prettytime
Skincare

ケロイド瘢痕、ステロイド注射と5-FUの併用から手術と放射線まで再発を減らす治療法

By Dr. Kim1 min read

腕や胸、耳たぶにできた傷跡が、もとの傷より大きく硬く盛り上がっているなら、それはケロイド(keloid)かもしれません。ニキビ跡やピアスの穴、手術の跡のような小さな傷からでも始まります。

ケロイドはただの傷跡ではなく、傷を治すはずのコラーゲンが止まらずに増え続けることで生じる問題です。そのため自然に消えるのを待つより、積極的に治療するほうが得策です。

ステロイド注射から5-FU併用、シリコン、圧迫、レーザー、凍結療法、手術まで、方法はいろいろあります。ただし方法ごとに狙うポイントや再発を減らす度合いは異なります。それぞれ何が得意で再発をどれくらい減らすのか、そしてなぜひとつだけでなく複数の方法を組み合わせるのかを、実際の研究データをもとにひとつずつわかりやすく整理しました。

ケロイドはもとの傷の境界を越えて横に広がるが、肥厚性瘢痕は傷の内側にとどまるという違いを示す図

ケロイドと肥厚性瘢痕、何が違うのでしょうか

盛り上がった傷跡がすべてケロイドと呼ばれるわけではありません。ケロイドと肥厚性瘢痕を分ける最も確かな基準は、傷跡がもとの傷の境界を越えているかどうかです。

ケロイドは傷の範囲を越えて、まるでカニの脚のように横へ広がっていきます。最初に傷ついた範囲よりずっと広く硬く成長し、時間が経っても自然には小さくなりません。反対に肥厚性瘢痕は傷の内側だけがぷっくりと盛り上がり、境界を越えることはありません。そして1年から2年ほどかけて徐々に平らになっていくことが多いです。

見た目は両方とも赤く硬く盛り上がっていて似ています。しかし顕微鏡でのぞくと、コラーゲンの積み重なり方が異なります。肥厚性瘢痕はコラーゲンが波のように整った層をなしていますが、ケロイドは太く不揃いなコラーゲンの塊が絡み合い、特定の方向性がありません。この違いがケロイドをより扱いにくくしています。

治療への反応も異なります。肥厚性瘢痕は比較的治療に反応しやすく、自然に良くなることもありますが、ケロイドはずっとしつこく、切除しても再発しやすい傾向があります。そのため自分の傷跡がどちらなのかをまず見極めることが、治療の出発点になります。

項目ケロイド肥厚性瘢痕
境界傷を越えて広がる傷の内側にとどまる
自然消退ほとんどない徐々に薄くなることも
治療反応しつこく再発しやすい比較的良く反応する

真皮の深い層で線維芽細胞がコラーゲンを止まらずに作り続け、傷跡が盛り上がっていくケロイド形成の過程

ケロイドはなぜできて、なぜ消えないのでしょうか

ケロイドは、傷が治る過程が本来止まるべきタイミングで止まらないために起こります。私たちの体は傷ができると、コラーゲンというたんぱく質を作ってその部分を埋めます。通常は傷が治るとコラーゲンの生成が止まりますが、ケロイドではこのブレーキが効かなくなってしまいます。

肌の深い層である真皮でコラーゲンを作る細胞が線維芽細胞です。ケロイドではこの線維芽細胞が過剰に活性化した状態になり、必要な量よりはるかに多くのコラーゲンを作り続けてしまいます。そのため傷跡が本来の範囲を越えて盛り上がっていくのです。

この背景には真皮の中の慢性的な炎症があります。傷ついた部分に炎症のシグナルが長く残り、線維芽細胞を刺激し続けるためです。張力がかかりやすい胸や肩、耳たぶにできやすく、体質的になりやすい人がいるのもこのためです。また色素の濃い肌ほどケロイドができやすい傾向があり、家族にケロイドがある場合は自分にもできる確率が高くなります。

一度できたケロイドが自然に消えない理由もここにあります。コラーゲンを作るスイッチが入りっぱなしになっているため、放っておくとかえって大きくなることもあります。だからこそ、この過剰な反応を抑える治療が必要になるのです。

ケロイドにトリアムシノロン(triamcinolone)を病変内へ直接注入するステロイド注射の施術の様子

最初の治療でなぜステロイド注射を行うのでしょうか

ケロイド治療の基本であり、最初の選択肢となるのが病変内に直接打つステロイド注射です。トリアムシノロンという薬を傷跡の中に直接注入します。

原理ははっきりしています。ステロイドが傷跡の中の炎症を抑え、コラーゲンを作る線維芽細胞の活動を鎮めます。すでに蓄積したコラーゲンの分解も助けるため、盛り上がっていた傷跡が徐々に平らになり、かゆみや痛みも和らいでいきます。

通常は3週間から4週間の間隔で数回に分けて注射します。一度で終わるというより、反応を見ながら続けていく治療です。研究によると、ステロイド注射だけでも傷跡の半分からほとんどが目に見えて小さくなります。注射の痛みが心配になるかもしれませんが、傷跡が硬いほど薬が広がりにくくて張った感じが出る程度で、範囲は小さくすぐに終わります。

ただし誰にでも同じように効くわけではありません。ケロイドの約半数はステロイドへの反応があまり良くなく、いったん良くなってもまた盛り上がってくることがあります。注射をあまりに頻繁に強く打つと、皮膚が薄くなったり毛細血管が透けて見えたりすることがあるため、用量と間隔を適切に合わせることが大切です。そこで登場するのが、次に紹介する併用療法です。

ステロイド単独では1年で33%、5年で50%が再発するのに対し、5-FUを加えると22か月時点でも再発が17.5%に抑えられることを示す比較グラフ
ステロイド単独では1年で33%、5年で50%が再発するのに対し、5-FUを加えると22か月時点でも再発が17.5%に抑えられることを示す比較グラフ

ステロイドに5-FUを加えると再発はどれくらい減るのでしょうか

ステロイド注射は良いスタート地点になりますが、時間が経つと再発が足を引っ張ります。ステロイド単独で使うと、再発率は1年で約33%、5年では約50%まで上がります。つまり半数が再び盛り上がってくるということです。

そこで最近は、ステロイドに5-FUを一緒に注入する併用療法が広く使われています。5-FUはもともと細胞が過剰に増殖するのを抑える薬で、コラーゲンを大量に作り出す線維芽細胞の過剰な活動をさらに抑えてくれます。

効果は数値でもはっきり表れています。あるランダム化比較試験では、ステロイドに5-FUを加えたグループは22か月追跡した時点で再発が17.5%にとどまりました。ステロイド単独の再発率と比べると、大幅に低い水準です。

改善のスピードも速く、傷跡が半分以上平らになる割合も併用のほうが高くなりました。さらにステロイドの使用量を減らせるため、皮膚が薄くなったり毛細血管が現れたりする副作用もむしろ少なくなりました。5-FUはケロイドのように細胞が増え続ける傷跡と相性が良く、頑固なケロイドほど併用のメリットが大きくなります。こうして併用療法は、ステロイド単独を上回る信頼できる選択肢として定着しています。

シリコン、圧迫、レーザー、凍結療法はそれぞれ何をするのでしょうか

注射以外にも、傷跡を抑える方法はいくつかあります。それぞれ狙うポイントが異なるため、よく組み合わせて使われます。

シリコンは予防とケアの基本です。シリコンジェルやシートを傷跡の上に根気よく貼り続けると、傷跡がしっとりと保たれて盛り上がりにくくなります。10件の研究をまとめた分析では、シリコンは傷跡ができるリスクを約30%下げました。新しい傷が治った直後から使うと効果が大きいです。

圧迫療法は傷跡を物理的に押さえる方法です。15から25mmHgで締め付ける圧迫衣を長期間着用すると、傷跡の厚みや硬さ、赤みが軽減します。やけどの傷跡で長く使われてきた方法です。

レーザーは赤みと高さを改善します。血管をターゲットにする色素レーザーにステロイド注射を組み合わせると、盛り上がりが約60%、赤みが約40%、かゆみが約75%減少したという報告があります。

凍結療法は傷跡を凍らせて体積を減らします。病変内で凍らせる方式では、傷跡の体積が約51から63%減少しました。ただし色素が抜けて白くなることがあるため、肌の色が濃い方は注意が必要です。

方法狙い主なデータ
シリコン予防、ケア傷跡リスク約30%減
圧迫厚み、硬さ15から25mmHgで着用
レーザー赤み、高さ盛り上がり60%、赤み40%減
凍結療法体積体積51から63%減

手術で切除するだけでは再発が半数を超えるが、放射線を併用すると13.5%まで下がることを示す再発率の比較グラフ
手術で切除するだけでは再発が半数を超えるが、放射線を併用すると13.5%まで下がることを示す再発率の比較グラフ

手術で切除するのはいつ、どんな人に向いているのでしょうか

傷跡が大きかったり、長い間経過して注射に反応しなくなっていたりすると、手術で切除する方法を考えるようになります。しかしケロイドにおいて手術は慎重に扱う必要があります。

ケロイドをただ切除するだけでは、再発率が非常に高くなります。研究によって差がありますが、再発率は45%程度から、多い場合は100%に達することもあります。切除した部分に新しい傷ができ、その傷がまたケロイドとして成長してしまうためです。下手をすると以前より大きくなることもあります。

そのため手術は単独では行わず、必ず他の治療を組み合わせます。切除直後に放射線を併用すると、再発率は約13.5%まで下がります。放射線の代わりにステロイドや5-FU注射、圧迫療法を続ける方法も使われます。

手術が向いているケースははっきりしています。傷跡が大きすぎる場合や、注射やレーザーでは十分に抑えられない頑固なケロイド、耳たぶのように切除して縫合しやすい部位などです。反対に小さく初期のケロイドであれば、注射とシリコンだけでも十分に抑えられるので、あえてメスを入れる必要はありません。手術を受けた場合は、その後も放射線や注射、圧迫といったケアを根気よく続けることが再発を防ぐ鍵になります。自分の傷跡の大きさや位置、これまでの反応を踏まえて方法を決めれば、安全で満足のいく結果につながります。

耳たぶや胸などケロイドができやすい部位に硬く盛り上がった傷跡があり、治療を検討している様子

この記事は参考になりましたか?

About this article

診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。

Read next

Back to articles