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レチノールの慣らし期間、初めて塗るとなぜ肌が荒れる?

By Dr. Kim1 min read

化粧品の成分表示でレチノールという名前を見たことがある方は多いはずです。しわ用のクリームにもニキビ用の軟膏にも配合されていて、ひとつの成分がまったく違うふたつの悩みに使われているのが不思議に感じられるかもしれません。

ところが実際に使ってみると、最初の3日から7日ほどは肌が赤くなり、白い皮むけが目立つケースが少なくありません。良くなるために塗ったはずなのに、なぜ先に肌が荒れてしまうのか。その内側で何が起きているのかを順を追って見ていきます。

レチノールは肌の中で何をする?

ビタミンA系の成分を総称してレチノイドと呼び、レチノールはそのひとつです。レチノール、レチナール(レチンアルデヒド)、トレチノイン(レチノイン酸)はすべてこの仲間に含まれますが、いずれも肌に吸収されたあと最終的にレチノイン酸という形に変わって初めて効果を発揮します。

レチノールは細胞の中で2段階を経てレチノイン酸に変換され、レチナールは1段階で済み、トレチノインはすでに変換が完了した最終形です。段階が少ないほど効果は速く強く現れますが、その分刺激も強くなります。だからこそトレチノインは病院の処方薬として、レチノールは低刺激な化粧品成分として使われているわけです。例えばトレチノインをいきなり毎日塗ると、レチノールよりもはるかに強い刺激を感じますが、これはこの変換段階の違いによるものです。

細胞の入れ替わりが速くなるしくみ

レチノイン酸は肌の細胞の中に入り込み、細胞核の中にあるレチノイン酸受容体(RAR)というたんぱく質に結合します。この受容体は細胞内のスイッチのようなもので、レチノイン酸が結合すると細胞分裂に関わる遺伝子が働き始めます。

その結果、肌のいちばん下にある基底層で新しい細胞が速いペースで作られ、表面の古い角質細胞はより早く剥がれ落ちていきます。ベルトコンベアの速度を上げるイメージだとわかりやすいでしょう。ベルトが速く回れば古い部品はすぐに運び出され、新しい部品がすぐにその場所を埋めます。本来ターンオーバーには1ヶ月近くかかりますが、レチノイドを使うとこのスピードが目に見えて速くなります。

このプロセスによって、色素をため込んだ古い細胞や毛穴をふさいでいた角質の塊が普段より早く入れ替わります。ニキビにレチノイドが使われる理由もここにあります。毛穴の入り口が角質で狭くなり皮脂が閉じ込められることでニキビができ始めますが、ターンオーバーが早まれば毛穴が詰まる速度そのものが抑えられます。

コラーゲンはどうやって増える?

しわを改善する効果は、細胞の入れ替わりとは別の経路から生まれます。レチノイン酸は肌の奥にある真皮でふたつのことを同時に行います。

ひとつ目は、MMP(コラーゲンを分解する酵素で、コラーゲンを切るハサミのようなもの)が作られるのを抑えることです。紫外線を浴びたり年齢を重ねたりするとこのハサミの働きが活発になり、コラーゲンが細かく切られていきますが、レチノイン酸はハサミそのものが作られる量を減らすことでコラーゲンの分解を抑えます。例えば紫外線を長く浴びた肌ほどこのハサミの活動が増え、コラーゲンが切られ続けますが、レチノイドを使い続けるとハサミの働きが弱まり、コラーゲンが蓄積するスピードが分解されるスピードを上回るようになります。

ふたつ目は、真皮でコラーゲンを作る線維芽細胞に直接働きかけ、新しいコラーゲン(肌を支える柱のようなたんぱく質繊維)をより多く作らせることです。ハサミを減らしながら同時に柱を増やしていくため、使い始めてから12週から24週かけて真皮が厚みを増し、小じわが目立たなくなる方向へと変化が積み重なっていきます。

光老化した肌にトレチノイン0.1%を10〜12か月塗り続けたところ、I型コラーゲンの生成が80%増えました。一方、有効成分なしのクリームを塗った側はむしろ14%減っています。本文で触れたとおり、続けて塗ればコラーゲンが作られる速さが壊れる速さを追い越すということです。
光老化した肌にトレチノイン0.1%を10〜12か月塗り続けたところ、I型コラーゲンの生成が80%増えました。一方、有効成分なしのクリームを塗った側はむしろ14%減っています。本文で触れたとおり、続けて塗ればコラーゲンが作られる速さが壊れる速さを追い越すということです。

最初に肌が赤くなる理由は?

ここが、レチノイドを挫折してしまう最大の理由です。原因は先ほど説明した細胞の入れ替わりの速さと直接つながっています。

ターンオーバーが急に速まると、肌表面の角質層(外部刺激や水分の蒸発を防ぐバリア)が新しく作られる速度よりも剥がれる速度のほうが先に上がってしまいます。バリアが一時的に薄くなることで水分がより蒸発しやすくなり、そこから刺激物質も入り込みやすくなります。そのため赤み、ヒリつき、白い皮むけが同時に現れ、この時期はよく「レチノイド反応」と呼ばれます。たとえるなら、古い壁紙をすべて剥がして新しい壁紙を貼るリフォームに似ています。剥がした直後、新しい壁紙がまだ貼られていない短い間は下地がむき出しになるように、肌もこの期間はバリアのない状態にさらされているのです。

ニキビができやすい部位では、もうひとつ別の現象も重なります。肌の中ですでに作られつつあった、まだ目に見えない小さなニキビの芽(微小面皰)が、ターンオーバーが速まることで一気に表面へ押し上げられてきます。もともとできる予定だったものが時期だけ前倒しでまとめて出てくるため、実際には悪化しているわけではなく、通過点にすぎないケースが多いとされています。

慣らし期間はどのくらい続く?

肌が新しいターンオーバーの速さに合わせて角質層を再び厚く整えるまでには、通常2週間から4週間かかります。この期間を過ぎると表面がそのスピードに慣れ、刺激症状は落ち着いていく一方で、細胞の入れ替わりやコラーゲン生成の効果はそのまま続きます。角質層が1枚新しく作られて定着するにはそれだけの時間が必要なので、どんなに急いでもこの期間自体を縮めることはできません。

問題は、この慣らし期間を乗り越えられずに途中でやめてしまうケースが多いことです。だからこそ、最初から強く始めるのではなく、刺激を抑えながらゆっくり進めていく工夫が必要になります。

刺激を減らす使い方の順番

以下の方法は、結局ひとつの原則に集約されます。角質層が剥がれる速さと新しく作られる速さを、できるだけ近づけることです。

  • 低濃度から始めるのがおすすめです。最初から高濃度を使うと角質層が剥がれる速度が再生速度を大きく上回ってしまい、慣らし自体が失敗に終わることが多いためです。
  • 毎日ではなく2日から3日おきに使い、肌が慣れる時間を作ることも助けになります。細胞の入れ替わりの速度が急激に上下せず緩やかに上がっていくほうが、角質層もそのペースに追いつきやすくなります。
  • 保湿剤を先に塗ってからレチノイドを重ねる方法(バッファリング)を使うと、浸透スピードがゆるやかになります。バリアの役割を果たす保湿剤の層がレチノイン酸が一気に深く入り込むのを防いでくれるため、刺激がかなり軽減されます。
  • 夜だけ使い、日中は日焼け止めを一緒に使うことが大切です。レチノイドで薄くなった角質層は紫外線に敏感になっているため、日中の紫外線が刺激や色素沈着につながりやすくなります。

この4つを一緒に守ることで、刺激を最小限に抑えながら細胞の入れ替わりとコラーゲン生成という本来の効果はそのまま得られるとされています。最初の2週間は多少の赤みや皮むけがあっても自然な過程だと受け止め、無理に毎日塗って押し進めないほうが、結果的に目標の濃度や頻度に早くたどり着く近道になります。

濃度を上げるときも一気に大きく引き上げず、今使っている濃度に刺激なく慣れてから一段階ずつ上げていくのが安全です。細胞の入れ替わりの速度が急に変わらないほうが、角質層もそのつど再生に追いつけるからです。

一緒に使える成分と避ける成分

AHAやBHA(角質を溶かす酸性成分)、過酸化ベンゾイルのようにそれ自体刺激のある成分をレチノイドと同じタイミングで重ねて使うと、角質層が二重に薄くなり刺激が大きく増える可能性があります。慣らし期間中はこうした成分とは使う時間帯を分けるか、使用頻度を減らすほうが安全です。例えば夜にレチノイドを使い、朝に高濃度の角質ケアトナーまで重ねると、1日のうちに角質層が2回薄くなることになり、刺激が重なりやすくなります。

反対に、ナイアシンアミドのように肌のバリア機能を高めてくれる成分は、レチノイドと併用することで刺激を抑える助けになると報告されています。バリアが強くなれば、角質層が薄くなる時期でも水分の蒸発や外部刺激の侵入が抑えられるためです。慣らし期間を過ぎて肌が落ち着いたあとは、他の活性成分との組み合わせの幅も自然と広がっていきます。

夏の強い紫外線の下ではレチノイドの刺激がいつもより出やすくなるため、季節に合わせて濃度や頻度を一時的に控える調整も助けになります。妊娠中や授乳中はトレチノインのような処方レチノイドの使用を避け、医療機関に相談するのが安全とされています。

References

Korean Dermatological Association, Ministry of Food and Drug Safety (MFDS), American Academy of Dermatology (AAD), and U.S. Food and Drug Administration (FDA).

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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。

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