肌のバリアが壊れると乾燥し刺激に弱くなる理由、セラミドが満たす修復のしくみ
By Dr. Kim1 min read

洗顔しただけなのに顔がつっぱる、いつも使っている化粧品なのに急にピリピリする、そんなときは肌のバリア機能に異常が起きているサインです。肌のバリアは肌の一番外側を覆うごく薄い保護膜で、この膜が薄くなったりひび割れたりすると、水分は逃げ出し外部からの刺激はより入り込みやすくなります。
この保護膜を満たす主な材料のひとつがセラミドです。セラミドがなぜ重要なのか、バリアはどうして壊れるのか、壊れたバリアをどう立て直すのか、順を追って見ていきます。
肌のバリア機能の構造と役割
肌のバリアは肌の一番外側にある角層にあります。角層は死んだ角質細胞が幾重にも積み重なった層で、その細胞と細胞のすき間を脂質(油分)が埋めています。
よくこの構造はレンガとセメントにたとえられます。角質細胞がレンガなら、そのすき間を埋める脂質はセメントです。レンガだけでセメントがなければ壁のすき間から水や風がそのまま出入りするように、角質細胞だけで脂質が足りないと肌のすき間から水分が漏れ出し、異物が入り込んでしまいます。
そのため肌のバリアは二つの役割を同時に担っています。ひとつは肌の中の水分を外に逃がさないようにとどめておくこと、もうひとつは細菌やアレルギーの原因物質など好ましくないものが中に入らないよう防ぐことです。この二つの機能がそろって働くことで、肌はうるおいを保ちながら刺激にも動じにくくなります。
バリアが壊れるとなぜ肌は敏感になるのか?
バリアを作るセメント、つまり脂質が減ると、角質細胞のすき間が広がります。レンガの間のセメントが崩れた塀を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。すき間のできた塀に雨風がそのまま吹き込むように、脂質が不足した肌は水分を抱え込めず、外部刺激をそのまま受け止めてしまいます。
このとき肌から水分が蒸発していく速さを経表皮水分蒸散量(TEWL)と呼びます。バリアが健やかであればこの蒸散の速さはゆるやかで、バリアが傷むと速さが増して肌は乾燥しやすくなります。乾燥した肌は表面がごわつき、小じわも目立ちやすくなります。
同時にすき間から刺激物質や微生物が入り込みやすくなるため、肌の中の免疫細胞が過敏に反応します。そのためバリアが傷んだ肌は、いつもは何ともなかった化粧品にもピリピリ感や赤みを示すことが少なくありません。バリアが薄くなった分だけ、刺激をふるいにかける門番の役目が甘くなっていると考えるとわかりやすいです。
セラミドが果たす役割
セラミドは角質細胞のすき間を埋める脂質の中でもっとも多くを占める成分です。コレステロール、遊離脂肪酸とともに層状に重なり、薄い膜を幾重にも作り上げます。
この膜は何枚ものラップを重ねて貼り合わせたようなものです。ラップ1枚では薄くて簡単に破れますが、何枚も重ねればちょっとした刺激では破れにくくなります。セラミドがコレステロール、遊離脂肪酸とバランスよく積み重なることでこうした幾重もの防御膜ができあがり、そのおかげで水分は内側にとどまり、刺激は外側で食い止められます。
年齢を重ねたり特定の肌トラブルを抱えていたりすると、このセラミドの量は自然に減っていく傾向があります。材料が減った分だけ膜は薄くなり、薄くなった膜は先ほどのレンガとセメントのたとえのようにすき間ができやすくなります。そのため皮膚科ではセラミドをバリア修復の要となる材料として扱っています。
バリアを傷める身近な習慣
バリアは一晩で壊れるわけではありません。毎日繰り返すちょっとした習慣が少しずつ脂質を削り取り、じわじわと薄くしていきます。代表的な原因となる習慣は次のとおりです。
- 熱いお湯で長く洗顔やシャワーをする習慣: 熱いお湯は角質細胞のすき間の脂質を溶かして洗い流してしまいます。油汚れを落とすときに熱いお湯を使うのと同じ原理で、肌の脂質も一緒に溶け出してしまうのです。
- 洗浄力の強いクレンジングを二重に使う習慣: 洗浄成分が皮脂だけでなくバリアを作る脂質まで一緒に洗い流してしまうためです。頻繁に、強く洗うほど、脂質が満たされる間もなく削られ続けます。
- 角質ケア製品を過剰に重ねて使う習慣: 酸性成分やスクラブ粒子が角質細胞を無理やり剥がすことで、そのすき間の脂質も一緒に落ちてしまいます。角層が薄くなった分だけバリアも一緒に薄くなります。
- 紫外線を浴び続ける習慣: 紫外線は脂質を酸化させ、本来の役割を果たせなくしてしまいます。油が古くなると酸化して傷むのと似た変化が、肌の脂質にも起こります。
- 乾燥した環境に長くいる習慣: 湿度が低いと肌の表面と空気の間の水分濃度差が大きくなり、その分だけ水分が外へ引っ張られやすくなります。バリアが持ちこたえなければならない負担が増えるということです。
セラミドはどのように吸収されて定着するのか?
化粧品に配合されたセラミドを肌に塗ると、この成分は肌表面から角層のすき間を見つけて入り込んでいきます。もともとあった脂質の構造とよく似た形をしているため、壊れた部分に自然にはまり込むように働きます。
パズルのピースにたとえるとわかりやすいでしょう。欠けたパズルのピースの場所に似た形のピースをはめ込めば絵がつながるように、セラミドも脂質が抜け落ちた角質細胞のすき間に収まることで膜のつながりを取り戻していきます。
ただしセラミド単独では完全な膜を作るのは難しいとされています。もともとバリアがコレステロール、遊離脂肪酸とともに積み重なってこそ丈夫になるように、化粧品もこの三つの脂質を一緒に含んでいるほうが膜がより安定して再構成されると言われています。また、少し湿った肌に塗ったほうが吸収がスムーズになりやすいため、洗顔直後の水気がわずかに残った状態で塗ることがすすめられます。
セラミドと一緒に使うとよい成分
セラミド一つだけでバリアを完全に満たすのは簡単ではありません。そのため他の成分を組み合わせることで、修復を後押ししやすくなります。
- コレステロールと遊離脂肪酸: セラミドとともにバリアを構成する残り二つの脂質です。三つがそろってこそ本来のバリア構造に近い膜ができるため、セラミド単独よりも一緒にあるほうが安定します。
- ナイアシンアミド: 肌がみずから脂質を作り出す力を助けると言われています。外から材料を補うセラミドとは違い、内側で作る力そのものを底上げする役割です。
- パンテノール: 傷んだ肌組織が回復していく過程を助ける成分として知られています。傷が治っていく間、鎮静作用も併せ持つ成分なので、刺激感を和らげる助けになります。
- グリセリンやヒアルロン酸などの保湿成分: 水分を引き寄せてつなぎとめる役割を担います。セラミドが壁を築く成分だとすれば、こうした保湿成分はその壁の中に水を満たしていく役割だと考えるとわかりやすいです。
傷んだバリアを立て直すお手入れの順番
バリアがすでに薄くなっている状態なら、新しいものを足すよりも刺激を減らすことが先決です。脂質が満たされる時間を確保することが、回復の第一歩になります。
洗顔はぬるま湯で手早く済ませ、洗浄力の強いクレンジングの代わりにやさしい洗顔料一つだけを使います。ダブル洗顔や頻繁な角質ケアは、回復するまでしばらく休むのがよいでしょう。脂質が積み重なる前に洗い流し続けると、それだけ回復のスピードが遅くなってしまうからです。
その後はセラミド配合の保湿剤をたっぷり塗って、薄くなった膜を満たしていきます。この間、酸性成分の入った角質ケア製品やレチノールのように刺激の強い成分は、バリアがある程度回復してから取り入れるのが安全です。そして紫外線対策は欠かさず続ける必要があります。紫外線が脂質を酸化させ続けると、せっかく満たしたバリアが再び薄くなってしまうことがあるからです。
References
Korean Dermatological Association, American Academy of Dermatology (AAD), and Ministry of Food and Drug Safety (MFDS).
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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