髪が細くなってきたときの頭皮メソセラピー、毛根に栄養を届ければ本当に食い止められるのか
By Dr. Kim1 min read

シャンプーのたびに排水口に髪の毛がごっそり溜まったり、頭頂部の地肌が透けて見え始めると、急に焦りを感じるものです。それで育毛シャンプーやアンプル、塗るタイプのケア用品をあれこれ試してみても、期待したほど変化を実感できないことが少なくありません。
髪のボリュームが減っていく過程は、ある日突然起こるわけではありません。一本一本の髪が少しずつ細くなり、あるとき気づくと頭頂部が透けて見えるという形で進むため、本人がそれに気づく頃にはすでにかなり進行していることが珍しくないのです。何か目に見える対策を打ちたいと思う頃には、すでに気持ちが焦っている場合が多いのはそのためです。
そんなときにクリニックで勧められる方法のひとつが、頭皮メソセラピーです。栄養成分を頭皮に薄く塗るのではなく、極細の針で毛根の近くまで直接届ける施術です。そもそもなぜわざわざ注射で入れる必要があるのか、そしてどのような経路で髪に良い影響を与えるのか、ここから順番に解説していきます。
頭皮メソセラピーとは正確には何なのか?
メソセラピーはもともとフランスで生まれた施術法で、皮膚の中間層(メソ、ギリシャ語で「中間」を意味します)に薬剤を少量ずつ、複数の箇所に分けて注入する方法を指します。これを頭皮に応用したものが頭皮メソセラピーです。
一度に大量の薬剤を深く入れるのではなく、極細の針で頭皮の複数箇所をチョンチョンと浅く刺し、成分を分けて注入していきます。こうして分散させる理由は、毛包が頭皮表面のすぐ下に広く分布している構造だからです。一点に集中して入れるより、細かく分けて入れるほうが、より多くの毛包の近くまで成分を届けられます。
針が入る深さもあらかじめ決まっています。筋肉層まで深く刺すのではなく、毛包が集まっている真皮の浅い層にだけ届くように調整します。鉢植えに水をやるとき、土の表面だけを濡らすのではなく、じょうろの先を根元のすぐそばまで差し込んでたっぷり染み込ませるのと似た考え方です。
なぜわざわざ注射で入れるのか、塗るケアと何が違うのか?
塗るケア用品がなかなか浸透しない理由は、皮膚のいちばん外側にある角質層にあります。角質層はレンガをすき間なく積んでセメントで固めた塀のように、外部の物質が体内に簡単に入り込めないよう防いでいる壁のような役割を担っています。
そのため、塗る栄養成分の多くはこの塀を越えられず、表面にとどまったまま洗い流されてしまいます。一方メソセラピーは、針でこの塀を飛び越え、成分を直接真皮層、つまり毛包が位置している深さまで運びます。回り道をせずに目的地のすぐ手前まで届けるようなものです。だからこそ同じ成分でも、塗るときより毛根周辺に届く量がはるかに多くなると報告されています。
さらに、成長因子のようにサイズの大きいタンパク質成分は、そもそも角質層を通過できる大きさではありません。ドアの隙間より大きな荷物をドアの下から押し込もうとするようなもので、塗るケア用品の濃度をいくら高めても意味がないのです。こうした成分は針で直接届ける以外、真皮層まで運ぶ手立てがほとんどありません。
毛包周辺の血行はなぜ良くなるのか?
髪は毛包の下部にある毛乳頭という小さな組織から栄養と酸素を受け取って育ちます。毛乳頭は髪を育てる根っこの工場のような存在で、この工場を稼働させるには、原材料を運ぶ物流網、つまり毛細血管がしっかり通っている必要があります。
年齢を重ねたり頭皮がストレスを受けたりすると、この毛細血管網は細くなり、循環が滞りがちになります。原材料が届かなくなれば工場の稼働率は下がり、髪は太く育たないまま細くなったり、成長期が短くなったりします。
メソセラピーの微細な針による刺激は、この部分にごく小さな傷をつくります。傷ができると、体はその部分を修復しようと血流を増やし、血管を新しくつくるための信号物質を分泌します。わかりやすく言えば、通っていた道路を広げ、新しい道をつくる工事が始まるようなものです。ここに同時に注入した栄養成分が加わることで、毛包周辺の環境そのものが成長しやすい方向へ変わっていくとされています。
このとき分泌される信号物質のひとつが、血管内皮成長因子、通称VEGFと呼ばれるタンパク質です。その名の通り血管の内側の細胞に新しく増えるよう指示を出す物質で、体のどこかが傷ついたときに、その部位へ血流を呼び込むために自ら作り出す成分です。メソセラピーによる微細刺激は、この物質が毛包周辺でより活発に分泌されるよう誘導すると考えられています。
何を注入するのか、成分ごとの役割
頭皮メソセラピーに使われる成分の組み合わせはクリニックによって多少異なりますが、おおむね次のような役割を分担しています。
- ビオチン、亜鉛、パントテン酸のようなビタミン・ミネラル類:髪の主成分であるケラチンタンパク質を作るための基礎材料であり、これが不足すると、いくら血流が改善しても材料自体が足りない状態になってしまいます。
- 成長因子(growth factor):細胞に増殖を指示する信号タンパク質です。毛乳頭細胞や毛包幹細胞に分裂の信号を送り、成長期を維持する助けになると報告されています。
- 銅ペプチド(copper peptide、GHK-Cu):傷ついた組織の修復や血管新生を助けるとされる成分で、先ほど説明した循環改善効果を後押しする役割を担います。
- 低用量ミノキシジル(minoxidil)溶液:塗るタイプのミノキシジルの主成分を注射で直接届け、吸収率の問題を回避する目的で使われることもあります。
このように異なる役割を持つ成分を一緒に注入するのは、材料の供給と信号伝達、血管拡張を同時に刺激してこそ、毛包が実際に反応する確率が高まるためです。
最近では、自分自身の血液から取り出した血小板成分、いわゆるPRP(多血小板血漿)を併用するケースも増えています。血小板の中にはすでにさまざまな成長因子が濃縮されており、外部で合成した成分を入れるのとは違ったかたちで毛包に信号を伝えます。自分自身の血液を原料にしているため、異物反応のリスクが低いとされている点も挙げられます。
飲む育毛薬とはなぜ併用するのか?
男性型脱毛症の大きな原因のひとつが、DHT(ジヒドロテストステロン)というホルモンです。テストステロンが体内の酵素と結びついてDHTに変わると、この物質が毛包にくっついて成長期を短くし、髪を細くしていきます。毛包を少しずつ削り取っていくハサミのような存在だと考えるとわかりやすいでしょう。
フィナステリドのような飲む育毛薬は、このDHTが作られる過程そのものを体全体でブロックします。つまりハサミを作る工場を止めるようなやり方です。一方、頭皮メソセラピーはすでにある毛包周辺の環境、つまり栄養と循環を改善することに集中します。
この2つは狙うポイントが異なるため、どちらかに置き換えるより、併用したほうが相乗効果を得やすいと報告されています。飲む薬で原因ホルモンを抑えながら、メソセラピーで残っている毛包が働きやすい環境を同時に整えていくイメージです。
ただしフィナステリドのような飲む薬は体全体に作用する分、一部で性欲減退のような全身性の副作用が出ることもあると報告されています。一方、頭皮に局所的に行うメソセラピーは作用する範囲が頭皮周辺に限られているため、全身への影響を比較的抑えながら併用できる方法として考えられています。
何回、どのくらい受ければ効果を期待できるのか?
髪は成長期、退行期、休止期を繰り返す周期を持っており、この周期は3ヶ月から6ヶ月かけてゆっくりと巡ります。そのため、一度刺激を与えたからといって、すぐに頭皮の環境が変わるわけではありません。
一般的には2週間から4週間の間隔で4回から6回を1セットとして行い、その後は1〜2か月に1回のペースで維持管理を続けるやり方がよく用いられます。繰り返す理由は、刺激と栄養供給を4回から6回にわたって積み重ねてこそ、毛包が成長期を保つ習慣を身につけられるからです。
ただし施術を中断すると、時間の経過とともに効果が再びゆるやかに薄れていく傾向があると報告されています。そのためメソセラピーは一度で終わる施術というより、継続的なケアのルーティンに近いものだと理解しておくのが現実的です。
1回の施術にかかる時間は、頭皮に麻酔クリームを塗る時間を含めても、通常30分から40分程度で終わります。針が非常に細いため痛みはチクチクする程度で大きくはありませんが、感じ方には個人差があるため、事前に麻酔クリームを塗ってから行うケースが多くなっています。
施術後にはどのような反応が出るのか?
針で頭皮を刺激した直後は、施術部位が赤くなったり、軽く腫れたりする反応がよく見られます。体が微細な傷を修復しようと血流を増やす過程で起こる自然な反応で、たいてい1日から2日ほどで落ち着きます。
頭皮が敏感な方の場合、施術部位に小さなかさぶたができたり、押すと軽く鈍い痛みが2日から3日続いたりすることもあります。ただし日常生活に支障をきたすほどの痛みではなく、洗髪や外出も当日から可能なレベルです。
まれではありますが、注入部位に感染やアレルギー反応が起こることがあるため、施術前に頭皮に傷や炎症がないかを事前に確認してもらう必要があります。また、妊娠中の方や血液が固まりにくい疾患をお持ちの方は、施術を受けられるかどうか必ず医師に相談してください。
効果と限界、何を期待できるのか?
頭皮メソセラピーは髪の密度や太さが改善したという報告がある一方で、反応の程度には個人差が大きく見られます。頭皮の状態や脱毛の進行度、成分の組み合わせによって、実感できる変化は変わってきます。
また、すでに毛包が完全に失われてしまった部分、つまり瘢痕のように硬くなった箇所には刺激を与える対象そのものが存在しないため、大きな効果は期待しにくくなります。そのためメソセラピーは、毛包はまだ残っているものの細くなりつつある初期から中期の段階で、より意味を持つとされています。
とくに男性型・女性型脱毛症の初期から中期の段階や、ストレスやダイエット、出産後のように一時的に頭皮環境が悪化してボリュームが減った場合に、比較的良い反応が得られやすいとされています。反対に、円形脱毛症のように自己免疫反応が原因のケースはアプローチそのものが異なるため、診断の段階で原因を正確に見極めることが優先されます。
施術を受ける前には頭皮の状態を正確に診断してもらい、必要であれば飲む薬や他の治療と組み合わせて計画を立てることをおすすめします。結局のところメソセラピーは、単独で劇的な変化を生み出す施術というより、毛包が働きやすい環境をこつこつ整えていく補助的なケアだと捉えるのが現実的です。
References
Korean Dermatological Association, Ministry of Food and Drug Safety (MFDS), American Academy of Dermatology (AAD), and U.S. Food and Drug Administration (FDA).
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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