PDRNとPNスキンブースター、分子サイズの違いが生む肌への浸透速度と再生持続期間の差
By Dr. Kim1 min read

PDRNとPNは、リジュランのようなスキンブースター施術の案内文でよく並んで登場する名前です。どちらも成分表に記載されているため同じものだと感じやすいですが、実際には分子サイズが異なり、その違いによって肌で担う役割も分かれます。
名前が似ているため混同しやすいのですが、二つの成分を分ける基準はただ一つ、鎖の長さです。鎖が短ければPDRNと呼び、鎖が長ければPNと呼びます。この鎖の長さ一つが、浸透する場所や働き方、そして効果が続く期間まで左右します。
そのためカウンセリングで「どちらが良いですか」と聞かれても、はっきり答えるのは難しいところがあります。優劣の問題ではなく、鎖の長さによって得意なことが違うからです。表皮が薄く乾燥しやすいなら短い鎖が有利で、真皮のハリが気になるなら長い鎖が有利という具合です。
PDRNとPN、名前は似ているのにどこが違うのか
二つの成分はどちらもpolynucleotide、つまりDNAの断片をつなげた鎖状の成分という大きな括りに属します。サケやマスの精巣、すなわち魚の体内からDNAを取り出して精製する最初の段階もよく似ています。
違いはその次の段階で生まれます。DNAを細かく切って短い断片にするとPDRN(polydeoxyribonucleotide)になり、切断を抑えて元の長さに近い状態でつなぎ合わせるとPN(polynucleotide)になります。原材料は同じでも、加工の仕方が二つの顔をつくるわけです。
二つの成分のルーツは同じサケのDNA
PDRNもPNも出発点は魚のDNAです。人のDNAと構造が似ているため、体が異物として強く拒絶せず、むしろ回復の材料として受け入れやすいと言われています。
ただし最終製品になるまでの精製と切断の工程は異なります。PDRNは酵素や物理的な処理によって鎖を短く切り刻む過程を経て、PNはその切断過程を最小限に抑え、元の長い鎖の構造をできるだけ残します。鎖を切るか残すか、この分岐点で二つの成分の性格が決まります。
鎖の長さが生む浸透方法の違い
鎖の長さはそのまま分子サイズにつながります。PDRNは鎖が短いため分子そのものが小さく、PNは鎖が長いため分子がはるかに大きくなります。研究によれば、PNの分子量はPDRNより大きく上回ると報告されています。
分子が小さいと体の中で動きやすくなります。小さな粒が狭い隙間を通り抜けやすいのと同じ理屈で、PDRNは肌表面に近い表皮層まで比較的スムーズに浸透します。反対にPNは分子が大きいため、注入した場所、つまり真皮層付近に長くとどまる傾向を示します。
この違いは施術後に感じるスピードにも影響します。小さな分子は早く広がる代わりに体にとどまる時間が短く、大きな分子は広がる速度は遅いものの、その場所に長く残ります。絵の具を水に落とすとすぐ広がるものの薄まっていき、粘りのある生地はゆっくり広がるもののその形が長く保たれるのと似た感覚です。
PDRNが表皮で果たす役割
PDRNは表皮に浸透した後、アデノシン受容体(adenosine receptor、細胞表面で回復の信号を受け取る扉のような構造)を刺激します。この受容体が開くと、細胞は損傷した部分を修復せよという信号として受け取ります。
同時に、PDRNが細かく分解されてできた断片は、細胞が新しいDNAとタンパク質をつくる材料としても使われます。体がもともと持っている材料再利用の経路であるサルベージ経路(salvage pathway)を利用する形になるため、大がかりな合成過程を経ずに材料を素早く供給できます。そのためPDRNは、肌のバリアを整え水分を保つ表面の回復に強みがあるとされています。
こうした特性からPDRNは、以前から傷の回復や血流に関わる用途で使われてきた背景もあります。表皮が薄くなったり刺激に弱くなったりした肌、施術後の回復が遅れがちな部位に特に役立つと報告されています。ただし鎖が短い分、体内で分解されて排出される速度も速いため、効果を維持するには一定の間隔で繰り返し施術する方法がよく案内されます。
PNが真皮でつくる支え
PNは表皮を通過して真皮側に落ち着くと、性質が少し変わります。長い鎖同士が絡み合い、スポンジのように穴の多い網目構造をつくります。この構造をスキャフォールド(scaffold、建物を建てるときに組む足場のように組織を支える一時的な土台)と呼びます。
この網目構造は水を抱え込む力に優れ、真皮に水分を満たす効果を生みます。また鎖が大きく長くとどまる分、線維芽細胞(コラーゲンをつくる肌の中の細胞)がこの構造に付着している時間も長くなります。線維芽細胞が長く刺激を受けるほど、コラーゲンをつくる信号もそれだけ長く続くと説明されています。
濡れたスポンジを顔の中に敷いておくようなイメージに近いといえます。スポンジが水を含んでいる間はその部分が柔らかくハリのある状態に保たれ、その上に付いた細胞は刺激を受け続けながら働きます。鎖が太く丈夫であるほど、このスポンジがとどまる期間も長くなるとされています。
コラーゲンをつくる信号はどう違うのか
PDRNとPNはどちらも結果的にコラーゲン生成を助けると報告されていますが、信号が入るルートと速度は異なります。PDRNはアデノシン受容体を通じて比較的早く回復信号を送るタイプに近く、PNはスキャフォールドに付いた線維芽細胞を長く刺激しながらゆっくり信号を続けるタイプに近いといえます。
例えるなら、PDRNは短く強く鳴るベルで、PNは長くともり続ける照明です。ベルは素早く反応を引き出し、照明は穏やかに長く維持されます。そのため臨床では、二つの成分の効果は重なりつつも、持続する期間には差が出ると報告されています。
また、二つの信号が完全に別々に動くわけでもありません。表皮で始まった回復信号は下層の真皮の細胞にもある程度影響を与え、真皮でつくられたコラーゲンは再び表皮を支える土台になります。上下の層が互いにやり取りしながら共に回復していく形のため、二つの成分の効果を完全に切り分けて見るのは難しいと説明されています。
施術の現場で併用される理由
実際の施術では、PDRNとPNのどちらか一方にこだわるより、状況に合わせて選んだり組み合わせたりするケースも少なくありません。次のような基準がよく挙げられます。
- 表皮の回復と即座の潤いを優先するなら、PDRNの比率が高い製品が選ばれやすい。鎖が短く表皮まで素早く届くためです。
- 真皮のボリュームと長く続くハリを目標にするなら、PNの比率が高い製品が選ばれやすい。スキャフォールド構造が長く残り、線維芽細胞を継続的に刺激するためです。
- 傷跡や刺激の強い部位には、二つの成分を併用する組み合わせも選ばれることがあります。表皮と真皮の両方から同時に回復信号を送れるためです。
どちらの成分も肌自体の回復力を引き上げる仕組みのため、即座のボリューム充填というより、時間をかけて少しずつ現れる変化に近いといえます。カウンセリングでは、表皮が薄く乾燥しやすいのか、真皮のハリのほうが気になるのかを一緒に確認すると、今の状態にどちらが合うか見極めやすくなります。
References
Korean Dermatological Association, American Academy of Dermatology (AAD), and Ministry of Food and Drug Safety (MFDS).
この記事は参考になりましたか?
About this article
診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
Read next

妊娠線ができる理由、赤い線が白い線に変わる仕組みと治療を始めるべきタイミング
妊娠線は、皮膚が短期間に急激に伸びることで真皮内のコラーゲンの柱が断裂してできる痕跡です。赤い線が白い線へと変化していく過程と、時期によって治療の反応がなぜ違うのかを、仕組みを中心にわかりやすく解説します。
By Dr. Kim

唇の薄さと縦じわにはリジュラン、質感を取り戻す仕組みと施術回数、ケアまで解説
リジュランはPolynucleotide(PN)成分を唇の組織に直接注入し、質感とうるおいを取り戻す施術です。ボリュームを足すフィラーとの違いや、縦じわが薄くなっていく過程がどんな経路をたどるのか、施術回数や痛みの程度まで、仕組みを中心にまとめました。
By Dr. Kim

太もものボコボコしたセルライト、痩せてもなぜ消えず、どう改善できるのか
セルライトは単に脂肪が多いから起こる問題ではなく、皮膚の下にある線維隔壁が引っ張る構造によって生じます。痩せてもこの構造がそのまま残る理由と、施術がこの構造にどう働きかけるのかを、仕組みから丁寧に見ていきます。
By Dr. Kim