ナイアシンアミドの効果、美白とバリア改善のしくみと濃度
By Dr. Lee1 min read

化粧品の成分表示を見ていると、ナイアシンアミド(niacinamide)という名前にやたらと出会います。美白美容液にも入っていますし、鎮静クリームにも入っていて、さらにはトラブルケア製品にまで配合されています。一つの成分がこれほど多くの目的で使われているのを見ると、なんとなく万能をうたう都合のいい成分なのではと疑いたくなるのも無理はありません。
ですが、ナイアシンアミドが幅広い製品に使われているのにはきちんとした理由があります。この成分は肌の中で二つの異なる経路を通じて働きます。一つは色素が作られたあと肌表面へ運ばれる道筋を抑える経路で、もう一つは肌を包む防御膜を丈夫に編み直す経路です。この二つの経路がそれぞれなぜ、どのように働くのかを一つずつ解説していきます。
ナイアシンアミドはどんな成分?
ナイアシンアミドはビタミンB3のいくつかある形の一つです。ビタミンB3は体がエネルギーを作る過程に欠かせない栄養素で、体内に入ったナイアシンアミドはNAD+やNADP+という活性型の補酵素に姿を変え、細胞のあちこちで使われます。
肌の細胞も体の他の細胞と同じように、エネルギーを作ったり物質を合成したりする際にこのビタミンB3系の成分を材料として使います。そのため肌にナイアシンアミドを塗ると、細胞が自ら色素を処理したりバリア成分を作ったりする様々な過程に、材料が一つ豊富に供給されることになります。特定の症状だけをピンポイントで狙う成分というより、細胞が働くための元手を補ってくれる成分に近いと考えるとわかりやすいです。
メラニンは肌にどう色を残す?
肌の色を決める色素であるメラニンは、メラノサイトという特定の細胞の中で作られます。この色素は最初に作られる段階では、メラノサイトの中に小さな袋の形で入っています。この袋のことをメラノソームと呼びますが、色素が詰まった小さな小胞だと考えれば理解しやすいです。
問題は、このメラノソームがメラノサイトの中だけにとどまらないことです。この袋は周囲にあるケラチノサイト、つまり肌表面を作る細胞へと手渡されるように運ばれていきます。宅配便の箱が物流センターから各家庭へ配送されるように、色素の入った袋がメラノサイトから表面の細胞へ配送されていく過程だとイメージすると分かりやすいでしょう。こうして配送されたメラニンが表面の細胞に蓄積されることで、シミやくすみとして目に見えるようになります。
色素の袋の配送を遅らせるしくみ
ナイアシンアミドはメラニンそのものを作れなくする成分ではありません。そうではなく、先ほど説明した配送過程、つまりメラノソームがメラノサイトからケラチノサイトへ手渡されるその受け渡しの段階を遅らせる方向に働くという報告があります。
メラノサイトとケラチノサイトが接する部分には、二つの細胞が信号をやり取りする特定の経路があり、ナイアシンアミドがこの経路に関与して受け渡しの速度を落とすという研究が報告されています。宅配便に例えるなら、箱そのものを作らせなくするのではなく、物流センターから各家庭へ向かう配送スピードそのものを遅くするようなものです。配送が遅くなれば表面の細胞に蓄積する色素の量が減り、それだけ目に見える色素沈着も薄くなる余地が生まれます。
色素とバリアはなぜ一緒に崩れる?
色素沈着と肌バリアは、一見すると何の関係もないテーマに見えます。片方は色の問題で、もう片方は水分や保護膜の問題だからです。ですが実際の肌では、この二つがよく絡み合って現れます。
バリアが弱った肌は紫外線や外部刺激により敏感に反応する傾向があり、その反応の過程で炎症のシグナルが増えると、メラノサイトも一緒に刺激を受けて色素をより多く作る方向へ動くことがあります。つまりバリアが弱い肌ほど色素沈着も起きやすく、残りやすい傾向があるということです。だからこそ色素を薄くするだけにとどまらず、バリアまで一緒に整えるアプローチが、ナイアシンアミドのように二つの経路を同時に持つ成分では特に意味を持ってきます。
セラミドが増える経路
肌の一番外側の層は、レンガとその間を埋めるセメントでできた塀によくたとえられます。レンガの役割をするのが角質細胞で、そのレンガの間を埋めるセメントの役割をするのがセラミドをはじめとする脂質成分です。このセメントが十分にあってこそ塀に隙間ができず、水分も逃げにくく外部刺激も入りにくくなります。
ナイアシンアミドはケラチノサイトがこのセラミドをはじめとする脂質を合成する過程に必要な材料を補う役割を果たすという報告があります。細胞の中で脂質を作る酵素が働く際、ナイアシンアミドがその代謝経路に必要な補酵素の形として使われるためです。セメントを作る材料そのものが豊富になるわけですから、結果として塀の隙間が減りバリアがより緻密になる余地が生まれます。実際にナイアシンアミドを4週間から12週間続けて塗った肌で、角質層の脂質量が増え経表皮水分蒸散量が減ったという報告があります。
バリアが整うと赤みも落ち着く?
バリアが弱った肌は外部の刺激物質が角質層の隙間から入り込みやすく、その刺激に反応して血管が拡張し、顔が赤くなったりほてったりする症状につながるケースがよくあります。セラミドが増えて塀の隙間が埋まれば、こうした刺激物質が入り込む経路そのものが減るため、自然と赤みやほてりが落ち着く方向につながることがあります。
このつながりを三つに分けてみると、次のようになります。
- セラミドが増えると角質層の隙間が埋まり、外部刺激物質が入り込む経路が減ります。刺激が入りにくくなる分、血管が拡張する理由も一緒に減ります。
- 経表皮水分蒸散量が減ると、肌表面が乾いてひび割れる頻度が減ります。ひび割れた隙間はそれ自体が刺激に弱い弱点なので、この隙間が減れば敏感な反応も一緒に減る傾向が報告されています。
- ナイアシンアミドが炎症を引き起こす信号物質の分泌を抑えるという報告もあります。刺激が入っても、それに対する反応そのものがやや和らぐことで、赤みが長く残らずに落ち着く助けになることがあります。
適切な濃度は2〜5%、低めから始める
ナイアシンアミドは濃度が高ければ高いほど効果が比例して大きくなる成分ではありません。一般的に化粧品でよく使われる濃度は2%から5%の間で、この範囲の中で色素沈着の改善とバリア強化の効果が一緒に報告された研究が複数あります。
濃度が高すぎるとかえって顔がほてったり赤くなったりする刺激反応が出ることがあるという報告もあります。特にバリアがすでに弱っている場合や肌が敏感な状態のときは、まず低い濃度で2週間から4週間ほど慣らし期間を置き、刺激なく肌に合うことを確認してから徐々に濃度を上げていく方法がより安全なアプローチとしておすすめです。初めて使う人であれば2%前後の製品から始めて、肌の反応を見ていくのが無難です。
ほかの美白成分と一緒に使ってもいい?
ナイアシンアミドはメラニンの運搬経路を遅らせる方式で働くため、色素が作られる段階そのものを抑える他の成分とは作用するポイントが異なります。そのため二つの成分を一緒に使うと、異なる二つの段階を同時に狙う組み合わせになるという報告があります。
ただし複数の美白成分を一度に重ねて使うと、それだけ肌にかかる刺激の負担も増えることがあります。新しい成分を追加するときは一度にいくつも足すのではなく、一つずつ順番に加えながら肌の反応を確認していく方法が安全です。
References
Korean Dermatological Association, Ministry of Food and Drug Safety (MFDS), American Academy of Dermatology (AAD), and U.S. Food and Drug Administration (FDA). </content>
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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