prettytime
Acne

アイスピックスカーのTCA CROSS、効果と施術間隔、回復期間まで

By Dr. Lee1 min read

ニキビがすっかり治った後も、頬に針でぷつっと刺したような跡が残ることがあります。こうした傷跡は日本語でも英語のまま「アイスピックスカー(ice pick scar)」と呼ばれることが多く、名前のとおり幅は狭く、深さは深く落ち込んだ形が特徴です。ところがこの傷跡は、ほかのニキビ跡に比べて特に消えにくいとよく言われます。実際、レーザーやフィラーといった一般的な施術だけでは、期待したほど埋まらないケースが少なくありません。そこで、なぜそうなるのか、そしてどんな治療がこの傷跡に本当に合うのか、仕組みと実際の治療法を整理しました。傷跡の形がなぜこれほど狭く深く残るのかを知ってはじめて、どの治療がその奥まで届くのかも理解できます。

アイスピックスカーはなぜ細くて深いのでしょうか?

アイスピックスカーは幅が2mmに満たないほど狭く、その代わり深さは真皮の下、皮下脂肪層まで達する傷跡です。ぱっと見は毛穴が広がったように見えますが、指で触れてみると明らかに違います。皮膚表面に尖ったもので突き刺したような、狭い穴がまっすぐ下に貫通しているような形をしています。

このような形になるのは、炎症が真皮の深いところまで入り込み、その場所のコラーゲンや支持組織を壊してしまうからです。炎症が治まった後もこの壊れた組織が再び満たされないと、その通路の形そのままに跡が残ります。頬、その中でも鼻の横やあご周りにできやすい傾向があります。

ボックスカー、ローリングとの構造の違い

ボックス型の傷跡は底が平らで角ばった箱のような形で、ローリング型は底がゆるやかな波を描く広い形です。それに対してアイスピックスカーは、幅より深さがはるかに大きい、細いトンネルのような形なので構造そのものが違います。

そしてこの構造の違いが、治療の難易度を分けます。ボックス型やローリング型は底が広いので、表面を削ったり下から持ち上げたりする方法だけでも効果を出せます。しかしアイスピックスカーは通路が狭く深いため、表面中心のアプローチではその奥まで手が届きません。井戸の内壁を直そうとしているのに井戸の入り口だけ整えるようなもので、見た目は似ていても実際に必要なアプローチはまったく別物です。

レーザーやフィラーで埋まりにくい理由

フラクショナルレーザーは皮膚表面に微細な損傷を無数に与えて再生を促す施術で、主に表皮と浅い真皮に働きかけます。そのため傷跡の入り口周りの肌のきめは滑らかになりますが、肝心の深く落ち込んだ通路の底までは、エネルギーが十分に届きません。

フィラーも同じです。フィラーは柔らかいジェル状なので、狭く深い通路の中に入れてもそこにとどまらず、周囲の組織の間に散らばりやすい性質があります。そして傷跡の下を引き上げるサブシジョン、つまり皮膚の下の線維帯を針で切る施術も、もともとローリング型の傷跡のように皮膚を下に引っ張る線維帯があってこそ効果を発揮する方法です。ところがアイスピックスカーは引っ張る帯ではなく、ただの狭い穴なので、切るべき線維帯自体が存在しないことが多いのです。ですからこの3つの方法はいずれも、アイスピックスカーの前では十分な力を発揮しにくいのが実情です。

TCA CROSSはどうやって跡を埋めるのでしょうか?

TCA CROSSはtrichloroacetic acidを使ったchemical reconstruction of skin scars、つまり化学物質で傷跡の組織を編み直すという意味の手技です。方法自体はシンプルです。ごく細い爪楊枝のような器具の先に高濃度のTCA、通常65%から100%程度の濃度をわずかにつけ、傷跡の落ち込んだ穴の中だけにぽんと点付けします。

このとき重要なのは、傷跡の外の正常な皮膚にはほとんど触れさせず、その狭い穴の内側だけに集中して塗る点です。高濃度の酸が触れた部分は白く変色しますが、これはフロスティングと呼ばれ、その深さまで組織にコントロールされた損傷が加わったサインです。

体はこの損傷を傷として認識し、回復反応をオンにします。その結果、線維芽細胞、つまりコラーゲンをつくる皮膚の中の細胞が通路の底に集まって新しいコラーゲンを埋め込み、時間とともに落ち込んでいた底が少しずつ押し上げられていきます。むしろ穴が狭いからこそ酸をその中だけに正確に閉じ込められる点が、この方法の核心です。

例えるなら、狭い植木鉢に土を入れ直すのに似ています。鉢の口が広ければ土を入れても横にこぼれて散らばりますが、口が狭ければ入れた分だけそのまま中にたまります。TCAも同じで、狭い通路の中だけで反応が集中するため、正常な皮膚まで広く傷めることなく、傷跡の底だけに回復反応を起こせるのです。

施術は何週間おきに受けるの?

施術は傷跡の一つひとつに器具の先を当て、点を打つように進めます。そのため傷跡の数が多いほど時間はかかりますが、1回あたりが長くかかる施術ではありません。

ただし、1回の施術で通路の底が完全に埋まるわけではありません。コラーゲンが新しく積み重なるには時間が必要で、1回の刺激だけでは深さが十分に埋まらないことが多いためです。そのため通常は4週間から6週間の間隔を空けて、複数回繰り返します。

実際にある研究では65%濃度で約82%、100%濃度で約94%の患者に明らかな改善が報告されています。複数の研究をまとめた分析でも、4回の施術を終えた後、多くの患者の傷跡が70%以上改善したという結果があります。ただしこの数値は傷跡の深さや数、肌の状態によって人ごとに差があります。

TCA CROSSを最初に報告した研究では、5〜6回の施術を終えた後、100%濃度で32人中94%、65%濃度で33人中82%にはっきりした改善が見られました。どちらの濃度でも10人中8〜9人が効果を実感した計算で、狭く深いアイスピックスカーにこの方法が標準として定着した理由を物語る数字です。
TCA CROSSを最初に報告した研究では、5〜6回の施術を終えた後、100%濃度で32人中94%、65%濃度で33人中82%にはっきりした改善が見られました。どちらの濃度でも10人中8〜9人が効果を実感した計算で、狭く深いアイスピックスカーにこの方法が標準として定着した理由を物語る数字です。

施術後のかさぶたと回復期間

施術直後は処理した箇所ごとにかさぶたができます。このかさぶたは通常5日から7日ほどで自然に取れます。その間はかさぶたを無理に剥がさないことが大切です。かさぶたの下では新しい組織が定着している最中で、無理に剥がすとその過程が乱れることがあるためです。

かさぶたが取れた跡は、しばらく赤みや茶色っぽい色素沈着が残ることがあり、地の肌色が濃い人ほど長引きやすい傾向があります。そのため施術後は普段より念入りに紫外線対策をすることが勧められます。

目に見える改善は、かさぶたが一度取れて終わりではありません。コラーゲンがたまる速度はゆっくりなので、通路の底が徐々に押し上げられる変化は通常4週間から12週間かけて現れます。そして一連の施術をすべて終えた後も、6か月から12か月ほどかけて少しずつ改善が続くケースが多く見られます。

跡の種類が混在している場合はどうする?

アイスピックスカーだけがきれいに整っている場合は、TCA CROSSだけで十分なこともあります。しかし実際には、何種類もの傷跡が一つの顔に混在しているケースが珍しくありません。そのため状況に応じて、ほかの方法を組み合わせることもあります。

  • フラクショナルレーザー併用: 肌全体のきめや浅い傷跡はレーザーが担当し、深いアイスピックスカーはTCA CROSSが担当するというように役割を分けると、互いの弱点を補い合えます。
  • サブシジョン併用: ローリング型の傷跡のように皮膚を引っ張る線維帯が一緒にある場合は、まずその帯を切ってから、残った狭い穴にTCA CROSSを当てる順番が自然です。
  • パンチ法併用: 通路が特に広く深い一部の傷跡は、その部分だけを小さく持ち上げたりくり抜いたりするパンチ法を先に使い、残りの狭い傷跡にはTCA CROSSを当てるというように分けて対応することもあります。

このように傷跡の種類を見分けて方法を使い分けると、1つの施術にこだわるよりも全体の仕上がりが均一になりやすいものです。ただし、どの組み合わせが合うかは、傷跡の形を実際に見て判断する部分になります。

References

Korean Dermatological Association, American Academy of Dermatology (AAD), and Ministry of Food and Drug Safety (MFDS).

この記事は参考になりましたか?

About this article

診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。

Read next

Acne

ニキビ跡の種類と治療法、TCA CROSSとサブシジョンまで

ニキビ跡は形によってアイスピック型、ボックスカー型、ローリング型の3つに分かれ、それぞれ皮膚の内部で起きていることが異なります。なぜこの3タイプに分かれるのか、そしてTCA CROSSやサブシジョンといった施術がどのタイプに合うのかを分かりやすく整理しました。

By Dr. Lee

Skincare

ニキビ跡のタイプ別施術の効果とダウンタイム、色素沈着まで

ニキビ跡はアイスピック型、ボックスカー型、ローリング型によって効果的な施術が異なります。サブシジョン、フラクショナルCO2、マイクロニードルRF、TCA CROSS、HAフィラーの改善率とダウンタイム、韓国人の肌における色素沈着リスクまで、検証された研究データをもとに整理しました。

By Dr. Lee

Back to articles