セルレディーエム:ヒト由来ECMを真皮に直接補充する第5世代スキンブースターの効果と限界
By Dr. Lee1 min read

先日の診察で、患者さんがスマートフォンのメモ画面を見せてきました。「リジュランヒーラーもコラーゲンブースターも名前は聞いたことがありますが、セルレディーエムって何が違うんですか?」という問いです。ネットで調べても似たような説明しか出てこず、自分の肌に何が合うのかさっぱりわからないと困り果てた様子でした。それも無理はありません。スキンブースターと呼ばれる施術の種類が増え、名称もまちまちになった今、医師同士でも一言で整理するのが難しいのが実状です。
大きな分類で言えば、こうなります。一般的な水分補給型のブースターはヒアルロン酸(HA)を注入して真皮に水分を蓄えさせます。乾いた鉢植えに水をやるようなイメージで、一時的なうるおい感は得られますが、真皮の骨格自体が衰えていれば密度やハリはそのままです。コラーゲン産生促進型(スカルプトラ・ラジエッセなど)は一歩踏み込んで、肌自身がコラーゲンをつくるよう刺激します。それでも信号を送って数週間待つという流れで、個人の回復力に結果が左右されます。
セルレディーエム(CELLREDM)の発想はここで異なります。水でも刺激シグナルでもなく、真皮の骨格にあたるECM構造そのものを補充するのです。コラーゲンをつくれと促して待つのではなく、すでに完成されたヒト由来の構造物をそのまま届ける。ただし先にお断りしておきます。セルレディーエムというブランド名で実施された臨床試験はまだ存在せず、あとに出てくる有効性の根拠はすべて同系統のヒトADM素材で得られたデータです。

セルレディーエムとはどういう施術なのか
セルレディーエムはHansBiomed(ハンスバイオメド)が製造したヒト由来ECMスキンブースターです。メーカーは「第5世代」という表現を用いています。ECM(細胞外マトリックス)とは、ごく簡単に言えば私たちの真皮そのものです。真皮はコラーゲンやエラスチンなどのタンパク質が網目状に組み合わさった構造体の上に細胞が生着している場所で、この網目がECMです。家に例えるなら家具ではなく壁や骨格に相当し、年齢とともに肌がくすんでハリを失っていく変化の多くは、この骨格が粗くなり崩れていくことから来ています。ADMという略語もよく出てきますが、ヒトの真皮組織から細胞だけを取り除き、ECM構造物だけを残した素材のことです。
水分補給型との違いはここで分かれます。HA系のブースターは真皮に水分を蓄えさせるのが目的ですが、骨格自体が弱ければ密度もキメも変わりません。コラーゲン産生促進型はコラーゲン合成を促す刺激を与えますが、シグナルを送って数週間待つ形で、結局は個人差のある回復力に頼ります。
セルレディーエムは水でも刺激シグナルでもなく、骨格であるECM構造そのものを補充するという考え方です。無から有をつくるよう細胞に負担をかけるのではなく、すでに完成された構造を届ける。更地に家を建てろと急かすのではなく、骨格を先に立てておくイメージです。細胞がゼロからつくる負担が減るぶん、真皮の密度とハリという土台を直接補える。刺激だけに頼ったときに生じる個人差を、構造物を先に敷くことで一定程度埋められるという期待もここから来ます。
「ヒト由来」という言葉は軽くはありません。動物や合成材料ではなく、ヒトの真皮組織からECMを採取・精製した製品ということです。ヒト組織を使う以上、免疫反応のリスクは考慮が必要です。主な原因はDNAをはじめとする細胞内成分で、これを最大限除去することが精製の要です。セルレディーエムでは残存DNAを1mgあたり50ng未満(<50ng/mg)に抑える処理が施されています。構造物は残し、免疫を刺激しうる夾雑物を取り除くという設計です。

セルレディーエムには何が入っているのか
このグラフはセルレディーエムのECM成分比率を示しています。最も多いのはコラーゲンで約89%、弾力を担うエラスチンが約3%、GAG(グリコサミノグリカン)が約0.4%含まれます。メーカースペックでは粒子径約75µm、5ccあたりのECM含量は160mgと表記されています。成分を個別に抽出して混合したのではなく、真皮がもともと持っていた構造の編み目をできる限りそのまま保持している点が核心です。ただしコラーゲン約89%という数値はメーカースペックであり、同系統のヒトADMを分析した一次論文では約80%と報告された事例もあります。測定法や基準によって数値は変わりますので、おおよその組成として捉えてください。
一つひとつを見ると像が鮮明になります。コラーゲンは真皮の骨格そのもので、エラスチンは伸びて戻る弾性を担います。GAGは量は少なくても役割は小さくない。コラーゲンとエラスチンの間隙を満たして水分を保持し、シグナル分子が定着する下地となるゲル状の基質です。コラーゲン単体を塊で注入するのと、この三者が本来の比率で一緒に入るのとでは、真皮への受け取られ方が異なります。真皮が日頃から見慣れた形で素材が届くため、細胞がその上に定着しやすくなります。
粒子径約75µmにも理由があります。大きすぎると注射針の通過が難しくなり施術後のしこりも生じやすく、小さすぎると構造物として機能せず早期に散逸します。真皮に足場として留まりながら注入がスムーズに行えるよう調整された結果です。ECM含量160mgという表記は、一本に入っている構造素材の量を把握する目安です。素材の組成は組成として、ヒトの肌での結果は別の話。優れた組成が必ずしも良い結果を保証するわけではなく、大切なのはその素材が実際の真皮に定着してどれだけ持続するかです。それは組成表ではなくヒトの皮膚でのデータによってしか答えられない問いです。

臨床ではどんな結果が出ているのか
このグラフの数値は、セルレディーエムというブランドで実施された試験ではありません。同系統のヒトADM(phADM)素材を用いた左右比較無作為化試験の結果です。同系統ゆえに原理と素材の性格を共有しているため、参考根拠として用います。試験デザインは同一人物の顔の片側にヒトECMを、反対側にHAを注入して比較する左右比較方式。同一人物なので年齢や生活習慣などの変数が両側に等しくかかり、成分差を比較的クリーンに評価できます。
20名を20週間追跡したこの試験で、ECM注入側の改善は9指標にわたりました。水分量が約21%増加、皮膚密度が約15%、ボリュームが約11.5%、弾力が約11%改善。減少した指標では毛穴面積が約32%、目の下のシワが約21%、色素沈着が約14.5%、シワの深さが約14%、経表皮水分蒸散量(TEWL)が約11%減少しました。単に水を蓄えてうるおいが出ただけでなく、密度や弾力といった真皮の土台にあたる指標まで動いた点、とりわけ毛穴面積が約3分の1近く縮小した推移が印象的です。
サンプルが20名と少なく、セルレディーエム専用試験ではなく同系統の根拠であるという限界は念頭に置いてください。同系統素材が良い方向を示したという点は参考にできますが、その差がすべての方に同じ大きさで再現されると決めつけるのは早計です。以上の内容はLee YIらがInt J Mol Sci 2026;27(5):2193に報告した同系統ヒトADM試験に基づきます。

時間とともにどう変わるのか
この折れ線グラフは施術後20週間にわたる毛穴面積の変化を2本の曲線で示しています。セルレディーエム専用データではなく、同系統ヒトADMの左右比較試験から引用したグラフです。ヒトECM注入側は毛穴面積が0週の約62mm²から12週で約45mm²、20週で約42mm²まで継続して縮小しました。HA注入側は約58mm²から約48mm²まで下がるにとどまり、ECM側は時間とともにさらに下がり差が広がっています。
曲線の形に変化の性質が表れています。効果が一度に大きく出て消えるのではなく、おおよそ4〜12週にかけて少しずつ積み上がる経過です。HAが水分を蓄えてつくった効果は時間とともに薄れますが、ECM側は構造物が真皮に定着し、細胞がその上で組織を再構築する過程が続くことで後半まで変化が持続しました。施術翌日に鏡の前で劇的な変化を期待するより、数週間かけてじっくり積み上がる施術と理解するほうが実態に近いです。
こうした施術ほど、途中で焦らない気持ちが大切です。2回目まで変化をほとんど感じなかったのに、3回目以降から肌の手触りが変わったという方は少なくありません。1〜2回で判断するより、推奨回数を終えてから全体の経過で評価するほうが合理的です。グラフはその流れの方向を示す参考線として見てください。

Re2O(リトゥオ)と何が違うのか
セルレディーエムを調べて来院される方がほぼ必ずと言っていいほど聞くのが、Re2O(リトゥオ)との違いです。大きな原理は同じです。どちらもヒト由来ADMから得たECM構造を真皮に直接補充する同系統の施術で、コラーゲン産生を促して待つのではなく完成した骨格を補充するという発想を共有しています。どちらが優れているかというランク付けより、同じカテゴリーの中でどこが異なるかを見て自分に合う方を選ぶという話として捉えていただくのが適切です。
違いを挙げれば、製造元が異なります。セルレディーエムはHansBiomed(ハンスバイオメド)が、Re2OはHyumedix(ヒューメディックス)が製造しており、粒子径や表記上の組成にも差があります。セルレディーエムは粒子径約75µm、コラーゲン約89%と表記されます。Re2Oは同じヒトADM系統ながら製造工程と表記数値が異なります。同じヒト組織を出発点にしても、どのような工程で粒子を整えて精製するかによって最終製品の性質は変わるためです。ただし、数値の差が施術結果の差に直接つながると言える根拠はありません。
最も重要な限界はここです。セルレディーエムとRe2Oを同条件で同一人物の顔の両側に注入して直接比較した臨床試験はまだ存在しません。先に示した臨床数値もヒトECMとHAの比較であり、2つのヒトADM製品を対決させたものではありません。どちらも比較的新しい製品でデータの蓄積が十分でないという事情も共通しています。「セルレディーエムのほうがRe2Oより優れている」、あるいは逆も、現時点でどちらも根拠のない主張です。この問いに対して私は、優劣の問題ではなく製造元・粒子径・施術環境を踏まえた選択の問題だと答えます。どちらかを一方的に推す説明を見かけたときは、少し立ち止まって考えてみてください。

どんな方に向いていて、何に注意すべきか
セルレディーエムが選択肢に入る場面はおおよそ決まっています。HAブースターを繰り返し受けても気になるキメや弾力の改善が感じられない方、くすみとともに小じわが目立ち始めた方、水分補給だけでは物足りないと感じて真皮の土台を底上げしたいという場合に相談の余地があります。一方、深いシワや凹んだボリュームを一度で補いたいという目的なら、フィラー(ジュビダームやレスティレーンなど)のような別の選択肢のほうが適している可能性があります。セルレディーエムは輪郭を劇的に変える施術というよりも、真皮の土台をゆっくり整えてキメやハリが一段上がるほうに近い施術です。実際に回数を重ねた方の中には、肌の手触りが変わったと感じる方は少なくありません。一方で期待ほどではなかったという方もいるため、期待値をあらかじめ整えることが先決です。
施術方法はクリニックによって異なります。おおむね4週間隔で3回を一クールとするケースが多く、効果の持続は6〜12カ月程度と案内されることが多いです。ただしこれもセルレディーエム専用の長期追跡データに基づいた数値というよりは、同系統施術の臨床経験から見積もられた目安です。費用は通常のHAブースターより高めで、ヒト由来組織の精製コストがかかるため、価格と回数を合わせて事前に確認しておくことをお勧めします。
注射で真皮に注入する施術のため、直後に腫れ・内出血・一時的なしこりが生じることがあります。多くは数日で落ち着きますが、しこりが長引く場合は施術を受けたクリニックに相談してください。何よりヒト由来組織という性質上、正規に承認された製品かどうかを確認することが、効果以前に安全の問題として直結します。出所や精製プロセスが不明な製品は免疫反応や感染リスクを高めます。妊娠中・授乳中の方、施術部位に感染や炎症がある方は避けてください。自己免疫疾患がある方や内服薬を服用中の方は、施術前に必ず申告してください。
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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