の成分の一部は接触性皮膚炎を起こす例が報告されているため、塗るたびにヒリつきや赤みが繰り返されるなら、成分を変えてみるのも一つの方法です。
最近では両方の方式を組み合わせたハイブリッドタイプの製品も数多く登場しています。反射と吸収を同時に活用することで、白浮きを抑えつつ防御力は維持する方向に進化しているのです。部位ごとに使い分ける方法もあります。刺激に弱い顔には散乱剤を、紫外線を浴びやすい腕や脚には軽くなじむ吸収剤を使うというように、組み合わせて使う人も少なくありません。結局のところ答えは一つに固定されているわけではなく、肌が発するサインを見ながら自分に合う方を探していくプロセスに近いと言えます。
References
Korean Dermatological Association, Ministry of Food and Drug Safety (MFDS), American Academy of Dermatology (AAD), and U.S. Food and Drug Administration (FDA).
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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