アゼライン酸の効果と使い方、ニキビ跡が薄くなる期間まで
By Dr. Kim1 min read

ニキビが治ったあとに残る赤みや茶色い跡は、ニキビそのものより長く居座ります。炎症が引いても、その痕跡である色素沈着は数か月そのままということも珍しくありません。アゼライン酸(azelaic acid)は、ニキビとその跡という二つの悩みを同時に狙える、めずらしい成分です。
穀物や肌の常在菌からも自然につくられるこの成分は、もともとニキビ治療薬として先に承認を受けました。ところが治療の過程で、赤みや色素沈着まで一緒に落ち着くことがわかり、のちに酒さ(顔が赤くなりやすく血管が目立つ慢性の皮膚疾患)の治療薬としても追加承認されています。今では両方の目的で処方されている成分です。一つの成分がどうして違う悩みを同時に和らげるのか、その仕組みを整理します。
穀物から薬になった成分
アゼライン酸(azelaic acid)は、小麦や大麦、ライ麦といった穀物や、私たちの肌に住むマラセチアという酵母菌からも自然につくられる有機酸です。つまり新しく合成された未知の物質ではなく、もともと存在する成分を精製して薬に仕上げたものに近いといえます。
この成分は最初、20%クリームとしてニキビ治療薬の承認を受けました。ニキビの患者さんを治療する過程で、赤みと色素沈着まで一緒に薄くなることが観察され、その後15%ジェルとして酒さ治療薬の承認も追加されました。現在はニキビ用クリーム、酒さ治療、色素沈着ケア製品まで幅広く使われています。
一つの成分がこれほど多くの肌悩みに使われる理由はシンプルです。アゼライン酸には、炎症を鎮める力、菌を減らす力、色素をつくる酵素を抑える力が同時に備わっているからです。
ニキビをどう防ぐ?
ニキビは、毛穴の中で角質が固まって出口をふさぎ、その中でアクネ菌(C. acnes)が増えて炎症が大きくなることで生まれます。アゼライン酸はこの流れの前後両方に働きかけます。
まず角質が固まるのを防ぎます。毛穴の壁の細胞が早くつくられすぎてうまく剥がれないと、角質が積み重なって出口が狭くなります。アゼライン酸はこの細胞がつくられて剥がれ落ちるスピードを正常な範囲に戻します。出口がふさがれなければ、そもそもニキビができる場所自体が減るというわけです。
同時にアクネ菌の増殖も抑えます。アクネ菌は毛穴の中の皮脂が多い環境でよく増えますが、アゼライン酸はこの菌がエネルギーをつくる過程を邪魔して数を減らします。菌が減れば、その菌が引き起こしていた炎症反応も一緒に落ち着いていきます。
ニキビ跡はどうやって薄くなる?
ニキビが治ったあとに茶色い跡が残るのは、炎症によってメラノサイト(色素をつくる肌の中の細胞)が過敏になり、色素を必要以上に出してしまうからです。アゼライン酸はこの色素をつくる工程自体をゆっくりにします。
色素はチロシナーゼという酵素があってはじめてつくられます。工場にたとえるなら、チロシナーゼは原料を色素に変える機械のような役割です。アゼライン酸はこの機械の作業台に代わりに座り込み、本来の原料が入り込めないようにブロックします。そのため、色素が新しくつくられるスピード自体が遅くなります。
特にこの成分は、すでに過敏になったメラノサイトだけを選んで抑え、正常に働いているメラノサイトはそのままにします。だから本来の肌の色より白くなる副作用がなく、濃くなった跡だけがじわじわ薄くなっていく方向に働くとされています。

炎症が減ると跡も一緒に減る理由
炎症はニキビを悪化させる原因でもあり、色素沈着を濃くする原因でもあります。炎症のある場所では、体を守る白血球が活性酸素(細胞を攻撃する不安定な酸素の粒子)を出しますが、この活性酸素がメラノサイトまで刺激し、色素をさらにつくらせてしまいます。
アゼライン酸はこの活性酸素を掃除する役割も担っています。たとえるなら、火事の現場に水をまいて火の粉が周りに広がらないようにするようなものです。活性酸素が減れば炎症自体も落ち着き、その炎症がメラノサイトを刺激して色素をつくらせる連鎖反応も一緒に断ち切られます。
そのため、アゼライン酸を使うと、ニキビの赤い炎症とそのあとに残る茶色い跡が別々に改善するのではなく、同じ仕組みで一緒に薄くなっていくことが多いのです。

濃度によって使い方はどう違う?
アゼライン酸は濃度や剤形によって使いどころが少しずつ変わります。
- 20%クリーム: ニキビ治療用として処方される、もっとも一般的な濃度です。濃度が高い分、角質と菌を抑える力が強く、炎症性のニキビがある場合に主に使われます。
- 15%ジェル: 酒さや色素沈着ケアに主に使われる濃度です。ジェルはクリームより浸透が速く、顔が赤くなりやすい敏感な肌にも比較的負担が少なめです。
- 10%以下の美容液: 処方なしで購入できる低濃度タイプです。刺激は少ない分、効果が出るスピードもゆるやかで、予防やキープの目的でコツコツ続ける人が多い濃度です。
濃度が高いほど効果は早めに出ますが、その分肌が慣れるまでの時間も必要です。そのため初めて使う人には、低い濃度から始めて肌の反応を見ながら上げていく方法がすすめられます。同じ成分でも濃度が違えば肌に刺激が積み重なるスピードも変わるため、製品を切り替えるときは前の製品と重ねずに順番に慣らしていくほうが安心です。
初めて塗るときの注意点
アゼライン酸は比較的やさしい成分として知られていますが、使い方によって結果は変わってきます。
- 最初は少量から始める: 肌がまだ慣れていない最初のころは、ピリピリ感やほんのりした赤みが出ることがあります。少量から始めれば、こうした反応が出ても軽く済み、続けやすくなります。
- 日焼け止めを一緒に使う: 色素沈着をケアする成分でも、紫外線を浴び続ければメラノサイトはまた刺激されます。日焼け止めがないと、せっかく薄くなった跡がまた濃くなってしまうことがあります。
- ほかの角質ケア成分と重ねすぎない: レチノールやAHA(果物由来の角質ケア成分)と同時に使うと、刺激が重なって肌のバリアが揺らぐことがあります。そのため最初は一日の中で時間帯をずらして使う方法がすすめられます。
- コツコツ続ける: 色素は一晩でできたものではなく、数週間かけて積み重なった結果なので、なくなるまでにも時間がかかります。途中でやめてしまうと、それまで抑えられていた色素づくりがまた活発になることがあります。
効果は何週間後から見える?
アゼライン酸は即効性ではなく、じわじわ積み重なるタイプの成分です。だから数日使っただけで効果を判断するのは早すぎます。
一般的には4週間前後から、ニキビの赤い炎症が減っていくのがまず目に見えてくると報告されています。炎症のほうが先に落ち着き始める反応だからです。一方で色素沈着のようにすでに定着した跡は、もう少し遅れて反応します。15%濃度のアゼライン酸ジェルを16週間使用した研究では、その期間で色素沈着がはっきり薄くなったと報告されています。
そのため、最短でも12週から16週ほどはコツコツ続けてはじめて、色素沈着の変化をきちんと確認できると案内されています。それより前に効果がないと判断してやめてしまうと、実際にはまだ反応が現れる前の段階である可能性が高いです。新しくできる色素は使い続けることで抑えていく仕組みなので、はっきりした変化を見たあとも完全にやめるのではなく、使う頻度を調整しながら続けたほうが、跡がまた濃くなるのを防ぎやすいとされています。
References
Korean Dermatological Association, American Academy of Dermatology (AAD), and Ministry of Food and Drug Safety (MFDS).
この記事は参考になりましたか?
About this article
診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
Read next

妊娠線の治療、赤いうちに始めると反応はよい?
妊娠線は、皮膚が短期間に急に伸びることで真皮内のコラーゲン線維が断裂してできる跡です。赤い線が白い線へと変化していく過程と、時期によって治療への反応が変わる理由を仕組みから解説します。
By Dr. Kim

スキンオーラブースターの効果と持続期間、施術後のケアまで
スキンオーラブースターは水分成分と細胞を刺激する成分を一緒に注入して、肌表面のきめを整える施術です。なぜきめが乱れるのか、どの成分がそれをどう戻すのか、その仕組みを整理しました。持続期間を決める要因とケア方法もあわせてまとめています。
By Dr. Kim

セルライトの原因、やせても消えないのはなぜ?
セルライトは単に脂肪が多いから起こる問題ではなく、皮膚の下にある線維隔壁が引っ張る構造によって生じます。痩せてもこの構造がそのまま残る理由と、施術がこの構造にどう働きかけるのかを、仕組みから丁寧に見ていきます。
By Dr. Kim