フィロルガNCTF135は複数の栄養を一度に注入するというけれど、本当に肌は生まれ変わるのか
By Dr. Kim1 min read

ママ友の集まりでも、皮膚科の待合室でも、一度は「フィロルガNCTF135」という名前を耳にしたことがあるのではないでしょうか。ビタミンやアミノ酸、ミネラル、ヒアルロン酸までを一本の注射器に詰め込み、真皮に注入する施術として知られています。成分がひとつではなく53種類以上も一度に配合されていると聞くと、気になってしまうのも当然です。
果たして、いろいろな栄養を一度に入れるだけで肌は本当に生まれ変わるのでしょうか。なぜこうした組み合わせを使うのか、それぞれの成分が肌の中で実際にどんな役割を果たしているのか、そして水光注射とは何が違うのか。原理を軸に、以下でひとつずつひも解いていきます。
フィロルガNCTF135はなぜ、成分ひとつではなく複数を一度に入れるのか?
肌がたるんだりくすんだりする理由は、ひとつには絞りきれません。肌を支える柱であるコラーゲンが減る問題、細胞内の代謝が落ちる問題、活性酸素によるダメージが積み重なる問題が同時に絡み合っています。成分をひとつだけ入れても、このうちの一つの経路にしか働きかけられません。
庭に例えるとわかりやすいかもしれません。植物がしおれているとき、水だけをあげても元気にはなりません。水、肥料、日光がそろって初めて植物はしっかり育ちます。フィロルガNCTF135も同じ発想で、複数の経路を同時にサポートするために、さまざまな成分を一度に注入する方式を選んでいます。
- ビタミン類(B群、C、Eなど):細胞の代謝と抗酸化をサポートする役割があり、再生スピードに直結します。
- アミノ酸:コラーゲンやエラスチンをつくる材料そのものであり、欠かせない存在です。
- ミネラルと補酵素(コエンザイム、細胞内の化学反応を助ける補助因子):細胞内の反応スピードを調整する役割を担います。
- ヒアルロン酸:水分子を抱え込む性質があり、肌内部の水分量を保つ働きをします。
興味深いのは、これらの成分がばらばらに働いているわけではないという点です。ビタミンCがコラーゲンをつくる酵素を助けるには、その隣に材料であるアミノ酸がそろっている必要があり、そうして初めて実際にコラーゲンが完成します。道具だけあって材料がない、あるいは材料だけあって道具がない状態では、作業は止まってしまいます。材料と道具が同じ場所に同時にそろうことで実際の作業スピードが上がるとされており、これが単一成分の注射との最大の違いです。
ビタミン成分は肌の再生において具体的にどんな役割を果たすのか?
ビタミンCは、コラーゲンをつくる酵素がきちんと働けるように助ける補酵素の役割を担っています。コラーゲンを織る工場があるとすれば、ビタミンCはその工場の機械が止まらないように動かす潤滑油のような存在です。同時に抗酸化作用も兼ね備えており、細胞を傷つける活性酸素を中和する役割も果たします。
活性酸素がなぜ問題になるかというと、コラーゲンを断ち切るハサミのような酵素であるMMP(マトリックス分解酵素、コラーゲン繊維を細かく切断する酵素)を活性化させてしまうからです。コラーゲンという柱がハサミで切られ続ければ、肌は弾力を支えきれなくなっていきます。ビタミンEとともに働く抗酸化成分は、このハサミの動きを抑える方向に作用すると報告されています。
ビタミンB群は、少し違う方向から働きます。細胞がエネルギーをつくり、新しい細胞へと入れ替わっていく過程全般に必要な材料であるため、不足すると細胞の再生スピード自体が落ちてしまうことがあります。細胞をつくる工事現場に電気が途切れないよう供給し続ける役割、とイメージするとわかりやすいでしょう。
アミノ酸とヒアルロン酸は水分と弾力にどう関わるのか?
アミノ酸はタンパク質を構成する最小単位です。肌の柱であるコラーゲンと、弾力線維であるエラスチンは、結局のところアミノ酸が鎖のようにつながってできています。レンガがなければ柱を建てられないのと同じで、アミノ酸という材料が不足すると、線維芽細胞(コラーゲンを実際に紡ぎ出す細胞)がどれだけ頑張っても材料不足に突き当たってしまいます。
ヒアルロン酸は少し役割が異なります。自重の数百倍もの水分子を抱え込む性質があるため、肌の中に水分の貯蔵庫をつくってくれる存在です。この貯蔵庫が満たされると肌はふっくらと見え、小じわも相対的に目立ちにくくなります。
二つの成分は異なる役割を担いながら、結果的には重なり合っています。アミノ酸が柱そのものを建てる作業だとすれば、ヒアルロン酸はその柱と柱の間を水で満たし、しっかりと支える作業だといえます。
アミノ酸の中でも、グリシン(glycine)、プロリン(proline)、リジン(lysine)は、コラーゲンという縄をより合わせる材料として特に多く使われることで知られています。コラーゲンというタンパク質は3本の鎖がなわのように撚り合わさった構造をしており、その3本それぞれにグリシンが一定間隔で繰り返し組み込まれることで、構造が崩れずしっかりと保たれます。この材料のどれか一つでも不足すると、なわが緩むようにコラーゲンの構造も弱くなりかねません。
メゾセラピーで真皮に直接注入するのはなぜか?
メゾセラピー(mesotherapy、皮膚の中間層である真皮に有効成分を直接注入する施術)という名前自体が、どこに注入するのかを物語っています。肌表面の表皮は、外部の物質を防ぐバリアとして働くよう緻密に組み上げられています。そのため、クリームやアンプルをどれだけ塗っても、有効成分の大半は真皮まで届かず表皮で止まってしまいます。
コラーゲンをつくる線維芽細胞や血管は、表皮の下にある真皮に存在しています。つまり、成分が本当に必要な場所まで届くには、このバリアを迂回する必要があるのです。細い針で真皮に直接注入する方式は、このバリアを飛び越えて成分を必要な位置へ直接届けるアプローチです。
実際の施術では、非常に細い針で肌に数十から数百のごく小さなポイントをちょんちょんと打つように注入します。一度に多い量を深く入れるのではなく、少ない量を複数の地点に浅く分けて入れる方式が採用されています。こうすることで、成分が真皮の一箇所に偏らず、施術範囲全体に均一に広がることができます。
水光注射とは何が違うのか?
いわゆる水光注射と呼ばれる施術は、多くの場合ヒアルロン酸を中心とした、成分構成が比較的シンプルなスキンブースターです。目的も、うるおい感とツヤを引き上げることに重きが置かれています。
フィロルガNCTF135は、ヒアルロン酸に加えてビタミン、アミノ酸、ミネラル、補酵素まで一緒に注入する点でアプローチが異なります。水分補給というひとつの目標というよりも、細胞代謝や抗酸化、コラーゲンの材料供給まで複数の経路を同時にサポートしようとする設計に近いといえます。単に水を満たすことと、細胞が働ける環境そのものを整えることの違いだと理解するとわかりやすいでしょう。
なぜ一度きりではなく複数回に分けて受けると効果が積み上がるのか?
注入された栄養成分は、体の中で代謝され、時間が経つにつれて消費されていきます。細胞がこの成分を取り込み、実際にコラーゲン合成や代謝改善へとつながる反応もまた、一度の刺激で完成するわけではなく、3回から5回ほど繰り返されるなかで少しずつ積み重なっていく傾向があります。
植物に一度だけたっぷり水をあげても育ち続けないのと似ています。一定の間隔を空けて複数回に分けて与えることで、細胞がその刺激に合わせて再生活動を継続できる環境が整います。そのため通常は、2週間から3週間おきに3回から5回にわたって施術を行う方法が勧められています。
効果はどれくらい持続し、なぜ時間が経つと薄れていくのか?
肌細胞の入れ替わり周期は約4週間、コラーゲンが合成・分解される周期は4週間から12週間単位で回っています。注入した栄養成分が刺激した再生活動も、この周期から外れることはできません。時間が経つにつれて刺激の効果は自然と薄れ、元の代謝スピードへと徐々に戻っていきます。
これに加えて、年齢を重ねるほど、あるいは紫外線やストレスといった外部要因にさらされ続けるほど、コラーゲンを分解する側の力が再び強まる傾向があります。そのため、一度の施術で得た効果を長く引き留めようとするよりも、4週間から8週間の周期でメンテナンス施術を続けていく方法がよく勧められています。メンテナンスは効果が消えてから改めて始めるものではなく、薄れていく流れそのものを緩やかにすることを目的としています。
施術後にはどんな変化が現れ、何に気をつければよいのか?
針で真皮に数十から数百の微細な刺激を与える方式であるため、施術直後には赤み、小さな内出血、軽いむくみが出ることがあります。針が通過する際に浅い毛細血管に軽く触れることで起こる自然な反応で、たいてい2日から5日ほどで落ち着いていきます。
施術部位を手で触ったり強くこすったりすると、刺激を受けた肌にさらに負担をかけることがあるため、2日から3日ほどは避けたほうがよいでしょう。また紫外線は、肌が再生する過程で活性酸素を増やし、炎症反応を大きくする方向に働くことがあるため、施術後1週間ほどは普段以上に紫外線対策を意識することが役立ちます。
乾燥して弾力が落ちた肌、くすみが気になる肌に特によく合うといわれています。ただし施術部位に炎症や傷が残っている状態では、針の刺激がその部分をさらに刺激してしまうことがあるため、その箇所が落ち着いてから施術を受けるほうが安全です。
References
Korean Dermatological Association, Ministry of Food and Drug Safety (MFDS), American Academy of Dermatology (AAD), and U.S. Food and Drug Administration (FDA).
この記事は参考になりましたか?
About this article
診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
Read next

妊娠線ができる理由、赤い線が白い線に変わる仕組みと治療を始めるべきタイミング
妊娠線は、皮膚が短期間に急激に伸びることで真皮内のコラーゲンの柱が断裂してできる痕跡です。赤い線が白い線へと変化していく過程と、時期によって治療の反応がなぜ違うのかを、仕組みを中心にわかりやすく解説します。
By Dr. Kim

唇の薄さと縦じわにはリジュラン、質感を取り戻す仕組みと施術回数、ケアまで解説
リジュランはPolynucleotide(PN)成分を唇の組織に直接注入し、質感とうるおいを取り戻す施術です。ボリュームを足すフィラーとの違いや、縦じわが薄くなっていく過程がどんな経路をたどるのか、施術回数や痛みの程度まで、仕組みを中心にまとめました。
By Dr. Kim

太もものボコボコしたセルライト、痩せてもなぜ消えず、どう改善できるのか
セルライトは単に脂肪が多いから起こる問題ではなく、皮膚の下にある線維隔壁が引っ張る構造によって生じます。痩せてもこの構造がそのまま残る理由と、施術がこの構造にどう働きかけるのかを、仕組みから丁寧に見ていきます。
By Dr. Kim