30代のスキンケア成分、retinolとniacinamideは何が違う?
By Dr. Lee1 min read

30代になると、多くの人が同じようなことを口にします。ある日ふと鏡を見たら、肌が急に変わっていたという感覚です。目もとに小じわが見え、肌のトーンが以前ほど明るくなく、化粧のノリも前とは違うと感じるようになります。
けれども肌は一晩で変わるものではありません。実際には20代からとてもゆっくり積み重なってきた変化が、ある時点で目に見えるレベルを超えて、そこでようやく気づくというだけの話です。30代の肌ケアを正しく理解するには、まずこの時間差を知っておく必要があります。なぜ変化は先に始まっているのに気づくのは遅れるのか、その仕組みをひとつずつ見ていきます。
なぜ30代で急に肌が変わる?
肌に起こる老化は、ある瞬間に突然オンになるスイッチではありません。表皮の細胞が新しく生まれてから角質として剥がれ落ちるまでの時間、いわゆるターンオーバー周期が、年齢とともに少しずつ長くなっていくことがそもそもの始まりです。
20代はこの周期が比較的短く、ダメージを受けた細胞も早めに入れ替わります。しかし30代からは入れ替わりの速度が落ち、紫外線や刺激で傷んだ細胞が以前より長く肌にとどまるようになります。工場で不良品を選別する速度が落ちれば、不良品が少しずつ倉庫に積み上がっていくのと似た状況です。
そこに20代のころに蓄積した紫外線ダメージや生活習慣の影響も加わります。目に見えない形でたまっていたダメージが、肌自身の修復力を上回った瞬間から、変化がようやく目に見える形で現れ始めるのです。つまり30代の変化は、この時期に新しく生まれたものではなく、以前から進んでいたことが表に出てきたものに近いといえます。
コラーゲンが減る理由
肌の弾力をつくるコラーゲンは、真皮にある線維芽細胞(コラーゲンをつくる細胞)がつくり続ける一方で、同時にMMP(マトリックスメタロプロテアーゼ、古くなったコラーゲンを分解する酵素)が古いコラーゲンを整理しています。20代はこの二つの作業がバランスを保っているため、コラーゲンの量が大きく減ることはありません。
問題は、年齢を重ねるにつれて線維芽細胞が新しくコラーゲンをつくる速度は少しずつ落ちていくのに対し、MMPが古いコラーゲンを分解する働きはそれほど落ちないという点です。つくる側は遅くなり、片づける側はそのままなので、結果として残っているコラーゲンの総量がじわじわ減る方向に天秤が傾いていきます。
例えるなら、工事現場で新しいレンガを積む速度は落ちたのに、古いレンガを取り壊す速度はそのままという状況に似ています。取り壊すペースに積み上げが追いつかないので、壁が少しずつ薄くなっていくわけです。弾力線維(エラスチン)も同じような仕組みで徐々に減っていき、肌が押されてから元の形に戻る力が以前より弱くなります。
20代の紫外線ダメージが30代に出る理由
30代の肌の変化において、紫外線の影響は思っている以上に大きいものです。紫外線は肌の奥深くまで入り込み、活性酸素(細胞を傷つける不安定な酸素分子)をつくり出します。この活性酸素がさらにMMPを活性化させ、コラーゲンの分解を早めてしまいます。
厄介なのは、このプロセスが日焼けのように目に見えるダメージがなくても毎日少しずつ起こっているという点です。曇りの日や室内でも、紫外線Aは窓ガラスを通過して肌に届きます。目立った症状がないからといって、ダメージがないわけではないということです。
こうして毎日少しずつ積み重なったダメージは、しばらくは表面化せず、ある時期からシミやくすみ、小じわといった形でまとめて現れてきます。20代は回復力がダメージの速度を上回っていましたが、30代からはこのバランスが少しずつ崩れていくため、同じ量の紫外線を浴びても結果として残る痕跡がより目立つようになるのです。
retinolはコラーゲンにどう作用する?
retinol(ビタミンA誘導体)が30代以降のケア成分としてよく挙げられるのは、コラーゲンに関わる二つの働きを同時に持っているからです。まず表皮細胞のターンオーバーを促し、傷んだ角質がより早く入れ替わるよう助けます。
同時に真皮では線維芽細胞を刺激してコラーゲンの合成を増やし、先ほど説明したMMPの働きは抑える方向に作用すると考えられています。つまり、コラーゲンが減っていく天秤をもう一度つくる側に傾けるような働きです。
ただしretinolは使い始めのころ、肌が薄くなったような感覚や赤み、皮むけといった刺激反応が起こりやすい成分でもあります。こうした初期反応は肌が新しい刺激に慣れていく過程で起こるもので、多くの場合4週間から12週間ほどかけて落ち着いていくとされています。そのため少量から始めて、使う頻度を少しずつ増やしていく方法がすすめられます。光に対する感受性を高める成分でもあるため、朝は日焼け止めを一緒に使うことが大切です。
niacinamideはretinolと何が違う?
niacinamide(ビタミンB3誘導体)はretinolとセットで語られることが多い成分ですが、役割はまったく異なります。retinolがコラーゲンを新しくつくる側だとすれば、niacinamideは肌のバリア機能を強くする側に近い働きをします。
niacinamideはセラミド(肌バリアを構成する脂質成分)の合成を助け、水分が肌の外へ逃げていく速度をゆるやかにする方向に働くとされています。バリア機能が整うと外からの刺激に敏感になりにくく、retinolのような成分を使うときの刺激も相対的に和らぐ傾向が報告されています。
さらにniacinamideは、メラニン色素が表皮細胞へ受け渡される過程を抑えることも知られており、紫外線の蓄積によって生じたシミをゆるやかにする助けになるとも説明されています。コラーゲンをつくる成分とバリアを守る成分がそろってこそ、ケアが片寄らずに済みます。
保湿とバリアケアはなぜ必要?
どんなに優れた有効成分を使っても、肌バリアが崩れていれば効果より先に刺激が出てしまいます。肌バリアとは、角質層の細胞と脂質がレンガとセメントのように隙間なく積み重なり、水分の蒸発と外部刺激の侵入を防いでいる構造のことです。
30代からはこのバリアを構成する脂質成分そのものも少しずつ減っていく傾向があり、以前と同じ条件でも乾燥や刺激をより感じやすくなります。セラミド、パンテノール、ヒアルロン酸といった保湿成分は、このバリア構造を補う役割を果たします。
つまり保湿とは、単に肌をしっとりさせるだけでなく、retinolやniacinamideのような有効成分がきちんと働き続けられるよう、土台を整える作業に近いものです。バリアが安定した状態で有効成分を使ってこそ、刺激なく長く続けることができます。
30代のスキンケアの注意点
30代のケアは成分をたくさん重ねることよりも、いくつかの原則を守ることのほうが大切です。次の点を優先して確認することがすすめられます。
- レチノイド系は妊娠中、授乳中の使用を避けることがすすめられます。 胎児や乳幼児の発育に影響する可能性が報告されているため、この時期は使用の可否を必ず確認する必要があります。
- 新しい成分は一度に複数を同時に始めないほうがよいでしょう。 刺激が出たときに原因となった成分を見分けにくくなるためです。
- 日焼け止めは曇りの日や室内でも毎日塗ることがすすめられます。 紫外線Aは雲や窓ガラスを通過し、肌の奥深くまで届くためです。
- 角質ケアは週1回から2回程度に控えるのが安全です。 やりすぎるとかえってバリアを薄くしてしまい、刺激に弱い状態を招くためです。
こうした原則を守りながらretinolとniacinamide、保湿成分を順番に取り入れていけば、特別な変化がなくても肌が安定した状態を長く保つことができます。
References
Korean Dermatological Association, American Academy of Dermatology (AAD), and Ministry of Food and Drug Safety (MFDS).
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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