エラ・僧帽筋・ふくらはぎのボトックス、部位別の効果・用量・持続期間を整理
By Dr. Kim1 min read

ボトックスはシワへの注射だけではありません。エラを細く、僧帽筋を下げて肩のラインを整え、ふくらはぎのハリを取るのにも広く活用されています。共通するのは「骨ではなく筋肉に作用してシルエットを変える」こと。メスを使わずにラインを整えられるのが一番の魅力です。
ただ、この3つの部位は顔の表情筋に使うボトックスと比べて筋肉がずっと大きく、それだけ用量も多くなります。効果や持続期間はもちろん、気を付けたい副作用も部位によって異なります。それぞれがどのように作用し、どれくらい細くなり、何に注意すべきかを実際の研究から一つひとつ整理しました。顔のシワに少量使うボトックスとは別物として理解するのがよいでしょう。

ボトックスはどうやって筋肉を減らすの?
ボツリヌストキシンは、筋肉を動かすよう命じる神経シグナルをブロックします。信号が遮断された筋肉は力を発揮できず、3週から4週かけて少しずつ細くなっていきます。使わない筋肉がやせていくのと同じ原理で、体積が減ることでその上のシルエットがすっきりします。
ポイントは骨ではなく筋肉に作用するという点です。だから、噛む筋肉が発達して角張って見えるエラ、筋肉が厚く盛り上がった僧帽筋、いわゆる腓腹筋型のふくらはぎのように、筋肉のボリュームが原因の場合にうまくはたらきます。反対に骨格の広さが原因だったり脂肪が多い場合は、ボトックスだけでは限界があります。
効果は永続的ではありません。神経シグナルのブロックが数か月後に解けると筋肉が戻るため、ラインをキープするには定期的に繰り返すことが必要です。ただ、繰り返すほど筋肉が薄い状態に慣れ、少しずつ間隔を延ばせるケースも多くあります。効果が出るのも注射直後ではなく、2週から4週ほど経ってラインが整ってきます。1か月ほど余裕を持って変化を見守るのがちょうどよいでしょう。筋肉が原因のときに特によく効き、骨や脂肪が原因なら他の方法も組み合わせて検討するのがおすすめです。

エラ(咬筋)ボトックスはどれくらい細くなる?
最も実績があり、エビデンスも充実しているのがエラ、つまり咬筋ボトックスです。噛む際に使う咬筋が発達して顎が角張って見える場合に、この筋肉を減らして小顔ラインをつくります。
数字もしっかりしています。複数の研究をまとめると、1回注射後3か月の時点で咬筋の厚さが約22%から31%減少したと報告されています。383名を分析した大規模研究では平均31%の減少が確認され、歯ぎしりがある方を12週間追跡した研究では厚さが13.4mmから10.2mmへと薄くなりました。繰り返すほど減少幅はさらに大きくなります。
心配される咀嚼機能は、概ね問題ありません。適切な用量(片側20〜40単位)であれば噛む力に有意な変化はないとする研究が多くあります。ただし注射位置が咬筋の上部に寄り過ぎると、笑いに関わる筋肉に広がって表情がわずかにぎこちなくなる可能性があるため、正確な位置が重要です。効果は3か月から6か月持続し、ラインをキープするには年に2回から4回繰り返します。施術実績が豊富で、部位別ボトックスの中でも安心して受けやすい施術です。

僧帽筋ボトックスで肩のラインは変わる?
僧帽筋は首と肩をつなぐ筋肉で、ここが厚く盛り上がっていると肩が高く見え、首が短く見えます。僧帽筋ボトックスはこの筋肉を落ち着かせ、肩のラインをなだらかにして首を長く見せる施術です。
エビデンスはエラほど多くはありませんが、傾向ははっきりしています。22名を対象にした研究では、片側50単位を注射して3か月後に上部僧帽筋の断面積が約27%減少し、首と肩のなす角度もゆるやかになりました。肩こりや頭痛が同時に楽になったという声もあります。標準用量は片側20〜50単位で、効果は4か月から5か月持続します。
副作用も知っておくと安心です。僧帽筋は肩をすくめたり腕を持ち上げたりするのにも使われるため、施術後1〜2か月は腕がやや重く感じることがあります。ある報告では約10人に1人にこうした軽い上肢の脱力感があり、ほとんどは1か月から2か月以内に自然に回復しました。重いものをよく持つ運動をしている方は、あらかじめ医師に相談しておくといいでしょう。肩のラインをきれいにしながら、肩こりや張りも和らげたい方には特に喜ばれる施術です。

ふくらはぎボトックスはどれくらい効く?
ふくらはぎは、いわゆる腓腹筋型のハリが原因の場合に、ボトックスで体積を減らします。ただし、3部位の中でエビデンスが最も少なく、期待値は慎重に持つべき部位です。
無作為化比較試験ではふくらはぎ周囲径が約0.48cm減少しました。目に見えて変わるというより、すっきりして見えるくらいの穏やかな改善です。興味深いのは、用量を増やしても減少幅がそれほど大きくならなかった点で、効果は6か月から8か月と他の部位より長く続きました。筋肉が大きいため片側に100〜200単位と多めの用量が必要で、両側合わせると数百単位になることもあります。
機能面については、現時点のデータでは大きな問題はありませんでした。歩行に有意な変化があるという報告はされていません。ただ、ふくらはぎは立つ・歩く・走るのに重要な筋肉であり高用量を使う部位なので、ランニングや登山が多い方は慎重に判断するのがおすすめです。穏やかなラインの改善を期待し、機能が心配な場合は低用量から始める方が安心です。筋肉型かどうかの見極めが、満足度に直結します。

部位によって副作用と注意点が違うのはなぜ?
3つの部位で副作用が異なる理由は、筋肉の大きさと役割が違うからです。表情筋に少量使う顔のボトックスとは異なり、これらの部位ははるかに大きな筋肉に多い用量を使います。いくつかポイントを押さえておきましょう。
まず、機能への影響です。エラは噛むこと、僧帽筋は腕を上げること、ふくらはぎは歩くことに関わります。適切な用量では大半は問題ありませんが、位置や用量が多すぎると一時的に力が抜ける感覚が出ることがあります。次に用量と耐性です。ふくらはぎは両側で数百単位になることがあり、これは眉間のシワへの注射量の10倍以上にもなります。高用量を非常に高頻度で繰り返すと、まれにトキシンへの抗体が生じて効果が落ちることがあるため、必要以上に頻繁な施術は避けるのがよいでしょう。
もう一つ覚えておきたいのが、フィラーのように溶かす注射がないという点です。気に入らなくても効果が切れるまで待つことになります。最初は控えめな用量から始めて反応を確認しながら調整するのが安全です。こうした判断はすべて部位別の施術経験から生まれるので、その部位を多く扱ってきた医師に相談することが何より大切です。あらかじめ知っておけば、戸惑うことも少なくなります。ほとんどの副作用は一時的で時間とともに回復しますが、最初から適切な用量で始めることが最善の予防策です。

どんな人に向いている?
部位別ボトックスは、筋肉が原因のシルエットの悩みに向いています。噛む筋肉が発達して角張ったエラ、厚く盛り上がった僧帽筋、筋肉型のふくらはぎのように、筋肉のボリュームが気になる場合には良い選択です。メスを使わず少しずつラインを整えられるのが一番のメリットです。
ただ、原因を先に見極めることが大切です。エラが骨格の広さによるものだったり、ふくらはぎが脂肪によるものだったりする場合は、ボトックスだけでは限界があります。自分のシルエットが筋肉によるものかどうかを診察で確認するのが最初のステップです。筋肉が原因であれば、部位に合った用量で継続して受けると満足度が高まります。
効果は部位によって3か月から8か月と差があり、ラインをキープするには繰り返しが必要です。一度でドラマチックに変わるというよりも、少しずつ自然に整っていくイメージで臨むのがちょうどよいでしょう。部位別の用量と位置を正確に判断できる経験豊富な医師のもとで受ければ、安全で満足度の高い結果につながります。特にふくらはぎのように用量が多い部位は、必要以上に頻繁に受けるより適切な間隔を空けて繰り返す方が安心です。筋肉の大きさと役割はそれぞれ異なるので、自分の悩みに合った部位と用量を一緒に決めるところから始めましょう。
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診療を行う美容医師が執筆しており、一般的な教育目的です。個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
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