PM2.5が肌のバリアとコラーゲンに与える影響は?
By Dr. Kim1 min read

PM2.5がひどい日は化粧が浮きやすく、肌がピリピリすると感じる方は少なくありません。これは気のせいではありません。PM2.5は髪の毛の太さの数十分の一という非常に小さな粒子で、肌の表面にとどまらず毛穴や角質層のすき間まで入り込んでしまいます。そしてその中で活性酸素を増やし炎症反応を引き起こしながら、肌のバリア機能やコラーゲンにまで影響を及ぼします。PM2.5がどのような経路で肌に入り込み、なぜこうした反応が起こるのか、そして何をケアすれば助けになるのかを順番に見ていきます。
PM2.5にはどんな成分が含まれる?
PM2.5は単一の物質ではなく、複数の成分が寄り集まった塊です。炭素粒子や重金属、硫酸塩といった大気汚染物質が絡み合った形をしているため、肌に触れたときに刺激を与える成分は一つや二つではありません。つまりPM2.5は埃というより、小さな化学物質の塊に近いと考えたほうが正確です。
肌は体の中で外気と最も広く接している臓器です。肺は呼吸するときだけ空気と触れますが、肌は一日中さらされ続けています。それでもPM2.5が肺疾患ほど肌の問題として大きく注目されてこなかったのは、その影響がゆっくり蓄積していくためです。一日二日では変化に気づきませんが、曝露が繰り返されるうちに肌のバリア機能とコラーゲンは少しずつすり減っていきます。
特に粒子が小さいほど問題になります。大きな粒子は角質層の表面で防がれますが、超微小粒子(PM2.5)と呼ばれるごく小さな粒子は角質細胞のすき間まで入り込めてしまうからです。粒子が小さいということ自体が、そのまま浸透力の高さを意味しているわけです。

PM2.5はどんな経路で肌に入る?
PM2.5が肌に入り込む経路は毛穴だけではありません。毛が生える小さな穴である毛包も、主要な入り口の一つです。毛包は肌の表面より内側にくぼんだ管状の形をしているため、微小な粒子が角質層を通らずにより深い層まで到達できる近道の役割を果たしてしまいます。
角質細胞の近くまで入り込んだPM2.5は、細胞表面にある特定の受容体に捕まえられます。代表的なものがアリール炭化水素受容体(AhR)で、簡単に言えば細胞表面に付いたアンテナのようなセンサーです。本来は体に入ってきた外部の化学物質を察知して反応のスイッチを入れる役割を持っていますが、PM2.5に含まれる成分もこのアンテナに引っかかり、信号を送ってしまいます。
問題は、このアンテナが作動することで始まる反応です。信号が入ると細胞内で活性酸素が増え、炎症を招く物質も同時に分泌されます。つまりPM2.5そのものが直接肌を傷つけるのではなく、細胞がそれを脅威と認識して自ら起こす防御反応が、かえって肌への負担になってしまう仕組みなのです。
PM2.5がコラーゲンを減らす過程
先ほどのアンテナ反応はこれだけでは終わりません。研究では、PM2.5にさらされた皮膚の線維芽細胞(真皮でコラーゲンを作る細胞)において、コラーゲン分解酵素であるMMP(matrix metalloproteinase)の発現がはっきりと増え、逆にコラーゲン遺伝子(COL1A1、COL1A2)の発現は低下するという所見が報告されています。
つまり、コラーゲンを作るスピードは落ちて分解するスピードは上がるという、二つの変化が同時に起こっているわけです。天秤の片方の皿から荷物を下ろし、もう片方の皿には荷物を積み増しているようなものです。結果として、コラーゲンの総量が減る方向へ天秤が傾いていきます。
この過程で中心的な役割を果たすのが活性酸素です。活性酸素は細胞内でいわば錆びつくような損傷を引き起こす物質で、PM2.5によって増えた活性酸素が線維芽細胞の正常なコラーゲン合成機能を妨げてしまいます。そのため紫外線と同じくらい、PM2.5も肌老化を早める要因として挙げられています。ただしそのスピードは曝露量や期間によって個人差があります。

バリアが薄くなると何が起こる?
肌のバリア機能は、よくレンガとセメントに例えられます。角質細胞がレンガだとすると、セラミドのような脂質成分がその間を埋めるセメントの役割を担っています。この構造がきっちりしていてこそ水分が逃げず、外部刺激も防ぐことができます。
研究では、PM2.5にさらされた肌でバリア機能を構成する主要なタンパク質の発現が低下することが観察されています。セメントの役割を果たす成分が減るということは、レンガとレンガの間にすき間ができるのと同じ状態です。そのすき間から水分は逃げ、外部の刺激物質はより入り込みやすくなってしまいます。
そのためPM2.5に頻繁にさらされると、肌がつっぱったり赤くなったり、これといった理由もなくピリピリする感覚が増えることがあります。バリアが薄くなった分、普段なら問題にならなかった刺激にも肌がより敏感に反応してしまうためです。角質層が新しく生まれ変わって元の状態に戻るには通常数週間かかるといわれており、バリアが再びきっちりするまでにはそれだけの時間と地道なケアが必要です。
PM2.5はニキビや赤みを招く?
PM2.5は毛穴を詰まらせる物理的な異物でもあります。皮脂や角質と絡み合って毛穴の入り口を狭めると、その中でニキビ菌が繁殖しやすい環境ができあがります。狭くなった通路に老廃物がたまることで、炎症性ニキビにつながりやすい条件が整ってしまうわけです。
同時に、先ほど説明した活性酸素の反応は肌の中の炎症シグナル物質の分泌も増やします。細胞内で炎症を増幅させる警報装置ともいえるインフラマソームという仕組みが、PM2.5の刺激によって活性化するという報告もあります。一度警報が鳴ると周囲の炎症反応が連鎖的に大きくなっていくのと似た原理です。
こうした理由から、PM2.5がひどい時期にニキビや吹き出物が増え、もともと肌が赤みを帯びやすい人や酒さ傾向のある人はその症状がより目立つ傾向が報告されています。バリアが薄くなった状態に炎症反応まで重なると、血管がより拡張しやすくなり赤みが際立って見えるためです。
ダブル洗顔は1日何回が適切?
PM2.5に含まれる成分の多くは、油と混ざりやすい脂溶性の物質です。水だけで洗ってもこうした脂溶性の汚れは落ちにくく、角質層のすき間に残ってしまうことがあります。そのためオイルクレンザーやクレンジングバームで先に拭き取るダブル洗顔がよく勧められます。油は油とよく混ざるという原理を利用して、汚れを油分に溶かし込んで一緒に洗い流す方法です。
ただし、洗顔をあまりに頻繁に、力を入れて行うのは別の問題を生みます。洗浄力の強い製品で一日に何度もこすり洗いすると、先ほど説明したバリアのセメント成分まで一緒に洗い流されてしまう可能性があるからです。汚れは落としつつバリアは守る、そのバランスが必要になります。
実際には、外出から帰った後に一日一回程度のダブル洗顔で十分なケースが多く、洗顔後はすぐに保湿製品でバリアを補ってあげる順番までがセットで案内されます。洗い流すことと補うこと、この二段階がそろってこそ効果があるという意味です。
PM2.5が多い日のスキンケア習慣
PM2.5から肌を守る方法は、一つの製品に頼るよりも、いくつかの習慣を重ねたほうが効果は大きくなります。それぞれの習慣が違うポイントで働きかけてくれるからです。
- 帰宅後のダブル洗顔: 先ほど説明した原理で脂溶性の汚れを洗い流す最初のステップです。後回しにすればするほど、汚れが角質層にとどまる時間が長くなります。
- 抗酸化成分の補給: vitamin C、niacinamideといった成分は、PM2.5によって増えた活性酸素を減らすのに役立つと知られています。損傷の原因物質そのものを減らすアプローチだからです。
- セラミド配合の保湿剤: 先ほど説明したバリアのセメント成分を外から補ってくれる役割です。バリアが自ら回復するあいだ、緩衝材のような働きをしてくれると言えます。
- 日焼け止め: PM2.5と紫外線はそれぞれ別の経路で活性酸素を増やすため、同時にさらされるとダメージが重なりやすくなります。二つの刺激を同時に減らすことが効率的です。
- 過度な角質ケアは控える: すでに薄くなったバリアに物理的な刺激まで加えると、かえって回復が遅れることがあります。バリアが敏感になっている時期は、刺激を加えるより補ってあげることを優先しましょう。
こうした習慣を続けていけば、肌のバリアは再びきっちりと整い、コラーゲンをむしばんでいた酸化ストレスもそれだけ抑えられる方向に働くと考えられます。PM2.5そのものをなくすことはできませんが、肌が受ける負担はケア次第でかなり減らすことができます。
References
Korean Dermatological Association, American Academy of Dermatology (AAD), and Ministry of Food and Drug Safety (MFDS).
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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