AHAとBHAの違い、肌タイプ別の選び方と効果の比較
By Dr. Kim1 min read

化粧品の成分表でAHAやBHAという文字を見ると、どちらも「角質ケア成分」とひとまとめに考えてしまいがちです。名前が似ているうえ、店頭で並んで置かれていることが多いので、なおさらそう思えます。ですが実はこの2つ、水に溶けるか油に溶けるかからして違う、性格がまったく正反対の成分です。
AHA(alpha hydroxy acid、アルファヒドロキシ酸)は水に溶けやすく、肌の表面で主に働きます。一方BHA(beta hydroxy acid、ベータヒドロキシ酸)は油に溶けやすく、皮脂が詰まった毛穴の奥まで入り込みます。水に溶ける成分と油に溶ける成分がそれぞれどんな場所で角質を整えているのか、その仕組みを順番に見ていきましょう。
AHAは肌の表面でどう働く?
AHAを代表する成分はグリコール酸(glycolic acid、サトウキビ由来の酸)とラクティックアシッド、いわゆる乳酸(lactic acid、牛乳由来の酸)です。どちらも水になじみやすい水溶性成分なので、肌に塗ったときに一番外側の角質層より深くは入っていかず、表面近くで作用します。
角質層は、死んだ角質細胞がレンガのように何層にも積み重なり、その間を脂質がセメントのように固めている構造をしています。AHAはこの角質層のpHをわずかに下げることで、角質細胞同士をつなぐ結合、つまりデスモソーム(desmosome、細胞と細胞を結ぶタンパク質の橋のような構造)をゆるめていきます。レンガを固定していたセメントが弱まるとレンガが一枚ずつ剥がれ落ちるように、角質細胞も自然と剥がれ落ち、角質が整っていくというわけです。
同じAHAでも分子の大きさによって働きの強さが変わります。グリコール酸はAHAの中でも分子が最も小さいため肌に素早く浸透し、その分角質を整える力も強めです。対して乳酸は分子が大きいぶん比較的おだやかに働き、同時に水分を引き寄せる性質も持っているので、角質ケアと保湿を同時にかなえてくれます。
BHAは毛穴の中までどう届く?
BHAを代表する成分はサリチル酸(salicylic acid)です。サリチル酸は構造的にアスピリン系の成分と近く、この点が後述する鎮静効果にもつながっています。何より重要な特徴は、油になじみやすい脂溶性であることです。
油汚れのついたフライパンを水拭きしても表面しか拭き取れず油汚れはそのまま残りますが、油汚れ専用の洗剤で拭けば洗剤が油の中に染み込んで内側まで溶かし出してくれます。BHAも同じように、毛穴の奥の皮脂腺までつながる細い通路の中を、油をたどるように浸透していきます。水に溶けるAHAが越えられないこの油の通路を、油に溶けるBHAは自然に伝って下りていくのです。
毛穴の奥まで入り込んだサリチル酸は、皮脂と古い角質が固まってできた栓、つまり毛穴をふさいでいる角質の塊の結合をゆるめ、詰まった通路を整えていきます。さらにアスピリンと同じサリチル酸系の成分らしく、局所的な炎症反応を鎮める性質も持っているため、赤みやぶつぶつのあるトラブル肌にも役立つと言われています。

AHAとBHA、働く場所の違い
2つの成分の違いは、結局のところ角質層と毛穴という、体の中の異なる2つの場所に由来します。角質層は水に溶ける成分だけを表面近くでとらえる密な構造をしていて、毛穴の通路は油で満たされているため油に溶ける成分だけが奥まで入っていける場所なのです。
だからこそ、肌のキメやくすみ、小じわのように表面にとどまる悩みにはAHAが先に思い浮かび、黒ずみ毛穴や白ニキビ、吹き出物のように毛穴の奥から始まる悩みにはBHAが先に思い浮かぶわけです。どちらも角質を整えるという大枠は同じでも、整える場所が違うため、向いている悩みも分かれてきます。
肌タイプ別の選び方
肌が乾燥しやすい、あるいは敏感な方は、AHAの中でも乳酸のようにおだやかで保湿力も兼ね備えた成分のほうが総じて負担が少なめです。グリコール酸のように分子が小さく力の強いAHAは刺激になりやすいので、低濃度から試すのが無難です。
皮脂が多い、あるいはニキビや黒ずみ毛穴が気になりやすい方には、BHAのほうが合うケースが多いです。油に溶ける性質のおかげで皮脂の多い肌にはむしろ自然になじみ、先に説明した鎮静効果も加わるためです。
一つ必ず気をつけたいのは、AHAを使っている間は紫外線に対して肌が敏感になりやすいという点です。角質層が薄くなっている時期は紫外線がそのぶん深く届きやすいため、日中の日焼け止めを欠かさないことが合わせて勧められます。BHAはこうした光感受性の傾向が比較的知られていませんが、角質ケア成分を使っている間はどちらの場合も紫外線対策を一緒に行うのが安全です。

AHAとBHAを同じ日に使ってもよい?
AHAとBHAを同じ日に一緒に塗ってはいけないわけではありませんが、どちらも角質を整える成分なので刺激が重なりやすくなります。角質層をつなぎとめていた脂質や天然保湿因子まで一緒に洗い流されてしまうと、肌のバリア機能が回復する間もないうちに赤みやピリピリ感が出てしまうことがあります。
そのため、初めて2つの成分を一緒に使いたい場合は、同じ夜に重ねるよりも朝と夜に分けたり、1日おきに交互に使ったりしながら肌の反応を見ていくのが無難です。すでに肌が両方の成分に慣れている場合は、一緒に使う頻度を少しずつ増やしていっても構いません。
使用前後のケア
角質ケア成分は効果が高いぶん、ケアもきちんと合わせてこそ副作用なく長く使い続けられます。代表的には次のようなポイントを押さえておくのがおすすめです。
- 日焼け止め:AHAを使っている期間は紫外線対策が特に重要です。角質層が薄くなっている間は紫外線がより深く届きやすいためです。
- 低頻度から始める:最初は週に2〜3回程度から始めるのがおすすめです。いきなり毎日使うと肌のバリア機能が追いつかず、刺激が大きくなることがあります。
- 他の角質ケア成分と重ねない:retinolのようにターンオーバーを促す他の成分と同じ夜に併用するのは避けるのが無難です。刺激が重なると、バリア機能が回復する時間が足りなくなってしまいます。
- 傷や炎症のある部位は避ける:すでにダメージを受けた肌に酸性成分を塗ると、刺激がより強く感じられることがあります。ダメージのある部位はバリア機能がすでに弱まっている状態だからです。
- 高濃度製品は使用前に確認する:低濃度の外用製品はおおむね安全に使われていますが、サリチル酸はアスピリンと同じ系統の成分のため、妊娠中の方や他の薬を服用中の方は高濃度製品を使う前に確認することをおすすめします。
効果はいつから見える?
肌はもともと一定の周期で角質細胞を新しく作り、古い細胞を剥がしていくターンオーバーを繰り返しています。若い肌ではこの周期がおよそ4週間前後ですが、年齢を重ねるほどこの周期は少しずつ長くなる傾向があります。
AHAとBHAは、このターンオーバーの過程を少し後押しする役割です。ですから、継続して使ったときに結果が目に見えてくるまでも、この周期に合わせた時間が必要になります。おおむね4週間から8週間ほど続けると肌のなめらかさやトーンの明るさに変化を感じ始め、色素沈着や毛穴のようなより根深い悩みは12週間ほど継続してようやく変化がはっきりしてくることが多いです。
一日二日で劇的な変化を期待するよりも、ターンオーバーという体本来の周期に合わせてコツコツ続けるほうが、かえって肌への負担も少なく、結果も安定します。
References
Korean Dermatological Association, American Academy of Dermatology (AAD), and Ministry of Food and Drug Safety (MFDS).
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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