prettytime
Skincare

アトピー性皮膚炎の原因と保湿剤の使い方、軟膏と生活管理まで

By Dr. Kim1 min read

アトピー性皮膚炎は、一度落ち着いてもしばらくするとまたかゆみがぶり返すことが少なくありません。軟膏を塗ると症状は収まるのに、なぜ数日、数週間後に同じ部位がまた赤くなるのか、疑問に思う方も多いはずです。

理由はシンプルです。アトピー性皮膚炎は一つの原因だけで起こる病気ではないからです。皮膚バリアが弱くなった状態と、免疫反応が過敏になった状態が同時に存在し、この二つが互いを刺激し合って悪循環を作り出します。バリアだけケアしても、炎症だけ抑えても終わらないのはこのためです。ここでは、その仕組みを一つずつひもといていきます。

アトピーはなぜ落ち着いてもまたぶり返す?

アトピー性皮膚炎の肌は、見た目には問題なさそうでも、内側では水分がどんどん失われています。皮膚の一番外側にある角質層は、レンガとセメントのように細胞と脂質成分がぎっしり積み重なっている必要があるのですが、この構造がもともと緩んでいるケースが多いためです。

構造が緩んでいると、二つの問題が同時に起こります。一つは水分が外に逃げてしまうこと、もう一つは外部のほこりや細菌、アレルゲンが内側に入りやすくなることです。ドアの立てつけが悪い家は暖房も逃げるし虫も入ってくるのと似ています。ですから、見た目の症状が落ち着いてもバリア自体が回復していなければ、また刺激が入り込んで炎症が再発します。

さらに、皮膚の表面にはもともとさまざまな常在菌がバランスを取りながら暮らしていますが、バリアが弱った部位ではこのバランスも一緒に崩れます。特に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)という細菌が、正常時よりもはるかに多く定着する傾向が見られます。この菌は皮膚への付着力が強く、付着した場所で炎症をさらに刺激する物質を出すため、症状を長引かせるもう一つの要因になります。

アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚を培養してみると、病変部位の70%で黄色ブドウ球菌が検出されます。見た目には問題ない部位でも39%に上ります。バリアが弱った肌にはこの菌が特に定着しやすく、居座った菌がさらに炎症をあおるため、症状が長引く理由の一つになっています。
アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚を培養してみると、病変部位の70%で黄色ブドウ球菌が検出されます。見た目には問題ない部位でも39%に上ります。バリアが弱った肌にはこの菌が特に定着しやすく、居座った菌がさらに炎症をあおるため、症状が長引く理由の一つになっています。

フィラグリン不足で最初から弱い皮膚バリア

このバリアの弱まりの中心にあるのが、フィラグリン(filaggrin、角質細胞の中でケラチン線維をしっかり束ね、その後分解されて天然保湿因子になるタンパク質)という成分です。アトピー性皮膚炎を持つ人の少なくない割合が、このフィラグリンを作る遺伝子に変異があり、生まれつきバリアが緻密になりきれない状態でスタートします。

フィラグリンが不足すると、角質層が水分を抱え込む力も一緒に落ちてしまいます。フィラグリンが細かく分解されてできる天然保湿因子(NMF)が、角質細胞の中で水を含んだスポンジのように水分をつなぎとめているのですが、フィラグリンが不足するとこのスポンジ役も一緒に弱くなるわけです。そのため、アトピー肌は同じ湿度環境でも他の肌より水分を早く失い、乾燥しやすくなります。

セラミドが不足するとどうなる?

角質層のすき間を埋める脂質成分であるセラミド(ceramide、皮膚細胞と細胞の間を埋めて水分が漏れないようにする脂質)も、アトピー肌では量が減っているケースが多く見られます。レンガ同士をつなぐセメントだけでなく、レンガとレンガの間を埋める充填材そのものが不足しているようなものです。

ここにもう一つ問題が重なります。炎症を引き起こす物質であるIL-4というシグナルタンパク質が、セラミドを作る過程そのものを妨げることが複数の研究で確認されています。つまり、炎症が起こるとバリアがさらに弱くなり、バリアが弱くなると刺激が入りやすくなって炎症がまたひどくなる、という循環が生まれるのです。そのため、アトピー性皮膚炎は一度の悪化で終わらず、同じ部位で繰り返される傾向を見せます。

かゆみと掻く行為はなぜ互いを悪化させる?

バリアが弱くなったすき間から、ほこりやダニといったアレルゲンが入り込むと、体の免疫細胞がこれを脅威と認識して反応を始めます。この反応で放出される代表的なシグナル物質がIL-4とIL-13です。どちらも本来は寄生虫のような外敵から体を守るために使われるシグナルなのですが、アトピー性皮膚炎ではこの反応が過剰に、しかも頻繁にオンになってしまいます。

このシグナルは、かゆみを引き起こす神経も一緒に刺激します。かゆくて掻いてしまうと角質層が物理的に傷つき、傷ついた部分から刺激物質がさらに入りやすくなって炎症シグナルがまた強くなります。このように、かゆみと掻くこと、炎症が互いをあおり合う流れを、かゆみと掻破の悪循環と呼びます。この循環はどこか一点を断ち切るだけでも、全体の流れが少しずつ落ち着いていくと言われています。

この循環は夜にひどくなりやすい傾向があります。夜は体温が上がって皮膚の血流が増える一方、かゆみを紛らわせてくれる日中のさまざまな刺激が減るため、相対的にかゆみが際立つからです。そのため、睡眠中に無意識に掻いてしまうことが繰り返されると、日中どれだけしっかりケアしても、夜の間にまた傷ができてしまうケースが少なくありません。

保湿剤はいつ、どのくらい塗る?

保湿剤は、アトピー性皮膚炎ケアの最も基本となるアイテムです。不足している脂質と水分を外から補い、崩れたバリアを仮にでも埋めてくれる役割を果たすからです。

効果をしっかり実感するには、いくつかの原則を押さえておくと役立ちます。

  • 洗顔・入浴後3分以内に塗る: 肌がまだしっとりしているうちに塗ることで、水分を肌の上に閉じ込められるからです。乾いた肌に塗ると浸透が遅く、効果も落ちてしまいます。
  • セラミドやコレステロールを含む製品を選ぶ: 角質層の脂質構成に近い成分であるほど、実際にバリアを補う助けになると言われています。
  • 1日2回以上、たっぷりと: 薄く塗るとすぐに乾いて水分がまた逃げてしまいます。指先の関節1つ分の量を目安にする方法がよく勧められています。
  • 香料やアルコールが少ない製品を優先する: 香料やアルコールは、敏感になった肌にとって新たな刺激になり得るためです。

軟膏と生活管理の方法

保湿だけでは落ち着かない炎症には、外用ステロイドや外用カルシニューリン阻害薬(tacrolimus、pimecrolimus。ステロイドではないのに免疫反応を抑えてくれる軟膏成分)を併用します。炎症シグナルそのものを減らし、かゆみと掻破の悪循環を断ち切る役割を果たします。

症状が広範囲で重い場合は、IL-4とIL-13のシグナルを直接ブロックする生物学的製剤(dupilumabなど)を検討することもあります。この二つのシグナルが合流する経路を一つ塞ぐ仕組みのため、炎症反応が始まるハードルそのものを上げることになります。実際、こうした治療を受けた後にバリアのセラミド構成が回復したという報告も見られます。

生活面のケアも欠かせません。ぬるま湯で短時間洗う、汗やほこりをこまめに洗い流す、室内の湿度を下げすぎないことが助けになるとされています。どれもバリアへの刺激を減らす方向性という点で共通しています。

衣類の素材も見落とされがちなポイントです。ウールやごわついた化学繊維は肌表面を細かくこすって刺激となり、かゆみを誘発しやすくなります。そのため、柔らかい綿素材をゆったり着ることが刺激を減らす助けになるとされています。新しく買った服は一度洗濯してから着るのも、表面に残った加工成分を減らす方法の一つです。

症状が目に見えて落ち着くまでには、通常4週間から12週間ほどの継続的なケアが必要と報告されています。ただし、アトピー性皮膚炎は完治よりもコントロールを目標とする慢性疾患であるため、症状がない時期にも保湿とバリアケアを6か月から12か月以上続けることが、再発を減らす助けになると言われています。

IL-4とIL-13のシグナルをブロックする生物学的製剤を16週間投与したところ、中等度以上の患者さんの51%で湿疹の面積と重症度が75%以上改善しました。プラセボ群は15%にとどまっており、3倍を超える差です。炎症シグナルの経路をたった一つ、きちんとふさぐだけでも、肌はこれほど変わるということです。
IL-4とIL-13のシグナルをブロックする生物学的製剤を16週間投与したところ、中等度以上の患者さんの51%で湿疹の面積と重症度が75%以上改善しました。プラセボ群は15%にとどまっており、3倍を超える差です。炎症シグナルの経路をたった一つ、きちんとふさぐだけでも、肌はこれほど変わるということです。

References

Korean Dermatological Association, American Academy of Dermatology (AAD), and Ministry of Food and Drug Safety (MFDS).

この記事は参考になりましたか?

About this article

診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。

Read next

Skincare

妊娠線の治療、赤いうちに始めると反応はよい?

妊娠線は、皮膚が短期間に急に伸びることで真皮内のコラーゲン線維が断裂してできる跡です。赤い線が白い線へと変化していく過程と、時期によって治療への反応が変わる理由を仕組みから解説します。

By Dr. Kim

Skincare

スキンオーラブースターの効果と持続期間、施術後のケアまで

スキンオーラブースターは水分成分と細胞を刺激する成分を一緒に注入して、肌表面のきめを整える施術です。なぜきめが乱れるのか、どの成分がそれをどう戻すのか、その仕組みを整理しました。持続期間を決める要因とケア方法もあわせてまとめています。

By Dr. Kim

Diet

セルライトの原因、やせても消えないのはなぜ?

セルライトは単に脂肪が多いから起こる問題ではなく、皮膚の下にある線維隔壁が引っ張る構造によって生じます。痩せてもこの構造がそのまま残る理由と、施術がこの構造にどう働きかけるのかを、仕組みから丁寧に見ていきます。

By Dr. Kim

Back to articles