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あごの脂肪だけが消えないとき、デオキシコール酸注射の仕組みと効果・副作用

By Dr. Lee1 min read

ダイエットしてもあご下の脂肪だけがなかなか落ちない、という経験はありませんか。体重とは関係なく二重あごが残って横顔がすっきりしないケースは多くあります。メスを使わずにその部位だけを整えたいというときによく話題に上がるのが、デオキシコール酸(deoxycholic acid)による脂肪溶解注射です。

デオキシコール酸はもともと体内の胆汁に含まれる胆汁酸の一種で、脂肪を溶かす性質を持っています。この成分をあご下の脂肪層に直接注射して脂肪細胞を破壊する施術は、アメリカではKybella(キベラ)、ヨーロッパとカナダではBelkyra(ベルキラ)という名前で承認されています。どんな仕組みで脂肪を減らすのか、効果と持続期間はどのくらいか、気をつけるべきことは何かを、実際の論文データをもとに一つひとつ確認していきました。

デオキシコール酸は脂肪細胞膜を物理的に破壊して脂肪を消し、4週間かけてその部位が線維化され体積が減少する
デオキシコール酸は脂肪細胞膜を物理的に破壊して脂肪を消し、4週間かけてその部位が線維化され体積が減少する

デオキシコール酸はどうやって脂肪を溶かすの?

カギは細胞膜を物理的に破壊するところにあります。デオキシコール酸は石鹸や洗剤のように脂肪膜を溶かす界面活性作用を持ち、脂肪細胞を包む膜に入り込んで膜を壊します。膜が破れた脂肪細胞はその場で崩壊し、あふれ出た脂肪は体内のお掃除係(マクロファージ)がゆっくりと処理します。

ここで重要なのは、この破壊が元には戻らないという点です。脂肪細胞がなくなった場所は4週間かけて組織が修復されます。このとき、その部位が少し硬くなりながら(線維化)体積が縮んでいきます。ある組織研究では、注射1日後に脂肪細胞が溶解し、7日後にマクロファージが脂肪を処理し、28日後にはその部位が修復されて脂肪層が薄くなっていることが確認されました。破壊された脂肪細胞は再生しないので、これが効果が長続きする生物学的な理由です。

ただし、この成分が脂肪細胞だけを狙い撃ちにするわけではありません。周辺のタンパク質が豊富な組織はこの成分をある程度中和できる一方、脂肪層はそれができないため、相対的に脂肪が溶けやすくなると説明されています。だからこそ、正確な層と位置に注射することが安全性と効果を左右するカギになります。

デオキシコール酸成分のあご下脂肪注射は、1回に最大50ポイント、最大6回まで4週間以上の間隔で行う
デオキシコール酸成分のあご下脂肪注射は、1回に最大50ポイント、最大6回まで4週間以上の間隔で行う

何が承認されていて、どう施術するの?

デオキシコール酸注射は2015年にアメリカFDAが成人の中等度から重度のあご下脂肪改善用として正式承認した成分です。脂肪溶解注射のなかで大規模な臨床試験を経て国家承認を取得したケースは珍しく、エビデンスの面では信頼性が高いといえます。

代表的な製品名はアメリカのKybella(キベラ)で、ヨーロッパ・カナダ・オーストラリアなどでは同じ成分がBelkyra(ベルキラ)として販売されています。韓国ではDaewoong製薬のV-olet(ブイオレット)がデオキシコール酸成分で食品医薬品安全処(MFDS)の承認を取得し、あご下脂肪の施術に広く使われています。ひとつ押さえておきたいのは、よく言われる脂肪溶解注射がすべてデオキシコール酸というわけではないという点です。大豆由来成分(phosphatidylcholine)を使う製品もあり、成分によってエビデンスと特性が異なります。施術前にどの成分かを確認しておくと安心です。

デオキシコール酸成分のあご下脂肪注射は、韓国ではDaewoong製薬のV-olet(ブイオレット)、海外ではKybella(キベラ)やBelkyra(ベルキラ)という名前で使われている

施術方法も定められています。あご下の脂肪部位に1cm間隔で点を打つように複数回注射し、1点あたり0.2mLずつ、1回で最大50ポイントまで行います。施術自体は数分で終わり、通常は局所麻酔や氷で痛みを和らげてから行います。施術は4週間以上の間隔を空けて最大6回まで受けられます。間隔を置く理由は、施術後のむくみが引く時間を確保するためです。実際には脂肪量によって異なりますが、平均2〜4回程度で満足される方が多いようです。

注意したいのは、この施術が顔全体や広い部位の脂肪を減らすものではないという点です。承認されている部位はあご下で、少量ずつ精密に扱う施術なので、広い範囲を一度に減らす方法とは性質が異なります。あご下のように局所的に残った脂肪を整えるのに向いている施術として理解しておくとよいでしょう。

あご下脂肪の臨床試験では、医師と患者の両方が改善を認めた割合が約68%、プラセボは約21%で、満足度は79%だった
あご下脂肪の臨床試験では、医師と患者の両方が改善を認めた割合が約68%、プラセボは約21%で、満足度は79%だった

実際の効果はどのくらい期待できる?

根拠はREFINEという大規模臨床試験2件から得られています。1000人以上の参加者を対象に実薬とプラセボを比較した研究なので、信頼性は高いです。

2つの試験を合わせた結果、施術後に医師と患者の両方が改善を認めた割合は約68%で、プラセボは約21%でした。明らかに改善した(2段階以上)割合も16%で、プラセボの1.5%より明確に高い数値でした。MRIで実際の脂肪体積を測ると10%以上減少した方が約43%おり、プラセボの5%と大きな差がありました。施術を受けた方の満足度は79%で、プラセボの34%を大幅に上回りました。プラセボとこれほどの差が出たということは、効果が偶然ではなく成分そのものに由来することを意味しています。

ただ、期待値はリアルに設定しておくのがおすすめです。一度の施術で二重あごが消えるのではなく、複数回かけて少しずつ薄くなっていくイメージで、脂肪がかなり多い方よりも適度に残ったあご下脂肪の方が満足度は高めです。特に横顔でフェイスラインと首の境目がはっきりしてきたと感じる方が多く、写真で経過を記録すると変化を実感しやすくなります。

あご下脂肪注射は2回施術後に約52%、4回後に約72%が改善を示し、複合基準では中央値3回で効果が現れた
あご下脂肪注射は2回施術後に約52%、4回後に約72%が改善を示し、複合基準では中央値3回で効果が現れた

何回受けると効果が出てくる?

施術回数は脂肪量によって変わりますが、回数を重ねるほど改善する割合が上がります。臨床データによると、2回施術後に約52%が、4回施術後には約72%が医師評価で改善を認めました。医師と患者の両方が認める複合基準では、中央値3回で効果が現れています。

そのため実際の診療では、まず数回受けてみて残った脂肪量を確認しながら追加の必要性を判断するケースが多いです。臨床試験でも、満足または残脂肪が少ないことで4回以下で施術を終えた方がかなりいました。6回を必ず受けるというよりも、経過を見ながら必要な分だけ受けるのが合理的です。脂肪が多いほど多くの回数が必要で、適度に残っている程度なら2〜3回で十分なケースも多いです。

効果の持続性も良好です。破壊された脂肪細胞は再生しないため、ある臨床試験では施術3年後も改善を維持した割合が約82%と確認されています。ただし施術していない他の部位と同様に、体重が大幅に増加すると残った脂肪細胞が大きくなる可能性はあります。施術後も体重を安定させることが、効果を長く維持するのに役立ちます。

あご下脂肪注射後のむくみは約87%で10日前後、しびれは約66%で6週間ほど続き、笑顔が一時的に非対称になる神経症状は約4%で大半が6週間以内に回復した
あご下脂肪注射後のむくみは約87%で10日前後、しびれは約66%で6週間ほど続き、笑顔が一時的に非対称になる神経症状は約4%で大半が6週間以内に回復した

副作用は何をチェックしておくといい?

脂肪を溶かす過程でむくみや内出血はよく見られます。ほとんどは時間とともに落ち着きますが、あらかじめ知っておくと経過を落ち着いて見守れます。

最も多いのはむくみで、約87%に見られ、通常10日前後で引きます。痛みは約70%、内出血は約72%に生じますが、内出血はプラセボ群でも同程度に見られたため、薬剤よりも注射針自体の影響とされています。施術部位が一時的にしびれたり感覚が鈍くなる症状は約66%にあり、他の症状よりも少し長く続いて平均6週間ほど経過するため、事前に知っておくと安心です。

最も気になる副作用は、口角の笑顔を支配する下顎縁神経(marginal mandibular nerve)が一時的に影響を受けるケースです。約4%で片側の笑顔が一時的に非対称になることがありますが、これまで報告されたすべての症例で回復しており、永続的なダメージはありませんでした。ほとんどが6週間前後で自然に戻ります。この神経は下顎骨の下側を走るため、注射位置を正確に合わせることが予防のカギです。あご下の解剖に精通した施術者を選ぶことが一番大切です。

デオキシコール酸注射は、体重に関係なく残ったあご下脂肪が気になる方に向いている施術だ

どんな人に向いている施術なの?

デオキシコール酸注射は、体重を落としても消えにくいあご下脂肪が気になる方にぴったりの施術です。メスを使わずに二重あごをすっきりさせたい方や、脂肪吸引ほどの大がかりな施術はためらうという方にも良い選択肢になります。破壊された脂肪細胞は再生しないので効果が長続きするという点も大きな魅力です。

ただ、原因をまず確認しておくとよいでしょう。二重あごの原因が脂肪ではなくたるんだ皮膚や幅広い下顎骨、舌の位置にある場合は、この注射だけでは限界があります。皮膚のたるみも気になるならリフティング施術を、脂肪が主な原因ならこの注射を優先するというように、組み合わせてアプローチすることもあります。まずは自分のあご下が脂肪によるものかどうかをクリニックで確認するのが最初のステップです。脂肪が原因であれば、数回かけてコツコツと受けるほど満足度が上がります。

施術後はむくみやしびれがしばらく続くため、大切な予定が控えているなら回復期間を余裕を持って確保しておくのがおすすめです。一度でドラマチックな変化を求めるというよりも、じっくりと自然にフェイスラインを整えていく感覚で臨んでみてください。あご下の解剖に詳しく、正確な位置に注射できる経験豊富な施術者と出会えれば、安全で満足のいく結果につながります。体重に関係なく残ってしまった横顔のラインが気になるとき、ぜひ検討してみてほしい施術のひとつです。

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About this article

診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。

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